SDGs10「人や国の不平等をなくそう」現状の問題点や取り組みを解説

#SDGs目標11#持続可能#環境 2021.02.13

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【更新日:2023年2月22日 by 田所莉沙

現在、世界の半分以上の人々が都市に暮らしていると言われ、快適なまちづくりの重要性が高まっている他、地方の過疎化が問題になるなど、まちづくりに工夫が求められています。

日本でも、2011年に発生した東日本地震による津波や2019年に発生した台風15号による洪水など、自然災害による甚大な被害が後をたたず、自然災害に強い持続可能なまちづくりが必要です。

この記事では、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」をテーマに、これから重要性が高まっていくまちづくりについて解説していきます。

【この記事で分かること】

見出し

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」とは

みなさんはSDGs目標11について、どのくらいご存知でしょうか。

まずはSDGs目標11の概要や、達成に向けて定められた目標について、まとめていきます。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の内容|強靭(レジリエント)の意味も解説

SDGs目標11は「住み続けられるまちづくりを」というテーマをもとに、定められた目標です。SDGs目標11では、どんな国や地域で暮らしていても、安心・安全に暮らせるまちづくりを目指しています。

今日、世界各国で都市部の発展が進み、多くの人々が都市部周辺で暮らしています。経済的に豊かで、充実した生活ができている人がいる一方で、地方では働き手の減少などにより経済が停滞してしまう傾向にあります。中にはよりよい仕事を求めて都市部へ移住するものの、仕事が得られず危険な場所で暮らす人もいます。

さらに、近年は地震や浸水などの自然災害による影響で、自分たちが暮らしている地域を離れなければならない人々が多く存在します。また自然災害により、多くの人の命が奪われてしまう場合もあります。

すべての人が安心・安全で必要最低限の暮らしを営むことができ、かつ世界中の人々が自然災害が発生しても、短時間で日常が取り戻せるような強靭な社会環境を形成することが、SDGs目標11の目指すゴールです。

強靭(レジリエント)
…回復力や、しなやかな強さという意味。SDGs目標11において、地震などの自然災害が発生しても国の経済が停滞しにくく短期間で経済が回復・復興できるという意味で用いられる。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」には、9個のターゲットが設けられており、すべての人が安心で、安全な暮らしができる環境づくりを目指しています。

また人々の暮らしを支えるだけではなく、文化遺産・自然遺産の保護・保全や、ごみなどによる環境汚染の改善も目標としています。

これらのターゲットを実現するため、SDGs目標11では、国や地域が取り組む都市部・農村部の開発計画を強化したり、自然災害対策を整えたりなどと、さまざまな取り組みを実施していきます。ターゲットについて、詳しくは下記の通りです。

11.1 ・2030年までにすべての人が安心で安全に住居や、医療などの基本サービスを得られるようにする。
・手頃な価格で住居や基本サービスを利用できるようにする。
・経済的に苦しい立場にある人々の暮らす地域(スラム)を改善する。
11.2 ・2030年までに女性や子ども、障害者や高齢者などの人々に配慮した公共交通機関を整備する。
・すべての人々が安全でかつ、低価格で公共交通機関を利用できるようにする。
11.3 ・2030年までに持続可能なまちづくりを促進する。
・すべての国の人々が参加できるような、持続可能なまちづくり計画を考案する。
11.4 ・世界の文化遺産および自然遺産を保護する。
・文化遺産や自然遺産を保つよう、努める。
11.5 ・2030年までに経済的に苦しい人々の安全を確保する。
・水害などの災害時に、命を落としてしまう人の数を減らす。
・自然災害などにより発生する、経済的な損失を減らす。
11.6 ・2030年までに大気汚染や、廃棄物の管理を徹底する。
・都市部における、環境汚染を改善する。
11.7 ・2030年までに女性や子ども、高齢者や障がい者を含め、すべての人が公園などの公共施設を利用できるようにする。
11.a ・国や地域が行う地域の開発計画を進める。
・都市部と農村部がつながるような環境を整える。
11.b ・2020年までに資源を効率的に利用しながら、自然災害対策を行う。
・自然災害対策に取り組む都市の数を増やす。
・「仙台防災枠組2015-2030」にしたがって、さまざまな災害のリスクを考慮する。

参照:外務省公式サイト

SDGs目標11に関する世界の現状と問題点|原因も解説

ここまでSDGs目標11の内容や各ターゲットについて、まとめていきました。

続いて、世界各国におけるSDGs目標11の現状や、起こっている問題について説明していきます。

関連記事:SDGs11「住み続けられるまちづくりを」の現状を徹底解説

途上国におけるインフラの未整備|アフリカ大陸の舗装率はぜんたいてきに不十分

まずSDGs目標11において問題となるのが、発展途上国におけるインフラの未整備です。アフリカ大陸の多くの国では、道路などの道の整備が進んでおらず、アクセスが悪い状態となっています。

アフリカ大陸では多くの国が分立しており、内陸国が多くなっています。内陸国の場合、他国から物資を輸入する際に、巨額な輸送コストがかかってしまいます。また原材料などを多国に輸出する際も、費用がかかります。

さらに整備されていない道では、雨が降った際にぬかるんでしまい、利用しづらくなってしまいます。発展途上国における経済成長のために、インフラを整えることは必要不可欠です

スラム街の拡大|2030年までにスラム街の人口は20億人に達するとの予測

スラム街」とは、都市部において経済的に苦しい立場にある人々が暮らす地区です。スラム街では、公共サービスが充分に受けられず、衛生環境が整っていません。

スラム街で暮らす人々が増加しているのも、世界各国で起こっている問題となっています。2000年以降、スラム街で暮らす人の数は減少傾向にあるものの、いまだに多いです。2020年の段階でスラム街の人口は世界で10億人であり、2030年までに人口が20億人に達すると推定されています。

「スラム街」では国の法律が行き届かず、違法薬物の売買犯罪行為など、危険が潜んでいます。またトイレやお風呂などの衛生環境が整っていないことから、伝染病が発生しやすくなります。すべての人が安心・安全な地域で暮らすためには、スラム街で暮らす人々が最低限の生活を営めるように、経済的な支援が必要です。

海面上昇で国を追われる人々|インドネシアは都市移転を決定

世界の中でも日本のような島国で、海面上昇により人々の暮らしが不安定になっている国もあります。「海面上昇」は地球温暖化により、氷河が融解したことで海に流れ込み、海水の量が増えたことで発生しています。また水温が高くなってことで、海水の体積が膨張したことも原因の一つです。

インドネシアでは、2019年に首都をジャカルタからカリマンタン島に移転することを決定しました。ジャカルタは海面上昇の影響で、徐々に沈んでおり、2050年までに完全に水没する可能性があります。そのためインドネシア国内の中でも自然災害の被害が少ない場所を、次の首都に選定しています。

海面上昇による都市の水没は、ジャカルタだけではありません。アメリカのニューオリンズやマイアミ、ヴェネチアやバンコクなど、さまざまな都市が水没する危険性があります。世界の人々が長く暮らすためには、海面上昇による都市の水没も防がなければなりません

都市部の人口増加|2050年には世界の人口の3分の2が都市に住むとの予測

都市部における人口増加も、世界各国で問題となっています。2022年の段階で世界の総人口が80億人を超えました。その中でも半数以上の人々が都市部で暮らしており、この数は年々増加すると見込まれています。また2050年までに都市部の人口は、世界の人口のうち68%を占めると予想されています。

世界の中でも中国やインドでは、人口が14億人を超えています。近年では発展途上国においても、人口が増加傾向にあります。2050年までにナイジェリアやパキスタン、インドネシアなどの国々の人口は、倍増するとされています。

各国の人口が増加しても、多くの若者が地方から都市部へ移住してしまうと、各国で地方の人口が減少していきます。これにより地方の経済が停滞し、公共交通機関のサービスが廃止してしまうなどの悪影響があります。また少子高齢化も深刻化していまいます。

都市部における環境汚染

世界各国で都市化が進むにつれて、都市部における環境汚染も深刻化していきます。2021年において、世界保健機関(WHO)が定めるPM2.5年間大気質ガイドラインに適合している都市は、世界でもわずか3%しかありません。

中でもバングラデシュ・チャド・パキスタン・タジキスタン・インドの5か国は、2021年でも最も汚染された国とされています。とくにインドは4年連続で環境汚染が深刻化しています。ヨーロッパ諸国やアジア大陸の国々においても、ガイドラインを満たす都市は5%以下となっており、世界規模で環境汚染が拡大しています。

つまり私たちは普段の生活において、呼吸する際に一見きれいに見えるものの、かなり汚染された空気を吸っていることがわかります。PM2.5による被害は、環境汚染だけではなく、人々の健康にも悪影響を与えます。安全かつ清潔な空気を得るためには、都市部における環境問題にも配慮しなければなりません。

PM2.5
…大気中に含まれる小さな粒子で、大気汚染物質の一種。粒子が細かいため、吸い込むと気管支や肺の奥まで入り込み、ぜんそくや気管支炎を引き起こす可能性がある物質。

SDGs目標11に関する日本の現状と問題点|原因も解説

ここまで世界各国におけるSDGs目標11の現状や、問題点についてまとめていきました。

次に日本におけるSDGs目標11の現状や、発生している問題点について、解説していきます。

都市部の人口増加と地方の過疎化|3大都市には人口の51%が居住

日本でも、都市部における人口増加が発生しています。とくに3大都市と呼ばれる「東京圏」・「名古屋圏」・「大阪圏」には、数多くの人々が暮らしています。

2020年において、3大都市圏で暮らす人々の割合は51.9%であり、半数以上を超えています。この数値は12年連続で半数以上を超えており、都市部での人口増加に歯止めがかかっていません。3大都市圏の中でも東京圏が最も割合が高くなっており、大阪圏、名古屋圏と続きます。

また都市部の人口が増加している影響で、地方では「過疎化」が進んでいます。「過疎」とは急激に人口が減少することで、生活水準や政府・自治体が運営する行政サービスを維持できなくなる状態のことです。日本では2022年の段階で、1718市町村のうち885市町村が過疎地域として認定されています。この数は全国市町村のうち、半分以上の市町村が過疎地域と認定されていることになります。

これらのことから、日本では多くの市町村で人口減少による影響で過疎化が進行していることがわかります。市町村の過疎化は、深刻化してしまうと生活にも支障をきたす恐れがあります。過疎化が悪化しないよう、地方の発展も必要です。

少子高齢化|2040年までに人口の3人に1人が高齢者になるとの予測

日本では3大都市や地方にかかわらず、少子高齢化も問題となっています。日本は年々人口が減少している中、高齢者の割合が高い傾向にあります。2022年における高齢者の割合は、日本総人口のうち29.1%であり、昨年度より0.3%上昇しています。またこの数値は、過去最高でした。

高齢者の人口を年齢別に区別すると、2022年では75歳以上の人口が増加傾向にあります。この増加現象は、当時第一次ベビーブームであった1947年から1949年に生まれた人々が、75歳を迎え始めたことが原因として挙げられます。

日本国内で高齢化が進む一方で、子どもの人数が少ないことも問題です。2022年に行われた統計の結果、出生数は約77.1万人でした。この人数は、2021年と比較しても4.1万人少ない状態となっています。

このような少子高齢化社会の要因として、死亡率の低下により平均寿命が伸びたことがあります。生活環境や栄養バランスのとれた食事、医療技術の発展などの理由により、日本の平均寿命は著しく伸びました。

長生きする人が増えた一方で、若者が少ないことにより高齢化が進んでいます。近年では子育てに多額の費用がかかることや、子どもを産まない夫婦が増えていることなどが原因で、出生率の低下につながっています。

第一次ベビーブーム
…ある時期において、一時的に出生率が急上昇すること。第二次世界大戦後である1947年から1949年に発生した現象。

自然災害に脆弱な街|鹿児島県は自然災害の被害を受けやすい

日本は世界の中でも、地震や津波などの自然災害が多く発生する国です。しかし、一部の都道府県では、自然災害対策が充分でないために大きな被害を受けています。また日本の中でも地域によって、被害の程度は異なります。2018年に発表された「災害に強い47都道府県ランキング」では、47都道府県中、鹿児島県が最下位という結果でした。つまり鹿児島県は、47都道府県の中で最も自然災害の被害を受けていることになります。

まず鹿児島県は、高温で多湿な気候であることから、猛暑や台風の影響を受けやすくなっています。1951年から2022年の間に、鹿児島県には台風が43回も上陸しています。

さらに鹿児島県には活火山地帯でもあります。2022年2月13日から16日の4日間の間では、火山性地震が20回、爆発が4回起こりました。噴石や降灰による被害が生じてしまいます。

自然災害が多く発生する日本では、災害の被害を最小限にするために、地震対策や津波対策など、さまざまな対策が必要不可欠です

SDGs目標11の解決策3選|自治体と企業の取り組み

ここまでSDGs目標11の実現に貢献する方法を、まとめていきました。

続いてSDGs目標11を達成するために、自治体や企業が実施すべき取り組みについて、説明していきます。

【自治体】都市農業を取り入れる

まずSDGs目標11を達成する方法として、都市部でも農産業を発展させることです。都市部において農業を取り入れることで、二酸化炭素排出量の削減など、都市部の自然環境の改善につながります。

たとえば東京都の練馬区は、23区の中でも最大の農地面積を所有しています。2023年2月には、区内の農家が実施する農業体験に参加する人々を募集しました。この農業体験では、初心者も体験できるため子どもから大人まで野菜づくりが学べます。

また都市農業のメリットとして、都市部の自然環境が改善されるだけではなく、新鮮な農作物が供給できたり、災害のための避難所が確保できたりと、暮らしやすい環境づくりにも貢献します。

【自治体】災害に強い街づくりを行う

SDGs目標11の実現に向けて、災害対策を通じたまちづくりも大切です。とくに自然災害が多く発生する国では、災害対策を行わければ安心・安全なまちは実現しません。

日本の都道府県の中で自然災害対策を徹底している県として、滋賀県が挙げられます。実際に「災害に強い47都道府県ランキング」において、滋賀県は1位でした。滋賀県は2018年6月に大阪北部で発生した大規模な地震や豪雨の被害を踏まえて、防災対策に力を入れています。

自然災害対策として自治体が行っているのが、「滋賀県防災プラン」です。このプランは従来の地震対策を踏まえて、重点的に取り組む対策を定め、解決方法について定めたものとなっています。たとえば災害の発生時に下水道施設の応急復旧が迅速に行えるようにしたり避難所での生活の質を落とさないよう、防災蓄物資を管理したりなどがあります。

【企業】リモートワークを推進し、地方でも仕事ができる仕組みを作る

都市部だけではなく、地方で働いていても充分な報酬が得られることで、地方における過疎化を抑制できます。そこで重要となるのが、リモートワークです。リモートワークを活用することで都市部にオフィスが設置されていても、地方で暮らしながら仕事ができます

とくに新型コロナウイルスの感染拡大によって垣間見えたのが、都市集中型社会のデメリットです。日本だけではなく世界各国の都市部において、経済や政治が集中しています。そのため新型コロナウイルスが拡大したことで経済が回らなくなり、経済の回復に時間を要しました。このことからもリモートワークの推進は、地方の経済活性化に大きく貢献します。

一方で日本の一部企業では、テレワークを実施していない企業も存在します。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが調査した結果、リモートワークを実施していない理由として、「リモートワークで可能な業務が限られている」というものでした。したがって地方の人々が都市部へ移住せずに、地方で働ける環境や仕組みをつくることが必要です

SDGs目標11を達成するために私たちにできること3選|小学生〜高校生の取り組み

ここまで自治体や企業ができる、SDGs目標11の達成のための取り組みについて、まとめていきました。

次に小学生や高校生など、学生にもできる、身近な取り組みを紹介していきます。

関連記事:SDGs11達成のために私たちができること-子供でもできる取り組みを紹介

【小学生】地域の活動へ参加し、地域の魅力を知る

SDGs目標11を達成するためにまずできることが、自身が暮らす「まち」の良い所を知り、お祭りなどの地域活動に積極的に参加することです。

私たちが暮らす「まち」には、お店や緑あふれる公園など、さまざまな場所があります。中には文化遺産として、有名な場所もあるかもしれません。

また地域による固有の文化や習慣、イベントも存在します。私たちが暮らす「まち」について知ることで、さらに「まち」のよさを見つけられます。

【中学生】防災グッズや備蓄用食料を準備する

万が一地震が起きた際に被害を最小限に抑えるためには、国や自治体の政策だけでは充分ではありません。下水道が使えなくなったり食料がなくなってしまったりと、生活の質を落とさないようにするために、各家庭で防災グッズや備蓄用食料を準備することが大切です。

防災グッズには、大きく分けて3種類あります。それが「持ち歩き用」・「避難用」・「住宅避難用」の3つです。災害の発生時に応じて必要なものを利用できるよう、用途に合わせて準備しておきましょう。

防災グッズの中でも、食料品・飲料水医療品・衛生用品ラジオなどはとくに重要な防災グッズです。なにを準備したらいいかわからない場合、まずはこれらの物を備えてみてください。

【高校生】土砂災害や川の氾濫の危険性がある場所を知る

自然災害はいつ、どこで起こるか的確に予測することはできません。しかし事前に土砂災害や水没が起こりそうな場所を確認しておくことで、むやみに近づくことが少なくなります。またあらかじめ調べておくことで、かなり危険性が高い場所であっても、災害に備えた設備の設置や補強ができます

災害の発生しうる場所は、国や自治体が公表している「ハザードマップ」を見ることで簡単に場所が特定できます。またハザードマップは地震や津波・高潮など災害の種類によって作成されているため、より正確に災害のリスクを予測できます。

さらに学生一人ひとりが地域の災害リスクを意識することで、万が一災害が発生しても安全な場所に避難しやすくなります。

SDGs目標11に関する世界の取り組み事例3選

ここまで多くの学生ができる、身近な取り組みをまとめていきました。

続いて世界各国が行っているSDGs目標11の達成に向けた取り組みについて、解説していきます。

関連記事:SDGs11日本の取り組み事例6選-自治体・企業・学校・個人の事例を解説

フィンランド・ヘルシンキ|サステナビリティ情報サイトの運営

フィンランドは世界の中でも、SDGs達成に向けて積極的に取り組みを行っている国の一つです。2022年において、フィンランドはSDGs達成度が世界1位でした

そんなフィンランドがSDGs目標11の実現に向けて行っているのが、サステナビリティ情報サイトの運営です。首都であるヘルシンキでは、より持続可能な生活を推進するため、情報サイト「Think Sustainability」を通じてカフェやレストラン、イベントに関する情報を公開しています。

そのほかにも商業施設や公園など、自分が行きたい場所へ行く際に排出する二酸化炭素量が測定される「ルートプランナー」というシステムもあります。このシステムを利用することで、自身が排出する二酸化炭素量が可視化され、移動手段を改めることができます。

デンマーク|100%再エネで稼働する未来型都市の建設

デンマークも世界の中で、SDGs達成に大きく貢献している国です。SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORTが発表したランキングにおいて、デンマークはフィンランドに続き、2位でした。

デンマークがSDGs11の達成に向けて実施している取り組みが、「UN17 Village」の建設です。「UN17 Village」とは、国連が定めたSDGs17のゴールすべての実現を目指してつくられた村のことを言います。この村では動植物の生態系を保つことで絶滅危惧種を減らしたり、家庭から排出される二酸化炭素量を削減したりと、環境を考慮してつくられています。

そのほかにもデンマークの人々の多くは、一日のうち半分以上を室内で過ごしており、運動不足につながっています。村で暮らす人々の運動不足を解消するため、UN17 Villageが設置したのがFælledhusetというコミュニティハウスです。コミュニティハウスを通じてさまざまな人とヨガやダンスを楽しむことができ、かつ運動不足を解消できます。

BMW|電気自動車の電力補給場所の確保

BMWはドイツに本社を置いている自動車メーカーです。BMWでは、原材料から生産、自動車の利用時など、あらゆる場面で発生する二酸化炭素量を少なくとも40%削減することを目標に、取り組みを実施しています。

世界各国で排出される二酸化炭素のうち、自動車は大部分を占めます。そこでBMWは電気自動車を普及させ、さまざまな場所で電力提供ができるよう、電力供給所を設置しています。現段階で電力供給所は、ヨーロッパ諸国に25万か所あり、そのうちドイツには48,000か所存在します。

そのほかにも自動車の生産時に発生する二酸化炭素量を削減するため、牛革のかわりにサボテンなどのビーガン素材を用いるなど、環境に配慮した生産を行っています。

SDGs目標11に関する日本の取り組み事例4選

ここまでスイスやデンマークなど、世界各国が行っている、SDGs目標11の実現に向けた取り組みについて、まとめていきました。

最後に日本政府や企業が行っている、SDGs目標11の達成に貢献する取り組みを紹介していきます。

SDGs未来都市|秋田県仙北市

SDGs未来都市」とは、SDGs目標達成のために内閣府が2018年に設けた、SDGsに向けた取り組みを積極的に行う自治体を認定する制度です。2022年の段階で日本全国の市町村のうち、154都市がSDGs未来都市として認定されています。

たとえば秋田県仙北市は、秋田県の中でも東部中央に位置します。仙北市の中央には水深が日本一とされる田沢湖や駒ヶ岳などの自然、紙風船上げなど伝統文化にも恵まれています。一方で若者が都市部に移住してしまうことが原因で、仙北市でも高齢化が進んでいます。

高齢化問題を解決し、仙北市に人々が集まるよう、仙北市では田沢湖周辺の環境を整えたり、秋田県固有種のクニマスを保護・保全したりしています。また玉川温泉水から水素を生成することで、水素エネルギーを避難所の充電システムに活用するなど、環境に配慮した取り組みも実施しています。

クニマス
…サケ科に属する淡水魚のこと。キノシリマスやウキノウオとも呼ばれる。秋田県の田沢湖のみに生息していた固有種であったが、絶滅したと言われていた。しかし2010年の調査の結果、山梨県の西湖で生息が確認された。

荒川クリーンエイドフォーラム|ごみ拾いを中心とした環境保全活動

荒川」とは、埼玉県と長野県、山梨県の県境に位置する甲武信ヶ岳から流れ、東京湾に流れ込む川です。荒川は1930年に人工的に掘られたですが、都内の中でも動植物が多く生息しています。「荒川クリーンエイドフォーラム」は、荒川の自然環境を整え、自然豊かにする活動を行っています。

荒川クリーンエイドフォーラムでは、ごみ拾いを中心に6つの活動に力を入れています。近年ではごみの増加や不適切な処理によって、海に漂うごみの量が増えています。そのため2050年までに海に沈んでいるごみの量は、海の魚の量より多くなると推定されています。

こういった問題を踏まえて、荒川クリーンエイドフォーラムは、「荒川クリーンエイド」という川の清掃活動を通じて、ごみ問題について考える場を作っています。

第一測工株式会社|空き家を有効活用する仕組み作り

第一測工株式会社は、土木技術・情報技術を活かして地籍調査やダムの測量など、公共事業を担う会社です。活動方針として7つの指針を設定し、働けることや家族がいることに感謝をしながら事業に取り組んでいます。

SDGs目標11達成のために取り組んでいるのが、空き家を利用したまちづくり事業です。まちの経済を活性化させるため、「宇都宮市中心市街地空き家店舗情報システム」を運営しています。このシステムを利用することで、宇都宮市周辺に存在する空き家について、簡単に調べることができます。カフェなど自営業を希望する人にとって、とても利用しやすいものになっています。

そのほかにも「電気」・「自動車燃料」・「紙」の3つに焦点を当て、ECOドライブの推進や社内におけるペーパーレス体制の構築など、無駄をなくすための取り組みも実施しています。

>>宇都宮市中心市街地空き店舗情報システム公式サイトはこちら

NTT西日本|災害時にも使えるインフラ作り

NTT西日本は、西日本地域における電気通信業務を担う会社です。NTT西日本グループでは、「あらゆる人々が幸せで豊かな未来の姿」を実現するために社会貢献活動を実施しています。

NTT西日本グループがSDGs目標11実現のために行っているのが、安心・安全なインフラ整備です。とくに通信サービスに重きを置き、災害時においても利用できるよう通信手段の確保や、設備の早期復旧に向けた取り組みを行っています。

自然災害対策以外にも、実際に被害にあった地域で連絡を取りやすくするため、「災害用伝言ダイヤル(117)」やインターネットを用いた「災害用伝言板(web171)」なども提供しています。これにより緊急時において、即座に利用できる情報の伝達手段となっています。

まとめ

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」では、すべての人が安心・安全で暮らせるまちの形成を目指して目標が設定されました。日本だけではなく、世界各国で自然災害などの影響でまちが被害を受け、最低限の生活を営めないことがあります。また都市部への人口増加により、地方での過疎化や経済の停滞という問題も生じています。

すべての国や地域で暮らしやすいまちをつくるためには、地域の魅力を発信したり、地方でも働ける環境を整えたりと、さまざまな取り組みが必要となります。

また地震や津波などの自然災害が生じても、被害を最小限に留められるよう防災グッズを備え危険な場所をあらかじめ把握しておくことも重要です。みなさんもまずは自身が暮らすまちの魅力について考えたり、災害が発生しうる場所を調べたりしてみてはいかがでしょうか。

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