制度という箱の提供だけではなく、活用しやすい環境や風土が大事|森永乳業が推進する人的資本経営

#人的資本経営 2023.11.28

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【更新日:2023年12月5日 by 中安淳平

マウントレーニア、リプトン、ビヒダス ヨーグルト、ピノなど森永乳業には多くの人に親しまれている商品が沢山あります。
森永乳業ではそんな商品を重要な資産としていますが、「人財」も重要な資本として考えており、多様な社員が働きやすく、活躍できる環境整備に取り組んでいます。
そんな森永乳業人財部の熊谷さんと米津さんに人的資本経営や注力している取り組み、制度についてお話を伺いました。

森永乳業のサステナブルな取り組みについて詳しくはこちらから

元々会社として取り組んでいたことが言葉として定義されてきた

ーー自己紹介をお願いいたします

熊谷:人財部 人財開発グループ アシスタントマネージャーの熊谷由実子です。当社には2007年に新卒で入社し、最初はtoC向けの営業を1年経験したのち、役員秘書を6年務め2014年に現職に異動となりました。現在は主に社員育成を担当しております。

米津:人財部 D&I推進チーム リーダーの米津雄一郎です。2011年に新卒で入社し、最初の5年は東京支社の業務部、その後渉外部で4年働いたのちに、2020年から人財部に所属しています。

ーー貴社ではどのような体制でサステナビリティを推進されているのでしょうか

米津:社長を委員長としたサステナビリティ委員会があり、事務局をサステナビリティ推進部が行っています。半年に1回開催する定例委員会のほか、気候変動対策部会、プラスチック対策部会、人権部会などの分科会を設置し、「サステナビリティ中長期計画2030」を推進しています。
サステナビリティ推進部では、全国の各事業所のサステナブルな活動の支援なども行っています。

熊谷:「Morinaga Milk Awards(森永ミルクアワード)」という年に一回の社内表彰に「サステナビリティ大賞」も設けられていて、優れた活動を全社的に称え、成功事例として共有するという場もあります。

ーーウェルビーイングステートメントを策定しているなど、人的資本経営に企業として注力されていると思いますが、力を入れている理由はなんでしょうか

熊谷:変化が激しい社会環境の中でもお客様から選ばれ続けるために、社会課題の解決と収益力向上の両立を森永乳業は目指していますが、その実現のために最も重要なものが「人」であると捉えているためです。

米津:多様な背景を持つすべての従業員が個性や強み・能力を存分に活かすことが、企業価値を創出し続けるための要であると考えています。「高い専門性と多様性に富んだ活力ある人財集団」を目指して、その集団形成に向けて「人づくり」「組織づくり」「エンゲージメントの向上」を重視しています。KPIの設定やPDCAの実行によって、人的資本の価値を高め続けて、経営戦略の実現や企業価値向上につなげていきたいと考えています。
ウェルビーイングステートメントにおいても、私たちひとりひとりが能力を発揮することで、森永乳業グループならではの価値を届けることが可能となり、人びとの支持を頂くことで事業が成長し、その結果が私たち自身に還元されることで、より充実した状態となり、さらなる価値をお届けするという好循環を目指しています。
「ウェルビーイング」や「人的資本経営」という言葉が浸透してきたから力を入れ始めたということではなく、元々会社として取り組んでいたことが言葉として定義されるようにもなり、その言葉を用いて、ステークホルダーの皆さまにもわかりやすくお伝えできるよう、努めています。

「育休取りますか?」と聞かれる環境に

ーーD&Iの中でも特に力を入れている制度はなんですか

米津: 様々な制度がありますが、近年で言えば、昨年10月から開始した出生時育児休業(産後パパ育休)について、法定の制度では出生時育児休業給付金として給与の約67%が支給されるところ、当社独自の育児支援として100%有給としました。導入の狙いとしては、
①出生時育児休業を100%有給とすることで、安心して育児休業を取得しやすくすること
②性別に関わらず、育児休業を取得する従業員が増えることで、業務効率や属人化を見直す機会となり、事由に関わらず誰もが休みやすく、また働きやすい環境を整えること
③さまざまなライフプランを持った人財が働きやすい環境を整えることで、多様な価値観を尊重する組織風土の醸成を図ること
を掲げていまして、育児用商品を製造販売する企業として、今後も仕事と育児を両立できる環境を整えていきます。
「サステナビリティ中長期計画2030」の中でも、男性の育児休業取得率100%を目標として掲げています。昨年度は90.5%の取得率となり、制度として落とし込んだものが着実に数字としても現れてきています。私自身も2019年に育休を取りましたが、当時は男性の育児休業取得率はあまり高くはありませんでした。ですが、現在では制度の拡充や組織風土の醸成もあって、会社にパートナーが妊娠したことを伝えると、「育休取りますか?」と上司から聞かれる環境にもなっているので、男性の育休取得も浸透してきていると感じています。

熊谷:また、育児関連で言うと「仕事と子育て両立セミナー」という研修があります。 当初は女性が参加対象だったんですが、今は育児と仕事を両立する部下を持つ上司や男性社員も対象です。育児の悩みや解決策を共有したり、育児をしていく中でのキャリアアップについて考える機会となっています。また、こういうケースに対してはこの制度が使える、といった情報を共有できる場にもなっています。
私は男性や上司の方も参加できるというのが非常にいいことだなと思っています。一人ひとりの考え方も多様化している中で、社員が高いパフォーマンスを発揮するためには、相互に考えを理解し合えていることがすごく重要だと考えます。上司をはじめとした周囲の理解や支援があってはじめて、制度という箱があるだけでなく、それを使いやすい環境や風土になると考えています。

D&Iの推進で企業の成長に繋げる

ーー育児以外にもD&I関連で行われている制度はありますか

熊谷:育成に関連したものでいうと、階層別研修のほかに公募性の研修も充実させていて、多様な価値観や強みを持つ社員がキャリア形成していくために役立てるものをさまざまなテーマで行っています。例えば海外事業拡大にともなったグローバル研修の充実ですとか、女性活躍推進のための「女性リーダー研修」などです。
そのほかにも、生産部門や営業部門など、部門ごとに専門的なスキルを習得するための研修もあります。
社員が自分らしさと強みを発揮しながら会社に貢献する、これが「活き活きと働く」ことに繋がると考えています。社員一人一人が成長し活躍できるよう、今後もさまざまな支援を続けていきたいです。

米津: 「ノー残業デー」「マイ・ホリデー制度」「インターバル制度」といった制度を導入して、社員のこころと身体の健康の維持・向上を図っています。「インターバル制度」は、時間外勤務などを含んだ勤務終了時から翌日の勤務開始時までに、一定時間のインターバルを保障することによって従業員の休息時間を確保しています。
また、柔軟な働き方を後押しする制度としては、「在宅勤務・サテライト勤務制度」「時差勤務制度」や「フレックスタイム制度」などを導入しています。「在宅勤務・サテライト勤務制度」は、時間資源の有効活用による業務生産性の向上や仕事と私生活の両立のため、育児や介護等の事由がなくても利用可能なものとして導入しました。

ーーこれからの戦略・展望について教えてください。

熊谷:多様な社員が活き活きと働くことによって、会社の成長と企業価値が向上することを目指していきたいです。
ただ働きやすい環境を整えるだけではなく、あらゆるバックグランドを持つ社員が「成長したい、会社に貢献したい」と思えるような制度や福利厚生、育成支援を充実させていくことが人的資本経営の本質ではないかと思っています。

米津:D&Iというと多様性を認めるというニュアンスで語られて、「色んな人がいてもいい」といった意味合いで捉えられる場合もあるかもしれませんが、多様性を認めるだけではなく、それぞれが個性や能力を発揮しながらお互いの違いを受容して、企業活動を推進していくことが重要と考えていますので、これからも多様な背景を持つすべての従業員がそれぞれの能力を充分に発揮できるよう、努めていきます。

さいごに

今回の取材では人的資本経営に焦点をあててお話を伺いましたが、多様な働き方が認められるようになった現代において、1人1人が働きやすい環境を追い求め、作っていく環境があるということはそれだけで他社との差別化になるのではないかと感じました。

また、「制度という箱があるだけでなく、それが使いやすい環境や風土があることが大事」という言葉は本質であると感じ、階級や年齢を問わず全社員に向けての研修などを行っていくことの重要性が理解できたインタビューでした。

 

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