「労働力ではなく生活者」|外国人の受け入れは「生活者視点での制度づくりが鍵」

#人間らしい#教育#生活 2022.08.05

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少子化による人手不足を解消するため、日本では外国人労働者の受け入れ数が増えています。

しかし、労働環境や言語など外国人が地域で暮らす中で課題が多くあるのも事実です。

今回は、外国人の受け入れ体制において、こうした壁を取り除こうと提言や活動を行う団体である、国民生活産業・消費者団体連合会*(以下、生団連)の松野様、出水様にお話を伺いました。

お二人が行う「生活者」として外国人を受け入れる環境づくりにフォーカスします。

国民生活産業・消費者団体連合会(通称:生団連)とは

企業と消費者団体、NPO法人等が一体になり、平時より国民的課題について活発な議論や、政府や行政への提言・国民への情報発信活動を行っている。「国民の生活・生命を守る」ことを目的に2011年の東日本大震災後の2011年12月、株式会社ライフコーポレーション会長の清水信次氏によって設立された。

▶生団連公式HPはこちら
▶生団連の紹介動画はこちら

「生活者」として外国人を受け入れる体制を構築する必要がある

ーー自己紹介をお願いします。

松野:業務部でマネジャーをしている松野です。生団連の会員企業である株式会社ヤマダホールディングスから2年前に出向してきました。現在は、生活者としての外国人の受け入れや外国人との共生についての取り組みを担当しております。

出水:松野と同じく、業務部でマネジャーをしております、出水です。会員企業である、日本ハム株式会社から今年の3月半ばに参りました。就任したばかりではありますが、松野と共に外国人の受け入れに対する体制の構築に関する課題を担当しております。まだまだ私自身も勉強中なので、国民の皆様と近い目線で一個人として取り組めることを模索すべく努力しております。

ーー生団連の立ち上げのきっかけについて教えてください。

出水:現在の名誉会長である清水が東日本大震災の発生直後の混乱状況を目の当たりにし、「日本において数多くの経済団体はあっても、国民の生活と生命を守る団体が存在しない」と痛感したことが大きなきっかけでした。目先の利益ではなく「国民が声を挙げられる組織」として、2011年の12月に誕生しました。

ーー組織の特徴は何ですか?

松野:業界全体だけではなく、企業や消費者団体・NPO法人などさまざまな団体が加盟している組織であるため、さまざまな生活者の視点を取り入れた活動を行えることです。500を超える企業が参加しています。

また、「有事における国民的危機への対応」という最重点課題と5つの重点課題を設け、それぞれの委員会で対応課題に対して調査や議論を行っています。
私たちは、「外国人の受入れに関する委員会」に所属しています。

 生団連が取り組む5つの重点課題

課題名
1.国家財政の見える化
2.エネルギー・原発問題
3.生活者としての外国人の受入れ体制構築
4.災害対策
5.ジェンダー主流化

ーー外国人の受入れに関する委員会では、「生活者としての外国人の受入れ」を対応課題にしています。「生活者としての」という言葉に込められた想いは何でしょうか?

松野:現在日本では、約280万人の外国人が暮らしています。コロナ禍によって一時伸び悩んでおりますが、今後もこの数は増えていくでしょう。

日本にいらっしゃる外国の方が、働くだけではなく、「地域で暮らす人間」として定住していける仕組みづくりを行いたいという想いから「生活者」という言葉を使っております。

ーー日本では、外国人労働者の受け入れに関して問題になることが多いと思います。活動する中で感じる、外国人受け入れに関する課題感について教えていただきたいです。

出水:例えば、行政窓口などでの取引で起きる、言語の壁やそれに対する支援体制に課題を感じています。外国人の方が困った際に相談できる窓口はありますが、「日本語がもう少し上手になってから来てください」といった言葉をかけられた方もいたといいます。さらに、外国人の多い都市部ではこうした問題への都市では支援が充実しているものの、そうでない地方は支援も少なく、地域から受け入れ難い実情もあるようです。

また、学校に入れたとしても、言語の壁によって途中で学校を辞めてしまう子もいるんです。学校を辞めてしまった子が親になったとき、子供に対して充実した教育を受けさせてあげられなくなってしまう悪循環が生まれつつあります。

このように、外国人の方が地域に住む一人の生活者として自立するための支援体制が所々で欠けていることが大きな問題だと感じています。

生活者としての環境整備と外国人の子どもの教育制度。問題を数値化し、目標を明確にすることが今の目標

ーーこうした問題を解決していくために、普段はどのような取り組みを行っているのでしょうか?

松野:実際に提言に繋げていくために、調査や研究を進めています。
文部科学省・出入国在留管理庁・技能実習機構などへのヒアリングや意見交換も積極的に行っています。

また、実際に現場の声を聞くために実習実施者や受け入れを行っている場所に直接訪れたりもしています。

まずは実態の詳細を把握した上で、具体的な制度づくりに貢献していきたいと思っています。

ーー実際に実習先への訪問を通して感じたことなどはありますか?

松野:実習の受け入れの問題を多く抱えている場所もある一方で、しっかりと成功している場所もあるということです。

多言語対応でマニュアルを制作し、トレーナーをつけて言語の壁を取り払う環境を構築できている場所や、仕事後に、地域の清掃やお祭り参加を促して、コミュニティへの受け入れを行っている場所もありました。今まで問題ばかりに目を向けていましたが、実際に充実した取り組みをすべく工夫している場所も多く見ることができました。

一方で、環境がひどいところは確実に存在しているという話も聞くので、自身の活動の重要性を再確認しました。

ーー今後の活動目標などはありますか?

出水:1つには、不就学児の数を減らしていくことです。日本において、最大約1万人の子どもが不就学の恐れがあると言われています。

この数値をできるだけ0に近づけて、日本人・外国人ともに学び成長していける環境を構築していきたいです。

松野:技能実習生の課題も含めて、問題を明確化することが直近の目標です。先ほども申した通り、実情が把握できた上で制度づくりに貢献することが重要だと我々は考えています。だからこそ、問題を数値化していき、国内外問わず日本という国が「働きやすい・暮らしやすい」と選ばれる国になれば良いなと思います。

さいごに

企業と消費者団体、NPO法人等が一体になっている生団連だからこそ、「あらゆる価値観を受容する制度づくり」に貢献できているのではないかと感じました。

取材中に出てきた、「マイナスな事例ばかりに注目するのではなくプラスにも注目する」という言葉が特に印象的でした。

外国人受け入れに関しては、言語や制度の壁だけではなく周囲の理解といったコミュニティに落とし込んだ課題も依然として残っていると思います。

だからこそ、「生活者視点」を大切にした、すべての人が働きやすく暮らしやすい制度づくりに期待したいです。

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