「予測技術」の向上を通して、太陽光発電の普及を|スマートエナジーが目指す脱炭素社会

#エネルギー#サスティナブル#再生可能エネルギー#環境#脱炭素(カーボンニュートラル) 2023.12.05

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【更新日:2023年12月6日 by 俵谷龍佑

今や一般家庭にも普及し始めている太陽光発電。しかし、安定的な電力供給を保つためには、できるだけ毎日の発電量を正確に予測することが重要です。

その発電量予測を競うユニークなコンペティションを開催したのが、太陽光を中心とした再生可能エネルギー発電所の運営・保守などを行う「株式会社スマートエナジー」です。

今回は、同社の代表である大串 卓矢(おおぐし・たくや)さんに、同社の事業や、「太陽光発電量予測AIコンペティション」を実施した背景や取り組みについてお話を伺いました。

株式会社スマートエナジー様の取り組みについてはこちらから

技術・金融・情報の3つの力で、脱炭素社会の実現を目指す

ーーまずは自己紹介をお願いします。

株式会社スマートエナジー代表取締役の大串 卓矢です。2005年の2月に「京都議定書」が制定され、先進国全体で2008年から2012年の間に、少なくとも5%の温室効果ガスを削減する目標が掲げられました。そこに我々も貢献しようと考え、2年後の2007年にスマートエナジーを設立しました。

ーースマートエナジーはどのような事業を行っている会社なのでしょうか。

当社は脱炭素社会の実現を目指すべく、太陽光O&Mや発電所仲介、電力小売事業者向けソリューション「ESP」などの事業を展開しています。

また、太陽光発電システムの運用・保守点検を行うサービス「太陽光O&M」は国内最大手で、FIT制度(固定価格買取制度)が始まった2012年から取り組んでいます。

ーー貴社では、SDGsやサステナブルな活動に関して、どのような体制で行われていますか?

SDGsやサステナブルな活動に関しては、ESG推進室が主体となって進めています。当社はIPOを目指しています。投資家、そのなかでも海外の投資家はESGを重視する傾向が強く、環境や社会を配慮した企業統治ができていない会社は、投資対象から外す動きもみられます。

また近年、ESGの指標は取引先の選定基準や求職者の会社選びのポイントにおいても重要になってきていますね。

推進室では、ESGの取り組みを発信できるよう、女性の雇用割合を増やすなど、ESGのフレームワークに沿って、1つずつ数値改善に向けた取り組みを実施しています。

ーー2007年の設立当初は、同じように環境ビジネスを行っている競合は少なかったのでしょうか?

そもそも当時は、環境ビジネスやSDGsという概念が普及しておらず、競合他社が存在していないような状況でした。ですので、本当に手探りでビジネスモデルを構築していましたね。

環境ビジネスに投資したとしても、手間がかかるだけでなかなか売上につながらない。当時私も、「そもそも環境保護で、ビジネスをしても良いのだろうか」という葛藤がありました。

ーースマートエナジーが大切にしていることを教えてください。

社員一人ひとりがもっている知識を集結させて、環境問題の解決に取り組むことを大切にしています。

そのなかでも、当社は、技術・金融・情報3つの「知の力」を特に重視しています。脱炭素社会を実現し、「美しい地球をつなぐ」という当社のミッションを実現するためにも、3つの知の結集は不可欠だと思っています。

O&M事業の「DX化」は、太陽光発電の普及に欠かせない

ーー仕事で国内外を飛び回るなかで感じた課題意識はありますか?

やはり、中国やアメリカなどの大国に行くと、エネルギー消費量の大きさを痛感させられます。例えば、中国は人口1千万人以上の都市が複数存在しており、物流も日本の約10倍と桁違いです。

それに、こうしている今でも世界人口は増え続けています。2023年時点で世界人口は80億人、2050年までにほぼ100億人に達すると予測されています。それだけ人口が増えれば、石油や石炭といった化石燃料の消費量も増えて、環境に大きな負荷がかかるわけです。

やはり、世界のどの国も豊かな生活を維持しようとすれば、どうしてもエネルギー使用量が増えてしまうのは必然です。危機感を覚えつつも、エネルギーの使用量を過度に抑制すると日常の生活に影響が出るので、このバランスをどう取るかについては、頭を悩ませる問題ですね。

ーー改めて、太陽光O&Mの事業について教えてください。

太陽光O&Mとは、太陽光発電システムの運用・保守点検を行うサービスです。具体的には、発電量や異常発生の遠隔監視、障害対応、撮影点検、太陽光パネルの清掃・洗浄といったソリューションを提供しています。

太陽光パネルは設置して終わりではなく、設置後の運用も必要です。適切に保守運用がなされていないと、発電効率の低下や、売電機会の損失などにつながるからです。

ーー太陽光O&MにおいてDX化の必要性を感じられているとのことですが、その理由を伺えますか。

理由は3つあります。

1つ目が電気代を安くする必要があるから。そもそも、電気代にはO&Mの運用コストも含まれています。なので、電気代を安くするには、DX化してO&Mにかかる費用も抑えないといけません。

2つ目が、発電量予測の重要性です。太陽光発電は、天候によって発電量が異なります。そのため、常に発電量を予測しておかないと、電気が足りなくなって停電につながる恐れがあります。

もちろん、現在でも停電させないために各電力会社が尽力されているものの、どうしても正確に発電量を予測することは難しいでしょう。

3つ目が、太陽光パネルが増えすぎて管理が難しくなっていることです。従来、メガソーラーが普及しましたが、設置するには大規模な林地開発を行う必要があり、豪雨災害や土砂災害などのリスクが高くなります。

そこで、個人宅の屋根の上にパネルを設置する動きが広まりました。しかしながら、結果的に太陽光パネルの数が膨大になって、管理にかかるリソースが逼迫しているのです。

以上の理由から、人力ではなく、コンピューターで自動管理することでコストダウンする動きが出てきています。電気代が下がれば、もっと多くの方に太陽光発電を導入してもらえますし、そのためにも、太陽光O&MにおけるDX化は不可欠だと考えています。

「太陽光発電量予測AIコンペティション」を実施した背景

株式会社スマートエナジー様ご提供

ーー2023年の夏に「太陽光発電量予測AIコンペティション」が開催されました。改めて、実施の背景を教えてください。

先程お伝えしたとおり、太陽光発電において発電量の予測は不可欠です。さまざまな会社が、発電量予測を実施しているものの、なかなか情報交換を行う機会がありませんでした。

そこで、コンペティションを通してさまざまな企業や団体が情報共有をすることで、発電量予測技術の向上に寄与できるのではないかと考え、開催決定に至りました。

ーー「太陽光発電量予測AIコンペティション」はどのような内容なのでしょうか?

AIモデル等を用いて毎日の発電量を予測してもらい、予測値と実発電量を比較しその精度を競う大会です。最終的に、もっとも予測誤差が少なかったチームに賞が与えられます。

全部で84チームからエントリーがあり、コンペティション実施期間は2023年7月17日〜8月11日の約1ヶ月間でした。

このコンペティションでは、参加者に対して、当社が保有する2021年から2022年の太陽光発電量の実績値データを事前提供します。加えて、発電所パネル配置図などの図面データや、気象予測データなども渡します。

参加者は、コンペティション当日までに、これらのデータを用いて太陽光発電量予測AIモデルを作成します。実施期間中は、作成したAIモデルで発電量を予測して、結果を毎日提出してもらいます。

ーーこのコンペティションを実施したことで、どのような気付きを得られましたか?

長期間にわたって、毎日データを記録し続けることは、やはりハードルが高いということを痛感しましたね。

一般的なコンペティションは、1つの課題に対して最適解を見つけるものが多く、今回我々が行ったような長期的に予測し続けるコンペティションは珍しいんです。

参加者のなかには学生も社会人もいましたが、学業や本業などをしながら毎日予測してデータを記録し続けるのは難しかったようです。途中でリタイアしたチームや、データが提出できなかったチームも実際にいました。

また、AIで使われる開発手法は一定共通しているのに、チームによってまったく異なる結果が出るのも興味深かったです。やはり、AIの性能ではなく「活用方法」が重要なんだなと痛感しましたね。

SDGsやサステナビリティを意識しすぎない。ビジネスの基本に立ち返ることが重要

ーーサステナブルな取り組みを行う際に、大切にされていることはありますか?

常に、ビジネスの本質を意識することですね。まずは、正確に社会やお客様の要望を把握して期待に応えていくという、基本に立ち返ることが重要だと思います。

期待に応えるためには、国内だけではなく、中国やアメリカなどグローバルも見据えてさまざまな最先端の技術や知識を得ることも求められます。

ーー貴社が考える「本質的なサステナブル活動」とは、どのようなものだとお考えですか?

大切なのは、SDGsやサステナビリティにとらわれず、長期的な目線で活動することですね。今でこそ、SDGsやサステナビリティと叫ばれるようになりましたが、改めて考えてみれば、業種や規模問わず多くの会社が抱えている課題に共通しているものも多いです。

もっと肩の力を抜いて、30年後や50年後も継続して自社が社会貢献できることを考え抜くことが、結果的にSDGsやサステナブル活動につながると思っています。

SDGsやサステナブル活動はすべての人に関係がある

ーー貴社の今後の展望や戦略をお聞かせください。

まずは、2024年に「太陽光発電量予測AIコンペティション」の第二弾となる大会を開催したいですね。

今年の開催期間は、7月17日から8月11日でしたが、この時期は年間を通して特に晴天率が高いです。来年は、晴天率が低く天候の変化が激しい秋や冬の時期に実施しようと考えています。

実際に、季節による天候予測の難しさを課題に感じているお客様も多いので、その課題解決ができる新サービスも今後展開していく予定です。

中長期的な展望は、当社の事業を通して今以上に太陽光発電を普及させることですね。

日本の住宅の屋根は欧米と比べると小さく、その屋根にも設置できるような小型の太陽光パネルが多く製造されています。特に、単結晶のパネルは少ない面積でも発電効率が高いです。この「小ささ」を活かして、国内のみならず発展途上国などにも展開・普及させていきたいですね。

ーー最後に、SDGs CONNECTの読者に向けて、何か伝えたいことがあればお願いします。

私が学生の頃は、環境ビジネスに関わるとしたら、公務員か学者、NPOに就職するくらいしか選択肢がありませんでした。しかし、今では当社を含めて環境ビジネスを展開する会社が多く存在しています。選択肢は広がっているのです。

また、今SDGsはどの会社でも外せない指標の1つとなっています。極論を言えば、考え方次第で、ビジネス活動すべてがSDGsやサステナビリティにつながると考えています。一見、SDGsやサステナビリティに無関係と思えても、実はどのような人も企業も関係があるんです。

なので、自分なりのやり方を見つけて、狭く深く長く続けていけば、もっと環境問題は変えられると思います。環境問題への関わり方は、昔よりも明らかに多様になっています。もっと多くの方が環境問題に関心をもち、ひいては当社のような会社へ就職を希望してくれると良いですね。

さいごに

SDGsやサステナビリティと聞くと、少し身構えてしまうことがあるでしょう。ただ、大串さんがお話しいただいたように、SDGsやサステナビリティの本質は「30年後や50年後も継続して自社が社会貢献できることを考え抜くこと」。社会課題の解決という観点でSDGsやサステナビリティに関わる会社が増え、さらにはそのような会社に興味をもつ若者が増えたら、より良い社会の実現に向かっていくと感じたインタビューでした。

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