食べられるのにさまざまな理由により捨てられてしまう「食品ロス」。みなさんも1度は聞いたことがあると思います。
ですが、なぜ食品ロスが発生してしまうのかや、食品ロスが引き起こす問題について具体的に知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、食品ロスの原因や現状、各国の取組事例まで徹底解説します。
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近年問題となっている食品ロスとは
食品ロスとは-食品廃棄との違い
食品ロスと食品廃棄はよく耳にしますが、実はそれぞれ意味が異なります。
食品ロスは可食部分の廃棄を指し、食べることが出来るのに捨ててしまうこと、つまりご飯を食べ残した際に発生するものです。
食品廃棄は不可食部分も含む廃棄を定義されており、魚の骨や野菜の芯・皮など食べられないものも含む廃棄を指しています。
食品ロスの種類-食品ロスの原因とは
事業系の食品ロス
事業の食品ロスにはいくつかの原因があります。
身近なものでは飲食店での売れ残りや食べ残し、仕入れすぎによる消費期限切れの廃棄などが挙げられます。
また、デパートなどで売っている箱菓子などは輸送中に潰れる、破れるなどすると廃棄になってしまいます。
こうしたさまざまな要因から出荷された食料品の約33%が食品廃棄物となってしまうのです。

引用:https://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-4.html
出荷から仕入れ、提供までを無駄なく進めることが出来るようにすることが事業側の対策であり、それを消費する私たちもまた食べ残さないことが大切になってきます。
家庭系の食品ロス
家庭での食品ロスは生きている全ての人に関わってきます。
家庭では主に食べ残しや作りすぎ、冷蔵庫に入れっぱなしで消費期限切れになった食品や調味料、作るときに多く皮を剝いてしまったり取り除きすぎるなどの過剰除去があげられます。
特に単身世帯では食品ロスの傾向が強く、1人暮らしなどは注意が必要です。

引用:https://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-4.html
今一度、家庭の食糧事情を振り返り消費期限切れの食材などがないか確認してみてください。
食品ロスの現状
世界の食品ロス排出量
世界全体では食料生産量の3分の1にあたる約13億トンの食糧が毎年廃棄されているといわれています。
地域別1人当たりの食品ロス・廃棄発生量をみるとヨーロッパや北アメリカ、アジアでは200㎏/年を超えているのに対してサハラ以南や東南アジアでは200㎏/年以下で、消費段階のロスは10分の1となっています。

引用:https://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-6.html
また世界の栄養不足人口は約7億9500万人いるといわれており、これは世界人口の9人に1人が栄養失調になっていることを表しています。
このうち5歳以下の死者数の約45%が、栄養失調による原因で亡くなっているのです。

引用:https://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-6.html
恵方巻きが大量廃棄!?日本の食品ロス排出量
恵方巻きの売れ残りによる食品ロスはよく聞く問題です。
2019年2月に関西大学は、節分を過ぎて廃棄される恵方巻の金額が全国で約10億2800万円に上る試算だと発表しました。更には、余った食材や売れ残りの廃棄にかかる費用を考えると、これをはるかに上回る金額がかかるといわれています。
日本の2018年度における食品ロスの量は約600万トンといわれています。
これは東京ドーム5個分の量に値し、日本人1人当たりお茶碗1杯分の量が捨てられていることになります。
また、食品関連事業者からでる食品ロスは約324万トン、一般家庭から出る食品ロスは約276万トンとなっており、これは世界的にみても少ない数字ではありません。

引用:https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html
食品ロスを解決することで得られるメリット3選
小売価格が下がる可能性がある
商品は廃棄がでることを想定して値段を設定しているので廃棄量が減ればその分販売量が増え、相対的に販売価格が下がる可能性があります。
食品ロスを減らすことは企業は販売コストが抑えられ無駄なく販売ができる、消費者は安く買えるというメリットがあります。
ゴミ問題の緩和につながる
大量の食品ロスが減ることでゴミが減り、そのごみを燃やす際に出る二酸化炭素など有害物質を抑えることができます。
食品の廃棄にかかる費用を削減できる
食品ロスは食べ物が無駄になるだけではなく、お金も無駄になります。廃棄した食べ物は捨てた後に処理も必要になるので、その分余計な費用がかかってしまうのです。
食品ロスを減らすことで企業側は余分な費用を抑えることができます。
食品ロスを解決するためのSDGsの目標
SDGs目標12「つくる責任つかう責任」
SDGs目標12は、持続可能な消費と生産を構築するための目標です。
少ない資源のなか、良質でより多くのものを得られるように生産や消費ができる形態を目標として、生産過程から消費後まで廃棄物を出さないようにする取り組みが行われています。
また2030年までに天然資源の持続可能な管理と効率的利用、食糧廃棄や廃棄物の削減、化学物質など放出の低減が謳われています。
▼SDGs目標12「つくる責任つかう責任」について詳しくはこちら
食品ロスに向けた世界の取り組み3選
コミュニティフリッジ
コミュニティフリッジとは、2020年11月18日にJR北長瀬駅前のブランチ岡山北長瀬でスタートした、仕事の事情や離婚、介護などから生活に困難を抱える人に食料品や日用品を無償提供する取り組みです。
約200人の登録者は24時間いつでも受け取りに行くことができ、スマートフォンで鍵を開けることが出来ます。
食料品・日用品を提供する「フードプレゼンター」も登録制になっており、個人も企業もどちらも現物を持ち込むことが出来ます。
フードロス対策アプリ「Too Good To Go」
Too Good To Goとは、売れ残りの廃棄食品があるレストランや店舗と顧客をつなぐ無料の食品廃棄物対策アプリで、2015年デンマーク発祥のサービスです。
2021年時点で15か国で対応しており、2000万人以上の登録者がいます。
日本ではまだ対応していませんが後述する「TABETE」などの似たサービスが展開されています。

引用:https://note.com/hiroshi_higuchi/n/nc85ca886dc69
フランスの食品廃棄規制法
フランスでは、2016年2月初めに「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立しました。
この法律では、スーパーマーケットなどで出る賞味期限切れや賞味期限が近づいている商品を廃棄せず、チャリティー団体やボランティア組織に寄付することが義務付けられています。
受け取った団体や組織は、食料を貧しい人々に配布しなければいけません。
大きなスーパーなどは近くの団体と契約を結ばなければ罰金もあるなど、かなり厳しく制定されています。
食品ロスに向けた日本の取り組み4選
食品ロス削減推進法
2019年10月1日に施行された新しい法律でもある「食品ロスの削減の推進に関する法律」は、食品ロスの定義や食品ロス削減の推進、基本的な方針や施策などが制定されています。
この法律は消費者に向けて制定されており、日本政府は、フードロス削減に功績のあった人を表彰したり、フードバンクや食品関連事業者の支援を行ったりしています。
食品リサイクル法
食品リサイクル法は2001年に施行され、2007年に改正されました。
この法律は食品の売れ残りや食べ残し、食品の製造工程で大量に発生した食品廃棄物に関して発生抑制と減量化を行い、最終的に処分する量を減少させることを目的としています。
また食品が処分となってしまったとしても、飼料や肥料などの原材料として再利用するなど、食品循環資源の再生利用を促進する目的もあり、削減と再利用を推進する取り組みが進められてきました。
フードバンク
フードバンクとは包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で流通に出すことができない食品を企業から寄贈してもらい、必要としている施設や団体に無償で提供することを目的とした、世界中で活動している団体です。
ただし日本ではまだ食品ロスの問題が広く浸透しておらず、フードバンクの活動は広く認知されていません。
フードシェアアプリ「TABETE」
「TABETE」は味や品質面では問題ないが、売り切るのが難しく廃棄せざるを得ない商品を、消費者がリーズナブルな価格で購入できるフードシェアリングサービスです。
アプリ内で表示された商品をクレジットカード決済をして購入し、直接店舗に受け取りに行くという流れで販売されています。
食品ロスをなくすために企業と私たちにできること
企業にできること
スキンパック包装
スキンパック包装とは、トレー・台紙・エアキャップ・フィルムなどの上に製品を置き、加熱したフィルムを上から被せると同時に機械の下から空気を抜くことで、フィルムを製品とトレーなどに密着させて行う包装方法です。
空気を遮断して包むことで消費期限が通常より長くもち、金型がないのでさまざま形やサイズに合わせて包むことが出来るのが特徴になります。
MAP包装
MAP包装とは、食品包装内の空気を一度真空にし、その内容物の保存に適した食品ガスに置換し包装する手法です。
スキンパックは加熱したフィルムで密着するように包みますが、MAP包装は1度真空にしたうえで内容物ごとに適したガスに入れ替えるのでより消費期限を伸ばすことができます。
ただ業務用だと導入に費用が掛かる、オイルの交換があるなどのデメリットもあります。
ボイル・レトルト殺菌
100℃以上の高温・高圧で、レトルト窯により殺菌することを『レトルト殺菌』、100℃未満で加熱して殺菌することを『ボイル殺菌』といいます。
レトルト食品を作る際に食品製造者は、食中毒を引き起こすボツリヌス菌を殺菌できる温度である、中心温度が120℃で4分以上となるように加熱します。
私たちにできること
買い物の前に確認
買い物に行く前に冷蔵庫の中身の消費期限を把握しましょう。
残っているのに新しものを買ってしまうなどといった無駄をなくすことで、家庭での食品ロスを抑えることができます。
また、スーパーでは手前に消費期限が近いものが置いてあることが多いため、手前側から購入することで企業、家庭ともに食品ロスが少なくなります。
調理の時に確認
調理の時は冷蔵庫の消費期限が近いものから消費していきましょう。まだ使っていない食材や期限の近い食料から消費することで、廃棄が少なくなります。
また、作るときは余分な作りすぎに注意し食べ残しがないように心がけましょう。食べきれない場合でも冷蔵や冷凍することで日持ちさせるなど、廃棄にならないようさまざまな工夫をインターネットを使用して調べてみてください。
外食の時に注意
外食時は食品ロスの削減に積極的に取り組んでいるお店を選ぶことを心がけることで食品ロスの問題解決に繋がります。
注文するときは食べきれる量を注文し、食べ放題やコース料理などでも食べ残しを出さないよう気をつける必要があります。
まとめ
今回は食品ロスについて紹介させていただきました。
食品ロスは世界中で大きな問題となっており、私たちの生活に大きく関わってきます。
日頃の食生活の見直しや食べ残しなど改善できることは普段の生活をしている中でも沢山あるので是非1度見つめ直してみてください。

大学2年生。新しいゲームが好きで日々Apple Storeで新作アプリを探しています。
簡単に理解できるようにをモットーに頑張っていきます。