SDGsは通過点。お客様がくつろげる環境を100年持続させるために ーーコメダ

#ダイバーシティ#持続可能#環境 2021.02.12

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【更新日:2022年7月13日 by 三浦莉奈

コメダのSDGsへの取り組みが注目を集めている。昨年夏には大和証券とのコラボ店舗で、SDGsや金融について学べる「コメダ珈琲店吉祥寺西口店」のオープンや、原材料がプラントベース(植物由来)の「KOMEDA is ◻(コメダイズ)」などの新業態を展開しており、話題を呼んでいる。

創業50周年を迎えた2018年には、サステナビリティ推進室が設立され、チェーン全体へのSDGsの啓発や森林保全、再生可能エネルギーの導入など目標の達成に向けた取り組みに力が入っている。

今回は、株式会社コメダ サステナビリティ推進本部サステナビリティ推進室の間宮さんと小野さんを取材し、コメダのサステナビリティ活動の全貌や異業種コラボ実現の経緯、今後のSDGs戦略などについて詳しくお話を伺った。

美味しいコーヒーとふかふかなソファで知られるコメダがSDGsを通して目指す世界とは。キーワード「誰も無理をしない」に秘められた担当者の思いを探る。

「心にもっとくつろぎを」創業50周年の節目に作られたサステナビリティ推進室の仕事

ーーまずはじめに、自己紹介をお願いします。

間宮:株式会社コメダ サステナビリティ推進室の間宮です。この部署に配属された当初はサステナビリティ、SDGsに関して全くの初心者でした。

小野:同じくサステナビリティ推進室の小野です。2019年に入社後、ちょうど一年が経ちました。コメダ歴は浅いのですが、大学時代から環境問題を勉強していて、前職もCSRを担当していました。

ーー創業50周年を機にサステナビリティ推進室が作られたのですね。

間宮:はい。コメダは創業からお客様のくつろぎを大切にしてきたのですが、50周年を機にこれから、社会にどうやって貢献をしていくべきかを考えていた時、「食」を取り巻くさまざまな社会課題があると知りました。食を通じて“くつろぎ”を提供するコメダは、そういった社会課題に真摯に向き合い、その解決に取り組む責任があるという想いを強くしました。地球の裏側で、悲しい想いをしている人達がいたら、心からくつろげないですよね?そこで、2018年に「心にもっとくつろぎを」を50周年ミッション宣言として掲げ、サステナビリティ推進室が立ち上がったんです。

ーーサステナビリティ推進室は具体的に何をされているのですか?

小野:コメダに来店されるお客様に、サステナビリティ活動を知っていただくためのキャンペーンの実施や、SNSで活動の配信をしています。他には、簡単なことがSDGsに繋がっていることを知ってもらえるように、SDGsカードの掲示をしています。例えばトイレットペーパーの使いすぎなどを注意喚起するものなどです。

その他には、毎月社内報でコメダのSDGsに関する取り組みの紹介や、社内啓発の実施、CO2の排出量の計算と、削減を目的とした再生可能エネルギーの導入検討、サステナビリティに関する店舗でのキャンペーン企画などをおこなっています。
さらには他の部署と協力して、マテリアリティへの取り組みにも関わっています。

マテリアリティ:マテリアリティとは、自社に関わる「重要課題」のこと。企業活動の社会課題への影響度合いを評価し、優先順位をつけ「企業としてそれぞれの課題をどの程度重要と認識しているか」を分かりやすく示したものである。

ーー取り組みはどのように決めていくのですか?

間宮:企画を定期的に提案して、部署内で検討を重ねて決めています。これまでに出したアイデアは数十個に及びます。他部署と連携しながら、費用対効果は?、店舗スタッフに負担がないか?などを考えて、たくさん出たアイデアから取り組むべきものを絞っていき、事業活動の中でサステナビリティ活動を実現させる方法を考えています。

提供:株式会社コメダ

証券会社と喫茶店の異色のコラボ。コメダ珈琲店吉祥寺西口店にかける想い

【引用】http://komedacomestrue.komeda.co.jp/interview9/

ーー大和証券様とのコラボによっての変化はありましたか?

間宮:オープンしてから、約半年経ちましたが「これからも期待しています!」などお客様から応援のお声をいただきます。またSDGsの社内啓発にも効果がありました。

ーー吉祥寺西口店はコーヒーカップにも工夫があるそうですね。

間宮:はい。コメダのカップは有田焼を使っているのですが、一つひとつ手作りなので、どうしても規格外の製品が出てしまいます。窯元さんにしか見分けられないくらいの差なのですが、お店では使えない基準の製品として廃棄されていたんです。でも、それは「もったいない」ということで、吉祥寺西口店では特別なデザインを追加して「ステナイカップ」として、使用しています。

他にも、お客様はコメダでくつろぎながら、自然とSDGsの取り組みに触れることができるような工夫をしています。SDGsカードの掲示や関連の書籍の設置、メニューブックには石灰石からつくられた新素材を使っています。それぞれは小さな取り組みですが、ご来店されるお客様がSDGsに触れて、ほんの少しでも行動を変えるきっかけになれば嬉しいですね。

ーー金融業界と飲食業界の業種を超えた取り組みはどのように実現したのですか?

小野:このコラボは大和証券様からお声がけいただいたことから始まっています。大和証券様もSDGsをお客様に身近に感じていただくために何ができるのかを考えた結果、吉祥寺支店ビルの1階に同じくSDGsに取り組むコメダを誘致することに至ったそうです。お客様にはコメダでいつも通りくつろいでいただきながらSDGsやお金のことを知ってもらい、金融のことを上のフロアで大和証券様にご相談できるんです。

SDGsは通過点。コメダに関わる全ての人を笑顔にするために

ーーサステナビリティ活動のビジョンを教えてください。

小野:コメダのビジョンは、お客様にくつろぎをご提供することです。このビジョンは52年前の創業当初から変わりません。お店もふかふかのソファを置くなど、くつろげる空間を追求しています。

サステナビリティ活動も、お客様にくつろぎを提供し続けることを念頭に今後も続けていきます。もし、コーヒー豆を育てる農家で児童労働が発生していたり、生産過程で誰かが苦しい思いをされていたら、持続可能ではありませんよね。お客様に今までよりももっとくつろいでもらうために、”KOMEDA COMES TRUE.”を合言葉に社会や地球環境の問題解決に貢献していきます。

コメダのお店でコーヒーを飲みながらくつろいでいただくことで、お客様の“くつろぎ”の輪が大きくなり、この地球に笑顔が増える。そして、子どもたちのその子どもたち、さらにその子どもたちへとその笑顔がつながっていく……。そんな世界になればと思っています。

ーーコメダとして注力している社会課題、SDGsの項目はありますか?

間宮:具体的に取り組む課題は設定せず、コメダに関わる課題から少しずつ取り組んでいきます。コメダにしかできない、コメダがやるべき社会課題への取り組みを推進しています。

ーーSDGsを通してどんな社会にしたいですか?

小野:コメダに関わる人たちが笑顔になる社会にしたいです。SDGsは現時点の目標なので、SDGsの達成をゴールにしてしまうと2030年以降にまた新しい目標を立てたり、方向性を変える必要があると思うので、SDGsと同じ目線で活動しますが、目標にはしていません。

SDGsはあくまでも通過点と考え、コメダとして「くつろぎ」が持続していくことをゴールとして目指しています。2030年がゴールではなく、50年、100年くつろぎが持続していくことを目指します。コメダらしく活動していくのが一番だと考えているんです。

全国900店舗の従業員の足並みを揃える難しさ

提供:株式会社コメダ

ーーSDGsを推進していく上で苦労した点はありましたか?

間宮:全国の加盟店様全てにSDGsを浸透させることが難しいですね。エリアごとにオーナー様にサステナビリティについてのお話をしているのですが、都市圏と地方でSDGsに対しての認知度に差を感じます。SDGsのマークを見たことがあるかの質問に対して、都市圏では電車や街で見かけることも多く、マークを知っている方が多いですが、地方だと誰も知らないこともあります。この温度差をどうやって埋めていくかが今後の課題ですね。

小野:SDGsにいかに興味を持ってもらうか、自分事として考えてもらうか、が難しいです。1店舗につき20人~30人くらいの従業員がいるので、全国の従業員にコメダのサステナビリティ活動を知ってもらい、一緒に取り組んでいきたいという想いがあります。

ーー逆にSDGsを推進していいことはありましたか?

小野:コメダのサステナビリティ活動の知名度が徐々に上がってきているように感じます。依然と比べて、小中学校から食育授業の依頼や、サステナビリティ活動に関する取材が増えました。

間宮:また、加盟店では以前から店舗主体で地域に根ざした活動を行なっているのですが、SDGsに関するものが増えています。例えば、高齢者施設にコメダの商品を届ける活動や、駐車場での地元野菜の朝市などです。SDGsを通してお客様を笑顔にできるような活動が徐々に浸透しつつあります。

提供:株式会社コメダ

「誰も無理をしない」取り組みを事業の中で実現させ、持続可能なビジネスを目指す

吉祥寺西口店で使用されている「ステナイカップ」(左)【提供:株式会社コメダ】

ーーこれからのSDGsの戦略はありますか?

間宮:コメダでは「お客様に普段通りコメダでコーヒーを飲んで、くつろいでいただくことが社会や環境のためになる」そんな活動にしていけたらと思っています。また、その活動によってお客様の笑顔や、食材を作っている農家さん、取引先様や加盟店様含め、コメダに関わる全ての人の笑顔が増えることを目指しています。今後としては、再生可能エネルギーの導入や、加盟店様主導の社会貢献の活動を支援する取り組みをしていきます。

小野:コメダのサステナビリティ活動を推進する上で「誰も無理をしない」ということを大事にしています。コメダではサステナコーヒーという、農家さんに対して適正な価格で取引をすることはもちろん、技術支援などを行なっているオラム社よりコーヒー豆を仕入れているのですが、フェアトレード認証は取っていません。その理由に、認証を取ると認証代金がかかるため、その分を誰かが支払わなければならず、結果、コーヒーの価格が高くなってしまうからです。誰も無理をしない、我慢しないように、誰もが幸せになれることを大事にしています。

ーー日本全体としてSDGsは今後どういう存在になると思いますか?

間宮:SDGs達成への活動は、ますます今後広がっていくと思いますが、そういった言葉がなくても当たり前のように環境や社会への配慮がされるようになればいいですね。

小野:企業は専門分野でないことに無理に取り組まず、今まで築いてきたノウハウや得意分野を生かして社会や環境にいいことをビジネスで実現させていけたら本当の意味での持続可能な取り組みになっていくと思います。

まとめ

取材を通しての一番の驚きは、SDGsは通過点であり、それを目的化していないことだった。SDGsの達成だけにターゲットを絞るのではなく、コメダが目指す「お客様のくつろぎとコメダに関わる全ての人の笑顔」を持続させるための段階としてSDGsを位置付けていた。SDGsは今注目されているトレンドではなく、これからずっと向き合っていく指標であり、取り組みを持続させながら企業としても成長していくことが必要であると言えよう。できることから、事業の中で行っていかないとその取り組みは一時的なものであり持続可能ではない、という言葉が印象的だった。このコメダの姿勢は多くの企業の手本となり、今後も注目の的となるだろう。

インタビュアー:櫻沢美樹

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