SDGs10「人や国の不平等をなくそう」現状の問題点や取り組みを解説

#SDGs目標10#ジェンダー#教育 2021.02.13

この記事をSNSでシェア!

 

【更新日:2023年5月1日 by 田所莉沙

ユニセフによると、現在日本は世界第3位の経済大国でありながら7人に1人が貧困状態にあり、1人親世帯では半数以上が貧困状態にあります。

また、各国における男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」の日本のスコアは、2022年の順位が146か国中116位と非常に低い順位です。このように人や国の不平等はもはや他人事ではなくなっています。

そこで、日本も含め世界のあらゆる格差に私たちはどのように立ち向かえば良いのでしょうか。

SDGsが示す10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」について、事例とともにわかりやすく紹介していきます。

【この記事で分かること】

 

見出し

SDGs10「人や国の不平等をなくそう」とは

皆さんはSDGs目標10について、どのくらいご存知でしょうか。

まずはSDGs目標10の内容や、達成に向けて設けられたターゲットについて、説明していきます。

SDGs10「人や国の不平等をなくそう」の内容

SDGs目標10は「人や国の不平等をなくそう」というテーマに基づいて、定められた目標です。SDGs目標10では、世界中の人々が等しく平等でありかつ、国家間の差別なども撤廃することを目指しています

世界では国籍信仰する宗教経済的な地位など、さまざまな場面において差別が存在しています。また国家間においても、先進国と発展途上国との間には、経済的・政治的な格差があります。

このようにすべての人々と国々の間で、不平等な関係をなくすため、SDGs目標10は設けられています。

SDGs10「人や国の不平等をなくそう」のターゲット

SDGs目標10には、10個のターゲットが設定されています。どのターゲットにおいても、あらゆる要素における人同士の差別・国同士の差別を撤廃するために、定められています

人や国家間のさまざまな差別をなくすため、一人ひとりの能力を高めたり、差別的な法律をなくしたりといった方法で、平等な社会を目指します。

また世界での金融制度など、世界規模の規則を定める際に、先進国だけではなく発展途上国の意見の反映も実施していきます。そのほかのターゲットは、以下のとおりです。

10.1 2030年までに世界の国々の中で所得の低いほうから40%の割合にあたる人々の所得を増加させる。増加させる際に、国全体の平均を上回るように所得を増加させる。
10.2 2030年までに年齢・性別・障害・人種・民族・出自・宗教・経済的地位などの違いに影響されず、すべての人が個人の能力を高められ、社会的・経済面・政治面において、差別されないようにする。
10.3 差別的な法律や政策、ならわしを撤廃し、男女平等な法律や政策などを推進する。これによりすべての人々が平等な機会を得られるようにし、所得などの格差を減らす。
10.4 財政・賃金・社会保障などの政策を導入し、人々が平等である社会を実現する。
10.5 世界の金融市場と金融機関における規則をしっかり守るようにする。その規則が守られているかどうか、確認するための管理システムを改善する。
10.6 世界経済や金融制度について定める際、先進国だけではなく発展途上国の発言の機会を設け、意見を反映させる。これにより誰もが納得できる制度を制定する。
10.7 計画に基づいて管理された移民政策を実施し、安心・安全でかつ、手続きに基づいた移住や人々の移動を促進する。
10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、発展途上国、とくに後発発展途上国に対して、たとえば貿易において、後発発展途上国や発展途上国からの輸入品にかける関税を低くするなど先進国とは異なる扱いをする。
10.b 世界各国の計画に基づいて、後発発展途上国やアフリカ諸国など支援が必要な国に、政府開発援助や直接投資などの資金が届くようにする。
10.c 移住労働者において、2030年までに母国に送金する際の費用を、送金する金額の3%よりも低くなるようにする。また費用が、送金する金額の5%を超える送金方法をなくす。

参照:外務省公式サイト

世界の不平等問題の現状と問題点

ここまでSDGs目標10の内容や、ターゲットについてまとめていきました。

続いて、SDGs目標10に関して、世界各国で課題となっている事例や現状について、説明していきます。

所得や待遇の不平等|富裕層と貧困層の経済格差が深刻化

まず世界各国で問題となっているのが、人々の間に存在する、所得や待遇の不平等です。世界では富裕層と貧困層との間に経済格差が生まれており、年々差が大きくなっています。

2021年において、世界の中でもトップクラスの富裕層は、世界全体の富のうち37.8%を所有しています。とくに上位10%の人々は、世界全体の富のうち76%も所有しています。一方で世界の中で平均よりも少ない富を持つ人々は、世界全体の富のうちたった2%しか所有していません。この数値は、成人一人当たり日本円で約41万ほどになります。

また経済格差は、新型コロナウイルスの影響も大きく受けています。ウイルスの拡大に伴い、仕事を失った人がいる一方で、富裕層の持つ富は大きく増えました。富裕層の資産が増加した理由として、富裕層が所有する資産の価値の向上が挙げられます。

経済格差によりさまざまな問題が生じています。たとえば子どもに教育の機会を与えられなかったり、充分な治療をうけられなかったりなどです。これらの問題を解決するためにも、経済的不平等はなくす必要があります。

国家間の不平等|先進国と発展途上国との間に膨大な経済格差

所得や待遇による格差は人々の間のみならず、国家間にも存在します。経済的に豊かな先進国では、比較的人々の所得が多いです。しかし発展途上国では、労働に対して適切な報酬が支払われていないなどの理由で、所得が少なくなっています。

国家間の所得格差を調べる際に参考になるのが、「ジニ係数」です。「ジニ係数」とは、1936年に考案された所得格差を示すもので、数値が0に近づくほど所得の分配ができてることを表します。一方で数値が1に近ければ近いほど、所得格差が著しいことになります。

2019年において、ノルウェーやスウェーデンなどの北方諸国ではジニ係数が0.3未満であったのに対し、ブラジルやコスタリカ、チリなどの発展途上国では0.45以上でした。とくに南アフリカでは、ジニ係数が0.62と数値が大きくなっています。

このように世界の中でも国内で所得が分配されている国と、分配されていない国との間に格差が存在します。世界で平等な環境を整えるためには、国家間の経済格差も改善する必要があります。

移民の問題|移民を守る法律が整っていない

世界では、とくに移民の人々が不平等な扱いをされています。2019年において、世界の移民者数は2億7,200万人でした。この数は年々増加傾向があり、2010年の調査時より5,100万人増加しています。

他の国に移民する人には、いくつかの理由があります。そのうちの一つが、他国に仕事を求めるというものです。しかし移民の人々は、国内の雇用機会を奪っていくなど、ネガティブなイメージを抱く人々も少なくありません。そのため差別されたり、暴力を受けたりと不当な扱いを受けることがあります。また移民は宗教や文化が違うことから、疎遠にされがちです。

さらに中には正式な手続きを行わずに他国へ移住したり、滞在可能期限を過ぎても定住したりするような不法移民もいます。移民の人々も他国で安定した職を得られるよう、政策が必要です。

人種差別|アメリカでは黒人差別による事件が途絶えない

人々の間による不平等さは、所得などの経済的側面だけではありません。民族や信仰する宗教によって、差別されることもあります。とくにアメリカでは、黒人への差別事件が度々話題となります。

黒人差別の中でも、アメリカでは警察官による暴力などが何度も発生しています。2023年2月には、テネシー州で黒人の警察官5人が1人の黒人男性むけて殴打し、死亡させるという事件が起きました。

差別事件が起こるたびに、抗議活動である「Black Lives Matter運動」が行われています。しかしこのような抗議があるにもかかわらず、アメリカの差別問題はなかなか改善されません。すべての人々が平等な社会を形成するためには、このような人種差別などもなくしていくことが必要です。

ジェンダー差別|男女の社会参画の格差が世界中で問題に

人々同士の間には、経済的な格差だけではなくジェンダーにもあります。とくに男女間における社会進出の違いや、政治面における格差が挙げられます。

2022年に公表された「The Global Gender Gap Report 2022」では、アイスランドやフィンランド、ノルウェーなどの北欧諸国が上位を占めています。先進国においても、イギリスやアメリカでは30位以上に位置します。一方で日本は146か国中116位と、かなり低い順位です。

またアフガニスタンやパキスタン、イランなどアフリカ大陸やアジア大陸の国々では、ジェンダー平等な社会が実現できていません。発展途上国では、女性という理由だけでさまざまな場面で、差別を受けています。すべての国で、すべての人が平等な社会で暮らせるよう、取り組みを行うことが必要です。

日本の不平等問題の現状と問題点

ここまで世界各国で起こっている不平等問題について、まとめていきました。

次に、日本における不平等問題について、解説していきます。

日本国内のジニ係数は0.33

日本においても、所得格差は存在しています。2019年の段階で、日本のジニ係数は0.33でした。一見格差がないように見えますが、ノルウェーやアイスランドなどの北欧諸国はほとんどの国が0.3以下でした。そのため北欧諸国と比較すると、日本にもまだ所得格差があることがわかります。

所得格差の中でも、日本では年代による格差が大きな問題です。日本では少子高齢化が進んでおり、年々人口に占める高齢者の割合が高くなっています。そのため所得の再分配が平等に行われていても、高齢者は最初に得られる所得が少ないため、格差が生まれています。

日本は相対的貧困率が高い数値であることも、問題の一つです。「相対的貧困率」とは、ある国や地域の生活水準のうち、半分以下に位置する人々の割合を示したものです。日本は2018年において、相対的貧困率が15.7%でした。この数値は、6人に1人が貧困状態であることを示しています。

日本で所得の格差をなくすためには、適切な所得の分配を行うのはもちろんですが、相対的貧困に該当する人々へのサポートも重要です。

日本のジェンダー格差は世界146か国中116位

日本では、男女間の差別も存在しています。2022年に公表された「The Global Gender Gap Report 2022」の中で、日本は146か国中116位と、かなり低い順位でした。教育面では男女間の差別は見られないものの、経済面・政治面において、差別がいまだに残っています

経済面において、日本は正規雇用者の間にも男女で格差があります。2019年の段階で、正規雇用者の賃金格差は約23%でした。この数値はイギリスやアメリカと比較しても、高い数値です。女性は結婚や出産の際に退職することが想定され、管理職を担うことが少なかったり、職場で十分な育成を受けなかったりすることが原因となっています。

また女性議員が少ないことも、政治面における日本の問題です。日本は2022年8月の段階で、女性議員の割合が衆議院で9.9.%、参議院で25.8%と、かなり低くなっています。日本で男女平等を実現するためには、とくに経済面・政治面に対し取り組みを行うことが重要となります。

外国人に対するヘイトスピーチが常態化している

ヘイトスピーチ」とは、特定の国や出身である人に対して日本社会から追い出そうとしたり、危害を加えようとしたりする言動のことです。「ヘイトスピーチ」は当事者だけではなく、その子孫にも被害を受ける場合もあります

日本で起きているヘイトスピーチには大きく分けて、3つの種類があります。それが「特定の集団を排斥すること」・「特定の集団の生命や身体に危害を加えること」・「特定の集団を蔑称で呼ぶこと」の3つです。

実際に2009年には、京都市で「京都朝鮮第一初級学校襲撃事件」が発生しました。当時排斥主義を掲げていた団体が、在日朝鮮人の学校に対して、非難をした事件です。

ヘイトスピーチにより、傷ついてしまう人は多く存在します。他国の人を文化が違うからと排斥するのではなく、一人ひとりを尊重することが大切です。

障がい者に対する差別や偏見が残っている

視覚や聴覚などに障害をもって生まれた人への差別も、さまざまな場面で見受けられます。職場や買い物の最中に差別的な態度をとられることで、働きにくく、生活しにくい環境となっています。

たとえば職場において、障害をもっているからと賃金が低く設定されていたり、昇給させなかったりという差別があります。実際に千葉県では、向精神薬を飲んでいるだけで退職させられたという、不当な扱いをした事例も存在します。

すべての人が安心・安全にかつ、平等な社会で生きるためには、障害者の人に対する態度も改め、個人を尊重する姿勢が必要です。

SDGs10の解決策4選|企業ができる取り組み

ここまで日本におけるSDGs目標10の現状と、問題点についてまとめていきました。

続いて、SDGs目標10を達成するために必要な解決策について、説明していきます。

関連記事:SDGsと不平等の関係-さまざまな不平等をなくすための取り組みを紹介!

性別に関わりなく働きやすい職場を作る

まず職場において必要な取り組みが、性別にかかわらず一人ひとりが能力を発揮できる環境を整えることです。「性」の多様性が尊重され、徐々に男女間の差別はなくなってきているものの、一部の国や地域ではいまだに女性の立場が低く見られる場合もあります。

女性が差別的な扱いを受ける例として、「セクハラ」があります。とくにセクハラに関する問題は、なかなか周りの人にも相談しづらいため、女性が会社を辞めてしまう原因の一つです。そのほかにも男女間で労働条件に差があったり、「女性だから」という理由で雑務を押し付けられたりと、多くの問題があります。

性別に関する問題は、男女間だけではありません。LGBTの人々も、大きく関係しています。近年ではテレビや雑誌に取り上げられるものの、いまだ理解は追いついていません。すべての人が平等な環境で働くためには、職場の環境を整えることが大切です。

関連記事:企業のLGBT取り組み事例3選-双方のメリットやLGBTフレンドリー企業も紹介

公平な雇用や評価制度を確立する

移民などの海外移住の人々への雇用機会の創出や、男女間による平等な評価制度の確立も平等な社会の実現には必要不可欠です。

I&Lソフトウェア株式会社は、一人ひとりの主体性を尊重している企業です。そのため年功序列で管理職に就くのではなく、自ら希望した人が管理職を務めます。主体性を第一に考えることで、企業全体のモチベーションも向上し、すべての人が働きやすい環境となっています。

また海外からの移住者にも等しく雇用の機会を与え、適切な報酬を支払うことが大切です。たとえばドイツでは2016年以降、西バルカン諸国の出身の人々を対象に、正式な資格がなくても入国を受け入れています。また海外移住者を、熟練労働者や専門家として雇用しています。このように誰もが等しく働ける雇用状況や、労働環境が必要です。

ダイバーシティ化を促進する

ダイバーシティ」とは、多様な人材を活かす戦略のうちの一つです。性別や年齢、国籍を問わず一人ひとりの能力や価値観を尊重することで、企業の成長につなげていきます。企業におけるダイバーシティ化も、すべての人が平等な社会の実現に貢献する取り組みです。

ダイバーシティ化に積極的な企業として、日本航空株式会社(JAL)があります。ダイバーシティ化を促進するため、人材本部に組織を設置することで、すべての人が平等な労働環境の整備を行っています。また社員の意識を高め、理解を深めるために、セミナーや社内イベントも開催しています。

企業側から多様性を尊重した取り組みを実施していくことで、すべての人が働きやすい環境の形成に近づいていきます、

途上国を支援する

発展途上国で暮らす人々のために、経済的・政治的支援を行うことも、平等な社会の達成に貢献します。とくに発展途上国で平等な社会を形成するためには、貧困をなくすために雇用の機会を設けたり、医療など政府が提供する基本的なサービスを整えたりするなど、環境を整えなければなりません。

支援が必要な発展途上国に大きく貢献できる方法の一つが、「フェアトレード」です。「フェアトレード」とは、原材料・製品を生産する発展途上国の人々と、それを購入する先進国との間で、公正な取り引きを行うことです。「フェアトレード」を実施することで、発展途上国の生産者も適切な報酬が得られるようになり、経済の発展につながります。

そのほかにも発展途上国にて医療サービスを普及するために、医療従事者の育成や政府の政策も必要です。これらの支援を通じて、すべての人が充分な利益が得られ、国が提供する基本サービスを利用できるようになります。

関連記事:フェアトレードの仕組みとは?-背景にある4つの問題も解説

関連記事:企業がフェアトレードに取り組むメリット3選-企業一覧や事例も紹介

SDGs10を達成するために私たちにできること4選|個人ができる取り組み

ここまでSDGs目標10を解決するための方法について、まとめていきました。

次に私たちが身近にできる、SDGs目標10の達成につながる取り組みを紹介していきます。

世界各国の現状や多様性についてを知る

まず私たちが身近にできることとして、不平等な問題が存在することを知ることが必要です。私たちは肌の色や髪の色などの見た目や、信仰する宗教や人種が生まれた国によって異なります。文化や見た目以外にも、性別や障害をもって生まれた人など一人ひとりが異なった存在です。

私たちが自分自身や周りの環境が当たり前と思うのではなく、さまざまな生き方考え方をする人がいることを、理解する必要があります。理解したうえで、違いを尊重し、大切にすることで不平等に関する問題は改善されていきます。

募金する

実際に世界で問題となっている不平等問題は、すぐに解決できる問題ではありません。多くの人に理解され、支援されることで徐々に解決につながります。そこで私たちが貢献できる方法が、SDGs目標10の達成に向けて活動を行う団体に寄付することです。

たとえば国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、人権侵害をなくすため法律家や研究科などの専門家とともに発足した、日本初の国際人権NGOです。現在は児童労働・過酷労働や、性的搾取を強いられている子どもと女性の人権を守るために、寄付活動を行っています。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウでは、お金を通じた寄付だけではなく、本を通じた寄付活動にも取り組んでいるため、自分がより貢献したい方法で支援ができます。

>>国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが取り組む寄付活動について、詳しくはこちら

ボランティアに参加する

寄付活動以外にも、ボランティアに参加することでSDGs目標10の達成に貢献します。ボランティアにもさまざまな活動があるため、自分が支援したいことや貢献したいことに関するボランティアに参加できます。

たとえば日本に移住してきた外国人向けに行われる、ボランティア活動もあります。とくに小さい子の場合、日本語がわからず学校で馴染めず、進学できない場合もあります。そのような海外移住者のために、活動を行っているのが「東京日本語ボランティア・ネットワーク」です。

東京日本語ボランティア・ネットワークでは、さまざまな地域からのボランティアに関する情報を提供しています。そのため、自分が参加しやすいボランティア活動を見つけやすくなっています。

>>東京日本語ボランティア・ネットワーク公式サイトはこちら

フェアトレード商品を購入する

発展途上国の経済を成長させるため、フェアトレード商品を購入することも、私たちが日頃の買い物でできることです。「フェアトレード商品」とは、原材料を購入する先進国と、原材料を生産・販売する発展途上国との間で公正な取り引きをしたうえで販売される商品です。

私たちが普段の生活で使用する生活用品や食品の多くは、発展途上国で生産され、輸入されたものです。これらの商品を私たちは手頃な価格で購入できる一方で、商品を生産した生産者は充分な報酬を得られていません。不十分な利益が、小さな子どもの労働や、環境の悪化につながっています。

すべての人が平等な社会を形成するためには、発展途上国における経済的な不平等をなくすことが大切です。そのために私たちの日頃の買い物で、フェアトレード商品を買うことで、発展途上国で暮らす生産者を支えることができます。

関連記事:フェアトレードとSDGsの関係とは?-企業や個人の取り組みも解説

SDGs10に関する世界の取り組み3選

ここまで私たちの身近で、SDGs目標10に貢献する取り組みについて、まとめていきました。

続いて、世界各国で取り組んでいるSDGs目標10の実現に向けた取り組みを、紹介していきます。

JICA|貧困層の所得向上に向けた取り組み

独立行政国際協力機構(JICA)は、発展途上国における社会問題を第一に考え、課題の解決にむけて取り組んでいます。なかでも人々が安心・安全に生活でき、かつ自然環境を破壊せずに格差のない経済成長ができるよう、さまざまな取り組みを実施しています。

JICAが取り組む中でSDGs目標10に関連している取り組みが、民間企業の成長支援です。民間企業が雇用機会を創出し、拡大していくことで国の財政を支える一つとなります。しかし発展途上国では、環境が十分に整っていなかったり、技術や知識の習得が不十分であったりと、さまざまな要因により民間企業の成長が遅れています。そのためJICAでは、これらの問題を解決し、発展途上国における所得水準の向上を目指しています。

発展途上国の経済成長を促進するため、JICAでは地域ごとの現状を把握し、各地域に適した方法で経済成長を促しています。たとえばアフリカでは、多くの国で所得水準と一人当たりGDP成長率がともに低い状況です。この問題を解決するために、経営支援・金融支援に特化した「アフリカ・カイゼン・イニシアティブ」を実施しています。

UNDP(国連開発計画)|貧困の根絶への取り組み

UNDP(国連開発計画)は貧困や格差、気候変動などの社会問題を解決するために取り組みを行う、国際連合の主要機関です。2015年に、世界を変えるために2030年までに達成すべき17の目標(SDGs)が採択され、世界にSDGsの活動を普及しています。

近年では、サハラ砂漠以南アフリカで急成長している、暴力的過激派集団に関連する問題の解決を行っています。この集団に自ら志願して加入した人の多くは、雇用の機会を求めて加入しています

2021年の段階で過激派集団によるテロ被害は、世界のテロによる死者のうち48%を占めました。過激派集団による被害をなくすため、UNDP(国連開発計画)は、児童福祉や教育などの基本的サービスの提供や、男女ともに雇用の機会を与えるなど、さまざまな取り組みを行っています。

Freshfields Bruckhaus Deringer(FBD)|司法の無償サービスを提供

Freshfields Bruckhaus Deringer(FBD)は、ロンドンを拠点とした国際私法事務所です。一人ひとりが依頼人の相談を解決するのではなく、チームで行うことで、互いを尊重しながら最善な結果へと導いています。

Freshfields Bruckhaus Deringer(FBD)がSDGs目標10達成のために取り組んでいるのが、若者の法律部門・専門職に就く機会の提供です。とくに経済的に恵まれていない若者を中心に、支援を行っています。

たとえば拠点が置かれているイギリスでは、法律やビジネスに興味があり、経済的・社会的に苦しい立場にいる若者100人に向けた、「Freshfields Aspring Professional Program(APP)」を実施しています。このプログラムにより、多くの学生が個人の能力を発揮できるようになりました。

SDGs10に関する日本の取り組み事例3選

ここまで世界各国で行われている、SDGs目標10達成に向けた取り組みをまとめていきました。

最後に日本で行われている、SDGs目標10の実現に向けた取り組みを紹介していきます。

法務省|ヘイトスピーチ解消法を試行

ヘイトスピーチ」は、人々の人権を侵害する行為です。ヘイトスピーチにより、傷つく人が多く存在します。近年では、インターネット上で不当な差別発言をする事例も増えています。

これらの差別をなくすため、法務省が設けたのが「ヘイトスピーチ解消法」です。この法律は2016年に施行され、不当な差別的言動を禁止しています。またヘイトスピーチをなくすため、啓蒙活動の一環としてポスターやリーフレットなどを活用し、ヘイトスピーチへの理解を深めています。

そのほかにもヘイトスピーチに関する悩みを抱えている人のため、法務局が相談を受け付けています。電話や窓口、インターネットにて相談ができるため、利用しやすい方法で悩みの相談ができます。

>>法務局相談窓口について詳しくはこちら

一般社団法人こども宅食応援団|こども宅食の全国化を推進

一般社団法人こども宅食応援団は、「こども宅食」を全国に普及するために誕生した団体です。日本国内において、経済的に苦しいにもかかわらず自治体などから、支援を得られない家庭があります。そんな家庭に食品を届けるのが、「こども宅食」です。

「こども宅食」を実施するうえで、地域ならではの習慣や文化があるため、一概に同じ活動を普及していくわけではありません。各地域の特性を踏まえて、「こども宅食」を推進していきます。活動内容としては、こども宅食事業を立ち上げるための資金助成や、SNSなどによる情報発信があります。

また辛い環境にいる親子の支援ができるよう、さまざまな寄付活動ができます。たとえばふるさと納税を通じた寄付や、食品・生活用品の提供などです。皆さんも一度、調べてみてください。

>>一般社団法人こども宅食 寄付活動について、詳しくはこちら

JALグループ|LGBTQへの理解を促進

JALグループでは一人ひとりを尊重し、働きがいのある職場をつくるために、ワークスタイルの変革などさまざまな取り組みを推進しています。

JALグループにおけるSDGs目標10達成のための取り組みが、女性リーダーの育成・輩出です。2025年度末までにグループ内女性管理職率30%という経営目標を設定し、女性社員の社会進出を促しています。2022年の段階で、女性の管理職比率は21.9%であり、年々女性の管理職率は増加しています。

そのほかにも目標達成に向けた取り組みが、LGBTへの理解促進です。JALグループが定める制度を、異性パートナーだけではなく、同性パートナーにも適応しています。また2020年より機内や空港で用いられていたアナウンスを、ジェンダーニュートラルな表現へ変更することで、「性」に対する多様性を尊重しています。

まとめ

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」では、すべての人が差別されることなく、人として尊重される社会の実現のために目標が設定されています。また差別は人同士だけではなく、国家間にも存在します。先進国と発展途上国との間で、対等な関係を築けるよう取り組むことも、SDGs目標10の定めた目標の一つです。

世界には男女間の不平等だけではなく、所得格差人種差別など、さまざまな問題があります。また差別問題は、職場などにおいても見受けられる問題となっています。これらの差別を解決するためには、まず自分と異なる人に対し距離を置くのではなく、理解する姿勢を持つことが大切です。理解したうえで、寄付活動やボランティア活動に取り組むことで、SDGs目標10の達成につながります。

すべての人が等しくいられる環境をつくるために、皆さんも前向きな姿勢を持ってみてはいかがでしょうか。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    「SDGsは胡散臭い」と言われる5つの理由【解説】|原因から解決法まで徹底解説

    《あなたは正解できる?》SDGsを目標別のクイズで学ぼう!SDGsクイズ

    新着記事

    マテリアリティとは?ESG経営での注目ポイントや特定プロセスを解説

    SDGsの基礎知識

    《徹底解説》今、注目を集める再生可能エネルギーとは|SDGsとの関係性も解説

    もっとみる

    おすすめ

    SDGs1「貧困をなくそう」とは?ターゲットや現状の問題点をわかりやすく解説

    SDGs16「平和と公正をすべての人に」現状や問題点・取り組みを解説