【更新日:2023年7月31日 by 田所莉沙】
「食品ロス」とは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物のことです。近年では、世界中で大量の食べ物が捨てられてしまっています。
では日本における食品ロスは、一体どのような現状なのでしょうか。また食品ロスを改善するために日本政府が実施している政策は、どのようなものなのでしょうか。
この記事では、食品ロスの概要や、日本と世界の現状、問題を解決するために過程でできることについて、解説していきます。また食品ロスとSDGsの関係も紹介します。
【この記事で分かること】 |
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食品ロス問題とは|食品廃棄との違いも説明
「食品ロス」とは、まだ食べることができるにもかかわらず、捨てられてしまう食品のことを言います。日本だけではなく、世界各国で大量の食品が手つかずのまま捨てられてしまっている状態です。
似たような言葉として「食品廃棄」という言葉があります。「食品廃棄」では、野菜の芯や魚の骨など、食べることができないような不可食部分も含まれています。そのため食べられる食品と食べられない食品の2種類を指す言葉です。
「食品ロス」では、食べられるのに手を付けずに捨ててしまう食品のみを指すため、それぞれ意味が少し異なっています。
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日本の食品ロスの現状
続いて、日本における食品ロスの現状について、説明していきます。
日本で発生する食品ロス量
食品ロスには、「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」という2種類があります。「事業系食品ロス」とは、食品メーカーや飲食店などで発生する、食品ロスのことです。一方「家庭系食品ロス」は、各家庭で発生する食品ロスのことを意味します。
2020年度における日本全体の食品ロス排出量は、522万トンでした。そのうち事業系食品ロスは275万トン、家庭系食品ロスは274万トンという結果です。
2022年度の食品ロス量は、国民一人当たりに換算すると、一人あたり一日113グラムです。この量は、お茶碗の約一杯分ほどの量を毎日捨てていることになります。日本の食品ロス量は、年々減少しつつあり、2019年度と比較してみても、約10万トン減少しています。
しかし2000年に定められた「食品リサイクル法」では、2000年度比で2030年度までに食品ロス量を273万トン以下にするという目標が決められています。したがって現在の食品ロス量は減少傾向にあるものの、目標の量を達成するためには課題が多いということがわかります。
日本の食品ロスの主な原因と影響
日本では、事業系食品ロスと、家庭系食品ロスでそれぞれ異なる理由により、食品ロスが発生しています。事業系食品ロスでは「3分の1ルール」が原因の一つとなっています。「3分の1ルール」とは、食品の生産から消費者の食卓に届くまでの期間を3つに分けるものです。食品の流通時に納品期限を過ぎてしまうと、手つかずのまま廃棄することになってしまいます。
また一部の野菜は市場に出回る前に廃棄されます。それが「規格外野菜」です。「規格外野菜」とは、定められた規格に合わない野菜のことです。2020年の秋には収穫された野菜290万トンのうち、58万トンもの野菜が捨てられています。
一方で家庭系食品ロスには、家庭での食べ残しや食品の賞味・消費期限切れによる直接廃棄、過剰除去があります。家庭系食品ロスの中では、とくに食べ残しが最も割合が多くなっており、次に直接廃棄の割合が多い状況です。
世界の食品ロスの現状
ここまで日本における食品ロスの廃棄量や、食品ロスが発生する原因について、まとめていきました。続いて世界における食品ロスの現状について、説明していきます。
世界で発生する食品ロス量
2021年の段階で世界の食品ロス量は、9億3,100万トンでした。そのうち家庭から廃棄される食品ロスが、全体の61%を占めていることがわかりました。したがって世界各国で飲食店や食品メーカーよりも、家庭から発生する食品ロスの方が多いことを意味します。
UNEP Food Waste Index Report 2021のランキングでは中国が最も食品を廃棄しており、その量は9,000万トンを超えています。
また現在はアメリカなどの先進国よりも、インドやナイジェリアなどの発展途上国における食品ロスが発生しています。インドの食品ロス量は、中国に続いて2位という結果でした。
ランキング上では先進国は上位に位置していませんが、一方で人口一人当たりの食品廃棄量を見てみると、アメリカやイギリス、フランスはかなりの量を廃棄していることがわかります。したがって先進国においても、食品ロスの問題は深刻な状況です。
世界の食品ロスの主な原因と影響
世界の食品ロスに関する問題は、先進国と発展途上国との間で違いがあります。先進国では、まず需要を超える過剰生産が、食品ロスにつながる原因として挙げられます。そのため食品が余ってしまい、廃棄せざるを得なくなってしまいます。
また先進国では生鮮食品の加工段階で、「外観品質基準」に満たない食品は廃棄されてしまいます。「外観品質基準」とは、食品に対して食品を一定の品質に保つために定められた基準のことです。
一方で発展途上国では、食品の加工時や家庭での廃棄よりも、食品の生産時に食品ロスが多く発生しています。たとえば野菜を収穫する際に、野菜が腐ってしまい廃棄をすることとなってしまいます。さらに収穫できた野菜を保管する設備が不十分であったり、食品を輸送するための道路が整備されてなかったりなどの問題があります。
SDGsと食品ロスの関係|食品ロスが環境に与える影響とは
ここまで日本と世界における食品ロスの現状について、まとめていきました。ではSDGsと食品ロスはどのような関係にあるのでしょうか。
食品ロスに対して最も関係のあるのが、SDGs目標12です。SDGs目標12「つくる責任つかう責任」ではターゲットの項目の一つに、食品ロスに対するものが含まれています。
SDGs目標12・ターゲット3は、2030年までに世界全体で一人あたりの食品廃棄量を半減させ、収穫時の損失や加工・流通時における食料の損失を減少させることを目指しています。
日本でも多くの企業が、食品ロスの改善に向けて取り組みを行っています。農林水産省の公式サイトでは、実際に取り組みを実施している企業について紹介されているため、ぜひ公式サイトを見てみてください。
関連記事:食品ロスによる影響7選-環境・食料問題・経済への影響を解説
家庭でできる食品ロス対策|5つの手法を紹介
ここまでSDGsと食品ロスの関係性について、まとめていきました。つぎに家庭での食品ロスを減らすためにできることを、5つ紹介していきます。
冷蔵庫を整理整頓する|食品ロス削減の第一歩
まず食品ロスを減らすための方法として、冷蔵庫の中身を定期的に整理することが挙げられます。毎日食品を保管する冷蔵庫ですが、使っているものと使っていないものがあると思います。
冷蔵庫の中に長い間使っていない食品が、入っている可能性があります。とくに調味料などは、生鮮食品と比較すると賞味期限・消費期限が長いため、存在を忘れてしまっているかもしれません。冷蔵庫に保管している食品を定期的に確認するようにしましょう。
賞味期限・消費期限をチェックする|食品ロスを未然に防ぐ
冷蔵庫の中身を確認した際に、食品の賞味期限・消費期限を確認することも、食品ロスをなくすための方法です。食品を購入したにもかかわらず、使用できずに捨てなければならないかもしれません。
とくに調味料などは生鮮食品と比べて、賞味・消費期限が長いため、忘れやすいものの一つです。定期的に期限を確認し、無駄にしないように心がけることが必要です。
適切な保存方法を理解する|食材の鮮度を保つ
冷蔵庫で保管する際には、それぞれの食品に適した方法で保存することが大切です。とくに生鮮食品は食品の温度が高くなると、微生物が増えやすくなるため、注意しなければなりません。
たとえば調理前の肉類や魚介類は、ほかの食品に触れないよう専用の棚に入れるようにし、小分けにしておくことで、必要に応じて使い分けられます。
また調理済みの食品は、あら熱をとったら密閉容器に入れるか、ラップで包んで、はやめに冷蔵庫・冷凍庫にいれることで安全に保管できます。それぞれの食品を工夫して保存するようにしましょう。
食材の買いすぎを防ぐ|計画的に買い物をする
スーパーなどで買い物をするときは、必要以上に買い物をしないことが必要です。冷蔵庫を確認せずに買い物をしてしまうと、同じ食材を買ってしまい、賞味期限・消費期限内に使い切れず、捨てなければならなくなってしまいます。
買い物へ行く前に事前に冷蔵庫を確認し、使うために必要な量だけ買うようにしましょう。
食べ切れる量を作る|作りすぎて無駄にしない
実際に料理をする際には、食べ切れる量だけつくることで、家庭で発生する食品ロスを削減できます。自分が食べ切れる量だけつくることで、食べきれずに捨てる料理が減ります。
また食べ切れる量だけつくるという工夫だけではなく、料理するときに食べられる食材を最大限活用することも、料理時に発生する食品ロスを減らすことができます。
食品ロスを減らすための日本の取り組み
日本では、消費者庁が取り組んでいるプロジェクトとして、「食べ物のムダをなくそうプロジェクト」を行っています。このプロジェクトでは、公式サイトにて、食品ロスを改善するためのさまざまな情報を公開しています。
たとえば「令和5年度食品ロス削減推進表彰」では、消費者に対して食品ロス削減につながる取り組みを行った人を表彰するものです。これらの表彰を通じて、食品ロス削減のための取り組みを、全国へ普及させるという狙いがあります。
また小売店と協力して実施している「てまえどり」に関する呼びかけを行ったり、「おいしいめやす」普及啓発を行ったりなどの、さまざまな取り組みが行われています。そのほかにもさまざまな取り組みが掲載されているため、ぜひ公式サイトを見てみてください。
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食品ロス削減のための教育と啓発
ここまで日本政府が取り組んでいる、食品ロス削減に向けた取り組みをまとめていきました。続いて食品ロスの削減に貢献する教育方法や、啓発について紹介していきます。
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フードバンク
「フードバンク」とは、安全に食べられるのに放送などの破損や、過剰在庫などの理由で販売されなくなった食品を、企業などから寄付してもらい、食品を必要としている施設・団体へ提供する活動です。
フードバンクはアメリカが始めた取り組みであり、世界各国で広く行われている活動です。近年、日本でも取り組みが広がっています。
日本の中で最も広く活動しているのが日本フードバンク連盟です。日本フードバンク連盟は、全国のフードバンク団体や認証団体に対し、衛生管理監査や運営サポートを行っています。また安心・安全な食品を無償で提供できるよう、日本フードバンク連盟が定めた水準に基づいて食品を提供しています。
フードシェアアプリ
「フードシェアアプリ」とは、アプリを通じて食べ物を他の人とシェアすることです。個人だけがアプリへ登録できるのではなく、飲食店もアプリに登録することができます。そのため飲食店や食品販売店で売れ残る可能性がある食品を、アプリを通じて販売し、食べ物の無駄をなくせます。
フードシェアアプリとしてTABETEがあります。このアプリでは、捨てなければならない可能性のある食品がある店舗を検索し、簡単に食品を購入できます。クレジットカードを事前に登録するだけで、簡単に支払いも可能なため、お手軽に食品を手に入れられます。
食品ロス削減に向けた日本の法律
ここまで食品ロス削減に関する活動やアプリを紹介していきました。最後に日本で定められている、食品ロスと関連した法律について、説明していきます。
食品ロス削減推進法
「食品ロス削減推進法」とは、食品ロスに対して国や地方自治体などが積極的に削減対策を推進するという法律です。現在世界では、世界中の人々が毎日食事をできるほど十分な食べ物が生産されています。しかし世界の一部の国では、十分に食事をすることができない人々がいます。
日本は輸入大国で多くの食材をさまざまな国から輸入しています。この法律では、日本での食品ロスに対する意識を高めるために、定められています。
食品リサイクル法
「食品リサイクル法」とは、食品を製造・流通したり食事を提供したりする飲食店に対して、食べ残しなどによる食品ロスをなくすために定められた法律です。
とくに製品の製造・加工時や、流通時に多くの食品が廃棄されています。この問題を解決するために、食べ残しなどの再生利用を促進していきます。
まとめ
「食品ロス」とは、食べられる食材であるにもかかわらず、捨てられてしまうものを言います。近年では少しずつ廃棄量が減ってきているものの、いまだに多くの食材が捨てられています。
食品ロスは世界各地で発生しており、大量の食べ物が捨てられています。先進国では加工・流通時に、発展途上国では食材の生産時に廃棄されています。
加工・流通時や、生産時だけではなく、食品ロスは家庭内でも発生します。家庭ではとくに食べ残しによって食品ロスが発生しています。少しでも食品ロスを減らすために、食品の買い過ぎや、料理の作りすぎには気をつけるようにしましょう。
SDGsCONNECT SEOライター。大学では文学を通じて、ジェンダーについて学んでいます。SDGsについて詳しくない人にとってもわかりやすく、かつ情報が正確な記事を書けるよう、心がけています。