シードが実現するコンタクトレンズを中心とした循環型社会

2022.11.09

この記事をSNSでシェア!

 

現代の生活になくてはならないコンタクトレンズを製造・販売している株式会社シード(以下、シード)。

日本で初めてコンタクトレンズ研究を始めたメーカーとして、2022年で創業65年周年を迎える。

そんなシードは、使い終わったコンタクトレンズのブリスター(空ケース)を回収し、リサイクルする「BLUE SEED PROJECT」を2019年から開始した。

「BLUE SEED PROJECT」は製品を再利用し活用することで資源の無駄を省くサーキュラーエコノミーの実現を目指している。

リサイクルした先がゴミではなく、長期間に何度も使用することができる物流パレットに目をつけ社会に貢献しつつ利益を出す環境配慮に込められた想いとは。

今回は広報SDGs推進室主任の及川智仁佳氏を取材した。

1957年の創業から今年で65周年を迎えるシードの視覚障がい者の社会的自立支援を目指すSDGsへの取り組みについて伺う。

シードが描く未来のビジョン|「見えるをサポートする」

ーー自己紹介をお願いします。

及川:大学卒業後の2014年にシードに入社しました。最初は大阪と和歌山でコンタクトレンズの営業に携わっていました。

2019年からは、広報SDGs推進室で非財務領域での取り組みを推進しています。

ーーシードではどのような体制でSDGsに取り組んでいるのですか。

及川:2019年頃は、経営企画部の中にある社長室でCSR推進をしていました。社長室から独立する形で、現在の広報SDGs推進室が2021年に誕生し、本格的にSDGsの文脈で社外に発信する体制になっています。

元々、2011年頃からCSR活動にはかなり力を入れていました。2019年に世論が認知してきたタイミングでSDGsについても同様に発信し続けています。

ーーシードのビジョンとSDGsの方針を教えてください。

及川:企業ビジョンとして「見えるをサポートする」ことを掲げ、初めてコンタクトレンズ研究を始めたメーカーとして65年を迎えました。

ビジョンである「見えるをサポートする」には、視力補正だけではサポートできない視覚障がい者の社会的自立支援を目指した意味も含まれています。

見えるをサポートする取り組みとして、「Pureな愛をありがとうプロジェクト」があります。このプロジェクトでは、コンタクトレンズの売上の一部を、視覚障がい者をサポートしている団体へと寄付したり、啓発活動などのイベントも積極的に開催したりしています。

2021年に10年の区切りとしてプロジェクト自体は終了していますが、引き続きお客様の見えるをサポートすると共に、視覚障がい者の方の社会的自立に関する啓発活動や支援に取り組んでいきます。シードは視覚障がい者の方に対する理解をたくさんの人々に深めてもらうとともに、自分たち自身が率先してSDGs達成に向けた取り組みを行っていきます。

また、サステナビリティ基本方針については、

1.環境

企業が果たすべき役割の一つとして、環境への取り組みが近年重要視されています。シードPureシリーズ等主力商品を製造している鴻巣研究所では、環境に配慮した設備を備えています。

効率的なエネルギー活用、排水再利用による水使用量の削減、プラスチックのリサイクル等、環境に配慮した技術と設備を備え、地球保全にも積極的に取り組んでおります。

 

 

2.社会

良き企業市民として一人でも多くの方が活躍する活気ある社会を実現するため、お客様のニーズを尊重し満足いただける、安全で有用な製品・サービス等を提供することで広く社会に貢献します。弊社製品だけではサポートすることのできない“見える”のために様々な啓発活動を行っております。

また、ダイバーシティ施策として2018年4月、鴻巣研究所の隣接地に複合型の保育・児童施設「ふくろうの森」を開園しました。時短制度や育児休暇制度と合わせて、男女の別なく自分らしいかかわり方で仕事と育児を両立することが可能です。また「シード保育園」では原則、希望する時期に入園が可能なほか、預かり可能な時間が長いため、時短・フルタイム・パート勤務が自由に選択できるなど、社員が自分らしい働き方で自己実現できるよう環境の整備を行っています。

さらに、地域行事に積極的に参加しコミュニケーションを深めることで、信頼関係を構築するとともに地域の活性化に貢献しています。

 

3.ガバナンス

シードは、当社使命の達成及び中長期的な企業価値の向上を目指しています。このミッションを実現するため、コーポレート・ガバナンスを充実させ、様々なステークホルダーとの良好な関係を構築し、透明、健全かつ迅速、果断な企業経営を行うことに努めています。

この3つを掲げ社会に幅広く貢献していくことを発表しました。


使用済みコンタクトレンズ空ケースの回収で循環型社会を目指す「BLUE SEED PROJECT」

 

ーー「BLUE SEED PROJECT」について教えて下さい。

及川:コンタクトレンズの空ケースを回収し、リサイクルするのが「BLUE SEED PROJECT」です。コンタクトレンズに使用しているプラスチックは高度管理医療機器であり、材料を変更するのには非常に長い年月を要します。今から素材を変更することは難しいため、まずは減らす努力から始めようと生まれた取り組みです。

手順としては、使用済みのコンタクトレンズを眼科さんなどの回収拠点や企業さんで回収します。この回収拠点は全国に400以上あり、回収量は毎月150キロに上ります。

回収後に、工場に集まったコンタクトレンズの空ケースを再資源化し、物流パレットにリサイクルしています。

ーーなぜ物流パレットにリサイクルするのですか?

コンタクトレンズに使用するプラスチックの純度はとても高く何にでも生まれ変わることができます。

しかし、リサイクルして蘇らせた後にすぐ捨てられてしまっては再びゴミとなってしまいます。私たちは、サーキュラーエコノミー(1)実現のため、長期間に何度も使用することができる物流パレットを選びました。

また、物流パレットは業界全体での需要が高いこと、コンタクトレンズのプラスチックが強化剤として物流パレットと相性が良かったため、採用しました。

(1)サーキュラーエコノミー:日本語訳で「循環型経済」のこと。これまで経済活動のなかで廃棄されていた製品や原材料などを「資源」と考え、リサイクル・再利用などで活用し、資源を循環させる、新しい経済システム。

サーキュラーエコノミーとは?リサイクルやリユースと何が違うのか | コクヨのMANA-Biz(

廃プラスチックの再資源化「ドックス」

ーードックスについて教えて下さい

及川:ドックスは2021年に、株式会社ダイトクと共同開発したプラスチック選別システムです。

コンタクトレンズの製造工程で回収することのできない混合物は産業廃棄物として捨てるしかありませんでした。しかし、ドックスのおかげで機械で選別しリサイクルすることを可能としました。

きっかけは現場社員の「もったいない」から試行錯誤を繰り返し開発に至った背景があります。


1つ1つの取り組みが世界を変えていく、本業を全うすることが社会課題解決につながる。

ーー今後シードはどのような取り組みを行っていくのでしょうか?

及川:企業として社会貢献だけではなく将来存続していく企業の責務として、今後もSDGsに取り組みたいです。

シードでは、全体の取り組みが環境配慮に基づくべきという考えが社内共通であります。自社の本業でもあるコンタクトレンズ自体が、人々の役に立つことができると考えています。

例えば、私自身も目が悪くコンタクトがなければとても分厚いメガネをかけるしかありませんでしたが、コンタクトレンズがあることで皆さまと不自由なく生活できています。

つまり、本業を全うすることがSDGs達成につながると自負しています。SDGsに取り組みながらもより良い製品を作っていくことが大切なのではないかと思います。


さいごに

今回の取材をきっかけに、普段何気なく使用しているコンタクトレンズがSDGs達成につながる商品の1つであることを初めて知ることができた。

その中でもシードはリサイクルして終わりではなく、蘇らせた後でも長く使えるものを大事にするなど、環境配慮に対する熱意を強く感じた。

「本業を全うすることが社会課題解決につながる」その言葉から今後どのような取り組みや商品が展開されていくのか、また1つひとつの取り組みが社会をどのように変革させていくのか。シードに注目が集まる。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    「ただのレクリエーション施設ではない」すみだ水族館が追い求める「水族館の使命」とSDGsに向けたアクション

    プラットフォームからファッション業界に変革を | 株式会社ZOZO

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    どちらかが上ではない、事業を共創するパートナーだ|JICAが進める国際協力

    ”価格勝負からの脱却がSDGsにつながる”会社のインフラ化を目指すOWNDAYS 田中が語る持続的経営

    「労働力ではなく生活者」|外国人の受け入れは「生活者視点での制度づくりが鍵」