日本の再生可能エネルギー割合は、2011年の東日本大震災以降、FIT制度の普及もあり増加しつつあります。
しかし依然として発電電力量に占める再エネ比率は低く、化石燃料を中心とした発電を行っています。
なぜ日本の再エネの割合は低いままなのでしょうか。また再生可能エネルギーを取り巻く世界の現状はどのようになっているのでしょうか。
今回は、日本の発電電力量に占める再エネ割合を中心に、再エネ割合の推移や、割合が低い理由、2030年までの目標、再エネ別の割合と課題についてみていきます。さらに、再エネを取り巻く世界の現状や、普及が進む国々の状況も詳しく解説します。
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再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱といった自然界に常に存在するエネルギーのことです。再生可能エネルギーを利用した発電としては太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電などが挙げられます。
石油や石炭のような枯渇性資源とは異なり、どこにでも存在し、温室効果ガスを排出せずまた枯渇の心配がないという特徴があります。また、輸入の必要がなく、国内での発電が可能です。
そのため脱炭素化に向けて、温室効果ガスの排出を抑え、同時に輸入資源に頼らない再生可能エネルギーに期待が寄せられています。
2022年の日本の再生可能エネルギーの割合
地球温暖化の影響により、昨今では省エネ家電の導入や再生可能エネルギーの利用に注目が集まっています。では2022年現在、日本における再生可能エネルギーの割合はどのくらいなのでしょうか。
2019年時点での再生可能エネルギー供給は水力7.8%、太陽光6.7%、バイオ2.6%、風力0.7%、地熱0.3%でした。
これに対し、2020年では水力7.8%、太陽光7.9%、バイオ2.9%、風力0.9%、地熱0.3%と全体的に再生可能エネルギーの割合が増しました。
2012年に導入されたFIT制度など、再エネ事業をサポートする取り組みが再生可能エネルギー供給の定着を促進させていると考えられます。加えて2021年には2030年度エネルギーミックスの「野心的な見通し」が掲げられ、今後ますます再生可能エネルギーの増加が期待できます。
日本の再生可能エネルギー割合の推移
2014年から2021年にかけて、自然エネルギーの割合は約12%から22%以上までに増加しました。なかでも2021年度における太陽光発電の発電電力量は9.3%と、前年から0.8%増加しました。
太陽光発電以外について、バイオマス発電は4.1%と年度の割合から増加が見られた一方、風力発電0.87%、地熱発電0.25%は前年度と比較してあまり変化が見られませんでした。また、水力発電は前年度から0.1%減少し7.8%でした。
日本の再生可能エネルギーの割合が低い4つの理由
エネルギー政策が火力や原子力に偏っている
2012年にFIT制度が施行され日本の太陽光発電の導入割合は増加しました。その他にも発電に関わる技術開発や「第6次エネルギー基本計画」の制定など再生可能エネルギー導入を進める取り組みが進んでいます。
しかし日本における発電の割合(2020年時点)をみると、未だに約7割を火力・原子力が占めています。天然資源を中心とした電力は主力電源であるとともに、日本の電力供給における調整力としても機能しています。
世界に比べて導入のコストが高い
日本は再生可能エネルギーの利用を推進している一方、再エネ発電コストは国際水準と比べると依然として高いままです。
平地が少ない日本では発電に適した土地の確保が難しいこと、自然災害の対策により再生可能エネルギーの発電施設にかかるコストが大きくなることが原因と考えられます。またFIT制度による電力の買取費用の一部は、電気料金を通じて国民が負担しています。
適切な調整力を確保しなければならない
太陽光や風力など、一部の再エネは季節や天候によって発電量が左右されるためコントロールが難しいです。そのため電力需要に見合わない発電を行う可能性があり、需要と供給のバランスがくずれた場合には、停電などの被害につながる恐れがあります。
再エネを主力電源化するためには、不安定な発電量をカバーすることのできる別の電源が必要です。しかし「調整力」として働く電源の確保も、再エネの導入コストを増やす要因となります。
地理的に導入が難しい再生可能エネルギーもある
再生可能エネルギーによる発電を効率化するためには、日射・風力・水力の影響が強い土地など、自然界の影響をより受けやすい場所が理想的です。しかし、そのような土地を獲得するためには農業・漁業など他の用途での利用や景観の問題といった課題と向き合わなくてはなりません。
とくに地熱発電の適地は、温泉地としてすでに利用されている場合があります。また土地を確保できたとしても、発電施設の存在が景観を損ねてしまう可能性も考えられます。
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日本の再生可能エネルギー発電設備容量は世界6位
日本の国土を活用し再生可能エネルギーの導入を進めた結果、国土面積当たり・平地面積当たりの太陽光発電の導入量は、主要国の中でも最大となりました。
また日本の再エネ発電設備容量は世界第6位となり、発電電力量は2012年から約3倍に増加しました(2020年度実績)。加えて太陽光発電は世界第3位を誇っています。
しかし2019年度における再生可能エネルギーの比率は18%と未だ低く、再エネの普及が進んでいる先進国と比較すると、日本は遅れていると言えます。その背景として日本の再生可能エネルギーの導入が太陽光発電に偏っていることが考えられます。
引用:再エネ | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 |広報パンフレット|資源エネルギー庁
引用:もっと知りたい!エネルギー基本計画① 再生可能エネルギー(1)コスト低減、地域の理解を得てさらなる導入拡大へ|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
再生可能エネルギーを取り巻く世界の現状
国際エネルギー機構(IEA)が発表したレポート「Renewables 2021」によると、2021年に導入された再生可能エネルギーの発電容量は290GWに上り、昨年に続き最高値を更新する見込みとなりました。
また2026年までに世界の再生可能エネルギー容量は2020年比で60%以上増加し、4800GWを超える見通しとなりました。これは現在の化石燃料と原子力の総電力容量に相当する値です。
再生可能エネルギー導入については、2015年から2020年の期間と比較するとすべての地域において増加すると予測されています。とくに中国、インド、EU、米国の4市場は全世界の導入拡大の80%を占めています。
各国の再生可能エネルギー導入の現状
デンマーク|再生可能エネルギー導入割合1位
デンマークでは、パリ協定に則り2050年までのゼロエミッション達成を目指しています。
三方が海に面しているデンマークは風力を安定して確保できるため、風力発電が発展しています。また電力割合について、デンマークでは2020年時点で既に風力を中心とした変動性自然エネルギー(VRE)の割合が50%を超え、欧州各国の中で最も高い値となりました。
政府は2030年までにすべての石炭火力発電を廃止するほか、電力の100%、総消費量の55%を再生可能エネルギーでカバーする目標を掲げています。
ドイツ|主要国の中でも高い再生可能エネルギー比率
ドイツでは、エネルギー移行目標を設定し、原子力をより多くの再生可能エネルギーに置き換えています。
原子力発電の替わりとして再生可能エネルギーを導入しているドイツでは、太陽光発電の他に、水力やバイオマス発電の普及も進んでいます。再エネにより作られた電力は、電力会社が買い取ることを義務付けられているため企業・個人ともに再エネの導入にメリットが生まれており、再エネの全体の発電量に関しては火力発電の発電量を上回っています。
ドイツは2038年までに発電の最大の供給源である石炭火力発電を廃止する見通しを立てています。
中国|急速に進む再生可能エネルギーの普及
中国では、太陽光発電や風力タービン、電気自動車などエネルギー技術の分野において世界の製造大国となりました。これにより、技術革新への支援は過去20年間で大幅に増加しています。
再エネの導入が進む背景には、急速な経済成長に伴うエネルギー需要の高まりがあります。中国ではエネルギー需要の勢いとともにエネルギーの消費量と二酸化炭素の排出が加速しました。その結果として大気汚染や環境問題が浮上したため、自然エネルギーへの転換・再生可能エネルギーの導入が急務となっています。
中国では今後、技術と開発への焦点をカーボンニュートラルの実現へ向けると予想されています。
引用:Denmark – Countries & Regions – IEA
引用:Germany 2020 – Analysis – IEA
引用:Tracking Clean Energy Innovation: Focus on China – Analysis – IEA
日本の2030年までの再生可能エネルギー目標
2021年に閣議決定されたエネルギー基本計画によると、日本では2030年度までに発電電力量のうち再生可能エネルギーが占める割合を22〜24%から36〜38%に引き上げる方針を示しました。
2050年カーボンニュートラル、2030年の温室効果ガス46%削減に向け、太陽光と風力の主電源化を目指すなどCO2削減に向けた取り組みを進めています。
再生可能エネルギー別の割合と課題
太陽光発電
2021年での割合は9.3%でした。設置場所を選ばず、企業や住宅など地域によらず広く導入されています。太陽光パネルの寿命は長く、約20年~30年と長期利用が可能です。太陽光パネルの技術は年々進化しているため、手入れや故障のリスクも下がってきています。
しかし設備費用は諸外国と比べ高く、天候によって発電量が変化する点が課題です。また事業用のメガソーラーによる自然破壊も問題として挙げられています。
風力発電
2021年での割合は0.9%でした。夜間でも発電が可能であることに加え、エネルギー変換効率が30%~40%と再生可能エネルギーのなかでも高い数値となっています。発電場所も陸上・洋上と幅広く、今後の技術開発や運用次第では発電コストの低下が期待できます。
課題としては年平均風速が6m/s以上の場所(設置高さ)が必要など、設置個所に制限があることや生態系への影響、景観への配慮が考えられています。
水力発電
2021年での割合は7.8%でした。水資源に恵まれた日本では古くから利用されている発電手法です。エネルギー変換効率も約80%と再エネの中でもっとも高く、天候の影響も受けにくいことから比較的安定して電力を供給できます。
一方、必要な落差・流量を確保するため立地条件に制限があり、ダムを建設する際には多額の費用と環境への配慮が必要です。ダムに関しては大量の水をせき止めているため故障による被害リスクがあります。他にも水利用権の整理や河川利用に関わる法規制への細かな対応が必要です。
バイオマス発電
2021年での割合は4.1%でした。生ごみや家畜の排泄物を利用した発電は、廃棄物の削減という点から循環型社会の形成に貢献できます。
しかし資源は広く地域に分散しているため回収、運搬、管理それぞれにコストがかかります。さらにバイオマス発電は、使用するバイオエネルギーに合わせ発電方法・発電施設が異なるため、広い地域から回収した資源を適切な場所まで運ぶ必要があります。これらの課題がコストを膨らませています。
地熱発電
2021年での割合は0.3%でした。地熱は天候や時間帯の影響を受けにくく、枯渇する心配のないエネルギー源です。地熱を利用した発電は二酸化炭素の排出量が少なく、環境への負担が少ない点が特徴的です。また発電に使用した蒸気などは暖房として再利用ができます。
しかし設備開発にかかる時間とコストが高く、地熱発電に適した土地は温泉地・観光地であることが多いため景観への影響も課題の1つです。
再生可能エネルギーを普及するためには
再生可能エネルギーの重要度が高まるほど、導入にかかる高いコストや調整力、適地の確保など解決すべき課題が現れ、普及が遅れています。
再生可能エネルギーを普及させるためにはこうした課題に対応していくとともに、コスト削減への期待が持てる技術開発と再エネへの理解を高める必要があります。
まとめ
今回は日本の再エネの割合について、理由と課題に注目して紹介しました。
併せて世界の再エネについても触れたため、日本と世界それぞれの視点から再エネを取り巻く状況が見られたと思います。
さらなる普及を目指すためには、導入を進める側と受け入れる側での相互理解と課題の共有が欠かせません。
本記事が再エネへの理解の助けとなれたら幸いです。