日本最大級のファッションEC、ZOZOTOWNやファッションコーディネートアプリWEARを運営する株式会社ZOZO。
ファッションECの先駆者であるZOZOは、ZOZOSUITを使用した「自分サイズ検索」機能が話題になるなど、革新的な取り組みを行ってきた。
1500以上のショップが出店するZOZOTOWNをはじめ、プラットフォーマーとしてファッション業界の最前線に立ってきたZOZOは、どのようにSDGsに取り組んでいるのか。
今回は、株式会社ZOZOでSDGs推進を担う、コミュニケーションデザイン室サステナビリティ推進ブロック ディレクターの山口氏を取材した。ZOZOが目指す持続可能なファッション業界の姿を伺う。
ファッション×テクノロジーでSDGsと向き合う
ーー自己紹介をお願いします。
山口厚と申します。
2006年に株式会社ZOZOへ入社し、2018年よりコミュニケーションデザイン室に所属しています。
現在は、社外広報を中心とした広報ブロックに加えて、2020年にコミュニケーションデザイン室に新設された、サステナビリティ推進ブロックも兼任し、各活動の推進及びマネジメントを行っています。
ーーZOZOではどのようなビジョンを掲げていますか。
山口:「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」という企業理念と、経営戦略として「MORE FASHION×FASHION TECH 〜ワクワクできる『似合う』を届ける〜」を掲げています。
背景には、ファッションとテクノロジーの力をかけ合わせることで、新しいファッションのあり方を創造し続けていきたいという思いがあります。
また、2021年4月に、サステナビリティステートメントとして「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」を策定しました。
テクノロジーとプラットフォームを有するという強みを活かし、ファッション業界の課題解決に貢献していきます。
ーーどのような体制でSDGs推進に取り組んでいるのでしょうか。
山口:ZOZOとして、2020年11月にSDGs推進委員会を立ち上げました。サステナビリティ推進ブロックが事務局を担い、各事業部と連携して会社全体でSDGsの各ゴールと紐付けたサステナビリティの施策に取り組んでいます。
各事業部から取り組みが自発的に提案されることも多くあります。ZOZOグループ全体でサステナビリティ推進を議論するプロジェクトも進んでおり、サステナビリティやSDGsに対する社内の意識・関心も高いと感じます。
ーーSDGs推進への取り組みの概要を教えて下さい。
山口:サステナビリティステートメントの策定に伴い、以下の4つの重点取り組みを掲げました。
- サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供
- 廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築
- ファッションに関わるすべての人のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進
- 持続可能な地域づくりへの貢献
また、今年4月には4つの重点取り組みにおけるマテリアリティを特定し、ステークホルダーと当社の双方にとっての重要課題を明確に表しました。
循環型のファッション業界を目指すにはステークホルダーとの協力が欠かせない
ーーマテリアリティには、出店ブランド企業を始めとしたステークホルダーへのエンゲージメントに関わる項目が多いですね。
山口:ZOZOはプラットフォームとしての側面が強い企業であるため、ビジネスの観点からも、サステナビリティ推進の観点からも、ステークホルダーとの関係が重要です。
例えば物流面では、ヤマト運輸株式会社様と協力し、「ロッカー受取り」や「置き配」といった再配達を削減する取り組みを行っています。
また、多くのアパレルブランド様が出店する通販サイトとして、ブランド様と対話しながら、サステナビリティやSDGsを推進していくという点も重要です。
各ステークホルダーと対話を重ね、協働することがファッション業界全体の課題解決にも繋がると考えています。
2022年4月には「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)*」にも加盟しました。JSFAにはZOZOと関わりのある企業が多数参加しています。
ファッション業界そのものを循環型にしていくには、産業の川上〜川下までを担う各企業が議論を重ね、連携していくことが必要不可欠です。
ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA):サステナブルなファッション産業への移行を推進することを目的に2021年8月に発足したアライアンスのこと。2022年4月時点で合計42社のファッション・繊維企業が加盟し、経済産業省、環境省、消費者庁がパブリックパートナーとなっている。
パートナーシップから生まれる課題解決の可能性
ーー4つの重点取り組みのうち、「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」について具体的な施策を教えて下さい。
山口:お客様がサステナブルな商品やサービスを選択できるよう、ZOZOTOWN内で販売する一部のアイテムについて、どの要素がサステナビリティに貢献しているのかを示すラベルを付与する取り組みを検討しています。
前述したとおり、ステークホルダーとの連携が欠かせない取り組みとなっています。
ーーやはりステークホルダーとの連携が欠かせないんですね。「廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築」ではどのような取り組みを行っているのでしょうか?
山口:廃棄ゼロを目指すため、MTO(Made to order、受注生産)商品や身長と体重を選択するだけで自分の体型に合ったサイズが購入できる「マルチサイズ」の商品を展開し、無駄のない流通を目指しています。
すでにマルチサイズ商品の一部ではMTOの仕組みが導入されており、これからさらに拡大していくことで大量生産・大量消費を減らすため貢献ができればと思います。
ーー次に「ファッションに関わるすべての人のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進」に関して、具体的な取り組みを教えてください。
山口:人自部*を中心にセクシュアルマイノリティや出産後の女性など、誰もが働きやすい環境づくりに注力しています。
配偶者の定義を同性パートナーも含める社内規定があるなど、福利厚生・制度の充実に努めています。また、社内で女性活躍推進の啓発イベントを行ったりもしています。
社内だけでなくファッションに関わるすべての人のダイバーシティ推進を図り、業界全体の意識改善、課題解決に貢献していきたいです。
人自部:株式会社ZOZOにおける人事部に相当する部署名
ーー社内だけでなく、業界にも目を向けていらっしゃるんですね。「持続可能な地域づくりへの貢献について」ではどのような取り組みを行っていますか?
山口:フレンドシップマネージメント部(FM部)が本社の所在地である千葉県を中心に、地域コミュニティに密着した取り組みを行っています。
ZOZOは2019年2月から千葉市、千葉大学と包括的連携協定を締結しており、まちづくりや地域の活性化に取り組んでいます。
2021年7月には、千葉大学、千葉を拠点にするプロバスケットボールクラブ「アルティーリ千葉」と共に、ZOZOSUIT 2を活用した共同取り組みを開始することを発表しました。
同年12月には、産学官連携の「ちばアントレプレナーシップ教育 コンソーシアム Seedlings of Chiba」に参加するなど、千葉市や地域の皆様と一体となって、千葉市の発展に貢献することを目指しています。
また、ZOZOの拠点がある地域に社員が住むことで、地域の活性化を促す「千葉/つくば/宮崎手当」という福利厚生制度も設けています。
ーー最後に、今後の展望を教えてください。
山口:サステナビリティステートメントの策定やマテリアリティを特定したことにより、会社全体として取り組むべき課題や方針が明確になった今、ステークホルダーの皆様と共に環境や社会の課題解決のために、具体的な取り組みを進めていくことが大切です。
サステナビリティの推進を通じて、サステナブルなファッション業界を創り、企業理念である「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」の実現を目指します。
さいごに
今回の取材を通して、ZOZOという大きなファッション流通のプラットフォームが、ファッション業界全体に与える影響の大きさを感じた。
多数のアパレルショップが出店し、ファッションを楽しむ喜びを多くの消費者に届けるZOZOTOWNが関わるステークホルダーの数は計り知れない。
周囲を巻き込んで一緒にSDGsに取り組むことは、SDGs目標17番「パートナーシップで目標を達成しよう」とも関わりが深い。
日本最大級のプラットフォームとテクノロジーというZOZOの強みを活かした取り組みから、今後も目が離せない。