SDGs目標14「海の豊さを守ろう」とは?現状や日本と世界の取り組み・個人でできることを紹介

#SDGs目標14#技術#持続可能#環境 2021.02.12

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【更新日:2023年11月17日 by 田所莉沙

海は、私たちが生きているこの地球の約7割の面積を占めています。そして、海洋と沿岸の生物多様性に生計を依存している人々は約30億人を超えています。

この数から海洋と海洋資源を保全することがSDGsの目標でもある持続可能な社会へと繋がる鍵を握っていることが分かります。

しかし、この海洋と海洋資源が海へ流れ込むゴミが原因で甚大な被害を受けていることをご存知ですか。このままでは、生態系だけでなく、環境や経済に大きな影響を及ぼしてしまいます。

今回の記事では、SDGs目標14「海の豊さを守ろう」についてわかりやすく解説しています。さらに現状や日本と世界の取り組みや個人でできることも紹介していますので、SDGs目標14が重要であることをきちんと理解してください。

見出し

目標14「海の豊かさを守ろう」

目標14「海の豊かさを守ろう」の内容

目標14は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」のテーマのもと、10個のターゲットから構成されています。

私たちは海の存在なしに生活を営むことはできません。例えば、地球上の酸素の3分の2は、海面に近いところに住む植物プランクトンや海藻類によって生成されてると言われています。

また、海洋資源の存在も欠かせません。魚介類だけでなく、さまざまな資源を人間は海から得て生活をしています。プラスチックごみや工業排水、油などによって海洋汚染が引き起こされることで、海の生態系に悪影響を及ぼしています。

(参考:SDGs|目標14 海の豊かさを守ろう|プラスチックの量が魚を超える? (sdgs-support.or.jp)

なぜ目標14「海の豊さを守ろう」が必要なのか?2つの理由

海は地球のあらゆる命のみなもとでもあり、生計を依存している人々の数は30億人を超えています。海の豊さを守ることは、世界の海洋と海洋資源を保全し、持続可能な社会を形成するためには必要不可欠です。では具体的になぜ必要なのかをみていきます。

理由1:気候変動緩和につながる

海には食料や医薬品、バイオ燃料などの製品を含め、多様な天然資源が存在しています。それだけではなく、海は、廃棄物や汚染物質の分解と排除をする役割をになっており、沿岸生態系は激しい暴風雨の被害を軽減する衝動としての役割も同時に担っています。

このように、海は私たちが生存するための食べものだけではなく、持続的に生態系を維持していくため気候変動緩和に向けた取り組みを手助けしてくれています。

理由2:ジェンダーの平等促進に役立つ

また、冒頭でも記載した通り現在海洋と沿岸部によって恩恵を受け生計を立てている人々は30億人おり、それを主に支える漁業従事者の数は3億人にのぼります。
世界全体でも海洋と沿岸の資源と産業の市場価値は年間3兆ドルと、全世界のGDPの約5%に相当していることからも、海は魚などの漁業を通じて所得を生み、貧困の削減にも貢献しています。

そのうち漁業関係に携わる女性の割合は約50%となっていることからもジェンダーの平等削減にも役立っています。

「海の豊かさを守ろう」のターゲットと解決方法

SDGsにおけるターゲットとは「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことを指します。目標14「海の豊かさを守ろう」には7つのポイント(14.1-14.7)と3つ(14.a-14.c)のアプローチ方法が明示されています。

CHECK!!
「1-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「1-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。
14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し対処する。
14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する**。

**現在進行中の世界貿易機関(WTO)交渉およびWTOドーハ開発アジェンダ、ならびに香港閣僚宣言のマンデートを考慮。

14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.a 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.b 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14.c 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。
ウミガメの様子

海の現状

現在、世界では海洋汚染が深刻な問題となっています。このまま何の対策も行わなければ2050年には海洋に住む魚などの生物よりもごみの方が多くなるとも言われています。

海洋ごみの中でも特に深刻なのは海洋プラスチックごみですが、様々な理由から海洋汚染が進んでいます。

深刻な海洋汚染

この写真が何だか分かりますか?

これはイギリスの公共放送BBCの科学番組「パーフェクト・プラネット」 のエピソードの1つ「オーシャンズ」で収録されているもので、同番組の撮影監督であるバーティ・グレゴリー氏が1月中旬、自身のInstagramに投稿した「クジラの食事のシーン」です。

「クジラが立ち泳ぎをするという異常な行動は、海洋汚染が関係しています。

このクジラが生息するタイランド湾で海洋汚染が進み、低酸素な環境が引き起こされています。低酸素な状態では、魚たちは水の表面近くでしか息ができず、本来の水中を泳ぎ回るのではなく、表面に生息せざるを得なくなりました。その結果、魚たちを食べる鯨は泳ぎながら魚を食べることができず、立ち泳ぎをして魚を捕食していたのです。

海洋汚染は不法投棄などの海洋ごみの出現や船舶事故・生活排水による汚染から起こります。

海洋汚染の主な原因の大半が海洋ゴミによる汚染

ここからは、海洋汚染の原因について解説していきます。
まず、海洋汚染の主な原因は海洋ゴミによる汚染です。

海洋ごみの7〜8割は街から発生しており、雨が降った際などに路上のごみが川や水路に流出し、海へ至ります。

海洋ごみの半分以上を占めるプラスチックごみは、その素材の性質上滞留期間が長く、中には400年以上海の中を漂うものもあります。このプラスチックごみだけをとっても、世界に合計1億5,000万トン以上の量が存在しているといわれ、毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)に及ぶ量が新たに流れ出ていると推定されています。

環境庁によると毎年海に流出するプラスチックごみのうち2〜6万トンが日本から発生したもので、ごみを集積している地点からの漏洩や、災害時の応急処置で使用され経年劣化した製品や農業資材の流出しているとされています。

また海は陸に比べて物を捨てても見つかりにくく、毎年不法投棄する人が増えているのも海洋ごみが発生する原因の一つになっています。

関連記事:ゴミ問題とSDGs|企業のゴミ問題への取り組み事例まで解説

船の船舶事故による油の流出

技術が発展した2000年代に入ってからも何度も船舶事故は起こっています。この船舶事故を原因として船の廃材がごみになったり、石油が流出して汚染が起こったりするケースもあります。

近年で大きな船舶事故による汚染が起こったのは「わかしお座礁石油流出事故」です。これは、2020年にばら積み貨物船わかしお(WAKASHIO)がモーリシャス沖で座礁した事故で、石油流出が大きな問題になりました。もちろん海に石油が流れることは大きな問題なのですが特にこの事故は環境保護の対象となっている2つの海洋生態系と、国際的に貴重な湿地帯である自然保護区ブルー・ベイ・マリーン・パークの近くで起きたということもあり、生態系への心配からより多くの波紋を呼びました。

生活排水の90%は未処理のまま放流

世界の生活排水の90%は未処理のまま放流されていると言われています。

特にアジアやアフリカなどの途上国では排水処理率が低く、し尿・排水管理はほぼ手付かずの状態で垂れ流されています。

日本でも、水質汚濁防止法などの各種規制が敷かれてからは産業排水が原因の汚染は減少しましたが、生活排水による汚染は未だに解決されていません。生活排水による汚染が進む原因には、都市部への人口集中など、人々のライフスタイルやまちづくりと深く関係しています。そのため、行政からの規制だけで生活排水の問題を解決するのは難しく、一人ひとりのライフスタイルと価値観の変容が必要不可欠です。

(参考:立ち泳ぎするクジラの映像がSNSで拡散 ⇒ 海洋汚染の結果だった(ハフポスト日本版) – Yahoo!ニュース
(参考:水質汚染最大の原因は生活排水?現状や理由を紹介|アピステコラム|冷却・防塵・放熱など熱対策ならアピステ (apiste.co.jp)
(参考:モーリシャス沖の貨物船の重油流出、なぜ深刻なのか – BBCニュース
(参考:【増え続ける海洋ごみ】今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちに何ができる?(特集第1回) | 日本財団 (nippon-foundation.or.jp)
(参考:海中の不法投棄が深刻!意外と知らない海のゴミ事情 | 不用品回収情報センター (dad-ic.com)
(参考:海洋汚染とは?原因や環境への影響、現状について解説! (gooddo.jp)

工場による化学物質の排出

海洋を汚染するケースとして、工場などから出る排水や廃棄物質に含まれる有害液体物質や化学物質が排出されてしまっていることが原因として考えられます。

例えば、日本でも海洋を汚染してしまった事件として水俣病事件があげられます。これは、熊本県水俣湾周辺の化学工場などから海や河川に、メチル水銀化合物という有害液体物質が排水されてしまったことが原因で汚染された海産物を住民が食べてしまったことで中毒性中枢神経系疾患が集団発生した公害です。

このように、有害液体物質を含む工場排水は現在では規制されていますが、完全になくなったわけでもなく、多くの生物が死亡してしまう海洋汚染の原因になっています。

海洋温暖化|1880年から2012年までの132年間で0.85℃上昇

地球温暖化の問題に伴い、海の温度も上がってきています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、1880年から2012年までの132年間で0.85℃上昇していると言われています。海洋は地球温暖化の進行をやわらげるという役割を担っているもの、その分海洋は熱を吸収することで、海自体も温暖化してしまっています。1971年から2010年までの40年間に蓄積された熱エネルギーの9割以上は、海洋に吸収されているとも考えられています。

海洋は大気に比べて変化しにくいものの、いったん変化してしまうとその状態が長く続きます。そのため、地球温暖化の影響を抑えても、2050年までにサンゴの90%が傷み、適切に管理されたサンゴ礁も年1~2%ずつ失われると予測されています。

(参考:気象庁 Japan Meteorological Agency (jma.go.jp)

関連記事:《徹底解説》SDGsと地球温暖化 現状から取り組みまでを網羅

海洋資源の減少(魚の乱獲)

日本では魚は寿司や焼き魚などさまざまな食べ方で、昔から愛されてきました。しかし、近年魚の漁に関しても問題があることが分かってきました。
それが魚の乱獲問題です。

アジア・太平洋地域では、世界の養殖の9割が集中し、東南アジアでは2000年以降、漁獲量が大幅に減っています。環境負荷の高い養殖や乱獲、収奪的な漁業が、沿岸や海洋の生態系の脅威になっており、乱獲などが続けば、今世紀半ばにアジア・太平洋地域の沿岸や海で漁獲可能な魚がいなくなるという報告書を、国連の科学者組織「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットホーム」(IPBES)が公表しています。

現状のような水産業のあり方では、2048年までに漁獲可能な魚はいなくなるという報告もあり一刻も早い問題解決が必要です。
(参考:乱獲続けば…海の幸「今世紀半ばにゼロ」 国連が報告書:朝日新聞デジタル (asahi.com)

サンゴ礁絶滅の危機|世界中の3分の1のサンゴ礁が絶滅寸前

サンゴ礁は私たち人間だけでなく、魚や貝といった海の生物にとって重要な資源であるといえます。なぜなら、サンゴ礁は小さな生物が隠れるための絶好の場所でもあり餌を提供しています。そしてこれらの小さな生物を食べようとさらに大きな生物が集まってくることから食物連鎖を促しているといえます。

直接的に私たち人間と関わりがないと考えられガチですが、実はサンゴ礁はバランスよく魚介類が生きることができる環境を作りあげ、その魚介類を私たちは食べていることからとても密接に関わりあっています。

しかし、現在の世界のサンゴ礁を見ると、全体の約20%が破壊されており、回復が見込めない状況にあります。そのうち残る24%のサンゴ礁は人間がかける圧力によってリスクを抱えているとされており、長期的に崩壊の脅威にさらされているサンゴ礁は26%もあります。

プラスチックゴミによる海洋生物への甚大な被害|過去50年間で50倍

海岸にはこのように多くのプラスチックごみが打ち上げられています。

海岸に打ち上げられたプラスチックゴミ

(引用:https://www.wwf.or.jp/image/article/article_images/20181026pla01.jpg)

世界のプラスチックの年間生産量は過去50年間で20倍に拡大しており、その年間生産量は約3.8億トンになります。これは、全人類の体重に匹敵する重量になり、このうち陸地から海へとたどりつくプラスチックごみは800万トンであるとされています。

私たちが使用する飲み物や食べ物などの容器やレジ袋などプラスチックはとても便利であり、日本国内でも1人当たりのパッケージ用プラスチックごみの発生量はアメリカに次ぐ2番目と多くのプラスチックを使用しています。

しかし、使用した後のプラスチックは自然によって分解されることなく、捨てられたプラスチックごみが最終的に行き着く先は海です。その海でプラスチックは砕け小さな破片となりそれを魚たちが餌と間違え食べてしまっています。このようにプラスチックごみは海洋生物へ甚大な被害をもたらしているのです。

内部リンク:《必見》プラスチック問題とは?|現状や事例、SDGsとの関係まで解説

海洋酸性度は、産業革命以前との比較で26%上昇

海洋による役割はさまざまなものがありますが、そのうち海洋は人間が生産する二酸化炭素の約30%を吸収し、大気中の二酸化炭素濃度を調整するといった、熱の呼吸を海洋自らが行い地球温暖化の影響を緩和させる役割をになっています。

しかし、産業革命以前と比べ人間の活用による大気中に出される二酸化炭素が増加しており、海が以前より多くの二酸化炭素を取り込むこととなり海洋の成分が酸性化してしまう「海洋酸性化」が問題となっています。

これにより、海中で呼吸しているサンゴ礁が死んでしまったり魚たちが呼吸できなくなってしまったりと多くの海洋生物が命の危機に瀕しています。

すでに、海洋の酸性化は海の生態系に大きな影響を及ぼしていますが、このまま大気中の二酸化炭素濃度が増えれば2100年までに100〜150%上昇する見込みとなっています。

海ガメの内臓からプラスチックゴミ

ウミガメ口からプラスチックゴミ

(引用:https://oceana.ne.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/05/582-1-1-880×587.jpg)

海洋プラスチックゴミが海洋へと甚大な被害を与えていることがこれまでの記事を通してお分かりいただけたでしょうか。

より、被害について知っていただくためにここではウミガメがプラスチックゴミによって亡くなってしまったケースをご紹介します。

例えば、海に漂うプラスチック製のポリ袋を餌と間違え飲み込んでしまっているウミガメの割合は52%に達していると推測されています。世界の海で死んだウミガメの内臓を調べたところ、すべてのウミガメからプラスチックごみが見つかったという調査結果が生物学会誌に掲載され深刻な海洋プラスチック問題が浮き彫りとなったケースもあります。

このように、プラスチックごみはなんの罪もないウミガメなどの海洋生物を絶滅させてしまう危険性を持ち合わせているのです。

海洋環境をこのまま放置するとどうなる?

2050年の海は、魚よりもごみが多くなる

現在世界の海に漂うごみの量は、総計約1億5000万トンに達しているといわれています。これは今この瞬間にもどんんどん増え続けているわけですが、このまま何もしなければ海洋ごみは増加の一途を辿ることとなります。このペースのまま進めば2050年には魚よりプラスチックゴミの量が多い海になることが推測できます。

21世紀の海面上昇の値は26〜82cm

海面上昇は、地球温暖化によって引き起こされ世界でも深刻な問題となっています。その影響により、海岸侵食、高潮高波などの沿岸災害の激化、沿岸湿地喪失などによる生態系への被害が予測されています。

特に、1901年から2010年の110年の間で海面は約19cm上昇しており、海洋環境をこのまま放置すると2013年に発表されたIPCC第5次評価報告書によると、21世紀の海面上昇の値は26〜82センチメートルとされており、深刻な状況に陥るとされています。

また、海面上昇がこのまま進むと、1000年後にはグリーンランドの氷床が消滅し海面は7m上昇するとされています。

生態系のバランスが崩れ私たちの生活に影響が出る

海洋汚染の影響はさまざまなものがありますが、特に顕著なのが海洋生物や周辺で生きる生物の減少です。このまま工場排水やプラスチックゴミの海洋汚染が続くと生物が大量に死んでしまいます。

そうなれば、私たちが食べる魚が減少するばかりではなく、漁業者も減り海洋の環境保全も行っている人々がさらに減少してしまいます。このように生態系に負のスパイラルが生まれてしまい、私たちの生活にも影響が出てしまうのです。

世界の主な取り組み事例・企業にできること3つ

NPO法人の取り組み「The Ocean Cleanup」

The Ocean Cleanupは、海を漂う大量のごみを何とかしたいと動き出した青年ボイヤン・スラットによって2013年にオランダで設立されました。

プロジェクト内容は、海洋のなかに大きなスクリーンをU字型に張り、その内側で海洋を浮遊するプラスチックの回収・除去を行っています。

実用化の第一弾として、2016年夏以降に日本の対馬沖にゴミ回収システムを導入すると発表し、2018年には太平洋、その後は世界各地で行われています。

これまでは主に海洋プラスチックごみの回収を目指してきていましたが、この目標を補完するべく、今度は河川のごみ除去へと動き出しています。

活動資金をクラウドファンディングで集めたことも話題を呼んでおり、多くの賛同者がいたことから世界中での海洋問題に対する注目度の高さが窺えます。

(参考:オランダ・デルフトに本部を置く環境団体「The Ocean Cleanup」 海洋浮遊物除去システムの最終計画案を発表 | Webマガジン「AXIS」 | デザインのWebメディア (axismag.jp)

企業の取り組み スターバックスコーヒー

2018年7月、スターバックスはプラスチック製ストローの使用について、2020年までに世界中の店舗で廃止することを発表しました。

スターバックスのグローバル社会貢献部門を担当するコリーン・チャップマン氏は発表文で、事業パートナーや顧客からの要請が今回の決定を促したと明らかにしています。この発表には、海洋保護団体オーシャン・コンサーバンシーの「ごみのない海計画」や世界自然保護基金(WWF)など多くのの賛同が添えられています。

また日本のスターバックス独自としても要望に応じて店内で飲食をする顧客に対しては使い捨てでないコップなどを提供するなど廃棄物の排出を抑える3R(リデュース・リユース・リサイクル)に取り組み、環境負荷の低減を進めています。

(参考:スタバ、プラスチック製ストローを廃止 2020年までに – BBCニュース
(参考:店舗での取り組み|スターバックス コーヒー ジャパン (starbucks.co.jp)

企業の取り組み「4Ocean」

この取り組みは、ブレスレットを1個20ドルで販売し、1個売れるごとに海と海岸から1ポンド(453g)分のゴミを除去するというものです。これはアレックス・シュルツとアンドリュー・クーパーという2人のサーファーが立ち上げたものです。始まりは、地元の漁師に魚ではなく海のゴミを大量に取って来てもらいそれに対してお金を払おうと思いついたことで、その旨を実際に漁師たちに提案し雇うようになりました。

活動を開始した最初の年には1年でなんと113トンものゴミを集める事に成功しており、現在では7人の漁師がフルタイムで海に浮いているゴミの収集にまわっています。

(参考:Our Story – 4ocean
(参考:海を守る活動をしている団体「4OCEAN」からリリースされている100%リサイクルのブレスレット。 (surfsupmagazine.com)

関連記事:SDGsの取り組み事例51選|企業と個人の事例を17のゴール別に徹底網羅

日本の主な取り組み事例・企業にできること3つ

NGO/政府機関の取り組み 気象庁「海洋バックグランド汚染観測」

気象庁は1972年、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法;1971年施行)」に基づき、海洋汚染の防止および海洋環境の保全に資するため、日本近海および北西太平洋の海洋バックグランド汚染観測を開始しました。

観測項目は、「海水中の重金属(水銀,カドミウム)・油分・海面に浮遊しているタールボールの採集・海面の浮遊汚染物質(発泡スチロールなどのプラスチック類)および油膜の目視観測」とされており、日々観測が行われています。

また気象庁だけでなく海上保安庁も1972年に日本近海、主要湾などを対象とする海洋汚染調査を開始しており、国を挙げて海洋ごみの問題に取り組んでいます。

(参考:気象庁|海洋汚染の知識 海洋汚染に関する取り組み (jma.go.jp)

企業の取り組み① 商船三井

商船三井では、安全運航の徹底により海難事故による海洋汚染防止を掲げています。事業活動の場であり世界万人の共有財産である海洋の環境保全への取り組みを積極的に推進するとしており、「自動車船内固縛用ラッシングベルトのリサイクル」「海洋環境保全への取り組み」「シップリサイクル問題」「海洋プラスチック汚染への取り組み」という大きな4つの柱を軸に活動しています。

特に船舶事故を未然に防ぐため衝突安全性に優れた「NSafe®-HULL」を世界初採用したことは大きな反響を呼びました。

「NSafe®-Hull」は、高い延び性を有し、船舶の側面からの衝撃に対して衝撃吸収エネルギーが約3倍になることから、従来の鋼材に比べて船体に亀裂が生じにくく、船舶の安全性を高めると言われています。これにより座礁しても大破しにくくなっています。

また国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が行う海洋プラスチック汚染に関わる科学的調査にも協力しており、企業を挙げて様々な海洋問題の解決に尽力しています。

(参考:海洋環境保全 | 商船三井 (mol.co.jp)

企業の取り組み② すかいらーくグループ

すかいらーくグループは2018年12月より順次ドリンクバーに常備しているプラスチック製ストローを廃止し、2019年7月末にグループ全店で廃止を完了しました。

顧客からストローが欲しいという要望があった際には、トウモロコシ原料の生分解性のバイオマスストローを提供しています。

この取り組みは外務省の「海洋プラスチックごみ対策- 日本企業の先進的な取組例 -」にも掲載されており、日本の大手外食チェーンとしては最も迅速な対応を取った企業の1つです。

(参考:181217_plahaishiMFAJ.pdf (skylark.co.jp)
(参考:プラスチック製ストローの廃止 | 社会問題への取り組み | すかいらーくグループ (skylark.co.jp)

関連記事:企業がSDGsに取り組む4つのメリットを徹底解説|日本企業の取り組みやデメリットも

関連記事:《徹底解説》SDGsウォッシュとは?3つの事例や気をつけるべきポイントを紹介

私たちにできること

今まで様々な海洋問題を取り上げてきましたが、これらを解決するには私たちの日々の小さな努力が大切です。

  1. マイバックを利用し、レジ袋をもらわないようにする
  2. プラスチックボトルを減らすためにもマイボトルを持ち歩く
  3. ゴミのポイ捨て、不法投棄はしない
  4. ゴミは所定の場所・時間に出し、しっかり分別する
  5. 3R(リデュース・リユース・リサイクル)でプラスチックを有効に活用する
  6. 河川敷や海岸の清掃活動に参加する

このような日常のほんの少しを改善するだけでも変えられることはたくさんあります。今回は⑥河川敷や海岸の清掃活動に参加する、について紹介します。

関連記事:《必見》SDGsとエコバッグの関係性|レジ袋有料化の背景とおすすめのエコバッグ

関連記事:企業のSDGs活動例19選|個人でできる活動10選も紹介

ビーチクリーンボランティア

今回は「かながわ海岸美化財団」がが主催するビーチのごみ拾いのボランティアを紹介します。「かながわ海岸美化財団」は日本で唯一の海岸美化専門の団体です。

神奈川県を中心に活動しており、ボランティアに参加する海岸は、横須賀市走水海岸~湯河原町吉浜の間の自然海岸であればどこでもOKです。

ごみ袋の提供とごみの回収は無償で行っており、財団から送られてきたごみ袋を使ってビーチクリーンをし、指定の場所にごみを集積しておくだけで後日、財団が回収してくれるシステムを導入しています。そのため家族や友人、1人でも参加できます。

初めての人など、どのように行えばよいか分からない場合は場所の相談などに乗ってくれるサービスもあり、始めてボランティアに参加しやすい環境が整っています。

(参考:日本で唯一のビーチクリーン・海ごみ問題の専門団体 – 日本で唯一のビーチクリーン・海のごみ問題の専門集団です。 (bikazaidan.or.jp)

天然水産資源を守ることのできる海のエコラベル「MSC」

海のエコラベルMSC

(引用:https://www.msc.org/images/default-source/jp-library/mscecolabel_jp.png?sfvrsn=39d233bb_4)

このMSC「海のエコラベル」は、水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物の証になります。

MSC「海のエコラベル」が付いた水産物は、水産資源や環境に配慮しているとして、独立した審査機関による審査によって認証された漁業で獲られたものになります。

私たちがこの「MSC」のラベルが貼られている水産物を日常の買い物で購入することは、魚や貝などの水産物が獲られすぎている現状を改善すべくしっかりと厳しい審査を受けた商品であるため、海を守ることにつながるのです。

また、普段から、海洋に由来する商品を購入したり海産物を食べたりする時に必要なものだけ消費するこも十分海を守ることに繋がっています。

このように、環境に配慮しつつまずは身近なところから海を守る取り組みを始めてみましょう。

関連記事:《徹底網羅》個人でできるSDGsの取り組み|「シーン別に解説」

関連記事:《意外と知らない》日常生活でできるSDGs|具体的な取り組み〜日常生活編〜

まとめ

ここまでDGs目標14「海の豊さを守ろう」について、現状や日本と世界の取り組みや個人でできることを紹介してきました。

私たちの生活とSDGs目標14「海の豊さを守ろう」の問題と深い関係があることをご理解していただけましたでしょうか。私たちがプラスチックの利用を最低限抑えることはSDGsを達成するための大きな一歩になります。海洋生物がどれだけ大切なのか、そしてなぜそれを守る必要があるのかここで学んだことをきちんと考え、一人ひとりができる取り組みを行いましょう。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

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