「スーツの青山」から「ビジネスの青山」へ|リブランディングから始めるSDGs

#エネルギー資源#ジェンダー#ダイバーシティ#女性#廃棄物 2022.01.14

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

コロナウイルスが流行し、リモートワークが主流となった今、スーツを着る機会は以前よりも格段に減少してしまったのではないだろうか。

しかし、こうした逆境の中、自社の価値を再定義し、リブランディングに取り組む企業が青山商事だ。「洋服の青山」を展開する青山商事は、2019年に新設されたリブランディング推進室を中心に、新たな価値の提供を目指している。その一環でSDGsにも取り組み、社会的価値を再度見出そうとしている。

青山商事が目指す企業のあり方とはどういった姿なのだろうか。今回は、リブランディング推進室の平松さん、馬司さんにお話を伺った。

青山の新たなブランドパーパス「ビジネスのパフォーマンスを上げるパーツを提供する会社になる」

ーー自己紹介をお願いします。

平松:平松葉月と申します。大阪府出身で、大学卒業後はデザインの専門学校に行き、グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。

グラフィックデザイナーをする上で、商品の売れ行きの傾向をページに活かせたら良いと思ったのですが、上流で企画などをする立場でなければ何もできないと痛感しました。そうした時に、ラウンドワンからお声かけをいただき入社しました。ラウンドワンでは9年ほど勤め、その後はアクア株式会社という家電メーカーに転職し販促プロモーションなどをしました。さらにその後は、らーめんチェーンの幸楽苑ホールディングスに転職し、2年ほどマーケティングを軸に、経営とマーケティングの統合をしていました。幸楽苑ホールディングスは入社直後に赤字になってしまったのですが、翌年には黒字に回復することに成功しました。

幸楽苑ホールディングスで企業の再生を担ったことで、今度は業界の再生にトライしようと思い、紳士服業界がどんどん縮小しているなか、市場をどのように改革していくかということで、2019年に青山商事に入社しました。

同年、リブランディング推進室というものが立ち上がりました。室長は社長が兼務しており、私が外部から副室長として入り、SDGsの取り組みも含めて社内メンバー何人かと一緒に活動している形です。

【提供:青山商事株式会社】

馬司:馬司利治と申します。私も大阪府出身で、大学卒業後、1997年青山商事に新卒入社しました。

まずは、カジュアル事業部に配属され、2年間店舗で接客を担当しました。その後、カジュアル事業部内にて商品管理担当を経て、約5年間販促担当としてチラシ・雑誌制作に従事。その後、洋服の青山店舗で勤務し、総務部へ異動しました。

2011年の東日本大震災後の省エネ促進により空調設備の改修やLEDの導入などの環境負荷低減の業務を実施をしていく中で、企業としての環境への取組みに興味を持ち、環境負荷低減としての省エネや下取りによる衣料回収によるごみの低減、地球温暖化対策としてのCO2削減など、総務実務の中で取り組みを進めてきました。

【提供:青山商事株式会社】

ーー業界を立て直したいというモチベーションが生まれたきっかけを教えてください。

平松:いろいろな会社の方々と出会う中で、昔の高度成長期に比べて、日本のビジネスパーソンの方々の勢いがなくなってきているように感じました。

こうした状況を、昔の高度成長期の日本のように元気にできたら良いなという壮大な思いがベースになっています。

ーーリブランディング推進室では、具体的にどのような役割を担っているのですか?

平松:洋服の青山をリブランディングするということを目標に活動しています。

洋服の青山は、ビジネスパーソンの服を販売しているにもかかわらず、1番のボリュームゾーンである20~40代のお客様が顧客として少ない現状があります。こうした世代の方々にも受け入れられるようなブランドに変えていくことがミッションです。

具体的には、私自身は3年ほどの計画を立てました。1年目は外部のコミュニケーションや広告宣伝の改善を、2年目は商品の改善を、3年目は店舗と同時並行的に社内の組織風土改善をしていくということを目指しています。

ーー今までマーケティングを担当されてきた平松さんが、リブランディング推進室でSDGsに取り組んでいる理由を教えてください。

平松:もともと青山商事自体は、いろいろな取り組みをしていましたが、全て単発だったんです。

「more trees」という森林保全団体に寄付をしていたり、下取りを再利用したり、電気の使用量を削減するなどさまざまな活動をしていましたが、そこに企業の柱として”こんな想いがあるから、この活動をしています”という紐づけが全くできていませんでした。

「なぜ」をきちんと伝えるために、もともと総務部だった馬司が取りまとめて発信していこうと、ブランディングを一環して行っています。

しっかりと紐付けした結果、環境に配慮した企業や団体の取り組みを表彰する「エコマークアワード2020」で優秀賞をいただきました。

ーー今まで単発だったとおっしゃっていましたが、近年のステークホルダーが重視される流れの中で、ストーリーをつくって発信することが大切ですよね。

平松:BtoCの会社なので、本来であればお客様を見なければならないのですが、いつの間にか競合ばかりを見るようになってしまい、お客様をきちんと見れていない問題点がありました。業績が悪化してきているところも、ここに課題があったのではないかと思っています。

もちろん、ESGなどで投資家の皆さんに伝えることも重要ですが、きちんとお客様に伝わることが必要かなと思っています。

ーーSDGsについての取り組みについても伺っていきたいなと思いますが、まずは、どういったところを軸にされているのか伺ってもよろしいですか。

平松:先ほど、「お客様を見ていなかった」とお話しましたが、結局、接客業なのでお客様が物を買う時しかお客様と対峙できないんです。

従来は、「お客様を見る」ということは、店舗で接客する際に、お客様を見ることだと思い込んでいました。しかし、「お客様が今何を必要としていらっしゃるのか」が大切であると気づきました。

そこで青山商事は「ビジネスのパフォーマンスを上げるパーツを提供する会社になる」というブランドパーパスを設定しました。

創業理念は「より良いものをより安く、洋服の販売を通して社会に貢献する」であり、百貨店よりも安価にスーツを買える分、余剰のお金で豊かな暮らしを目指すという意味合いが含まれています。

ブランドパーパスを設定する際、企業理念で掲げられた軸は変えず、今の時代に必要とされているものは「お金」ではなく「時間」だと考え、今の時代にあったものにすることを意識しました。

「ビジネス」という言葉でビジネス軸の会社を表し、「パフォーマンスを上げる」で時間をつくることを表し、スーツだけではなくビジネスウェア、さらにはビジネスのツールやサービスを広げていき、人を中心にビジネスパーソンが必要となるものを扱っていこうという思いが込められています。

ーーブランドパーパスを設定したのはいつ頃だったのでしょうか。

平松:2020年の年末頃から議論を始め、2021年の3月に社内に周知要旨を出し、徐々に役員会に上げながら、5、6月に店舗への周知をしました。

もともと各部門の部長が参加するリブランディング推進会議が月に1回あり、さまざまな議論をしていました。

現在、「スーツの青山」から「ビジネスウェアの青山」へ変革期を迎えており、その先に「ビジネスの青山」を目指しています。リブランディング推進会議の中で、最終目標に向かうためには創業理念の解釈を変え、共通して認識する必要があるということでブランドパーパスの設定に至りました。

ーーSDGsへの取り組みなどの軸を作り、外部へメッセージを伝えるときのポイントなどはあるのでしょうか?

平松:「お客様に対してのメリットを謳うコミュニケーション」に変えるように気をつけています。

会社として何か伝えたいことがあったときも、言いたいことをただ言うのではなく、伝えるべき相手がどう受け取るか、相手にどんなメリットがあるのかをきちんと説明することですね。

ーー青山商事のブランドストーリーを伝えることでも、何かチャレンジされていることはありますか。

平松:洋服の青山というブランドは、どのような調査でも認知度は99%以上です。

しかし、関与度がとても低いという結果が出ています。大きな看板があるお店の前を通っても、それが洋服の青山だったかどうかですら覚えていないという結果もありました。

洋服の青山がお客様にとって関与度の高いブランドだと伝えていきたいですし、現在の洋服の青山は変革していて、このことはお客様にとって関係あることだと伝えていきたいです。

ーーリブランディングを始めて変化したと思われることはありますか。

馬司:私は青山商事に入社して20年以上経ちましたが、今までは、紳士服を販売する競合店を意識しすぎていたと感じています。

リブランディングに取り組んでからは、お客様が商品をどのように感じてくださるのか、お客様にとってのメリットを考えることに重きを置いています。

お客様のメリットを軸にした新たなプロモーションによってニーズが広がり、メリットを謳うことで商品を買ってくださるお客様が増えていく状況も、店頭では実際に目の当たりにしました。

ーー競合だけを見ていたときよりも、ブランドパーパスを設定した今の方が買ってくれるお客様は増えていくのではないかと思いますが、肌感覚ではいかがですか。

平松:ここ2年はコロナ禍によって数字的には悪いですが、商品の置き方や勧め方など、些細なところでも、お客様にどんなメリットがあるのかを、販売員がきちんと説明できるようになってきていると思います。

スーツが売れるのは10月~4月で、5月~9月は閑散期と言われていますが、閑散期を無くしていくことを目的に、シャツや肌着のプロモーションを始めました。

例えばノンアイロンのシャツが毎月24日は安くなるというNON IRONMAXの日を決めて、SNSでプロモーションをしています。リピーターとなって毎月買いに来ていただけるお客様も増えてきています。

リブランディングから見出したSDGsの軸

ーーSDGsの取り組みの軸になっているものなどはありますか。

馬司:これまでは、投資家目線の発信を軸にESGに取り組んでいました。これからは新たなブランドパーパスをもとに、ビジネスパーソンに向き合い変革していきたいと考えており、「社会への貢献」を基本的なスローガンとして活動していきたいと思います。

SDGsへの取り組みにおいても、ゴミの廃棄問題、省エネの2つをメインにしつつ、働き方についても社内の中で徐々に良くしていきたいです。

ーーゴミの廃棄問題について教えてください。

馬司:以前はスーツを買い替えるきっかけとして服の下取りを行っておりましたが、数年前からは、環境への付加価値や負荷を低減させることを目的に下取りを行っています。

スーツを買い替えていただくと、どうしてもゴミになってしまうという課題があるため、使用しないものは全国で回収し、リユースやリサイクルをしていくことが一番大きな取り組みになっています。

コロナの影響がない2019年度は410トンほど、去年はコロナの影響もあり少し減少しましたが307トンのスーツが集まりました。300トンはスーツで換算すると約30万~40万着になります。

また、社内ではハンガーやゴミ袋など、プラスチックやナイロンを使用したものが多くあります。ハンガーはできるだけリサイクルをして捨てないようにしていますが、途中で破損してしまうものも多くあるため、2021年度からは破損したハンガーはリサイクル専門業者へ引き渡し、マテリアルリサイクル*されています。

マテリアルリサイクル*:廃プラスチック製品を“ペレット”と呼ばれるプラスチック原料に変え、新しい製品をつくる技術のこと。

店内でのリサイクルの様子【提供:青山商事株式会社】

ーー社内のコミュニケーションはどういった取り組みをされていますか?

平松:ブランドパーパスを従業員に周知するために、講師の方をお呼びして社内勉強会を開き、その様子はリアルタイムで配信し、さらにYouTubeで後からでも視聴できるようにしています。

社内勉強会の後は自分の感じたことをアンケートで回答してもらうのですが、その中から、「こんなことをやりたい!」というような声や人をピックアップして、ヒアリングしています。

また、「あおいろ」という社内報があり、その中で活動の発信や企画を載せたりしています。事務的ではありますが、通知という形で伝える発信の方法もあります。

ーー社内のコミュニケーションで難しいところや課題はありますか?

平松:本社が広島県の福山市に、リブランディング推進室が東京に、お店の方々は全国にいらっしゃるので、距離感の課題があります。ですが、コロナ禍の影響でオンライン化が進み、Google Meetなどのツールもあるので、以前よりはコミュニケーションを取りやすくなったと思います。

ーー省エネへの取り組みについて教えてください。

馬司:青山商事は電力が使用するエネルギーの9割を占めています。

営業する上で、商品の色味をきちんと伝えるためのお店の明るさや、店内の温度など含めてお客様の快適性を維持することが重要なので、なかなか節電が難しいという課題もありました。

現在は、LEDや空調を変えるなど積極的に改善し、CO2排出削減や電気のエネルギー量を下げていくことを目指し、グリーン電力の活用や非化石証書の取得などを進めています。現状、福山本社のエネルギーは、全てグリーン電力でまかなっています。

ーーSDGsでも掲げられているジェンダー平等や働きがいの向上では、なにか取り組みをしていますか?

馬司:女性の働き方改革に取り組んでいます。

青山商事はスーツを販売する会社で、十数年ほど前までは男性がメインで働いており、働く女性が増え、取り扱う商品も増え、女性のスタッフも増えていたにもかかわらず、男性目線のルールしかない状況でした。

こうした状況を変えるために、女性の働き方やキャリアについて考える機会の創出、産・育休後の復帰フォローを中心とした両立支援などを通して、さまざまな働き方改革を行っています。

また、サプライチェーンの縫製工場の雇用や人権の透明性の明確化にも取り組んでいます。

2018年に「Sedex*」に加盟後、2020年度から本格的に主要取引先様に参画を促し、人権・労働安全衛生・環境・企業倫理などに配慮した企業の社会的責任を果たす取り組みをしています。

主要取引先縫製工場リストを開示することで、サプライチェーンの透明性を高め、エシカルかつ責任あるビジネス慣行を目指しています。

Sedex*:グローバルサプライチェーンにおいてエシカルかつ、責任あるビジネス慣行の推進のため2004年にイギリスで設立されたNPO。企業の倫理情報を管理・共有できるオンラインプラットフォームを提供している。

ーー男性社会の制度の中で、具体的にどのような変革に取り組んできましたか?

馬司:女性社員が辞めてしまう一番の理由は、結婚や妊娠・出産などライフステージの変化を迎えた際のロールモデルが身近にいないこと、そして産・育休を経て職場復帰を迎える際に復帰しやすい環境整備ができていないところでした。

こうした問題を解決するために、結婚・出産後も家庭と仕事を両立して働いていくための相談ができる窓口として、社員のサポートと環境作りを担う「ウーマンアドバイザー」の設置やスムーズな職場復帰に向けた「育休セミナー」の実施、働き方の多様性や環境整備への理解の一環として管理職層を中心とした「女性活躍推進研修」の実施、当事者である女性のキャリア形成支援を目的とした「キャリア研修」などを行っています。

また、女性が仕事と家庭を両立しながら活躍するには男性も同様に育児・家事を担うことが重要と捉え、男性の積極的な育児休業の取得を推進し、より活躍できるような環境作りを行っています。

ーー今後の展望を教えてください。

平松:青山商事がビジネスパーソンにとってのNo.1サポーターであり続け、社会に何が貢献できるかを念頭にさまざまなことに取り組んでいきたいです。

馬司:世の中に信頼される企業はどういった企業なのか突き詰め、商品、外部発信の内容、社員の意識向上をきちんとすることで、青山商事が世の中に貢献できることを示していきたいです。

さいごに

創業から大切にした軸は変えずに、時代に合わせたリブランディングを行っている青山商事。

商品の機能を伝えるのではなく、お客様にとってのメリットを提示するマーケティング方法は、当たり前のようで気づけない課題だった。

多角的な考え方が必要とされる現代、リブランディングを行う青山商事は、モデルケースとなるだろう。

「スーツの青山」から「ビジネスの青山」へ変革の時。青山商事の今後に目が離せない。

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