これからPRの鍵はひとりよがりにならないこと|サニーサイドアップがPRを超えて取り組むソーシャルグッド

2021.10.27

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

株式会社サニーサイドアップグループは、「たのしいさわぎをおこしたい」をスローガンにあらゆる企業・団体のPRを手がけている会社だ。

今年の7月には30年以上にわたる「ソーシャルアクション」のノウハウをPRと掛け合わせて紹介する書籍「2030年を生き抜く会社のSDGs」を発売。さらに、PRのノウハウを生かした社会課題解決に取り組む「ソーシャルグッド推進室」を立ち上げた。

今回は、ソーシャルグッド推進室の谷村様と奥山様を取材し、SDGsにおけるPRの在り方や、ソーシャルグッド推進室の具体的な取り組みについてお話を伺った。

SDGsという言葉が生まれる前から「世の中のためになって、楽しいこと」を広めていく精神を大切にしてきた

ーーまずはじめに、自己紹介をお願いいたします。

谷村:社長室長を務めています、谷村です。7月から新設で、ソーシャルグッド推進室という部署を立ち上げ、その室長も兼任しています。9月から始動した、同推進室の活動を拡充する新たなグループ会社、「株式会社グッドアンドカンパニー」の社長も兼任しています。

社長室では、サニーサイドアップグループというPRコミュニケーション会社としての役割に限らず、未来に向けて新しいグループの可能性を模索するために新規事業やサービスを社長と一緒に生み出すことをミッションにしています。

その中で、ソーシャルグッドについて世の中に伝えや共創していく必要性を感じ、1つ切り出して、新しく「ソーシャルグッド推進室」を作りました。

このソーシャルグッド推進室は、グループ全体のソーシャルグッドの活動の窓口として、機能できればいいなと思っています。

奥山:メディアプロモーターや営業を経て2017年から社長室に。現在は副室長を務めています。グループ全体のコミュニケーション部分を担当し、その後ソーシャルグッド推進室の発足から関わり同室にも所属しています。

ーー書籍「2030年を生き抜く会社のSDGs」が7月に発売されました。書籍の中では創業時からソーシャルグッドを軸に発信を行ってきたからこそのあらゆるノウハウ書かれていますね。御社とソーシャルグッドの関わりを教えてください。

谷村:そうですね。SDGsという言葉が生まれる前から、「世の中のためになって、かつ楽しいこと」を広めていきたいという精神がありました。その精神をもとにクライエント企業様のPR活動をお手伝いすることで事業領域を深めてきました。

企業様の経営においてもSDGsなど、社会にとってより良いことをしようという意識が広まっている現代においては、さらに私たちの関わるPRコミュニケーションの責任も増していると思います。

SDGs × PR 「ひとりよがりにならない」“社会”と“会社”を主語にする取り組み

ーーSDGsの注目が高まる今、企業が自社のスタンスなどを外部に発信する重要性が高まっていると思います。SDGsとPRの関係については、どのようにお考えですか?

谷村:企業にとってPRコミュニケーションの重要性が拡大していると感じています。

今までは財務状況など、利益基準で企業が評価されることが多かったと思います。ですが、今後は短期的な利益だけではなく、社会の循環を支えていく役割も評価の1つに加わるでしょう。つまり、企業のSDGsの取り組みも企業の利益の追求と表裏一体であるべきだと思うんです。

サニーサイドアップグループとしてはPRコミュニケーション会社として、企業ごとの取り組みや企業自体にスポットライトを照らしつつ、社会全体の課題にもスポットライトを当てられるPRを目指しています。

ーーSDGsとPRに関わる中で大切にされていることはありますか?

谷村:「ひとりよがりにならないこと」です。社会に継続的に支持されるかどうかという軸も大切にすべきと考えています。

サニーサイドアップでは37年来「たのしいさわぎをおこしたい」というスローガンを持って活動しています。メンバーもこれを共通言語として咀嚼して、それぞれの仕事に取り組んでいますが、(ひとりよがりにならずに)このポジティブな概念をどこまで伝播できるかという気持ちを大切にしているんです。

例えば、私たちサニーサイドアップグループは貧困撲滅の世界的アドボカシー活動「ホワイトバンドプロジェクト」を皮切りに、社会課題解決を目的としたさまざまな企業参画型プロジェクトを手掛けてきました。各クライアント企業が有する“会社の課題”を解決するだけではなく、“社会の課題”にもスポットライトを当てることで、ひとりよがりにならない発信を行い、社会全体の変革に挑み続けています。

ーーオウンドメディア・SNS・外部メディアで企業が社会に対して直接発信する機会も増加してきました。SDGsの発信では、どんな心がけが必要でしょうか。

奥山:プランニングや文脈作りを「どこまで自分の言葉で咀嚼し、さまざまな箇所に落とし込むことができるのか」が大切になってくると感じています。

見た目だけのブランディングは、まさにSDGsウォッシュといわれるように上部だけのものになってしまうと思うんです。自社のいいポイントだけをPRするのは、外から見るとあまり良くは受け入れられないですよね。

だからこそ、自分や自社をどういった切り口で、文脈を作って発信していくことが大事になってくるかなと思いますね。

PRだけではない。クライアントとの伴走共創で社会課題の解決に取り組む輪を大きくしていく。

ーーサニーサイドアップグループはグループはPRの枠を超えて取り組みを開始したと伺いました。具体的にソーシャルグッド推進室はどんな活動をされていらっしゃるんですか?

谷村:基本的には複数の企業様と一緒にプロジェクトを進めています。一般的にPR会社は、仕事をクライアント企業様からPR業務を受託させていただいて対価を頂く契約関係が多いと思います。推進室では「伴走共創」という言葉をもとに、”クライアント企業”ではなく、プロジェクトを共に大きくしていく参画企業・パートナー企業という関係性を構築し、より大きな輪で社会課題の解決に挑みたいと考えています。

ーー具体的にソーシャルグッド推進室ではどのような取り組みを行っていますか?

谷村:「W society」というプロジェクトを進めています。「W society」とは、心身的課題(W)と社会的課題(Society)の両面から女性に関わる課題を解決し、女性活躍をデザインしていくプロジェクトです。「すべての女性が納得して充実したライフスタイルを築ける社会の実現」を目指しています。

活動の目標は、女性自身が自分のカラダについて正しく知るきっかけをつくること。そして、社会とともに個人・企業・団体の垣根を超えて組織・医療面でのインフラを整え、ライフステージにおいて自分の選択肢を持てるようにすることです。

仕事、妊娠、出産、両立…これからたくさんのチョイスがあるけれど、未来の選択肢を選ぶのは、これからも”わたし自身”でありたい。そんな社会をともにつくっていけるように企業と伴走して進めています。

このプロジェクトを始めたきっかけはサニーサイドアップグループの福利厚生です。

”サニー”の語呂に合わせて社内メンバーの声によってつくられた福利厚生・32の制度の1つに「Dear Woman制度」があります。これは、2015年から導入した卵子凍結及び保管に関わる費用の一部を負担する福利厚生です。「女性メンバーが安心して活躍するための御守りとなるように」という願いを込めて、働き方だけでなく生き方の選択肢を増やすことで、より安心して自分らしい生き方ができるような会社を目指しています。

この制度を運用する中で、そもそも女性ですら自分の身体のメカニズムに関する知識が乏しい現状を目の当たりにしました。そこで、医師を招いたセミナーなど、ホルモンバランスや妊孕性について知る機会・学ぶ機会を提供したところすごく大きな反響があったのです。聴講したメンバーの約3割が、実際に婦人科にて自身の妊孕性に関するセルフチェックを行うというきっかけづくりにもなりました。

この結果を目の当たりにして、社内だけでなく、日本全体に向け、女性が自身の身体について興味を持つ機会づくりの必要性を強く感じました。そして、そのアクションが広がっていくことで、女性の未来や日本の社会を少しでも照らしだせるのではないかと考え、「W society」というプロジェクトを立ち上げるという決断をしました。

現在日本が直面している少子化や不妊治療の現状を打開するきっかけになるのではないかと考えるようになりました。

ーー他の企業や団体とパートナーシップをとりながら進めていくのでしょうか。

谷村:企業横断型のプロジェクトなので社会全体で進めていきたいと考えています。

W societyプロジェクトは、KNOW【知る】・LEARN【学ぶ】・CHANGE【変える】の3つのテーマでさまざまな活動を行っていきたいと考えています。具体的には、10月28日(木)から11月4日(木)に自分自身のカラダを知るきっかけづくりを啓発するキャンペーン「egg week」の実施を予定しています。AMH検査[卵巣の予備能(卵巣の中に残っている卵胞の数の目安)を反映する血液検査]の受診を入口にして自分自身のカラダを知るきっかけを作ります。

アンバサダーは、柔道家でまさに一人の女性として“カラダ”と向き合ってきた阿部詩選手、ライフスタイルが多くの女性の共感を呼んでいるモデルの島袋聖南さん、若い世代のオピニオンリーダーとしても発信を続けるモデルの長谷川ミラさんの3名です。自分の“カラダの今”を知り、学びを深める一週間「egg week」では、初日28日(木)の一般向けカンファレンスへの登壇します。その後も公式SNS・オウンドメディアでの特別コンテンツの発信を通じて活動を活発化していく予定です。

▼「W society」について詳しくはこちら

おわりに

「社会課題の解決のスピードは、PRによって加速していく」と実感したインタビューだった。PR会社として協働する企業の取り組みを照らしているサニーサイドアップグループ。

今年の7月には「ソーシャルアクション」のノウハウを紹介した書籍「2030年を生き抜く会社のSDGsを発売し、「ソーシャルグッド推進室」を立ち上げるなどSDGsとPRを掛け合わせた取り組みを進めている。今回伺った「W society」もその一つだ。

多岐にわたるPRのアイデアは社員で共有されている「世の中のためになって、かつ楽しいこと」を広めていきたいという想いがもとになっているとも感じた。

ひとりよがりにならず、PRを通して世の中にグッドでポジティブな影響を与えているサニーサイドアップグループの取り組みに今後も注目だ。

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