【更新日:2022年11月17日 by ナオ】
日本では、すべての子供が等しく教育を受ける権利が憲法で保障されており、すべての子供が小中学校などの教育課程を無償で享受することができます。
また、近年では、生涯学習という言葉も定着し、学校の過程を修了した後も、生涯をかけて学びを続けていく「人生100年時代」の新たな生活スタイルへの変革も求められています。
しかし、社会の現状を見ると、十分な学びを満足に受けられない人が世界中には多く存在しています。
生まれた国、性別・家庭環境によって教育が受けられない。私たちの住む日本でも根深い問題です。
そこで今回はSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」についての概要から世界と日本の現状や課題、解決策まで徹底解説します。
見出し
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」とは

ここではSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」について簡単な概要とターゲットについて解説します。
簡単に解説-目標4「質の高い教育をみんなに」
SDGs目標4は、「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」というテーマのもと、10個のターゲットから構成されています。
目標4では、識字率の向上だけでなく、教育におけるジェンダー格差をなくしたり、教育が受けられない子どもを0にするなどの取り組みが掲げられています。
教育は人間が社会の中で役割を発揮し、個人だけでなく社会全体を発展させるために最も重要な社会の機能です。質の高い教育を幅広く提供することで、長期的に豊かな社会を築けます。
近年では、ITテクノロジーを活用し、効率的な教育を目指すEdtechのサービスも多く生まれるようになりました。教育関連の格差を解消するだけでなく、技術を活用してさらに質の高い教育のあり方を求めていくことも重要になっています。
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なぜ「質の高い教育」が必要なのか
質の高い教育が必要な理由は、現在世界で起きている課題を解決できるからです。
2012年に潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が立ち上げた「GEFI(グローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブ)」では、質の高い教育を行う理由として6つ列挙しています。
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(引用:https://www.youtube.com/watch?v=3OdP7bYe5wk&feature=youtu.be)
このように、SDGs目標4「すべての人に包括的で質の高い教育を普及させる」という目標は持続可能な開発にとって、教育が最も有効かつ効果的な手段であるということを再認識することができるでしょう。
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SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」のターゲット
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」のターゲットは以下のとおり構成されています。
4.1 | 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果 的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。 |
4.2 | 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼 児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。 |
4.3 | 2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。 |
4.4 | 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある 人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合 を大幅に増加させる。 |
4.5 | 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住⺠及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。 |
4.6 | 2030年までに、すべての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、 読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。 |
4.7 | 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 |
4.a | 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。 |
4.b | 2020 年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど゙、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。 |
4.c | 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。 |
※「1-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標、「1-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。
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世界の教育の現状と課題
SDGsで具体的にどのような目標・ターゲットが立てられているのか、そもそもなぜ質の高い教育が必要なのかが分かったかと思います。
では実際に、世界の教育は現在どのような状況で、どのような課題が存在しているのでしょうか。ここでは世界の教育における現状と課題を4つ紹介します。
学校に通えないこどもたちの割合
世界で学校に通っていない5歳から17歳の子どもの数は3億300万人で、その3分の1以上に相当する1億400万人は、紛争や自然災害の影響を受ける国に暮らしています。
世界で教育を妨げる最大の要因は依然として貧困であり、最貧困層の初等教育学齢期の子どもが学校に通えない可能性は、最富裕層の同年齢の子どもと比較して4倍高いとも言われています。
このように教育格差は学習機会の有無や学力の高低のような結果の差ではなく、子ども本人に変えることができない初期条件である「生まれ」と結果に関連しているとも言われています。
早稲田大学の松岡准教授によると、さまざまな「生まれ」がある中でも出身家庭の社会経済的地位と出身地域は主要な初期条件になります。
この「生まれ」によって、教育成果(学力や学歴など)に違いがあることを「教育格差」と呼びます。社会経済的地位は文化的・経済的・社会的な要素を統合した概念で、親の学歴・世帯収入・職業などで構成されていて、高いほど子どもの教育にとって有利な条件と言われています。
女子への教育の浸透の低さ
世界には小学校・中学校・高校といった学校という場所に通うことができない女の子が約1億3200万人いると言われています。学校に通えている女の子の中でも質の高い教育を受けることのできない子もいるのが現状です。
女性は男性に比べて能力や体力が劣るため、社会的役割が異なるという意味が含まれている「女子教育」という言葉も存在するほどです。この女子教育では勉強以外に家庭教育や社会教育といった内容を含んでいる場合もあり、地域によっては「女は勉強する必要がない」と思われている場合もあります。
学校に通えない女の子、1億3200万人のうち、約5200万人はサブサハラ以南のアフリカ、4650万人は南アジアと偏った地域に住んでいることが分かっています。
識字率の低さ
文字の読み書きや理解する能力を「識字」と呼び、文字の読み書きができる人の割合を「識字率」と呼びます。
世界では15歳以上で字の読み書きができない人は6人に1人に匹敵する7億8100万人と言われています。
識字率の低さには歴史的、地理的問題がある場合が大きく関係しています。後発途上国の多くは第二次世界大戦後独立した国が多く、その後も紛争や差別によって経済的にも困窮している国が多いのが特徴です。そのため地域独自の言葉しか話せない教師も多く、公用語が浸透しにくい環境に陥ってしまうのです。
読み書きができないと社会生活で困難なことが多く、契約書などの文章が理解できずに家を借りて後でトラブルに巻き込まれたり、就職先がなかったりと苦労することがあります。また薬品に書いてある文字が読めずに命を落とすケースもあり、識字率の向上は解決すべき深刻な課題の1つです。
新型コロナウイルスパンデミックによる教育面の不平等の拡大
新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、教育格差が広がったという問題があります。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中の学校が一時的に閉鎖されたり、オンライン授業に切り替えられました。国際連合広報センターによると、新型コロナウイルスの影響で、16億人の子供たちが学校に通えていない(2020年4月時点)と報告されました。
新型コロナウィルスの影響で学校が数ヶ月休校になったことは大きな教育格差に繋がっています。家庭環境によっては、勉強机がなかったり、常に兄弟姉妹と同じ部屋にいなくてはならないなどの理由から、勉強の意欲が削がれる生徒も少なくなく、休校期間中に勉強に遅れが出てしまう生徒もいました。
またPCなどの通信機器がない家庭ではオンラインの授業が受けられず、本来受けられるはずだった授業が受けられないという不平等性が新たな課題として浮き彫りになりました。
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十分な教育を受けられない理由8選
ここまで世界の教育の現状と課題について触れてきました。
ではなぜ世界の子ども達は十分な教育を受けられないのでしょうか。
ここでは8つの理由を紹介します。
理由1|貧困が原因で教育が受けられない
教育が受けられない最も大きな要因は「貧困」です。
以下のグラフは、2017年以降の世界の子どもの貧困率です。
1位の南アフリカでは、子どもの貧困が約3人ひとりの割合で発生しています。
日本という経済的に恵まれた国でさえも、子どもの貧困率は世界の中で上位にランキングしていることに驚かれた方もいるでしょう。
子どもが貧困状態にあることによって、健康面で学校に通うことが難しくなることはもちろん、家計を助けるために学校に通わず、外へ働きに出るケースも多くあります。
また、学校に通うお金や、教科書や文房具など必要な持ち物を買うお金がなく、教育を受けることのできない子ども達も多くいます。
「貧困」は子どもたちが教育を受けることのできない大きな理由の一つなのです。
▽SDGs目標1「貧困をなくそう」について詳しくはこちら
理由2|児童婚が原因で教育が受けられない
児童婚とは結婚や出産を18歳未満で経験することを指します。
児童婚は、本人の意思ではなく、その地域や国の慣習や文化により結婚を強制されるケースがほとんどです。
ユニセフは、2019年時点で7億6,500万人(男の子:1億1500万人、女の子:6億5000万人)の子どもたちが18歳未満で結婚していると推定しています。
児童婚は、男女ともに、家庭を築くために就業を強いられてしまうだけではなく、子どもが負うべきではない過剰な「責任」が発生し、精神的な負担がかかってしまうという実態もあります。その結果、児童婚をした子ども達は教育の機会を奪われてしまうのです。
また女の子に関しては、学校に通えていても、途中で妊娠した場合、中退せざるを得なくなるというケースもあります。
児童婚の問題を解決することも、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成する一つの手段となるのです。
理由3|学校環境によって教育が受けられない
教育を受けられない原因として「学校の環境」も大きく関係しています。
ユニセフと世界保健機関は、世界の学校の43%で、石けんと水による基本的な手洗いをするための設備を利用できなかったと指摘しています。
また後発開発途上国(※1)では、10校中7校には基本的な手洗い設備がなく、半数の学校には水や衛生設備が設置されていないという実態もあるのです。さらに学校に女子トイレがないなど、性差によっても環境が異なることもあるといいます。
上記のような実態により、世界では約6億9,800万人の子どもたちが、学校で基本的な衛生サービスを受けられず、やむを得ず学校を辞めたり入学を断念するケースがあります。
(※1) 後発開発途上国:まだ経済が発展しておらず、貧困状態にあることが多い国 |
理由4|兄弟の世話をしなければならない
子だくさんで両親とも働かなければならない家庭で、保育園や幼稚園が整っていない国では必然的に小さな兄弟の面倒を兄や姉が面倒を見なければならないことがあります。
当然、面倒をみる時間が増えれば学校に通える時間は少なくなってしまい、満足に勉強をすることが困難になってしまうでしょう。
兄弟の世話をしなければいけないという状況下に置かれ、学校に通いたくても家庭で一日を過ごさざるを得ないのです。
理由5|重病にかかってしまう
日本では「いつでも」「誰でも」必要な医療サービスを受けることが出来ます。私たちにとっては当たり前のことですが、貧しい国や地域では一度病気になってしまうと満足のいく医療サービスを受けることが出来ません。
理由としては、衛生環境が劣悪なうえに、不衛生な暮らしをしていることから栄養不足に陥り、病気にかかりやすくなってしまいます。近くに病院もないため病気が重症になってしまい、治らない子どもたちがいます。
一度病気になると治療が受けられず、病気が原因で学校に通えなくなってしまい教育が受けられないといったことがおきます。
理由6|戦争が原因で教育を受けられない
戦争や紛争のある国や地域で暮らす子供たちは、戦争に巻き込まれなくなってしまうケースや戦争による被害から学校が破壊されてしまい教育を受けられないことがあります。
また、戦争や紛争に巻き込まれないために難民として避難を余儀なくされる場合や兵士の一員として紛争地域に駆り出される子供たちがいます。
理由7|学校で教える先生がいない
そもそも、学校で勉強を教えるための先生がいないこともあります。
先生を育てる仕組みがないことや、子どもたちにかかる費用で精一杯になり先生に給与が支払われない国や地域があります。
給与や生活環境の問題からそのような地域へ先生がいきたくなくなってしまい、先生が不足してしまうケースがあります。学校があっても教える人がいなければ教育を受けることが困難になってしまう子供たちがいます。
理由8|家計を助けなければならない
子どもを学校に通わせる余裕がない家庭では、お金を稼ぐために子どもがはたらくしかいけないことがあります。子どもでも農作もつを手伝ったり外に出稼ぎへいったりする子どもたちが大勢います。
中には、子どもを学校に通わせるくらいなら、働かせた方がましだと考える親や女の子であれば家事だけをすればいいと考えている親がいます。
途上国ではこうした貧しくて困っている家族のために、学校にいかず働き家庭を助けなければならない状況にいる子どもたちがいます。
日本の教育の現状と課題

ここまで世界の教育の現状について見てきました。
では、義務教育制度が整っている日本における「教育」の課題はあるのでしょうか。
実は日本でも現在、小学校と中学校が義務教育であるにもかかわらず、経済的な理由やその他家庭の事情により学校に通えていない子どもが存在します。
ここでは日本の教育における現状と課題を4つ紹介します。
日本の教育システム
日本の学校教育は世界から見ると特殊な立ち位置にあり、独特なルールが多く存在しているのが特徴です。
諸外国では、教員の業務が主に授業に特化しているのに対し、日本では教員が、教科指導・生徒指導・部活動指導などを一体的に行うことが大きな特徴として挙げられます。授業以外の業務に関しては賃金が支払われないこともあり、日本の教師の仕事はかなり特殊だと言えます。
また、ゆとり教育の反動を受け、現在は詰め込み型の教育を行っており、厳格な校則の学校が多いなど、生徒の自由さがほとんどないのも特徴です。
貧困と教育問題
近年、経済格差と学力格差の強い関係性が問題視されるようになりました。
2013年度の全国学力テストの結果を分析したところ、世帯収入が多い生徒と少ない生徒において、学力テストの正答率に約20%の開きが生じたというデータもあり、家族の経済力と学力格差に強い相関があることがわかっています。
文部科学省の「平成26年度子供の学習費調査」によると、家庭が自己負担する教育支出(=学習費)のうち、約6〜7割が学校外教育費であるとも言われており、家庭が貧困である場合、部活動ができない・塾や習い事ができない・希望の学校に行けないなど子どもからさまざまな学習機会・体験する機会を奪うことに繋がります。
また先程も世界の教育の現状でも挙げましたが、新型コロナウィルスの影響は貧困層の教育に大きな影響を与えました。PCなどの通信機器がない家庭ではオンラインの授業が受けられず、授業に遅れてしまうこともあり、特に公立と私立での格差の拡大は顕著に見られます。
公立の小・中・高及び特別支援学校のうち、ライブ双方向のオンライン指導を行った学校は5%だったのに対し、私立中学校の約90%は5月の連休明けの時点でオンライン授業やホームルームを導入していたというデータもあります。
日本だけの問題では有りませんが、このように経済格差と教育格差の因果関係も見え始めています。
教育現場でのいじめ
日本の教育現場においていじめは年間7万5000件以上起こっているとも言われています。
文部科学省によると、いじめとは「当該児童生徒が一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な部科学省攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」とされており、身体的なダメージを及ぼすもの、言葉で行なうもの集団で無視するなどのものがあります。
また近年だとSNSの台頭を受け、インターネット上で悪質な書き込みをしたり、個人情報を流出させるといった新しい形のいじめも顕在化しています。
教員不足
教育に欠かせない「指導者=教師」の不足も大きな問題です。
北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県、大分県、鹿児島県、大阪市、北九州市、福岡市の11か所で行った調査によると、小学校常勤266人、非常勤50人程度足りていないことが分かりました。
教員不足の原因としては産休・育休取得者数の増加や特別支援学級数の増加、転入等による学級数の増加などが挙げられています。
また辞退者の増加等により予定人数を採用できなかった、応募者の減少等により予定人数を採用できなかったなど教師を目指す人の減少を嘆く声も聞かれ、こちらもまた1つの大きな要因として挙げられます。平成を境に教師の採用試験の受験者数は大幅に落ち込んでいるというデータがあり、近年話題になった教師同士のいじめ問題や授業外の業務の多さに教職を諦める人も多いのではないかと考えられます。
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SDGs目標4の日本の達成状況
日本でも教育に関する課題が存在していることを理解できたかと思います。
では、実際に日本のSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の達成状況を定量データで見てみましょう。
SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると、日本は2022年のSDGs達成度ランキングで163カ国中19位でした。
SDGs4「質の高い教育をみんなに」の評価に関しては、達成しており、2022年度も達成を維持していると評価されています。
解決されていない課題はあるものの、世界的に見ると日本の教育が恵まれていることは明白です。
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世界の教育問題への取り組み事例4選
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するために、取り組むべき課題が多く存在することを理解できたかと思います。
では、現在世界では教育の課題に対して、どのような取り組みをしているのでしょうか。
ここでは世界の教育問題への取り組み事例を 企業・NGO/政府機関・公益財団法人の3つに分けて、4つ紹介します。
企業の取り組み1|パナソニック「ソーラーランタン10万台プロジェクト」
パナソニック製のソーラーランタンを10万台発展途上国に寄付するというこのプロジェクトは、パナソニックの中でも大規模なもので、SDGsの複数の目標をクリアするために発足しました。主にSDGs目標3、目標4、目標7などに通じています。
その中でも目標4に関してこの取り組みは大きな貢献をしていて、カンボジアに対して寄付を行ったことにより農村部で夜間の識字教室が開かれるようになったことによりその村では識字率が向上しています。
▽「ソーラーランタン10万台プロジェクト」について詳しくはこちら
https://panasonic.net/sustainability/jp/lantern/
▶関連記事|《SDGs事例集》より良いくらしで、より良い社会を|パナソニック株式会社>>
企業の取り組み2|リコー「リコーインド教育支援プログラム」
リコーは事務機器、光学機器などを製造しているメーカーです。そんな教育現場をサポートする製品やサービスを提供しているリコーが、セーブ・ザ・チルドレンとの協働しインドの学校に製品・サービス・それを活用できる環境を提供しているのがこの活動です。
2011年から2014年にかけては第1段階として、学びのためのネットワークを作りあげました。デジタル印刷機を活用した授業の改善と教員、行政、保護者、地域の人々の能力強化に重点を置き教育支援を行い、結果として子供たちが学びやすく、学校に行きやすい環境を整えることができています。
そして2014年からは第2段階として、楽しく学ぶ授業を創るということを推進しています。プロジェクターとデジタル教材の提供をすることで、授業の質を高め、子供たちがより楽しみながら学べる授業作りを支援しています。
▽「リコーインド教育支援プログラム」について詳しくはこちら
https://jp.ricoh.com/csr/india_edu/
NGO/政府機関の取り組み|「みんなの学校プロジェクト」
「みんなの学校プロジェクト」はJICAが2004年から西アフリカを中心に支援してきた教育開発プロジェクトです。プロジェクト目標を「ニジェールの教育開発(教育のアクセスおよび質)に向けて、COGESの学校運営の役割と能力が強化される」として掲げ、実際に2004年にニジェールの23校から始まり、2007年にはニジェール国内すべての学校で普及を達成しました。
世界最貧国のひとつであるニジェールでは低い就学率が問題になっていました。そこでこのプロジェクトでは、その要因となっている「教育に対する親の低い意識」を克服すべく、地方行政と地域住民(=コミュニティ)による学校運営という支援モデルを作りあげたのです。この支援モデルは親の教育への意識に変化を与え、ニジェールの全国の14,000校もの小学校で行われるようになるという大革命をもたらしました。
▽「みんなの学校プロジェクト」について詳しくはこちら
https://www.jica.go.jp/60th/africa/niger_01.html
公益財団法人の取り組み|女性のための識字モデル事業(SMILE Asiaプロジェクト)
公益財団法人ユネスコ・アジア文化センターは、ユネスコの基本理念に基づき、 アジア太平洋の人々と協働し、 誰もが平等に自らの意志で参加できる 学びの基盤づくりを促進しています。
その中の取り組みとして、妊婦さんや子育てママを対象に学習の機会を提供する女性のための識字モデル事業(SMILE Asiaプロジェクト)を実施しています。
このプロジェクトは2008年からカンボジアで実施されており、長きにわたって続いた政情不安と内戦の影響で基礎教育を受ける機会を奪われ、基本的な読み書きを習得できないまま成人となった人々207万人を対象としたものです。
こうした女性に読み書きや計算の基礎的な技術を身につけるための包括的な支援を通じてSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の達成に貢献しています。
その他、どのように持続可能な社会を作っていくかを若者が主体的に学び、考える場である若者主体の持続可能なコミュニティ開発プロジェクトや国内外の教育機関への支援の持続可能な開発のための教育(ESD)プロジェクトなどの取り組みを行っています。
▽「SMILE Asiaプロジェクト」について詳しくはこちら
https://www.accu.or.jp/programme/project/smile_asia/
日本の教育問題への取り組み事例4選
ここまで児童労働や戦争などの課題を解決するための、世界の取り組みを紹介してきました。日本では上記のような課題が現時点ではないため、一見するとSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成できているように思われます。
しかし、先ほども述べたとおり、日本は子どもの貧困率が世界ランキングで上位に食い込んでしまっていることなどから、まだまだ達成にはほど遠いのです。
ここでは日本における教育問題に対する取り組み事例を企業・NGO/政府機関の2つに分けて、4つ紹介します。
企業の取り組み1|「全国銀行協会『どこでも出張講座』」
全国銀行教会では、学校の授業や教員研修に講師を派遣し、金融の知識を無料で教える「どこでも出張講座」を行っています。
内容としては「銀行のしごと(中学・高校生向け)」「生活設計マネープランゲーム(中学・高校生向け)」「ローン・クレジットカードのしくみ(高校生以上向け)」など多岐にわたります。
実際に全国各地の高校を中心に講座を行っていて、社会に出てから必要になってくることや学校の授業では学べないことを教えてもらえます。
また学生だけでなく社会人向けにも年金の仕組みなどの講座を開設しているため、大人でも気軽に参加しやすくなっています。
▽「どこでも出張講座」について詳しくはこちら
https://www.zenginkyo.or.jp/education/detachment/
企業の取り組み2|「ミズノ〈ダイアモンドスポーツ事業〉」
スポーツ関連のメーカーとして有名なミズノですが、その中でも特に野球に力を入れている企業です。
元々ミズノの創業者 水野利八は野球を生涯の仕事にしようとミズノを創設しました。そのため野球関連の商品を多く取り扱っているのはもちろん、野球をする子どもたちが安全に楽しく野球ができるようにするための活動にも注力してきました。
この「ダイアモンドスポーツ事業」では、グローブなどの野球用品を修理するワークショップの開催する他、野球のルールの改正やクラブの支援なども行っています。
特に近年では夏場の日差しから子どもを守るため練習や試合中に「白スパイク」を履くことを提案し、実際に2020年から高校野球で白スパイクが解禁されるといった改革も起こっています。
▶関連記事|SDGs達成のために会社でできること|各目標から見つける取り組み例や簡単な取り組み例まで紹介>>
企業の取り組み3|「栄光サイエンスラボ」
栄光サイエンスラボは化学実験専門教室を開いており、子どもたちが科学実験を通して、未来を切りひらく力(問題発見力・問題解決力・論理的思考力・表現力・創造力)を身につける授業を提供しています。
そんな科学実験専門教室の栄光サイエンスラボでは、年長から小学校6年生を対象とした「子どもサイエンス学会」を毎年開催しています。
子どもサイエンス学会を開催することで科学に興味のある子どもたちがより科学と向き合う機会が増え、より質の高い学びが期待できます。
学びの場を増やすことが、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するために必要です。
▽栄光サイエンスラボについて詳しくはこちら
https://www.eikoh-sciencelabo.com/
▶関連記事|STEM教育とSDGsを通して子どもたちの可能性を広げる。栄光の科学実験教室とロボット&プログラミング教室>>
NGO/政府機関の取り組み|「土曜学習応援団」
文部科学省では、平成26年4月より子供たちの豊かな学びを支えるために「土曜学習応援団」という活動を開始しました。
この活動は「土曜学習応援団」に賛同した企業・団体・大学などが登録でき、その団体が地域や学校からの要請により、土曜日だけでなく、平日の授業や放課後に課外活動を行うというものです。
また教育活動に出前授業の講師派遣や、施設見学の受け入れ等も実施しており、特色・魅力ある教育活動を推進しています。
▽「土曜学習応援団」について詳しくはこちら
https://manabi-mirai.mext.go.jp/program/index.html
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SDGs目標4の3つの解決策-私たちにできること
ここまでSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するための企業・団体の取り組みを見てきました。
では、私たち1人ひとりが実践できる取り組みは何でしょうか。
ここでは個人でできるSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の取り組み例を3つ紹介します。
本や映画、インターネットなどで世界や日本の教育の現状を知る
まず始めに大切なことは、何事も現状を知ることです。本や映画で世界や日本とで教育による違いを知りましょう。日本の教育環境が当たり前ではないことを痛感することができます。
また、今の時代ではどこからでもスマートフォンを通してインターネットにアクセスすることができます。
このようなインターネットの環境が地域ごとに備わっているかどうかも、教育を受ける機会の差を生んでしまっていることを体験することができるでしょう。
日本ではこれら紹介した学ぶことのできる機会が備わっています。まずは現状を知ることから始め、そこから自分にとって何ができるのかを考えてみましょう。
現状について自分の手で調べることも取り組みのひとつです。ぜひSDGs目標4について現状を知り、SDGs目標4を達成するためにはどうすればいいのかを意識してみましょう。
ここではおすすめの書籍を紹介します。
SDGsの教育についての全体像を把握することができるため、SDGs目標4の概要について知りたいからにおすすめです。
また、ジョン・ウッド氏が立ち上げたNGO「Room to Read」のストーリーを通じて、開発途上国の教育課題やそれに対する政府や民間組織の取り組みまでわかりやすく理解することができます。
学習支援ボランティアなどに参加する
1人でSDGs目標4に取り組むことが困難な場合は学習ボランティアなど大勢の人と一緒に取り組みをしてみてはいかがでしょう。教育に関するボランティア活動は知らないだけで実は多くあり、その内容も多岐に渡ります。
例えば、特定の環境下にある子どもを対象に無料で開催されている塾に講師として参加したり、障がい者へ工作などを教える教室などさまざまな現場で教育に関わることのボランティアが募集されています。
SDGs目標4について知ることも解決策としては大切ですが、実際にボランティアなどで行動することが何よりも教育問題に貢献できる解決策になります。自分にあった教育関連のボランティアに参加してみてはいかがでしょう。
募金をする
世界中に質の良い教育を届けるには、まだまだ資金が足りていないのが現状です。
しかし、いざ募金しようと思っても「どこから募金したらいいのだろう?」「しっかり使ってもらえる所に寄付したい」そう考えてためらってしまう人もいることかと思います。
そこで今回は世界の子どもたちのために募金を集めている5つの団体を紹介したいと思います。
何を目標に活動している組織なのか、どのようにお金が使われていくのかを読み、自分と1番考えの近いものに少しでも支援してみるのも良いのではないでしょうか?
▶関連記事|SDGsの日常生活でできる取り組み3選-個人・学生・家庭での取り組みを紹介>>
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まとめ
教育と一言で言っても、「勉強」を指すだけでなく、子どもが安全にスポーツができる環境を整えることや、社会に出た時に役に立つ知識を身に着けさせることも教育の一貫です。
幼い頃に正しい知識と教養を身に着ける子どもが増えることで、心身ともに健康で幸せな生活を送る人が増えるのではないでしょうか。
身近にあるからこそ当たり前に感じてしまう教育ですが、その教育を受けられること、受けられてきたことを当たり前と思わず、次の世代の子どもたちがよりよい教育を受け、より幸せな道を歩める世界を作っていきたいですね。