【更新日:2022年12月16日 by 大森令賀】
突然ですが、皆さんはSDGsの達成状況についてご存じでしょうか。
2030年までのSDGs達成を目指し、国内外で多くの取り組みが行われています。しかし取り組みの成果や、現時点でのSDGsの達成度について、知らない人も意外と多くいるのではないでしょうか。
今回は世界と日本のSDGsの達成状況、さらに各目標ごとの達成状況について詳しく見ていきます。
【この記事でわかること】
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SDGsは達成できない? 世界全体のSDGs達成状況
2015年にSDGsが公表されてから、世界ではさまざまな取り組みが行われています。
ここでは世界全体のSDGsの達成状況について見ていきます。
世界のSDGs達成度
世界全体としてSDGsはどれほど達成されているのでしょうか。
まずは世界のSDGsの達成度について見ていきましょう。
『Sustainable Development Report』によると、2015年から2019年までに世界全体でSDGsの達成度は向上していました。(SDGs指数の年平均スコアは0.5ptのペースで上昇)
しかし新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより、2019年から2021年にかけてはSDGsの進捗は見られず、SDGs指数の平均スコアは2020年からわずかに低下してしまいました。
つまり、現在世界ではSDGsの進捗は停滞していると言えます。
また2019年までの年平均スコア0.5ptのペースであっても、2030年までにSDGsを達成するには遅いペースであるため、より積極的な取り組みが必要です。
主要国所得階層別分類(※1)別に見ると、下記のような結果となっています。
(※1)
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低中所得国は、2019年まではSDGsの達成ペースは速かったにもかかわらず、2019年以降スコアは激減し、わずかに低下してしまいました。その結果世界全体として、SDGs指数も減少してしまったのです。
SDGsの進捗が停滞している理由として、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などがありますが、まだすべての影響を捉えていないため今後も停滞していると評価される可能性は大いにあるでしょう。
またウクライナで起きている戦争の影響は、最新のデータではまだ反映されていませんが、2022年以降の経済成長の大幅な減速に影響を与えると予想されています。
すでにエネルギー価格の上昇と食料のサプライチェーンの途絶は、世界中に大きな影響を及ぼしています。
つまり、2030年までにSDGsを達成するためには、これまで以上にSDGsにより積極的に関わっていく必要があるのです。
SDGs達成度ランキング
次に各国のSDGsの達成度ランキングを見ていきましょう。
SDGs達成度ランキング 上位10カ国
ランキング | 国名 | スコア |
1 | フィンランド | 86.5 |
2 | デンマーク | 85.6 |
3 | スウェーデン | 85.2 |
4 | ノルウェー | 82.4 |
5 | オーストリア | 82.3 |
6 | ドイツ | 82.2 |
7 | フランス | 81.2 |
8 | スイス | 80.8 |
9 | アイルランド | 80.7 |
10 | エストニア | 80.6 |
昨年に引き続き、SDGs指数の1位はフィンランドでした。
2位以降はデンマーク、スウェーデン、ノルウェーと北欧3カ国が続きました。
またフィンランドや北欧諸国は、最新の「世界幸福度報告」でも最も幸福な国であると評価されており、様々な面で見習うべき存在です。
SDGs指数の上位10カ国はすべてヨーロッパにあり、そのうち8カ国はEUに加盟しています。これらの国でもまだまだ大きな課題が残っているものの、経済、社会、環境という持続可能な開発の3大次元での強力なパフォーマンスに寄与していると見なせるでしょう。
SDGs達成度ランキング 下位5カ国
ランキング | 国名 | スコア |
163 | 南スーダン | 39.0 |
162 | 中央アフリカ共和国 | 39.3 |
161 | チャド | 41.3 |
159 | ソマリア | 45.6 |
158 | スーダン | 49.6 |
SDGs達成度の最下位は東アフリカに位置する国家、南スーダンでした。
南スーダンは2011年7月に、スーダン共和国からの分離独立を果たし、「世界で一番若い国」となりました。
しかし、独立を果たしたわずか2年後には2013年、再び国内で紛争が激化し、その後も停戦と紛争が繰り返されました。
2020年2月には暫定政権が発足しましたが、議会の設置や統合軍の結成など合意内容の実現は遅れています。
南スーダンは現在、非常に困難な状況に陥っており、国民は国内外の難民キャンプに身を置いている状態です。
このようにSDGsを達成している国とSDGsにまだまだ取り組める状況ではない国の差は明らかであり、私たちはあらためて「世界全体で」協力をし、一丸となってSDGsに取り組んでいかなければなりません。
達成できないとどうなるのか
SDGsは国際社会全体で取り組む目標とされていますが、法的な拘束力はありません。
そのため、達成できなかったとしても、ペナルティが課せられることはありません。
国連でもSDGsの法的拘束力について以下のように回答しています。
Q. 持続可能な開発目標に法的拘束力はありますか。
A. いいえ。持続可能な開発目標(SDGs)に法的拘束力はありません。とはいえ、各国は17の目標の達成に当事者意識を持って取り組むとともに、そのための国内枠組を確立することが期待されています。 |
参照:https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/17471/
しかし、現在世界では大きく分けて「環境問題」「社会問題」「経済問題」に含有される課題が数多く存在しています。
【課題の具体例】
環境問題 | 地球温暖化の進行、エネルギー問題の深刻化、自然災害の増加、水問題の深刻化、生物多様性の喪失、気候変動の激化、など |
社会問題 | 貧困、感染症の流行、教育機会の不平等、人口爆発、様々な差別とハラスメント、紛争の長期化・複雑化、少子高齢化、など |
経済問題 | 経済危機の頻発、若年失業率の高さ、雇用なき都市化の進行、社会福祉財源の不足、経済格差の拡大、など |
法的罰則はないとは言え、上記のような課題を解決しなければ、将来の世代が生きる未来は悲惨な世界となります。
持続可能な社会をつくっていくためにも、やはりSDGs達成はいち早く果たさなければならないのです。
日本のSDGsの達成状況
ここまで世界のSDGsの達成状況を見てきました。
では日本のSDGsの達成状況はどうなっているのでしょうか。ここでは日本のSDGsの達成状況について見ていきます。
日本のSDGsランキングの順位
日本の2022年SDGs達成度ランキングは19位(スコア:79.6)です。
19位と聞くと一見高順位のように思えますが、実は2022年がこれまでの日本のランキング順位で最も低い順位でした。
【各年の日本のSDGsスコアランキング】
年 | 順位 | スコア |
2016年 | 18位 | 75.0 |
2017年 | 11位 | 80.2 |
2018年 | 15位 | 78.5 |
2019年 | 15位 | 78.9 |
2020年 | 17位 | 79.1 |
2021年 | 18位 | 79.8 |
2022年 | 19位 | 79.6 |
日本の目標ごとの達成状況
日本の目標ごとの達成状況は以下の通りです。
『Sustainable Development Report』が発表しているこの表は、各目標の現在の達成度評価をアイコンの色で、各目標の進捗評価を矢印で表現しています。
【各目標の現在の達成度評価】
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【各目標の進捗評価】
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日本では「達成に近づいている」が3つ、「課題が残っている」が5つ、「重要な課題が残っている」が3つ、「重要な課題が残っている」が5つとなっています。
また、目標別の進捗評価では「達成の軌道/維持」が6つ、「中程度の改善」が8つ「停滞」が2つとなっており、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」のみ情報がありませんが、進捗が減少している目標はないことがわかります。
取り組みが遅れている目標
日本で取り組みが遅れている課題は以下の通りです。
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これらは『Sustainable Development Report』において「Major challenges remain(大きな課題が残っている)」と評価されている目標です。
日本は先進国とはいえ、約3分の1の目標はまだ達成にはほど遠いのが現状です。
とくにSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」が大きな課題として残っている先進国はあまりなく、日本がいかに先進国の中でもジェンダー平等に遅れをとっているかがわかります。
日本でSDGsを達成していくために、今以上に取り組みを推進していく必要性があるでしょう。
【目標別】2022年の世界のSDGs達成状況
SDGs達成にはまだまだほど遠いことや、また国内と国外で達成度にギャップがあったりと、多くのことがわかったかと思います。
では各目標ごとの達成状況はどうなっているのでしょうか。国連広報センターが掲載しているSDGs報告2022のデータを元に、17の各目標の達成状況について詳しく見ていきましょう。
SDGs目標1の達成状況
SDGs目標1「貧困をなくそう」を達成しているのは「OECD加盟国」と「高所得国」です。一方「オセアニア地域」「小島嶼開発途上国」「サブサハラアフリカ」「低所得国」は大きな課題が残っていると評価されています。
2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、貧困対策の4年分以上の前進が帳消しとなりました。
加えて2022年にはインフレの高騰とウクライナでの戦争が起こった影響で「極度の貧困状態にある人々の数」がコロナ禍前の5億8,100万人の予測をはるかに上回り、6億5,700万人ー6億7,600万人になる予測となっています。
また、低収入労働者の割合が20年ぶりに上昇し、さらに800万人の労働者が貧困へと追いやられました。
災害関連死もコロナ禍の影響で6倍に増加するなど、貧困対策はこの数年で一気に停滞・後退してしまったことがわかります。
▽SDGs目標1「貧困をなくそう」について詳しくはこちら
SDGs目標2の達成状況
SDGs目標2「飢餓をゼロに」を達成している地域や所得層国は実は一つもありません。
「低所得国」「低中所得国」はもちろん、多くの地域で大きな課題が残っていると評価されています。
世界全体の食料安全保障は紛争、新型コロナウイルス感染症、気候変動などの影響により弱体化しています。その結果、世界のおよそ10人に1人が飢餓に苦しみ、約3人に1人が十分な食料を定期的に得られていない状況です。
また、1億4,920万人の5歳未満児が発育阻害に苦しんでおり、この現状を2030年までに50%削減するには、発育阻害の年間減少率を現在の2倍にしなければなりません。
さらにウクライナでの戦争により、これまでウクライナとロシアから各国に輸出していた小麦やトウモロコシ、ヒマワリ種子製品が途絶し、最貧困層の食料不足の引き金となってしまいました。
▽SDGs目標2「飢餓をゼロに」について詳しくはこちら
SDGs目標3の達成状況
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成している地域や所得層国も、SDGs目標2と同様一つもありません。
新型コロナウイルス感染症はグローバル・ヘルスにおける数十年間の前進を脅かす存在です。
世界全体で5億人超が感染し、そのうち約1,500万人が死亡しました。その結果世界の平均寿命が低下し、またそれに伴い不安症やうつ病の罹患率も上昇してしまったのです。
さらにコロナ禍により1万5,500人の医療従事者の命が奪われるなど、世界の92%で医療サービスの混乱が発生しました。
また結核による死者数が2005年以来初めて増加したことも、SDGs目標3においては重要な課題です。
▽SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」について詳しくはこちら
SDGs目標4の達成状況
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成しているのは「OECD加盟国」と「高所得国」です。一方「オセアニア地域」「小島嶼開発途上国」「サブサハラアフリカ」「低所得国」「低中所得国」は大きな課題が残っていると評価されています。
コロナ禍により世界的に学習の危機が深刻化し、1億4,700万人の子どもが対面指導の半分超を受けられませんでした。また住んでいる国や地域のインターネット環境が悪く、オンライン授業も受講できない子どもも多く発生し、教育上での不平等がコロナ禍によって顕在化しました。学校再開後は、多くの国で学校インフラを整備するようになりました。
そのような中、ウクライナの子ども300万人に遠隔学習を提供する取り組みも2022年4月に行われました。
この数年、各地で様々な危機下に陥った子どもにとって教育はまさに命綱となるため、臨機応変な各国の対応が必要となっています。
▽SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」について詳しくはこちら
SDGs目標5の達成状況
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を達成している地域や所得層国は現時点では一つもありません。
女性と男性が平等に国の政治的リーダーシップを代表するようになるまで、現在のペースでは、ここからさらに40年かかる見込みです。
この現状を打破するためには、ジェンダーに配慮した予算編成の強化が必要となります。
また女性は雇用者全体の39%を占める一方、世界の失業者の45%は女性であるという事実もあります。
さらに、6億4,100万人の女性が生涯で少なくとも一度以上DVを経験していたり、性と生殖に関するヘルスケアの十分な情報を得られていない女性が43%にのぼっていたりなど、世界ではまだまだジェンダー平等の達成に向けて、取り組みを加速させる必要があることがわかるでしょう。
▽SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について詳しくはこちら
SDGs目標6の達成状況
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」を達成している地域や所得層国は現時点では一つもありません。しかしこれまでの目標とは異なり、「東南アジア地域」「中東・北アフリカ地域」「OECD加盟国」は進捗が順調であると評価されています。
2019年時点で7億3,300万以上の人々が、水ストレスが高いまたは危機的なレベルの国で暮らしていました。さらに少なくとも30億人はモニタリング不足のため、自らが使う水質を知らないという状況です。
現在のペースでは、2030年に16億人が安全に管理された飲料水を利用できず、28億人が安全に管理された衛生施設を利用できず、19億人が基本的な手洗い設備を利用できない状況が生み出されてしまいます。
2030年までに飲料水、衛生施設、手洗い設備の目標を達成するには、取り組みのペースを4倍にする必要があります。
▽SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」について詳しくはこちら
SDGs目標7の達成状況
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を達成している地域や所得層国は現時点では一つもありませんが、「ラテンアメリカ・カリブ海地域」の進捗は順調であると評価されています。
現時点で電化における目覚ましい前進が減速しています。原因は「最も届きにくい人々に届ける」という課題です。
2010年に電力を使用できなかった人は約12億人いましたが、2020年には7億3,300万人まで減少しました。しかし現在の傾向に基づくと、電力の供給が難しい地域に住む人々への援助が進まず、2030年までに約5,400万人にしか電力供給ができないと予測されています。
また再生可能エネルギーに関する開発途上国向けの国際的な資金フローは、2年連続で減少しています。再生可能エネルギーの総消費量は2019年までに4分の1増加しているものの、最終エネルギー消費量全体に占める再生可能エネルギーの割合は17.7%と、まだまだ増加させなければならないことがわかります。
個人での取り組みとしても、いまだ24億人の人々が、依然として非効率的で汚染につながる調理システムを使用していることも課題の一つです。
▽SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」について詳しくはこちら
SDGs目標8の達成状況
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」を達成している地域や所得層国も、SDGs目標2と同様一つもありません。
新型コロナウイルス感染症、インフレの高騰、政策の不確実性などさまざまな問題が世界経済の回復を阻んでいます。そして2022年に発生したウクライナ危機によって、世界経済の回復はさらなる遅れをとることとなりました。
世界の失業率も、少なくとも2023年まではコロナ禍前の水準を上回ったままであることが予想されています。
また、労働者の生産性は2020年からは回復したものの、後発開発途上国で同様の結果を得ることは叶いませんでした。
▽SDGs目標8「働きがいも経済成長も」について詳しくはこちら
SDGs目標9の達成状況
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を達成しているのは「OECD加盟国」と「高所得国」です。一方「オセアニア地域」「小島嶼開発途上国」「サブサハラアフリカ」「低所得国」「低中所得国」は大きな課題が残っていると評価されています。
世界の製造業はコロナ禍から回復しましたが、後発開発途上国は依然取り残されている状況です。
また小規模産業は復興に向けた資金援助を利用できず、小規模製造業の3社に1社のみが融資や融資枠の恩恵を受けています。
さらに旅客航空業界は、新型コロナウイルス感染症の影響で壊滅的となった損失を取り戻そうとしていますが、旅客数は2019年の45億人に対して2021年は23億人と今なお苦難中です。
▽SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」について詳しくはこちら
SDGs目標10の達成状況
SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」を達成している地域や所得層国は一つもありません。また、進捗状況のデータがない地域も多い状況です。
2020年からのコロナ禍により国家間の所得不平等が一世代ぶりに拡大しました。
また、ウクライナでの戦争が影響し、世界の難民の数は過去最多を記録し、出身国の外にいる難民の数は2015年から2021年で44%も増加したと言います。
さらに2021年には5,895人の移民が命を落とし、これは2017年以降で最も犠牲者の多い年となりました。
▽SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」について詳しくはこちら
SDGs目標11の達成状況
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」を達成している地域や所得層国は一つもありません。とくに「東南アジア地域」「サブサハラアフリカ」「低所得国」「低中所得国」は大きな課題が残っていると評価されています。
地域の災害リスク軽減戦略を持つ国の数は、2015年2021年までほぼ倍増し、よい傾向です。
その一方で、都市の成長に伴い自治体のゴミ処理の問題が増加している状況もあります。さらに世界の都市人口の99%は、汚染された空気を吸っているというデータも、都市の発展に伴う新たな課題と言えるでしょう。
また、世界の全員が住み続けられる町にするためには、スラムで暮らす10億人に対する重点的取り組みの強化も必要不可欠です。サハラ以南アフリカで公共交通手段への便利なアクセスが可能なのは都市住民の3分の1未満など、まだまだ多くの課題が残っています。
▽SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」について詳しくはこちら
SDGs目標12の達成状況
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」を達成しているのは「東南アジア地域」「サブサハラアフリカ」「低所得国」「低中所得国」です。
他の目標では多くの課題が残ると評価されていた地域や所得層帯が達成していると評価されています。
またSDGs目標12は17の目標の中で唯一「Major challenges remain(大きな課題が残っている)」の評価がされていません。
このことから、SDGsの目標の中で最も達成に近い目標と言えるでしょう。
それでもまだまだ取り組むべき課題は多くあります。
とくに「フードロス」ともいわれる食料廃棄の問題は各国で発生しており、世界の食料のうち、収穫後小売市場に届く前に失われる割合は13.3%となっています。また食料全体のうち、消費者レベルで廃棄される割合は17%です。
また電気・電子機器の廃棄物の回収率は世界平均で22.8%となっています。
天然資源への依存度が高まっている近年、このような廃棄物を回収することで新たな資源を発掘することなく、リサイクルで使用できるため、こちらの取り組みも推進していく必要があるでしょう。
▽SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」について詳しくはこちら
SDGs目標13の達成状況
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」を達成しているのは「オセアニア地域」と「低所得国」。一方「OECD加盟国」と「高所得国」は大きな課題が残っていると評価されています。
他の目標とは異なり、いわゆる先進国や高所得層国が大きな課題を残している目標であることが明らかです。
エネルギー関連のCO2排出量は2021年に6%増加しており、これは過去最高水準となります。その結果、世界の気温上昇は収まらずさらなる異常気象を招いているのです。
気候変動が起こることによってサンゴ礁の減少や海面上昇、干ばつなどがより高頻度かつ深刻なレベルで発生してしまいます。
先述したとおり、先進国に多くの課題が残っているため、これらの国がより積極的に気候変動に具体的な対策を講じていく必要があります。
▽SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」について詳しくはこちら
SDGs目標14の達成状況
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」を達成している地域や所得層国は一つもなく、この目標はSDGsの目標の中で唯一、すべての地域や所得層帯で大きな課題が残っていると評価されています。
地球最大の生態系である海は「プラスチック/海洋汚染」「海水温度の上昇」「富栄養化」「酸性化」「魚の乱獲」などにより危機に瀕しています。
とくにプラスチック汚染は甚大な被害を及ぼしており、2021年には1,700万トン超のプラスチックが海洋に流れ込み、2040年までに流れ込むプラスチック量は2-3倍に到達する見通しです。
また世界の漁師90%は小規模漁業の中で雇用されているため、これら漁師にはコロナ禍での支援の加速化が必要であると言われています。
▽SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」について詳しくはこちら
SDGs目標15の達成状況
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」を達成している地域や所得層国は一つもなく、こちらもほぼすべての地域や所得層帯で、大きな課題が残っていると評価されています。
世界では毎年1,000万ヘクタールの森林が破壊されています。世界で発生している森林破壊のおよそ90%の原因は、耕作地の拡大や家畜の放牧などの「農地の拡大」です。
また、生物多様性は新型コロナウイルス感染症の影響でなおざりになっており、約4万種が今後数十年で絶滅の危機に瀕すると報告されています。
一方で淡水・陸域・山岳の主な生物多様性領域の半分近くが保護されている現状もありますが、生物多様性を保つためにより積極的に取り組みを推進していく必要性があるのです。
▽SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」について詳しくはこちら
SDGs目標16の達成状況
SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」を達成している地域や所得層国は一つもなく、こちらもほぼすべての地域や所得層帯で、大きな課題が残っていると評価されています。
世界平和を願う声がますます高まってはいるものの、ウクライナでの戦争など、1946年以来最も多くの暴力的紛争を目の当たりにしています。そして世界人口の4分の1が今なお紛争の影響を受ける国で暮らしているのです。
さらに過去最高となる1億人が世界各地で故郷を追われ、世界人口の3分の1が夜間に近隣を一人で歩くことを恐れているというデータも出ています。
一方で世界の殺人発生率は、2015年から2020年まで5.2%低下しましたが、SDGsが掲げる2030年までの「大幅削減」には及んでいません。
「公正」に関しても、世界各国の企業の6社に1社は公務員から賄賂を要求されたことがあると回答しており、腐敗はあらゆる地域で見られていることがわかります。
▽SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」について詳しくはこちら
SDGs目標17の達成状況
SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」を達成している地域や所得層国は、一つもありません。
SDGs目標17のこの数年の課題としてあげられているのは債務負担の増大です。
サハラ以南アフリカ諸国では、債務のGNI(対国民総所得)比が急上昇し、コロナ禍からの復興を脅かしています。
また、SDGsデータに対するODAは2020年に18%以上減少していることも課題の一つと言えるでしょう。
一方2021年には「正味ODA総額は、主に新型コロナウイルス感染症関連の援助によって1,776億ドルの過去最高に達した」「外国直接投資は2020年から64%増加して1兆5,800億ドルに回復した」「送金額は2020年から8.6%増加して6,050億ドルに達した」などの成果を出していることも事実です。
さらにインターネット利用がコロナ禍中に加速したことも、達成に近づく取り組みの成果として挙げられるでしょう。
▽SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」について詳しくはこちら
SDGs先進国の取り組み事例3選
SDGs先進国とは、SDGsのゴール達成に向けて国をあげて取り組んでいる国のことです。
このあとに紹介する北欧3カ国(デンマーク・スウェーデン・フィンランド)が世界的に有名で、世界SDGs達成度ランキングでは、2017年の調査開始以来この3ヵ国が常に上位をキープしています。
この国々がなぜSDGsの達成度が高いのか、どのような取り組みをしているのかをご紹介します。
SDGs先進国の取り組み1|スウェーデン
スウェーデンは2003年にSwedish Policy for Global Developmentという法律を作りました。この法律では、「政府のすべての政策領域はSDGsに適合すること」が求められています。
この法律に基づき、政府が187の行政機関と約60の国営企業がSDGsの取り組みの報告を政府に出すことを義務付けるなど、本気でSDGsの達成に向けて取り組んでいます。
また、民間の企業や都市、著名人、政治家など個人の活動が盛んで、情報発信にも力をいれています。スウェーデン全体で「世界のSDGsのリーダー的存在であり続けたい」という想いがあると言えます。
具体的な取り組みの1つとして「大臣のジェンダーレス化」があげられます。
スウェーデン政府における大臣のおよそ半数が女性であり、さらに「男女平等大臣」という役職も設けられています。
国会議員の中にはLGBTであることを公言している人もおり、LGBTに対する偏見が生まれないよう、同性カップルを扱った話題が教育カリキュラムに組み込まれています。
SDGs先進国の取り組み2|デンマーク
デンマークは特に「食品ロス」の問題に力を入れています。
その取り組みの1つが「賞味期限と消費期限の書き方キャンペーン」です。
この取り組みはデンマーク政府がセリーナ・ユールさんという女性と「Too Good To Go」という、余剰食品をスマートフォンのアプリを介して低価格で提供するサービスを提供する女性たちと協力して行われました。
具体的には賞味期限表示の横に「多くの場合、賞味期限が過ぎてもおいしく食べることができます」と併記するというものです。
このキャンペーンには15社の食品メーカーが賛同し、食品のパッケージが新しく切り替わるタイミングで、賞味期限の横に「賞味期限が過ぎても多くの場合おいしく食べられます」という表示を入れることに成功しました。
SDGs先進国の取り組み3|フィンランド
フィンランドのSDGsへの取り組みとして特徴的なのは、行政が中心となって持続可能な社会構築への取り組みを進める中、企業や個人にもSDGsの考え方がかなり浸透してきていることです。
フィンランドでは「持続可能な開発に関する国家委員会」が設置されるなど、国としても持続可能な社会を活発に推進しています。「コミットメント2050」というシステムを利用することで、企業や個人など社会を担うさまざまなアクターが持続可能性を推進する行動を目標化することもでき、SDGsの概念はかなり一般的なものとなっています。
中でも先進的な取り組みの1つとして首都ヘルシンキが行っているサステイナビリティに焦点を当てた観光の促進があります。
ヘルシンキの観光情報を紹介するウェブサイトには、「サステイナビリティ」に焦点を当てた情報を発信するページが設けられています。このページを活用することで市民や観光客は、どの施設がサステイナビリティの基準を満たしているのか知ったり、ヘルシンキでのサステイナブルな1日の過ごし方について情報を得たりすることができます。政府が中心になって積極的にSDGsの情報発信を続けることで、人々にとってもSDGsの考え方が身近なものとなってきているのです。
まとめ
今回はSDGsの達成状況について日本と世界、両方の観点から見てみました。
日本は海外と比べるとまだまだSDGsの達成状況が遅れていることがわかったのではないでしょうか?
日本の達成状況を変えていくにはまず「現状を知る」ということが大切です。
SDGs CONNECTでは各目標ごとに詳しく解説した記事も投稿しているのでぜひあわせて見てみてください。
SDGs CONNECTライター。マーケティングに興味があります。十人十色の社会を目指して、多様な情報・価値観を発信していきます。好きなキャラは綾波レイとヴァイオレット。