【更新日:2023年7月27日 by 大川 智也】
近年、SDGsという言葉を耳にする機会が増えたと思います。各種メディアがSDGsについて発信する他、SDGsについての取り組みをしている企業も増えてきました。
しかし、メディアや企業が日に日に世間の注目を集めようと過剰に発信するからこそ「SDGsは胡散臭い」や「SDGsは怪しい」といったネガティブな意見を耳にする機会も多いです。
確かに、今まで聞いたこともなかった言葉を当たり前かのよう言われると、どのような実態なのか分からないということからネガティブな表現につながってしまいます。
そこで今回は、SDGsが胡散臭いと言われる5つの理由を解説し、原因から解決法までを紹介していきます。
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SDGsが胡散臭いと感じる5つの理由
胡散臭いとは、なんとなく疑わしい・怪しい状況のことを指します。それでは、SDGsがなぜ「胡散臭い」と感じられてしまうのか、解説していきます。
目標が胡散臭い
SDGsの17個の目標には「すべて」や「ゼロに」をはじめとした極端な表現が多く見られます。定めた目標が現実味を帯びていないことは、SDGsが綺麗事として捉えられてしまう原因の1つであると言えるでしょう。
また、目標やターゲットが網羅的でないことも胡散臭いと言われてしまう要因の1つです。例えば、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」では、「ジェンダー」の平等を掲げていますが、ターゲットを読むと「女性」にしか焦点を当てていないことがわかります。ジェンダーの多様性が認知されている中、男女二元論に基づいたターゲットであることは、目標として不十分であると認識されてしまう可能性があります。
さらに、SDGsの17個の目標を全て達成しようと、目標を1つずつ見ていくと、矛盾が起きることがわかります。1つの目標を達成しようとすると他の目標に影響する、極端な例を以下で挙げています。
「持続可能な社会」が胡散臭い
SDGsは日本語で「持続可能な開発目標」と訳されるように、持続可能な社会の創造を目指す世界共通の目標です。しかし、この「持続可能な社会」とは一体どのような状況を表すのかという公式の定義はありません。「より良い世界を築く」などと抽象的に表される場合もありますが、誰基準で「良い」と判断するのか疑問が残ります。
さらに、世界の持続可能性に最も必要であると考えられる、戦争撤廃に関する目標がないことも、国連の定める「持続可能な社会」とはなにかを疑ってしまう要因です。
また、地球の持続可能性を追求する際に用いられる「地球温暖化の原因は二酸化炭素にある」という説にも賛否両論あります。
二酸化炭素の排出を抑えるため脱炭素社会を目指す国や企業が多く出てきているなか、空気中の約0.03%しか占めない二酸化炭素の濃度の上昇が果たして本当に地球の温度の上昇に影響しているのかと疑問に思う人もいます。実際「地球温暖化は単に地球の自然のサイクルだ」と提唱する学者も存在します。そのため地球温暖化の原因が二酸化炭素だと限定してSDGsの目標を定めてしまっているのではないかという意見もあります。
このように「多方面からの意見を取り入れない、偏った目標」と非難されることもSDGsが胡散臭いと言われてしまう要因です。
SDGsによって、世界が持続可能の構築が促されていますが、結局は先進国が主導となって取り組まなければ解決しない問題であることは言うまでもありません。元々の生活水準が低く、先進国との格差が広がっている開発途上国が自らSDGsに取り組み、課題を解決することは難しいでしょう。世界各国が連携して目標解決に向かうことが望ましい姿ですが、世界規模での根本的な格差をなくすことが、持続可能な社会の形成に欠かせないのではないでしょうか。
関連記事:《徹底解説》SDGsと地球温暖化 現状から取り組みまでを網羅
SDGsバッジが胡散臭い
SDGsバッジと呼ばれる17色の円状のバッジを身につけている人を見かけたことがある人もいると思います。SDGsに取り組んでいる証としてバッジをつける人がいるなか、形式的に“ただつけているだけ”の人も存在します。
社会貢献活動をしている、または貢献意欲があるアピールとなるSDGsバッジですが、SDGsに関心があるだけ、SDGsの活動を支援しているだけでは、バッジをつける意味がないと感じる人も少なくありません。また、SDGsバッジは誰でも購入できてしまうため、SDGsに取り組んでいるように見せかけてSDGsバッジをつけているだけの人が生まれてしまい、SDGsバッジの信頼性が低くなり胡散臭いと言われてしまう要因になっています。
詳しくはSDGsバッジの記事へ▼
メディアの過剰な報道
最近ではテレビや新聞といったメディアで「SDGs」という言葉を聞く機会もかなり増えたのではないでしょうか。SDGsという言葉に触れる機会が急激に増えたために、マスコミやメディアが過剰に取り上げた報道をしているのではないかと疑問に思われますが、SDGsが日常生活にまで普及しているのは日本国内だけではないという点に着目しましょう。
特に、トルコ、中国、インドではSDGsを聞いたことがあるという人が9割近くとなっています。そして、日本のSDGs認知は28ヶ国中最下位と世界的にみても圧倒的に低いのが現状です。
このように、SDGsは日本国内だけではなく世界的に普及しており、その舵をになっているのはマスコミやメディアではなく国連です。SDGsについてきちんと理解できれば胡散臭く感じることはなくなるかもしれません。
表面的なSDGs経営している企業が存在している(SDGsウォッシュ)
SDGsという言葉をテレビで耳にする機会が増えたのとともに、企業によるSDGsへの取り組みを知る機会も増えたのではないでしょうか。きちんとSDGsに取り組む企業がある一方、中にはSDGsに本当に取り組んでいるのか実態がともなっていない「SDGsウォッシュ」である企業が存在しています。
SDGsウォッシュとは、「SDGs」と「ホワイトウォッシュ(ごまかす、うわべを取り繕う)」を組み合わせた造語で、SDGsへの取り組みをしているように見えて、その実態が伴っていないビジネスを揶揄する言葉です。
例えば、商品自体には環境にやさしい素材を使っているのにもかかわらず、その生産元が劣悪かつ長時間労働によって作り出された商品を生産していることがあります。
そういった見せかけだけのSDGsに対する取り組みとなっている企業が存在している背景から、SDGs自体を信用できず胡散臭いと感じてしまうことがあります。
詳しくはSDGsウォッシュとはの記事へ▼
SDGsウォッシュと指摘された企業3選
ファーストリテーリング
ファーストリテーリングは、株式会社ユニクロや株式会社GUなどの衣料品会社を展開している企業です。
そして誰もが知るユニクロは、2014年に下請け企業の過酷な労働環境がSDGsウォッシュに当たるのではないかと指摘されました。
内容としては、ユニクロでは新疆ウイグル自治区での綿を使用していることからウイグル人の強制労働に繋がっているのではないかというものです。このように意図せずSDGsウォッシュに繋がってしまっているケースがあります。
三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループは、新規の石炭火力発電所向け融資を原則として中止することを公表しましたが、これがSDGsウォッシュに当たると批判の声が上がりました。石炭火力発電所の新規稼働がなくなれば二酸化炭素の排出が軽減され地球温暖化防止に繋がるとされたのですが、現段階では投融資中の石炭火力発電所については投融資を中止しないとしました。
これが、地球温暖化防止を目指したパリ協定への取り組みに適切ではないと考えられSDGsウォッシュであることが指摘されたのです。
HIS
HISは近年大手旅行代理店だけではなく、テーマパーク事業やホテル事業といった多岐に渡る事業展開している会社です。
未来創造企業を目指している反面、パーム油発電のバイオマス発電事業を始めたことが環境保護団体からSDGsウォッシュであると批判を浴びました。
バイオマス発電と聞くと環境や資源に優しいそんなイメージを持たれるかもしれませんが、パーム油を採取するには多くの森林を伐採する必要があり、二酸化炭素の吸収が阻害される他、動物たちの住処がなくなるなど環境破壊だけでなく生態系の多様性まで失われてしまう可能性があったのです。
SDGsのよくある反対意見3つ
テーマが壮大だからこそ実現するのが難しい
SDGsのよくある反対意見の大多数は、ゴールのテーマが壮大すぎることです。
例えば、SDGs目標2の「飢餓をゼロに」、「食べものを環境に配慮して持続可能な方法で生産する」ことを目指していますが、現実的には飢餓をゼロにすることは困難であると考えられます。目標の具体的なターゲットとしても、「2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料 を十分得られるようにする」など達成するまでの期限やすべての人々など難易度が非常に高いことがわかります。
このように、SDGsの目標は理想を掲げるだけで現実的に見て達成できないような目標であることを疑問視する人々も少なくありません。
SDGsに取り組むのは人それぞれ
SDGsで設定された目標は、国連が掲げた地球規模で解決に向け取り組まなければいけないものです。
例えば、SDGs目標3の「すべての人に健康と福祉」において開発途上国向けの医薬品・医療機器などを開発し地球規模で達成に取り組む人がいます。
一方で、SDGsに取り組むことへの拘束力はないため、解決の必要性をあまり感じない人々はSDGs達成に向け取り組まないことが多いのが現状です。
このように、SDGsに取り組むか取り組まないかは完全に有志であることが問題点として挙げられます。
先進国以外は取り組むのが困難
SDGsの前身としてMDGsというものが存在していました。MDGsとは2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで「国連ミレニアム宣言」として採択され、2015年を目処に開発途上国における社会問題を解決するための世界共通の開発目標として設定されたものです。
そして、MDGsとSDGsの大きな違いは取り組みの主体が国連や政府といった大きな組織であったのに対し、SDGsは国や自治体だけでなく企業や個人一人ひとりであること、MDGsは主に発展途上国の課題解決が目的であったのに対し、SDGsは発展途上国だけでなく先進国の課題を解決することを目的としているのです。
詳しくはMDGsとはの記事へ▼
しかし、SDGsを達成するためには二酸化炭素の排出量を抑えた技術や仕組みを作るなど莫大な費用が必要になるケースがあります。
そのため、そうした莫大な費用に対し先進国は経済的な余裕から取り組むことが可能ではありますが、経済的な余裕のない途上国では取り組みたくとも取り組みをおこなうことが難しいのがSDGsの問題点となってしまっています。
関連記事:《完全網羅》SDGsの7つの問題点|現状の課題と解決策
SDGsは偽善なのか?意味はない?
先ほど、SDGsによくある反対意見について解説してきましたがここまでくると「SDGsは偽善なのか?」「SDGsに意味はないのか?」と疑問を持つ方もいるでしょう。
では、ここからSDGsに取り組む理由について解説します。企業だけではなく個人がSDGsに取り組む理由を理解していただければSDGsが本当に意味があることを理解していただけるでしょう。
関連記事:《SDGsは無意味?》SDGsが批判を受ける理由|本当に意味のあるSDGs活動を行なうためには
SDGs目標達成のためには、個人の活動や取り組みが重要
SDGsによくある反対意見の1つに「テーマが壮大すぎる」という意見がありました。壮大なテーマが掲げられているからこそ、SDGsへの取り組みは政府や企業が主体であるといった考えをお持ちの方も多いでしょうが、それは大きな間違いです。
上の2018年度日本の部門別二酸化炭素排出量の割合を見ると、日本の二酸化炭素排出量の14.6%を「家庭部門」が占めており、お店などのサービス業などの「業務・その他部門」と合わせると31.8になります。
このように、国や企業による取り組みだけではSDGsを達成することは難しいのが現状です。私たち個人が家庭において出る二酸化炭素を減らそうと意識することでSDGsの目標達成に近づきます。二酸化炭素排出量が減れば地球温暖化も軽減されるその意味でもSDGs達成には意味があります。
関連記事:企業がSDGsに取り組む4つのメリットを徹底解説|日本企業の取り組みやデメリットも
「SDGsは胡散臭い」と感じないためには?5つのすべきこと
上記の理由などから、「SDGsは胡散臭い」と感じる人が一定数いると考えられます。
では、どのようにしたらSDGsの胡散臭さを取り除けるのでしょうか。
個人がすべきこと
「自分ごと」に落とし込む
「SDGs」と聞くと国連や各国政府が取り組むべきテーマであると考えてしまう人も多いでしょう。もちろん、日本政府もSDGsに関する取組を数多く行っており、その様子はテレビなどのマスメディアにも近年数多く取り上げられています。
しかし、本当にSDGsは国連や各国政府だけが取り組むべきものなのでしょうか。
SDGsは世界の一人ひとりが自分ごととして取り組んでこそ、達成できる目標です。
実際、私たち個人でも取り組めることは多くあります。
例えば使用していない部屋の電気や電化製品の電源をこまめに消して電力消費を抑えることも個人で取り組めるものです。
また2020年7月1日からプラスチック製買物袋の有料化開始に伴い、マイバッグを持ち歩く人も増えたのではないでしょうか。
これも個人単位でのSDGsへの取り組みの1つと言えます。
その他にも個人でできるSDGsへの取り組みは多くあります。
関連記事:《徹底網羅》個人でできるSDGsの取り組み|「シーン別に解説」
普段から一人ひとりがSDGsの視点で身の回りを振り返り、SDGsを自分ごとにしていくことで、2030年のSDGs達成の実現につながるでしょう。
1つの意見・見解として認識する
世の中にはさまざまな立場の人が存在します。「SDGsは胡散臭い」と思う人がいても仕方のないことなのかもしれません。しかし、否定的な考え方だけではなく、SDGsに対して肯定的な意見もあると認識することが大切です。
「SDGsは偏った胡散臭い目標である」という考えを強く持ちすぎると、その考え方こそ”偏った考え”になってしまうのではないでしょうか。
SDGsに対して正しい知識を身につけ、その上でSDGsの問題点などの否定的な意見も持つことは非常に大切です。そのため最初からSDGsを”胡散臭い”と切り捨てるのではなく、「こういう考え方もあるのか」とSDGsに対する肯定的な取組や意見がある事も認識することが非常に重要です。
関連記事:《意外と知らない》日常生活でできるSDGs|具体的な取り組み〜日常生活編〜
企業がすべきこと
企業がSDGsに取り組むメリットを理解する
企業にとってSDGsに取り組むことが人々から胡散臭いと感じられてしまわないためにも、SDGsについてきちんと理解するところから始めましょう。
今やステークホルダーからの支持を集めるための必須条件になりつつあるSDGs。企業がSDGsに取り組むことはこうしたステークホルダーからの信頼を獲得しビジネスを継続的にしていく上での必要な投資です。
また、消費者が商品やサービスを選ぶ基準の「安い」や「ブランド」といったものに加え「エシカル」かどうかといった観点が注目されています。これは、企業がSDGs達成に向けて生まれる分野に参入や将来を見据えたビジネスを展開できるビジネスチャンスです。
さらに、SDGsへ取り組みをする企業は世界的、長期的視点を持っていると就活生などから判断されるという点からも、SDGsに取り組むことで採用活動に幅を持たせることが可能になります。
ESG投資を理解する
投資先の企業がSDGsにどのように取り組んでいるかという姿勢は、企業の将来性を見極める上で投資家たちにとって重要な指標となります。
こうした企業が環境や社会などに配慮しているかどうか企業を選別して行う投資のことを「ESG投資」といいます。最近は、投資家にとっても企業の将来性を見極めるためにもESGへの取り組みは重要なテーマとなっています。
詳しくはESGとはの記事へ▼
一方でESG問題と呼ばれる、ビジネスの持続可能性や社会生活の持続可能性を脅かす恐れもあります。SDGsに対する考え方が曖昧であったり誤った方向性に進んでしまうことはリスクに繋がってしまいます。
そうならないためにも、SDGsそしてESGについてきちんと理解しましょう。
関連記事:《徹底解説》ESG金融とは|メリットから具体的な事例まで網羅
関連記事:《徹底解説》ESG経営とは?|今注目される持続可能な企業経営を解説
SDGsについての取り組みを外部に発信する
SDGsやESGについてきちんと理解ができたら実際にSDGsに取り組んでいることを外部に発信しましょう。その前の準備段階としてSDGsに定められている規範やルールといった社会的基準を維持しているかといったチェックをします。
また、情報開示するにあたって内部の理解を得ることも忘れてはいけない大切なことです。自社内のSDGsの取り組みに対する意思疎通は社員のモチベーション向上やビジネスへの良い影響になります。
そうすることで初めてSDGsについての取り組みを外部に発信できます。規模の大小に限らずSD Gsに取り組むことが消費者や顧客に対する理解を深める第一歩になるのです。
関連記事:SDGsの取り組み事例51選|企業と個人の事例を17のゴール別に徹底網羅
まとめ|SDGsの目的を理解して主体的に行動しよう
今回は、「SDGsは胡散臭い」と言われる理由を詳しく解説し、原因から解決法までをまとめました。
たしかにSDGsが胡散臭いと感じられる背景には、ここで解説したようにメディアによる過剰な報道などがあるかもしれません。
しかし、たとえ胡散臭いと感じる要因があったとしてもSDGsをしっかり理解し、利用するのであればそれ自体が悪いことではないと思います。
これからは、SDGsの目的についてきちんと理解し、自らが主体的に行動してみてはいかがでしょう。そうすることでSDGsに対する理解も深まり胡散臭いと感じなくなるかもしれません。
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と言います。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
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