生産者の経営まで支援 |「作る」を追求する明治のサステナビリティ推進

#ダイバーシティ#持続可能#開発途上国#食品 2021.10.01

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明治と言えば、チョコレートをはじめ、さまざまなお菓子、牛乳やヨーグルトなど、幅広く商品を展開しており、日本人なら誰もが関わったことがある企業だろう。

国内でSDGsに注目が高まる今、日本を代表する大手食品会社の明治はサステナビリティにどのように取り組んでいるのか。見えてきたのは生産者の経営まで支援し、「作る」を追求する姿勢だった。

今回は、明治ホールディングスのサステナビリティ推進部の3名にさまざまな活動やビジョンについて伺った。

経営陣と密着しながら社内外にサステナビリティの輪を広げる​​サステナビリティ推進部

ーーまずはじめに、自己紹介をお願いします。

山下:明治ホールディングスのサステナビリティ推進部で、企画グループのグループ長をしている、山下です。

2001年に明治製菓(当時)へ入社し、主にチョコレートの開発を担当してきました。直近では「meiji THE Chocolate」などの開発担当をしていました。

藤原:藤原です。2004年に明治製菓(当時)に入社し、菓子の営業を担当しました。2019年10月にサステナビリティ推進部が設立されたと同時に、山下と同じく企画グループの配属になりました。

担当業務は、社内外のサステナビリティに関するコミュニケーション、主にホームページ周りや社外のお客様とのコミュニケーションなどを担当しています。

仲村渠:仲村渠(ナカンダカリ)です。2009年に明治製菓(当時)のMR職(医薬情報担当者)として入社しました。MR、人事を経て2019年10月にサステナビリティ推進部が設立されたと同時に山下、藤原と同じく企画グループの配属になりました。

担当業務は藤原とともに、社内外の方に対する情報発信などを担当しています。

ーーサステナビリティ推進部の役割について教えてください。

山下:明治グループ全体のサステナビリティ活動を推進する部署です。サステナビリティ推進部は2019年に設立されました。企画グループと環境グループという2つのグループに分かれています。

環境グループでは環境に特化した活動を行い、企画グループではそれ以外の活動を行っています。

ーー2019年の前からもサステナビリティと同様の取り組みをされていたのですか?

山下:サステナビリティに通ずる取り組み自体は行っていました。

2019年以前はCSRという形で取り組みをしていましたが、サステナビリティ推進部の設立と同時に、すべて「サステナビリティ」という言葉に置き換えました。

CSRと言うと社会貢献活動に軸足を置く形ですが、将来世代も見据えた持続可能性を追求していく意味で、サステナビリティに置き換えました。

また、明治ホールディングスに、CSO(チーフサステナビリティオフィサー)という役職を設置し、グループ全体でサステナビリティ活動を推進する体制を取り入れています。

サステナビリティ推進部を新設して以降、新しい取り組みが増えました。2018〜19年頃から環境会議や人権会議などの会議体も増え、社内の取り組みはさらに活発化しています。

ーー「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」についても教えてください。

山下:明治は1916年に創業し、100年以上の歴史を持ちます。

これまで100年以上に渡って培ってきた価値を、この先の100年に向けて活用しながら、世界のみなさまが笑顔で健康な毎日を過ごせる未来社会を実現し、デザインしていくことをミッションとして掲げています。

このミッションを実現するため、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」を作成しました。2026年は創業から110年のタイミングで1つの区切りともいえます。

「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」は、「こころとからだの健康に貢献」「環境との調和」「豊かな社会づくり」の3つのテーマと共通のテーマである「持続可能な調達活動」といった4つの柱で構成されています。

各テーマに対して社会課題を選定し、さまざまな活動を行っています。具体的には健康な食生活への貢献や超高齢社会に資する商品サービスの提供、カーボンニュートラルにむけたCO2の排出削減、多様性や人権の尊重、人権尊重の啓発活動などがあります。

どの企業にも求められる活動と、明治らしさが発揮できる活動と2つの視点でみることができますが、明治らしくこころとからだの健康に関する商品やサービスを提供している点が最も特徴的だと思います。

一方で、まだまだ駆け出しの状態ですので、先進的にサステナビリティに取り組まれている企業にしっかりと追いつくように、2023年までには日本で認められるような存在に、2026年までにはグローバルのトップ集団の企業と肩を並べるという目標を掲げています。

「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」の4つの柱【引用:明治ホールディングス 公式サイト(https://www.meiji.com/sustainability/stance/vision-creation/)】

ーーサステナビリティ推進部では、社内での発信も担われていると伺いました。社内に対して、サステナビリティの重要性を伝えていくコミュニケーションはどのように取り組まれているのでしょうか。

仲村渠:社内報などで情報の発信をするだけでなく、直接話をする機会も設けながら社内でも発信を行っています。

2021年4月に、meijiブランド推進リーダーという役割を作り、各職場にリーダーを設置しました。リーダーにはサステナビリティやmeijiブランドの価値向上を図るための活動を推進する役割を担ってもらっています。また、リーダーに向けた理解促進のためのオンライン講座を開き、その内容を職場に広めてもらう活動も始めました。

山下:経営陣とも、頻繁に会話する機会を設けています。CSO、サステナビリティ推進部が事務局を担い、「グループサステナビリティ委員会」を年2回開催しています。

同委員会は、明治ホールディングス(株)代表取締役社長CEOを委員長としており、グループ全体のサステナビリティ活動と経営との融合を推進しています。

ーーサステナビリティを推進して行く上で、苦労した点はありますか?

山下:従業員のサステナビリティへの理解が100%ではないことが挙げられます。人権に関する取り組みを強化するために、人権を尊重していく重要性や必要性を伝えていくことはとても苦労しました。

農場で培った知見で酪農家をサポートする明治の生産者支援

ーー サステナビリティに関してどんな取り組みを行っていますか?

山下:明治ならではの取り組みとして、まず酪農家さんの経営を支援する活動を行っています。

基本的に牛乳がお客様に届くまでには、農家さんが絞った生乳を農協などで集乳し、乳業メーカーが流通を通して、お客様に届けていくという仕組みになっています。

直接、酪農家の現場に乳業メーカーが介入することは難しいのですが、「明治おいしい牛乳」を作るためには、品質の安定化や酪農家のみなさんの経営や生活が安定すべきだという考え方で、酪農家の支援をはじめました。

ーー酪農家のみなさんの経営状態は、どのような現状なのでしょうか。

山下:後継者不足が大きな問題になっています。乳牛の世話も、とても大変で手間暇がかかる仕事です。

牛乳を安定的に、手に取りやすい価格で届けていくには多くの苦労がかかっています。多くの酪農家は、決して楽な経営状態ではないのが現状のようです。

この課題解決に向けて明治グループが実施しているのが、酪農家の生活向上と高品質で持続可能な生乳の調達を実現するための取り組みとしての生産者経営支援活動(MDA:Meiji Dairy Advisory)です。

生産者経営支援活動(MDA:Meiji Dairy Advisory)

ーーMDAでは、具体的にどのような取り組みを行っているのですか?

山下:MDAには3つのテーマで取り組んでいます。

1つ目は、「日常改善」で、整理整頓や掃除洗濯などの生活の改善、技能実習生の方々に向けた勉強会の開催などを行っています。

2つ目は、経営理念や経営目標を立てていく「目標改善」です。酪農家の経営は、家族経営が多いため、会社の組織の形をつくるための目標設定などをサポートする活動です。

3つ目は、組織として機能させるための「人材育成の改善」です。

こうした3つの改善を行っています。

明治には、酪農部という部署があり、全国に酪農事務所を構えて酪農家の所に酪農部のメンバーが訪問し、牛舎の掃除の方法、掃除をするタイミング、乳搾りの器具の使い方や洗う頻度などの指導を行っています。

技術と生活を、現地から直接支援

ーーチョコレートに関わる部分でも生産者の支援などは行っているのでしょうか。

山下:「メイジ・カカオ・サポート(MCS)」という取り組みを行っています。2006年から開始した活動で、社員がカカオ原産国の農家へ直接行き、コミュニケーションをとり、現地の方が本当に必要とする支援を行う活動です。

現在、世界9ヵ国に支援活動を行なっています。MCSには2つの方向性があります。

1つ目は「技術支援」です。カカオは、カカオポッド(カカオの実)の中にある種を発酵させることにより、チョコレートにしたときの味と香りを出します。この発酵方法が、チョコレートの美味しさの5割から7割を決めると言われています。

実はチョコレートを美味しくする方法を農家の方が知らないことがあります。その方法を明治の社員が現地の農家さんと一緒になって、いろいろな実験や発酵の条件をテストし、ディスカッションをしながらチョコレートを美味しくしていく技術支援を行っています。

カカオは品質が悪いと買い叩かれてしまうことがあるのですが、きちんとした条件で作ってくださったカカオは、明治が適正な価格で買い続ける約束をしながら技術支援をしており、農家さんの生活の安定、向上につながると考えています。

2つ目は「生活文化面での支援」です。例えば、子供が何時間も歩いて水を汲みにいかなくても良いように井戸を寄贈したり、マラリアなどの感染症が流行りやすい場所では、蚊帳を寄贈したり、子どもたちの心の豊かさを支援するため、絵を描く経験がない子どもたちと一緒にカカオの絵を描く授業を実施するなどの活動をしています。

MCSグループ・ディスカッション

ーー現地にまで入り込んで具体的な取り組みをするMCSですが、チョコレートを美味しくするノウハウなどはどのように培われたのでしょうか?

藤原:私たちは、「どのように木を育て」「どのように農園を作り」「農家さんがどのような生活をしているか」など、周りの環境まできちんと大事にしなければならないという考えのもと、美味しいチョコレート作りに取り組んでいます。

通常は、チョコレートをより効率的に作ろうとするので、この考えにはならないと思います。しかし、明治は現地の環境を考えてチョコレート作りをしたいという、チョコレートに関してマニアな人が多く、「本当に美味しいチョコレートづくりを極めたい」というマインドが流れています。

「明治ミルクチョコレート」は1926年に発売し、95年が経ちました。初めは良いカカオ豆を商社から買って、チョコレートにしていました。しかし、チョコレート作りを追求して極めていくにあたり、カカオ豆自体がどのように作られているのかを自分たちの目で見たことがなく、何が正しいのかもよく分からないという課題に気付きました。

そこで、原産国の方々とコミュニケーションを取り、現地の人たちや土地が抱える問題がリアルに見えるようになり、それがMCSに繋がっていきました。

2026年のビジョン達成に向けて

ーー今後の展望を教えてください。

山下:2026年までにビジョンを達成するために、特に環境と人権尊重に関する活動を強化していきたいです。

環境活動では、カーボンニュートラルにさらに積極的に取り組んでいきます。自社拠点のCO2排出量削減の目標をかかげており、できる限り再生可能エネルギーへの切り替えや、フロンガスを排出しない設備の導入などを行っています。今後もできるところから順次、取り組みを積み重ねていきたいと思います。

人権尊重では、特にダイバーシティに関して、社内の多様性尊重に関する活動を強化し始めています。

サプライチェーン全体における人権尊重に関しても、現在、明治グループのサプライチェーン上にどのような課題があるのか、現状把握から始めているところです。

さいごに

原料の調達段階から責任を持ち、現地に入り込んでまでサステナビリティ活動に取り組む明治。自社のノウハウを生かしたサステナビリティ推進の1つの先進的な事例とも言えるだろう。

0から責任を持ち、妥協を許さない徹底的な姿勢は、どの企業にも見習うべきものがあるだろう。2026年に向け、グループ全体でサステナビリティを追求していく、明治のこれからに目が離せない。

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