【更新日:2022年4月7日 by 大川 智也】
近年、社会問題や環境問題といったテーマを扱うSDGsが話題に上がっていますが、農業とも深い関わりがあることを知っていますでしょうか。
その中でも、農業の発展は17個あるSDGsの目標を達成するための重要な役割をになっています。
しかし、このSDGsと農業についての関係性が見えづらく、「SDGsと農業には関わりがあるのか」「SDGsと農業にはどのような取り組み事例があるのか」といった疑問が多く寄せられています。
そこで今回の記事では、SDGsと農業との関係性について解説し、SDGsと農業の取り組みを紹介します。
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見出し
SDGsと農業の関係性
SDGsで目指す持続可能な農業とは
SDGsの飢餓問題を解決するために「持続可能な農業の実現」が対策として打ち出されています。
持続可能な農業=持続的に農業をおこない、安定した収穫ができること |
しかし、持続可能な農業の実現には、小規模な農家の生活と生産能力を向上させること、土地や技術、市場へのアクセスを与えることで収穫した作物を収入に変換できるようにする必要があります。
また、先進国を中心とした国際協力で、食料の運輸が可能となるインフラと農業や食料の保存技術への投資を確保し、途上国の農業生産性を改善する必要があります。
これらの取組によって、天候などに左右されず、安定・持続した生産や収穫がおこなえる「持続可能な農業」の実現を目指しています。
SDGsと農業の3つの関係性
飢餓問題と食料提供
世界では、貧困や紛争、環境破壊、干ばつ、生物多様性などさまざまな要因で約53ヶ国の1億1,300万人が食料不足によって、急性栄養不良に陥ってます。特に農業を生活の基盤としている人の割合が高い途上国は、気候変動・異常気象の影響を受けやすいため、食料不足に陥り、飢餓がより深刻になります。
また、5歳児未満のうち9,000万人以上が低体重の状態にあり、アフリカでは、4人に1人が空腹を抱える現状が続いています。
この状況を改善するため、ミレニアム開発目標(MDGs)から目標が定められ、2015年に採択されたSDGsへと引き継がれました。
食料の安定確保と栄養状態の改善を目標とし、2030年までに飢餓に終止符を打つとゴールを定めています。
自然環境の保持
世界の国土の31%は森林であり、その半分は手つかずの状態である原生林です。しかし、減少が続いている現状があります。
しかし、日本では国土の66%を森林が占めていますが、減少ではなく、放置されることが問題となっています。
このように各国によって、抱えている問題は違いますが、SDGsの目標15では、「陸の豊かさを守ろう」であり自然環境の保持について、明言されています。
特に15-3では「砂漠化に対処し、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力」というターゲットがあります。
陸域生態系を守る観点から農業のあり方を唱えています。
雇用の創出
SDGs目標8では、「働きがいも、経済成長も」を目標に掲げています。
SDGs目標8のターゲットには「生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する」というものがあります。
このターゲットは農業を雇用創出の重要な場とする可能性があり、今後更なる発展へと繋がります。
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世界の農業の現状
農業は世界の国内総生産(GDP)の4%を占めるなど経済成長として欠かせない産業です。
しかし近年発生件数多くなっている気候変動や産業活動による水汚染は農業に大きなダメージを与え、経済成長までも停滞させています。そこで世界の農業の現状はどういったものかについて詳細に迫りましょう。
技術向上による農業の効率化と供給の安定
SDGs目標9は、「強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る」ことを目的とし、インフラ・産業・イノベーションの3つの要素から成り立っています。現在の農業は、遺伝子組み換えの技術によって大幅に効率化されました。
科学技術の発展によって、水耕栽培の安定や品種改良の技術向上、土壌の栄養素管理などが達成され、どのような環境下でも農産物の安定供給が可能になりました。
このような技術向上は途上国にも伝わり、今まで農業が困難だった地域でも農業がおこなえるようになっています。アジアやヨーロッパ、北米では栽培技術の向上、アフリカと南米では、農地の拡大により農産物の供給量が増加しています。
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先進国への過剰分配
先進国では、農産物の過剰分配が引き起こす食品ロスが問題となっています。
さらに、過食による肥満などの健康問題も飽食から引き起こされていると考えられており、環境問題だけでなく、私たちの生活にとって食料の問題はさまざまな問題を連鎖的に引き起こしています。
食品ロスの問題は、日本のSDGsの達成状況にも大きく関わっています。
日本の達成度が最も低い目標は、目標12「つくる責任・つかう責任」です。
この目標は、先進国の多くが100位以下という結果が出ています。ひとつの要因として食品ロスの問題が大きく関わっており、改善がみられないという現状があります。
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開発途上国での農産物を含めた食糧不足
先進国では、食料の飽和状態が問題となっていますが、開発途上国では、農産物の生産量の増加に伴い、供給量は不足している現状があります。
開発途上国において、農産物をはじめとした食料が足りていないのは、絶対的貧困層の人たちです。しかし、絶対的貧困層の人たちは収入が少なく、市場に参戦することができません。
つまり、絶対的貧困層の農産物に対する需要が正しくカウントされておらず、本当に必要としている人に農産物が届いていないのが現状です。
そんな方たちへの取り組みとして、「フードバンク」というものがあります。
フードバンクとは名前の通り「食料」の「銀行」です。
「食べ物が余っている人」と「食べ物が足りなくて困っている人」をつなぐ役割をしています。
ここでは余っている食べ物を持っている人が支援者、食べ物をもらう人が利用者となります。
横流しをただするだけではなく、必要なものを必要なだけ必要な人に届けています。
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《徹底解説》フードバンクとは|フードバンクのSDGsにおける位置付けとは? | SDGs CONNECT
日本の農業の現状や課題
日本の農業にはたくさんの課題があります。
新規就農者の減少
新規就農者は農業機材や農業に関する知識の不足により、新規参入から経営安定までに時間がかかり、離農する確率が高いため、行政や周囲の農家からのさらなるサポートが重要視されています。
新規就農者の減少
多くの農家は経営が困難なため、離農者も多く新規就農者は農業を行いづらい環境になっています。さらに農業で重要な利水権や機械導入のコストなど新規就農者が抱えるトラブルも多く、就農者が減少し続ける農業の衰退をもたらしました。さらにTPPなどの貿易の自由化により国内の農業産業が市場競争で負けるなど課題が多い現状です。
農業自給率の低下
農家の多くは経営が困難なため、離農者が多く新規就農者は農業をおこないづらい環境になっています。さらに農業で重要な利水権や機械導入のコストなど新規就農者が抱えるトラブルも多く、就農者が減少し続ける農業の衰退をもたらしました。さらにTPPなどの貿易の自由化により国内の農業産業が市場競争で負けるなど課題が多い現状です。
農産物の輸出量が増加している
日本の農産物は健康的なイメージやおいしさが評判で海外での需要が高まっており、輸出量は増加傾向にあります。
輸出先の3/4はアジア地域が占めており1位から順に香港、台湾、中国がランキングしています。
就農者の形態が変化している
就農者の数は減少しているだけでなく、形態の変化も見られます。
かつては農地を所有している者は自然と専業農家になる事が多く見られました。しかし収入の不安定さなどから平日は本職を勤め、土日に趣味や自給のために農業をする非農家が増えています。
農業の課題を解決する主な解決方法2つ
ドローンを使用した農薬散布
広大な土地に農薬を散布するというのは、それだけ労力や時間、手間がかかる作業です。しかし、この作業にドローンを用いることで、効率化が図れます。
特に現在の日本の農家は高齢化が進んでおり、このような作業をおこなうことが困難な農家の方も増えています。
ドローンも操作が難しいですが、近隣の若い生産者などと協力することで、作業を効率化することにも繋がります。
導入するにはコストがかかるというデメリットもありますが、農薬散布委託費用や人権削減などの見えない経費削減に繋がるので、長期的活用を視野に入れるとよいと思います。
スマートフォンでおこなう水田の水管理
スマート水管理システム「水田ファーモ」で水稲の水管理を遠隔でおこなうことが可能です。
水田ファ―モは「水位センサ」と「給水ゲート」で構成されています。
「水位センサ」を設置すると自動で水位を測定し、スマートフォンで水位を確認することが可能です。これにより、見回りの回数が減ります。
また、理想的な水位が具体的にわかるため農場の関係者に水管理について共有が可能になります。
「給水ゲート」はスマホで入水・止水管理が可能になります。水位センサと組み合わせることにより、水位センサの測定値にあわせて入水・止水管理が自動で可能になります。
水管理は農業をおこなう上で非常に重要な要素の一つです。このように遠隔でできることで、作業の効率化や最適化をおこなえるのは非常に素晴らしい取り組みです。
持続可能な農業を実現するための取り組み事例5選(法人・企業)
JAグループ|農業協同組合
JAグループは主に以下の4つに力を入れています。
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持続可能な社会の実現を目指し、国産国消を合言葉に取り組んでいます。
参照:https://agri.ja-group.jp/foodsecurity/
井関農機株式会社
井関農機株式会社では、スマート農業で持続可能な農業の実現を目指しています。
日本農業の農地集積、規模拡大による生産性向上、農業従事者の減少・高齢化による人手不足などの課題を解決するためにデータを活用したスマート農業の促進をしています。
参照:https://www.iseki.co.jp/csr/sdgs/
株式会社アグリメディ|スマート農業
株式会社アグリメディは「都市と農業をつなぐ」をコンセプトに、新しい農業ビジネスを展開しています。
全国の遊休農地・遊休地をリメイクし、手軽に野菜作りを楽しめるサポート付き市民農園「シェア畑」の運営をおこなっています。
すべての農機具が用意されているため、手ぶらで野菜作りを楽しめます。また、農地・遊休地の維持管理や農作業を受託する「農地まもる君」というサービスも提供しています。
この取り組みによって農業を引退したが継ぎ手がいない、相続で農地を継いだが、管理ができないなどの農地に関する問題解決に取り組んでいます。
参照:https://www.geekly.co.jp/column/cat-technology/agritech-company/
営農型太陽光発電
営農型太陽光発電とは太陽光発電と農業を組み合わせた次世代の農業の仕組みで、発電した電気をもとに収穫を行ったり、電気を販売することで課題であった専業農家の収入の不安定がなくなる画期的なアイデアになります。
参照:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html
株式会社坂ノ途中
関西近郊で農産物の販売を行う「株式会社坂ノ途中」は、【未来からの前借り、やめましょう】をコンセプトに、新規就農者が環境負荷の小さい農業を広げる持続可能な農業を進めています。
また、自社農場「やまのあいだファーム」も経営し、環境負荷の小さい農業を実践する農業者のサポート体制も充実させています。
参照:https://www.on-the-slope.com/
私たちにできる農業の取り組み4選(個人)
食料自給率アップに協力する
食料自給率とは、国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標です。
食料自給率をあげるためには5つのアクションを起こすことが重要です。
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どれも簡単に取り組めるものばかりです。
有機JASマークの商品を買う
有機JASマークとは、化学的につくられた肥料・農薬を使用せずに農産物や加工品、有機農産物と同じように作ったエサを食べさせ、自由に育った家畜の卵や乳、肉などに付けられるマークです。
有機JASマークの商品の商品を買うメリットとして、消費者は安心感を得られるのと、厳しい審査基準をクリアした商品なので、安心して食べることができます。
参照:https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/abc4.html
農泊を体験する
全国の農山漁村において伝統的な生活体験をしながら地域住民と交流できるシステムです。
農泊を通じて地域特有の農業や漁業を経験でき、子供連れから大人まで多くの事を学ぶことができます。また地域食材を堪能し、誰でも農業×SDGsを身近にできる魅力を持っています。
農業体験を通してSDGsを理解する
園児や小学生などの小さな子たちから成人女性などをターゲットに農業体験を実施することで、食の大切さや食と農の繋がりを伝える取り組みが行われています。
農業への理解を促すほか、食品ロスの軽減につながることも期待されています。
まとめ
SDGsと農業の関係について紹介させていただきました。農業はさまざまな目標と密接に関係しています。私たちが生きていくうえで重要な要素になってくる「食」についてです。小さなことから「食」や「農業」を守るために紹介したアクションや活動に取り組んでみてください。