【更新日:2022年7月13日 by 三浦莉奈】
株式会社モスフードサービスは、モスバーガーを全国に1250店舗を展開し、地域密着型の暖かい店づくりで多くの人に愛されている。
今回は、株式会社モスフードサービス 社会共創(SDGs)グループの松田様と飯田様を取材し、SDGs推進体制や具体的な取り組みについて伺った。社会共創(SDGs)グループでは、同社が掲げる経営理念「人間貢献・社会貢献」、創業の心、基本方針、経営ビジョンの4つの言葉から成る「モスの心」をもとに全国の店舗と一緒にSDGsへの取り組みを推進しているという。
モスバーガー独自の目標を新たに定めるなど、“モスらしさ”が溢れるSDGsの取り組みに注目だ。
見出し
「人間貢献・社会貢献」と「モスの心」を大切に
ーーまずはじめに、自己紹介をお願いします。お2人のおすすめのハンバーガーも教えてください!
松田:社会共創(SDGs)グループの責任者の松田と申します。
SDGsの推進と、社会貢献活動や環境活動の推進部門になります。
1992年に入社してから、営業事務や総務、教育部門でのマニュアル管理などを担当し2000年から13年間広報に所属した後、今の部署の前身となる社会環境グループに配属されました。
おすすめのハンバーガーは「モスチーズバーガー」です!
飯田:飯田と申します。1992年に入社し総務・商品開発など幅広く部署を経験してきました。商品開発では、デザートとドリンクの開発を行っていました。そして、現在は店舗で働くメンバー向けの教育ツールであるSDGs通信の発行などSDGs推進やモスフードサービスの社会貢献活動の業務に携わっています。
おすすめのハンバーガーは「テリヤキチキンバーガー」です!
ーーモスバーガーはどのようなビジョンを掲げているのか教えてください。
松田:私たちモスフードサービスは、経営理念「人間貢献・社会貢献」と、創業の心、基本方針、経営ビジョンの4つの言葉から構成される理念体系を「モスの心」と定めています。この中でも経営理念である「人間貢献・社会貢献」は一番大切にしている理念です。
また、創業者がなぜモスバーガーを始めたのかについて語るために使っていた「創業の心」という言葉やモスバーガー基本方針も重要な存在です。これらは、お店で働くキャストも毎日入店の際に唱和を行い、心にとめながら仕事を行っています。
CSR推進室から社会共創(SDGs)グループへ。トップダウンの情報発信で迅速な改革を図る
ーー以前あったCSR推進室から社会共創(SDGs)グループの創設に至った経緯を教えてください。
松田:社会共創(SDGs)グループは、2019年に誕生しました。それまでは、CSR推進室のもとで、環境推進と社会貢献活動を中心にチェーンの後方支援にあたっていました。
SDGsは、2017年から本格的な対応の検討を開始し、2018年版のコミュニケーションレポートではじめて具体的な取り組みとの関連について触れました。
そして、中期経営計画の策定にあわせ、2019年度の組織変更でCSR推進室がリスク・コンプライアンス室となったのにあわせ、現在の会長・社長室へ移設。同じ室の中には広報IRグループがあり、社長直轄での情報発信を実現する体制にしたことで、さまざまな施策を迅速に勧められるようになったと感じています。
ーーSDGsにシフトチェンジしたきっかけや理由を教えてください。
松田:主に2つの側面からSDGsの重要性を感じたことが大きなきっかけです。
1つはIRの観点です。企業を経営していく上で、SDGsを意識しなければ投資の世界で置いて行かれてしまうと感じたからです。
2つ目は、お客様やアルバイトの学生をはじめとする若い世代は、すでにSDGsに触れています。お店の最前線に立つ、店舗メンバーの方々がSDGsで会話ができるようになる必要があります。
だからこそ、お店の運営に携わる店長や社員、キャストに、まずはSDGsの存在を知ってもらいたいと考えました。
17の目標より、169のターゲットに着目したからこそ見えてきた「深刻な問題」
ーーSDGsを推進する上で、どのようなステップを踏んだのでしょうか。
松田:当時は、169のターゲットを全て読み込むところから始めました。17個のゴールには、「ポジティブな意味での目標」が描かれていましたが、169個のターゲットを読み込むと17のゴールには記載されていない「深刻な問題」が隠れているとわかってきました。
もちろん、モスバーガーの経営方針から捉えるとSDGsへの取り組みは「良い世の中を作ろう」というポジティブな認識で共通しています。
ですが、169個のターゲットに細かく注目してみると「SDGsは簡単ではなく、しっかりとした目標や計画などあるべき姿を見定めてから進まなければ成し遂げられない」とひしひしと感じるようになりました。
また、実際に細かく目を通したことで、SDGsの各目標とモスバーガーで推進している取り組みとの関連性が可視化されたんです。その上で、全国のオーナーに「現在のモスバーガーで当たり前になっている取り組みが、着実にSDGs目標に繋がっていること」を伝えてこそ、SDGsを推進することになると考えました。
ーー社内でSDGsが大きく動いたと感じる出来事などはありましたか?
松田:社長が全国のオーナーに翌年度のチェーン運営方針を説明する際に、SDGsを盛り込んだ時です。2019年の3月に社会共創(SDGs)グループが正式に誕生するタイミングでした。
加盟店のオーナーに対して、社長の言葉で初めてSDGsについて語られたという意味で全社が動いたと感じました。
また、マテリアリティを特定した2020年3月も大きく動いた時です。モスバーガーが取り組む重要課題を4つ挙げ、その4つの課題に繋がる6つのSDGsのゴールを提示しました。
169のターゲットを確認した上で、最終的に6つのゴールを提示できたことは大きなステップアップだったと思います。
「この街にモスがあって良かった。」と言われるように。フランチャイズ展開だからこそ、地域密着型でSDGsを推進していく。
ーーオーナーさんというお話がありましたが、フランチャイズで展開されているからこそ大切にされていることは?
松田:全国のモスバーガー1250店舗のほとんどがフランチャイズで展開していますので、1店1店がオーナーさんの持ち物です。オーナーさんが自らのお店を地元で開いていることになるんです。
つまり、どのお店も創業者がいて、自身の心を大切にしていることになります。「この街で愛されるお店になりたい。この街にモスがあって良かったといわれるお店でありたい。」という気持ちを持ってお店を運営しているからこそ、お店の周辺を丁寧に掃除するところから1人のお客様に向き合う姿勢に繋がっています。
私たちはこのように心を持ってお店を展開することを「フランチャイズ・ボランタリー・チェーン」と呼んでいます。
また、SDGsの推進という観点からはオーナー・店長・社員・キャストといったお店運営に関わる人材の教育ツールとしてSDGs通信を2ヶ月に1度のタイミングで発信しています。毎号3つのゴールを選び、SDGsとモスの取り組みを特集してご紹介しています。
2005年から続くモスの食育活動。コロナ禍でも形を変えて食の大切さを子ども達に発信
ーー具体的に推進しているSDGsの取り組みを教えてください。
飯田:モスバーガーでは2005年から継続して食の楽しさや大切さを伝えるため、地域の近隣店舗のメンバーが小学校に出向いて出張授業を行ってきました。
一緒にテリヤキバーガーを作る体験を通じて食の大切さを伝える「地元密着型の食育活動」を続けてきました。
しかし、2020年から新型コロナウイルスの影響で中止になってしまい、食の大切さを子ども達に伝える機会がなくなってしまったんです。
そこでコロナ禍での新しい食育活動の在り方を探し、1つは、さまざまな大人と触れ合う機会が少ない離島の学校や少人数校と企業を繋ぐオンライン授業を展開している一般社団法人「プロフェッショナルをすべての学校に」に出会い、オリジナル教材を使い、子どもたちが主体的に考え、地域産業や食への興味を引き出す授業を行っています。
2つ目は、モスバーガーを事例に「食の大切さ」や「食品ロス」について学ぶことができる学校指導要領に沿った家庭科の副教材を製作しました。副教材は、小学校5,6年生に向けて配布し、授業で活用したり、家庭に持ち帰って保護者の方と読んだりできるようなものになっています。
17+モス独自の目標。「日本ならでは」「モスならでは」を意識し、心の安らぎと暖かさを提供していく
ーー御社では独自の目標として基本方針にある「心のやすらぎ」「ほのぼのとした暖かさ」を世界の人々に広げていくことを挙げられています。こちらの目標を設けたきっかけは何ですか?
飯田:SDGsの目標は17個ですが、SDGs17のゴールとともに大切にしたいモス独自の目指す未来があると考えています。
「モスの心」にある「心のやすらぎ」「ほのぼのとした暖かさ」という日本生まれ・日本育ちのモスフードサービスらしい価値観を世界の人々に広げていきたいという未来です。世界の目標とともにモスグループ独自の目指す未来を描くことは、経営理念「人間貢献・社会貢献」の実現であり、それが世界平和にもつながっているととらえて、日々の業務をお客さまの笑顔につなげていきたいと思っています。
おわりに
地元にあるモスバーガーのお店に行くと、いつも暖かいなと感じることがあった。それには、独自の「心のやすらぎ」と「ほのぼとした暖かさ」を大切にした目標を掲げ、地域密着型のお店として1店1店がより良い社会のために貢献する姿があるからだと感じた。
SDGsの推進に向けて、17の目標から取り掛かるのではなく、169のターゲットと今の取り組みの繋がりを照らし合わせたというお話も印象的だった。
着実に今の取り組みがどこに繋がっているのかを認識しておくことが、次の動きに繋がるのかもしれない。