近年、企業経営において「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という言葉を耳にすることが増えました。
企業が事業を通してD&Iを行うことの真の意義は何でしょうか。
今回は、「D&I・働き方」の観点から、豊富なカー用品を取り揃え、国内外の豊かなカーライフを支える株式会社オートバックスセブン(以下、オートバックスセブン)を取材しました。
オートバックスセブンでは、今年4月からD&I推進部を開設し、全社的にD&Iを推進しています。
今回は、特別インタビュー後編として、「D&I・働き方」の観点から人事担当の佐古様と坂田様にお話を伺いました。
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全社的にD&Iを進めていくために新設されたD&I推進部
ーー自己紹介をお願いいたします。
佐古:佐古と申します。オートバックスセブンには2005年に中途入社しました。最初はコンプライアンス推進室に配属され、その後、内部統制管理部、経営企画部を経て人事部に異動し、今年度よりD&I推進部で主にD&Iを推進するための採用・教育を主に担当しています。
坂田:坂田と申します。新卒で入社後は店舗勤務をしていました。その後、教育部門に所属し、2回の出産育休を経て、現在の人事部に異動しました。人事領域では、教育や制度に従事しております。
オートバックスセブンでは、今年4月に組織の改編が行われた。
組織の改編に伴い、人事部がD&I推進部に、人事企画部が人事部となりそれぞれ名称の変更も行われている。
ーー組織改編には、何か理由があったのでしょうか?
佐古:当社では、多様な人材が活躍し組織に異なる視点をもたらすことがイノベーションの源泉となり企業価値をより高めるとの考えのもと、グループの成長戦略の一つとしてダイバーシティ&インクルージョンを位置づけています。
人事領域の組織改編には、ダイバーシティ&インクルージョンを全社的かつ確実に推進する狙いがあります。
「ダイバーシティ」のうち特に女性については、業界ならではの課題意識がありました。自動車業界は、以前に比べて徐々に女性活躍が推進されてきていますが、他業界と比較しても依然として女性の活躍に関して課題があると感じています。
ですが、女性活躍のみに焦点を当てるのではなく、性別・年齢・国籍・身体的特徴などの外見的・表面的なダイバーシティを、能力・経験・価値観などの内面的なダイバーシティ、つまり「知のダイバーシティ」に置き換え、いかに全社的に「知」を融合させていくかがD&I推進部に期待されていると思います。
採用と教育の両軸で多様な価値観との出会いを創出する。オートバックスセブンの「寄り添うD&I」
ーーもともと女性の割合が少なかったということですが、どれくらいの比率だったのでしょうか。
佐古:女性活躍推進法が施行された2015年当時、女性の従業員比率は13.6%でした。
現在(2021年の4月1日時点)は、20.9%に増加しています。
ーー約10%上昇していますね。女性活躍推進法の施行後からD&Iに関して、さまざまな取り組みをなさってきたということですが、現在は具体的にどのような取り組みをされているのですか?
佐古:採用強化と社内向けの啓発の両軸で取り組みを進めています。
ーー採用では具体的にどのような取り組みをしているのですか?
佐古:「知のダイバーシティ」をキーワードにして、あらゆるバックグラウンドを持つ方の採用強化を進めています。
具体的には、中途採用の強化や外国人の方の採用、連結子会社からの中核人材の人員配置などです。さまざまな価値観や経験を持つ方がご自身の強みを活かして働くことができるような環境づくりに励んでいます。
また、社内向けの啓発では、特に研修に力を入れています。
女性社員を対象に、女性役員や活躍している先輩社員の話を聞く機会を設けたり、外部から講師を招いて、具体的な働き方やキャリアプランの形成について考える機会をつくっています。
また、最近では部長クラスの社員を対象に、ダイバーシティの真の意義や現場の社員が感じている考え方を知ってもらうことを目的とした研修を行いました。女性社員も含めて部下が普段感じていることを共有することで、指導側として部下のキャリアサポートを考える機会になりました。
今後は、課長クラスの社員にも広げていき、社内全体でダイバーシティに関する意識の共有を図っていきたいです。
仕事の場を通してロールモデルに出会う機会を設けるなど、一人ひとりに寄り添う職場環境をつくりたいと思っています。
「拠点」を選べる。社員の事情に合わせて、柔軟な働き方を支援
ーーオートバックスセブンでの働き方改革はどのように行われてきましたか?
坂田:働き方改革は、社内でSDGsを推進する前から積極的に取り組んでいる分野です。
特に、フレックス制度やテレワークの普及・自宅以外の弊社で契約している場所で自由に働ける制度といった、柔軟な働き方の支援を行っています。
ーー社員一人ひとりに合わせて働ける環境が構築されてきているんですね。
坂田:完全な状態ではないものの、制度として社員の事情に柔軟に寄り添う環境を構築できていると感じています。
弊社では「転勤しない働き方」を選択できる制度もあります。実際に、所属拠点の異動があり、以前であれば転勤が必要だった方も、上長の承認は必要ですが「転勤しない」ということを選択することも可能となっています。
部下から上司に対しても評価を行う。双方向の評価制度で本人の能力が最大限生かされる環境構築
ーー社内の働き方の中でオートバックスセブンならではの取り組みはありますか?
坂田:評価軸の設定は、弊社ならではの特徴があると思います。
一般的に、評価は上司から部下に対して行われる形態ですが、弊社では部下から上司に対する評価も実施しています。
上司から部下に対しては部門で設定した行動指針に沿って評価軸」をもとに評価が行われます。部下から上司に対しては、「上司が行動指針に対して、どのような働きかけを行っていたか」を評価します。
ーー双方向の評価制度があるんですね。こちらの取り組みは、いつ頃から行われていたのですか?
坂田:部下が上司の評価をする仕組みは10年以上前から行っています。
部下からは上司ですと、上司のマネジメントを評価する、マネジメント評価というものを実施しております。
弊社では、成果や目の前の数字だけではなく「本人の持っている能力、ポジションごとに求められている能力がしっかりと発揮できているか、行動が出来ているか」という軸も大切な評価軸だと考えています。
ーー実際に運用する中でのメリットなどはありましたか?
坂田:2つあったと感じています。
1つ目は、社内全体の働き方の効率化や改善に繋がったことです。一般的に「評価する側」の部門長が「評価される側」になるので、普段の業務をどのように改善すべきなのか、より意識して仕事するきっかけになったと思います。
2つ目は、部下からの積極的な発信により、業務の課題が可視化されることです。基本的に部下は点数で評価をつけるのですが、中には良いコメントや改善点をコメントに書いてくれる社員もいるんです。そうした積極的な発信が、部下・上司両者の業務に対する意識を上げています。
年齢・性別・国籍関係なく、自らが目指すキャリアを実現できる会社を目指したい。
ーー最後にこれからの展望を教えてください。
佐古:年齢・性別・国籍など関係なく、自らが目指すキャリアを実現できる会社にしていきたいと考えています。
どうしても時代の流れで、女性活躍など、「女性」という言葉が一人歩きしがちですが、あくまでも平等に、そして公正に。評価や研修・教育を通して、社員それぞれが自ら思い描くキャリアを進んでいけるような会社にしていきたいです。
坂田:これは本当に個人的な想いですが、「この会社で働いていて楽しい・良かった」という言葉が自然と出てくるような人たちが集まれる、集まっている会社であってほしいなと思っています。
そのために、働き方・制度・採用・環境など、すべてにおいて整備をしていきたいです。
さいごに
D&Iと一言でまとめるのではなく、社員一人ひとりが持つ価値が最大限に活かされる環境づくりが印象的でした。
また、事業としての軸を捉えつつも、「社内外の人が持つ互いの価値観を相互理解する場合」が事業や制度を通じて創出されているとも感じました。
属性に焦点を当てるのではなく、社員一人ひとりの想いを尊重できる環境づくりこそが、事業を通した「働きがい」に繋がるのだと感じたインタビューでした。