1999年に「男女共同参画社会」という言葉が生まれ、性別に関わらず人々が活躍できる社会が求められてきました。
しかし、男女平等が謳われる今でも性別による社会的障壁は多く残っています。特に日本は男女格差のが根強い文化が形成されてきた歴史があり、課題解決には至っていません。
今回は、日本の女性が抱えるジェンダー問題をSDGsと関連させて見つめ直し、国内で行われている取り組みを紹介します。
見出し
女性とSDGsの関係性
SDGsとは
SDGsとは、「持続可能な社会」を実現させるために達成すべき目標のことです。
世界の国々には共通で抱える環境問題・社会問題が多く存在します。
それらの解決を図るためには各国の人々が協力して課題に取り組まなければならないという考えから2015年の国連サミットにて、2030年を期限として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)が採択されました。
SDGsは17の目標と169のターゲットで構成され、その中にはジェンダー問題に対する物も含まれています。
▼SDGsについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
SDGsゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」とは
女性差別問題に関連するSDGsの目標は、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」です。
女性は歴史的にも社会的に弱い立場に置かれてきました。近年は、世界的にジェンダー平等への動きが強まってきていますが、昔ながらの慣習や宗教を理由として女性差別が依然として行われているのが現実です。
SDGsのゴール5はジェンダーを理由にした差別をなくすための目標であるため、女性に限定された目標ではありませんが、ターゲットとしては主に女性への不当な扱いをなくし、女性が社会で活躍できる社会制度の整備、活躍機会の提供を推進することが掲げられています。
▼SDGsゴール5について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
ジェンダーギャップ指数から見る日本の男女格差の現状
日本は120位、G7の中で最下位
各国における男女格差をはある指標としてジェンダーギャップ指数というものがあります。ジェンダーギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示しています。
世界経済フォーラムが2021年3月に公表した「The Global Gender Gap Report 2021」によると、2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120位でした。これは先進国の最低レベルであり、アジア諸国と比較しても韓国・中国・ASEAN諸国より低い結果です。
これだけを見ても、日本がジェンダー問題に取り組むべき現状が読み取れますが、先進国であるG7各国のジェンダーギャップ指数と比較するとより事の重大さが理解できます。
グラフを見ると、日本のスコアが圧倒的に低い値であることがわかります。2020年と比較するとスコアは上がっていますが、G7各国とは大きな差があり、ジェンダー平等における日本の遅れは深刻です。
さらに世界経済フォーラムは政治・経済分野において日本の抱える課題を指摘しています。
・女性の政治参加率が低く国会議員の女性割合が9.9%で政治スコアが低い
・管理職の女性の割合が低いこと(14.7%) ・女性の72%が労働力になっている一方パートタイムの職に就いている女性の割合は男性のほぼ2倍であり、女性の平均所得は男性より43.7%低くなっていること |
(参照:共同参画 令和3年5月号|男女共同参画局)
日本の女性が抱える3つのジェンダー問題
① 無報酬労働の負担
現在、日本の女性の大半が家庭内の炊事洗濯、介護や子育てといった無報酬労働を担っています。
経済協力開発機構(OECD)が2020年にまとめた生活自慢の国際比較データによると、無償労働時間の世界平均は、女性262分、男性136分となっていて、世界で見ても女性の無償労働が男性の約2倍にもなることがわかります。
どの国も女性の無償労働が長いことが言えますが、男女比を見たとき、男性を1とした場合の女性の比率を見ると、日本の女性は男性の5.5倍の時間を無償労働に充てている状況です。しかし、無償労働と有償労働を合わせた総労働時間は日本女性496分、日本男性493分で男女の差はほとんどありません。
先ほど示したように、日本女性は男性の5.5倍の無償労働を行っています。にも関わらず労働時間がほぼ同じであることは、女性の労働が経済活動に貢献できていない現状を示唆していると考えられます。
② 雇用機会と賃金の不平等
女性は、出産や子育てなどのライフイベントによって1度就いた仕事を休職したり、辞めなければならなかったりする場合も多く、再雇用の機会確保が難しい現状にある人もいます。
近年は下の図のように現在子育て世代の女性の就業率の変化、通称M字カーブは年々緩やかに、かつ全体的に上方にシフトしている状況です。
しかし、「30~34歳」「35~39歳」の一時的な就業率低下の傾向はいまだに残っており、出産・育児と仕事の両立が可能な環境づくりの面で課題があるといえるでしょう。]
また、女性の賃金が男性に比べて低いことも明らかになっています。厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査では、男女ともに賃金のピークとなる「50~54歳」の賃金格差について、男性が423.7千円であることに対し、女性の賃金は275.8千円であり、同世代での賃金格差が目立ちます。
この原因として、男女の勤続年数の差や、雇用形態の違いが挙げられていて、賃金の完全平等達成は解決の難しい問題と考えられています。
(参照:令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況 性別|厚生労働省)
③ 政治参加
日本の女性国会議員(衆議院)の比率は2019年の時点で10.2%で、世界女性の国会議員の平均値である政治・経済の分野に24.3%には遠く及びません。
日本では女性が活躍できる場においての平等が課題になっていますが、一部の地方議会などでは現在でも「女が政治に口を出すな」といった声も珍しくありません。
現在の女性の都道府県知事を見ても、2021年現在では山形県の吉村美栄子知事と東京都の小池百合子知事の2人しかいません。
女性政治家の不足は、女性目線の社会制度づくりを妨げ、いつまでも女性の権利向上・社会進出が進まないという悪循環を生んでしまっています。
女性が活躍する社会のための日本政府の取り組み
ここまでで、日本の女性が抱える社会的課題を整理してきました。
日本政府はこれらの課題を解決し、女性が活躍する社会を構築するために、さまざまな取り組みを行っています。
「女性活躍推進法」とは
2016年、安倍政権は女性の活躍を推進し、現状を打破するために、「女性活躍推進法
と施行しました。女性活躍推進法では、国や自治体・企業などに対して、守るべき3つの項目が設定されています。
①女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定
的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること ②職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と 家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること ③女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと |
女性活躍推進法に積極的に取り組む企業は「えるぼし認定」や「なでしこ銘柄」の認定対象となり、取り組みの評価によって公共調達や融資・助成金のサポートなど多くのメリットが得られる仕組みとなっており、国が力を入れた事業であることが伝わってきます。
「えるぼし認定」は、3つの段階で評価されます。女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準をいくつ満たしているかで段階が定められ、評価項目には①採用②継続就業③労働時間等の働き方④管理職比率⑤多様なキャリアコースがあります。
もう一つの認定制度「なでしこ銘柄」では、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として女性活躍推進法に優れた上場企業を紹介することで、投資家の女性活躍推進法に対する注目を高め、取り組みの加速化を狙いとしています。
2021年は、「なでしこ銘柄・準なでしこ銘柄」として44社が選考され、業種を問わない幅広い範囲の企業に注目が集まりました。
このような認定制度を設けることで、事業主に女性が社会で活躍する背中を押す役割を任せられるようになるのです。
(参照:令和2年度「なでしこ銘柄」「準なでしこ」を選定しました|経済産業省)
女性応援ポータルサイト
内閣府の男女共同参画局には、支援を必要とする女性のために「女性応援ポータルサイト」を運営しています。
このポータルサイトでは、出産・育児や介護の支援情報、再就職の就業支援、地域における起業活動の支援など様々なサポート情報が掲載され、いまだ流行する新型コロナウイルス関連の情報など、生活に悩みを抱える女性を支える知恵を発信しています。
誰もがアクセスできるインターネットを利用したサービスの提供により、「助けを求める」ことが苦手な女性でも、情報を得るために安心して行動できるという点では、「女性ポータルサイト」の活用は非常に有効な手段であるでしょう。
最後に
日本は先進国の中でも特に男女平等から遠い国であり、日本女性は働きやすい環境の確保・賃金不平等・政治参加の課題など、多くの問題を抱えていました。
その一方で、この状況を打破しようと行動し、国や自治体レベルでの取り組みが行われてきたのも事実で、日本の女性活躍社会は目の前に来ています。
あとは私たち自身がこのような活動を知り、一人ひとりが女性活躍のために個人で行動したり、国の政策に取り組んだりしていく必要があるのではないでしょうか。
この記事が女性の皆様の活躍のきっかけとなれば幸いです。
SDGsについて
SDGsは「<strong>Sustainable Development Goals」の略称</strong>です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、<strong>2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成</strong>されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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