1000トンの廃棄バナナをゼロに|ドールのもったいないバナナプロジェクト

2022.02.08

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

2017年の国際連合食糧農業機関の報告書によると、世界では食料生産量の約3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されています。

日本はそのうち約612万トンの食品ロスが発生しており、日本人1人当たり、お茶碗1杯分のごはんが毎日捨てられている計算になります。

そんな状況の中、ドールでは傷ついたり、熟しすぎてしまっているような「規格外」とされている、まだ食べられるバナナの廃棄0を目指す、もったいないバナナプロジェクトを行っています。

今回はこの取り組みを立ち上げたドールの成瀬さんにお話を伺いました。私たち消費者からは見えにくい、バナナの「廃棄」の現状などが見えてきます。

「もったいない」の概念を世界に|ドールの「もったいないバナナ」プロジェクト

ーー自己紹介をお願いします。

2021年4月からドールのマーケティング部に所属しております、成瀬と申します。

ドールは大きく分けて生鮮フルーツの「フレッシュフルーツ」と、缶詰や冷凍など加工フル-ツである「パッケージフード」の2つの商品カテゴリーを扱っています。

2013年に伊藤忠商事がパッケージフードのグローバルのオペレーションとアジアの領域のフレッシュフルーツを買収し、このパッケージフードのブランドビジネスをドールとしてもっと強化していくことになりました。私は現在、伊藤忠商事から出向中なのですが、伊藤忠商事にいた8年ほど前から株式会社ドールの担当をしておりました。

ーーバナナの「廃棄」の現状について教えてください。

ドールはフィリピンとエクアドルに自社の農園を所有しています。その農園では日本向けだけで、年間約1800万トンものバナナを出荷しており、年間約1000トンの規格外バナナが発生しています。

廃棄バナナには大きく分けて2種類あります。1つは生産段階で現地の農園で規格外として廃棄されてしまうバナナです。この廃棄バナナに関しては、加工食品の原料として加工、使用するプロジェクトを進めています。

もう1つは流通過程で廃棄されてしまうバナナです。そもそも輸入されるバナナは基本的に青い状態のままであり、輸入後にオーダーに応じて追熟させています。

その過程でどうしても皮が傷ついてしまったり、熟度が熟しすぎてしまっているようなバナナが出てくるので、そういったバナナを規格外として廃棄していました。

流通過程で廃棄されるバナナは、これまで動物園で動物のエサやバイオマスエネルギー原料として提供し、なるべく廃棄を避ける仕組みをとっていました。そのため現在廃棄されるバナナはごく一部になっています。

この様な取り組みをより多くの皆様に知って頂くことを目的として、ドールとして2020年に表明した「ドールプロミス」のうち2025年までにフルーツ廃棄物ゼロを目標として「もったいないバナナプロジェクト」を始動することにしました。

ーーもったいないバナナプロジェクトは具体的にどのような内容のプロジェクトですか?

2021年の4月に私がドールに出向して立ち上げたプロジェクトです。

どんな食品でも、どんなフルーツでも規格外のものは流通過程上である程度発生してしまいます。この現実は伊藤忠商事時代の業務の中でも、目にする事がありました。この現実を何とかできないかと、伊藤忠商事にいる頃から考えていました。

しかし、当時はまだ「SDGs」の概念もなく社会の風潮がまだ追いついていない状況で、商社の立場だとなかなか取り組むことができませんでした。

ただ、ドールに出向した2021年には、SDGsが世間的に注目を集めるようになっていました。

ドールでもSDGs実現に向けて何ができるかを「ドールプロミス」という約束に落とし込み、表明し、とてもいいタイミングだったので、規格外のバナナを廃棄せず、バナナジュースの原材料として使っていくという「もったいないプロジェクト」を立ち上げました。このような取り組みにより、具体的に食品ロスについて消費者の方に理解していただけるキャンペーンにもなっています。

プロジェクト名に敢えて「もったいない」という言葉を使うことで、消費者の皆さんにこの現状を実感していただけます。

「川上」から「川下」までみんなでつくる|ドールがつくるサプライチェーンマネジメント

ーー実際このプロジェクトを立ち上げたときに苦労されたことはありましたか?

企業側がSDGsを推進していくとなると、どうしても利益追求を目的としているように見られてしまいがちです。しかしそうではなくて、ドールのビジョンや考えを、誠実に正確に消費者に伝えていくことに苦労しましたし、今でも我々の取り組みを正確に伝えて理解してもらう表現を工夫して考えています。

また、現地の農園も含めてドールなので、現地の労働環境なども含めてサプライチェーン全体で真摯に課題解決に向けて取り組んでいるのかが伝わるように、誠実に事実関係を整理することも大切にしています。

川上から川下まで関与できている伊藤忠商事とドールだからこそ、サプライチェーンでのSDGsへの取り組みがいち早くできたと感じています。

ーー実際のお客さんの反応はどうですか?

2021年9月29日のプレスリリース以降、お客様や他社様に賛同いただいています。

ドールの問合せ相談室にも、「ぜひ一緒に取り組んでいきたい」という企業や学校からのオファーが来ています。

最近では高校や大学などのカリキュラムの一環で、SDGs実現に向けた企画立案のプログラムを学生が行うようなものもあります。そういったプログラムに取り組む学生から「ニュースで見て一緒にやりたいと思っています。何か取り組めませんか?」というご連絡をいただきました。

思った以上に消費者の方はこういった話題に興味関心があるようで、近年は何かやりたいと思っていて、その方法を探している方が見つけやすい環境になりつつあると感じました。
ドールが何か一つでも賛同できるような機会を用意すると、そこに参画したいと思われる人はすごく多いと実感しています。

特設サイトでも賛同企業を募集しています。ぜひ多くの方や企業とお取組みができればと思います。

ーー今まで廃棄していたフルーツを販売して卸せるというのは、ビジネス的にもドールにとってはメリットとなるのでしょうか?

ビジネス面よりもやはり産地や農園で働いている方にしっかり還元していくことが重要と考えています。このプロジェクトも「規格外でも、皮剥いて食べたら品質も味も変わらないよ」ということを伝えるのが一番大切なコンセプトになっています。

規格外で捨てられてしまっているから、安かろう悪かろうではなく地球にとっては大切な資源ということをしっかり発信していくことを、ドールでは大事にしています。

ーー今後のビジョンなどがあれば教えてください。

Mottainai Bananaプロジェクトについては、今後はバナナ以外のフルーツにも横展開し、ドールがリーディングカンパニーとして国内における「フードロス削減」のリテラシー向上を目指してまいります。
また、先ほど申し上げた、産地廃棄されているバナナの再活用に力を入れています。

産地で廃棄されているバナナを、ピューレや冷凍加工する形を作っています。日本に持ってきて「もったいないバナナ」の加工食品として、スーパーとかコンビニで手に取っていただける商品で「もったいないバナナ」を活用していくところを次のステップとしています。

味は変わらない|「もったいないバナナ」のバナナジュース

実際に「もったいないバナナ」を使用してバナナジュースを販売する7daysBANANA 表参道店 店長の榊原さんにもお話を伺いました。

ーー規格外のバナナを使用することで作業工程に何か変化はありましたか?

オペレーションは変わりませんでした。ですので「もったいないバナナプロジェクト」に参加することで、新たに何かを負担したわけではありませんでした。

ーー実際に来店されるお客さんの反応などはいかがでしたか?

「もったいないバナナ」を使用する前からの常連さんは、最初少はし不安はあったようで、「味が違うの?」などと聞かれることもありました。

しかし、実際に「もったいないバナナ」を使用したジュースを口にしていただくと「何も変わっていないね」という反応をいただきました。

さいごに

普段スーパーなどに陳列されているバナナはすべて「規格内」のバナナである。

私たちが目にすることもない「規格外」のバナナの廃棄をゼロにするという想いは、バナナ生産のサプライチェーンを熟知しているからこそ生まれるのかもしれない。

私たちはまずこういった商品が存在していることを知ることから始めるべきだと思う。

最終消費者の目から見えない生産・流通などの「過程」に目を向けることは非常に大切であると感じた。

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