アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

2024.05.13

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【更新日:2024年5月15日 by 中安淳平

株式会社アシックスは、4月12日からアシックスラン 東京丸の内、アシックスフラッグシップ原宿、アシックスストア大阪、アシックスオンラインストアで、新しいランニングシューズ「NIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)」の発売を開始した。発売に先立ち、2024年4月11日(木)にアシックスラン 東京丸の内にて記者発表会が行われた。この発表会では、本商品の発売時期や発売場所、販売価格などの商品詳細情報、開発背景について語られた。
また、ゲストにはサーキュラーエコノミーの研究家として企業、自治体、博覧会、音楽イベントのアドバイザーなどを務める安居昭博氏と普段からスポーツをしている早稲田大学生が招かれ、シューズ産業におけるサーキュラーエコノミーの価値やお客さまがシューズの回収活動に参加することの重要性について白熱した議論が行われた。
さらにイベント終了後、安居昭博氏にシューズのリサイクルに関する実態について話を伺った。

NIMBUS MIRAI – イノベーションと持続可能性の融合

株式会社アシックスのNIMBUS MIRAIは、革新的なランニングシューズであり、その開発には3年7ヶ月の期間が費やされた。本プロジェクトのリーダーである上福元氏によれば、「この商品の名前はラテン語で「雲」を意味する”NIMBUS”と、次世代に持続可能な世界を残すことをランナーと共に願う”ミライ”から由来している」と話した。
また「NIMBUS MIRAIは、高いクッション性と機能性を備えたGEL-NIMBUSシリーズの一部であり、シューズ業界が抱える課題を解決しながらも性能も兼ね備えたシューズである」と語った。

地球と共に歩む:アシックスの環境配慮型靴プロジェクト

このNIMBUS MIRAIは、サーキュラーエコノミーを実現する再生可能なランニングシューズだ。

上福元氏はシューズ業界が直面している「アッパーとソールが分離できない」「シューズのアッパーが複合素材でできている」「シューズのリサイクルできる環境が整っていない」という3つの課題について説明した。

そこでNIMBUS MIRAIは、自社独自開発の接着剤を使用し、アッパーとソールの分解を可能としたのである。さらにアパレル産業で大量に使用されるポリエステルに着目し、アッパーをポリエステル系繊維のみの単一素材にし、リサイクル可能な素材へと変えた。

また、シューズやシューズBOXのデザインには、サーキュラリティをテーマにした円をモチーフにしたデザインとQRコードが採用されている。このQRコードは読み込むと回収活動の「ニンバス ミライ」の製品サイトにアクセス。サイト内の回収プログラムのリンクをクリックすると回収プログラムにアクセスする仕組みとなっている。

こうしたシューズ回収の仕組みに関してデザイン担当の安藤氏は「町内でリサイクル活動に力を入れている、徳島県上勝町に実際に赴き、町民たちを巻き込んだ仕組み作りが重要であると考えた」と話した。

特別トークセッション :持続可能性と消費者参加の新たな展望

続いてサーキュラーエコノミーを研究する専門家の安居昭博氏とプロジェクトリーダーである上福元氏、傍聴席には普段からスポーツに取り組む早稲田大学の学生を迎え、トークセッションを開催した。

1つ目のテーマである「シューズ産業におけるサーキュラーエコノミーの価値」について、安居氏は「サーキュラーエコノミーは経済と環境を両立させる新しい経済モデルとして注目されており、本商品が自社独自開発の接着剤を使用していることなどから、シューズ産業にとどまらずイノベーションを起こしていくと予想しています。」と話した。

次に『NIMBUS MIRAI』が新しい取り組みといえる理由として、「シューズ産業が抱えている課題に取り組んでいることや、機能性とサステナビリティを両立という点において、今まで各メーカーがクリアできなかったハードルを越えていると言えます。また、アシックスを代表するランニングシューズでサーキュラーエコノミーを取り入れたことはアシックスの本気度が伺えます。」とこれまでに例を見ない取り組みを高く評価しました。

消費者の意識と新たな行動への影響

本イベントを実施するにあたり、日常から週1回以上スポーツを楽しむユーザー1118名に対して事前調査を実施。調査によると、「ランニングシューズなどスポーツシューズを選ぶ際に、どのような要素を重視しますか?」という質問に対して、40.8%の方が「機能性」、24.1%の方が「デザイン」「サステナビリティを重視する」と答えたのは13.1%という結果が出た。

一方で「普段からランニングシューズなどスポーツシューズを購入する際、環境に良い素材を選ぶなど意識したことがありますか」という質問に対して、72.8%が「はい」と回答し、サステナビリティにも関心が高いということも示された。

ここでいいえと回答した27.2%の方を対象に「なぜ、環境に良い(サステナブルな)シューズを選ばないのでしょうか?」という質問に対して「環境にいいシューズを知らないため」と回答したのが47.4%であった。この結果について早稲田大学の学生は「練習で繰り返し使える耐久性とスポーツにおいて、意識を高めるためにも、自分を表現できるデザインを選ぶことがあります」と話した。

アンケート結果を受け、上福元氏は「今までデザインや機能性とサステナブルを両立することは非常に難しく、開発に時間を要しましたが、その課題を解決したのが『NIMBUS MIRAI』です。だからこそ多くのお客様にこの取り組みに参加してもらいたいです。」と笑顔で話した。

次に「シューズの廃棄方法」についての調査で、「使い古したシューズはどうしていますか?」という質問に対して約半数の方が「捨てている」、24.9%が「人にあげている」、21.2%が「リサイクルしている」と回答。

安居氏は「人にあげることやリサイクルショップに売ることはリサイクルではなくリユースであり、どうすればリサイクルができるのか、その方法を知らない人、どうすればいいのか分からない人が多いと思います。リサイクルの方法を知る一つのきっかけになるのではないかと感じています」と語った。

上福元氏は「サステナブルな商品だから積極的に使用するという考え方も重要ですが、自分が好きなシューズを手にした結果、サステナブルに繋がった、というような経験をしてほしいです。我々は、リサイクルしやすい構造を目指してNIMBUS MIRAIを仕上げることができますが、最後はお客様がシューズを返した時にこのリサイクルの輪は完成するので、そのサイクルを作っていくことが一番重要だと思います」と意気込みました。

最後に、今回のトークセッションについて、早稲田大学生は「実際にプロダクトを製作する会社がアクションを起こしていくことが必要なのだと思いました。世界からも機能性を認められているアシックスが『機能性を妥協しない』と言い切って販売していくことで、サステナブルな商品でも機能性が担保されているという信頼が消費者にも伝わっています。このような取り組みが他の産業にも届いていき、サスティナビリティに関する大きな一歩となっているのではないかと考えています」とコメントをした。

技術を共有することでより良い未来に

またイベント後に、安居昭博氏に北欧と日本のサスティナビリティの違いについてお話を伺った。
安居氏はドイツ・オランダでサーキュラーエコノミーについてのイベントやセミナーを開催しており、現在も京都を拠点に様々な観点からサーキュラーエコノミーに関する活動を行っている。

-ー日本と欧州の靴に関するリサイクル事情の違いについて教えて頂きたいです。

安居:今回、アシックスさんの取り組みと欧州に既にあるような靴に関しては、良い意味で比べない方が良いと感じました。というのも今回は、NIMBUS MIRAIというアシックスの中でも新しいランニングシューズがリリースされる形になるので、機能面が一番に重視されている印象を受けました。その中で、サスティナビリティに対する本質的なアプローチがいくつも合わさっているのが魅力的でした。

例えば複合なく単一性素材を使っていたり、あらかじめ分解できる方法を導入していることが挙げられます。さらに、接着剤を新しく開発したり、回収のプログラムに参加すると2,000円分のOneASICSポイントを得られるという仕組みがあるなど、NIMBUS MIRAIという一つの製品にサーキュラーエコノミーの全てが込められているのが素晴らしいと感じました。
海外でも、使用した靴を回収する仕組みを進めているところもあるのですが、流通の関係もあり、狭い地域での販売が多いです。一方でNIMBUS MIRAIは、日本だけでなく、海外でもアメリカ、カナダ、イギリス、オランダ、フランス、オーストラリア、ニュージーランドにも流通するとのことなので、こうした仕組みは他の国にはない特徴だと思います。また今後は、さらに色々な国へ展開していくとのことだったので、この先も楽しみです。
アシックスさんは機能面が優先されていますが、海外だとリサイクルできることを一番に優先している企業もあります。これが正解、間違っているというわけではなく、それぞれの理念があって、多種多様で良いと思います。どこの国、企業にも良い点、課題点があり、それぞれの良い技術や取り組みを共有することで、全体としてより理想とする未来に近づくのではないかと思っています。

さいごに

NIMBUS MIRAIの試し履きをさせて頂いた。リサイクルに必要なQRコードやポリエステルの素材が作り出す絶妙なカラーがさりげなくて素敵であった。それだけではなく、ともかく軽く、踏み込みがしやすい。雲の上に人が乗れたら、と想像もたやすく、普段使いをしたいと感じた。

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