再生可能エネルギーによるデメリット3選-普及しない理由とデメリットの解決策を紹介

#エネルギー#再生可能エネルギー#脱炭素(カーボンニュートラル) 2022.07.07

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再生可能エネルギーと聞くと、自然由来のエネルギーを使っていることからメリットだけしかないと考える人も多いでしょうが、再生可能エネルギーにも導入にあたっていくつかデメリットが存在します。

再生可能エネルギーを導入する中小企業が増えていることからもメリットだけではなく、デメリットをきちんと理解する必要があります。

そこで今回は、再生可能エネルギーのデメリットについて、普及しない理由とデメリットの解決策を紹介します。

そもそも再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、水力や風力、太陽光など自然に存在するエネルギーのことを指します。

「地球上のどこにでも存在し、石油や石炭といった有限な資源と異なり永久的に利用でき、温室効果ガスを排出しない。」以上の3点が再生可能エネルギーの特徴です。

世界各国が脱炭素化に向けて動き出している昨今、温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーとしてこの再生可能エネルギーに注目が集まっています。

再生可能エネルギーの5つの種類

主な再生可能エネルギーの種類として以下があります。

水力発電
水が高いところから低いところへ流れる力(位置エネルギー)を利用し、設置してある水車を回転させることで発電します。

ダムを用いた大きな発電から河川を利用した中小規模の発電など、電気の需要に合わせた発電が可能です。

 

風力発電
風の力で風車を回転させる時に生まれるエネルギーを発電機に伝達することで電気をつくります。

風の強さによって発電量が左右されるため、安定した供給は難しいものの昼夜また陸海を問わずに発電できます。

 

太陽光発電
太陽の光エネルギーを太陽光パネルに当てることで電気をつくります。

文字通り太陽を利用した発電方法のため枯渇の心配がなく、また太陽光パネルの設置は建物や一般家庭の屋根などを利用できるため導入がしやすいという魅力があります。

 

地熱発電
地下に浸透した水が火山活動によって加熱されたことで生まれる蒸気や熱水を利用し、設置したタービンを回転させることで発電します。

時間や天候に左右されない安定した電力供給が可能ですが、場所を選ぶ必要があります。

 

バイオマス発電
廃材や一般廃棄物などの生物資源を利用して作られたバイオマス燃料を燃焼し、タービンを回転させることで発電します。

廃棄物を利用するため燃料の安定供給が可能であり、また廃棄物を再利用することから循環型社会の実現に貢献できます。

 


(参考:再生可能エネルギー早わかり!|J-POWER 電源開発株式会社)
(参考:再生可能エネルギーにはどんな種類があるの?それぞれの特徴を知ろう|EGR)
関連記事:《SDGs基礎》目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を徹底解説

再生可能エネルギーに関する内容はこちらから▼

 

再生可能エネルギーによるデメリット3選

発電量が天候や季節に左右される

再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電や風力発電はその時々の天候や季節によって発電量が変動します。
そのため長期間の悪天候などにより電力の供給が減少した場合、需要に間に合わず停電などの被害を生む恐れがあります。

曇り空

(引用:https://www.photo-ac.com/)

このデメリットに対し現在は、火力発電と揚水発電を用いた供給のバランスの調整を行っています。

 

発電コストが高い

再生可能エネルギーは他の発電施設よりも高額な費用がかかります。
平地が少なく日射量も多くない日本では発電に適した場所の確保が難しいことや、地震や台風といった自然災害が多いため災害対策コストがかかるといった背景から、日本では再生可能エネルギーの発電コストが他国と比較して高い傾向にあります。

現在は再生可能エネルギーの導入加速に伴い、FIT制度の買取価格を引き下げていくなど発電コスト削減に向けた取り組みが行われています。

FIT(固定定価買取制度)とは、再生可能エネルギーで発電した電気を一定の価格で一定の期間買い取るよう電力会社に義務付けた制度のこと。

 

エネルギー変換効率が低い

火力発電や原子力発電に対し、再生可能エネルギーのエネルギー変換効率は低く、水力発電を除いた再生可能エネルギーの発電効率は約10%~30%程度しかありません。
火力発電が約55%であることを踏まえると、かなり低い数値であることがわかります。

青空と発電所

(引用:https://www.photo-ac.com/)

再生可能エネルギーの主電源化および変換効率の向上を目指し、更なる技術の進歩に期待が高まります。

 


(参考:再生可能エネルギーの種類を一覧で紹介!特徴やメリット・デメリットも | グリラボ)
(参考:再生可能エネルギーとは?デメリットや普及の必要性について解説!|アスエネメディア)
(参考:株式会社エコスタイル~子供たちの未来にエコ電力~ | 株式会社エコスタイル~子供たちの未来にエコ電力~)

再生可能エネルギーが生まれた背景|オイルショックと再エネ

屋根に取り付けられた太陽光パネル、街中に潜むSDGsのロゴ、持続可能な社会を目指す世界各国の動きに合わせ日本でも社会と環境に配慮した取り組みが行われています。
その中でも自然とつぶやかれる再生可能エネルギー(再エネ)という言葉は、一体いつ頃から生まれたのでしょうか。

始まりは1973年に起こったオイルショックにまで遡ります。
エネルギーを中東の石油に依存していた日本では、とくにオイルショックによる影響と混乱が大きかったこともあり、次第に安定的なエネルギーの確保に強い注目が集まりました。そのことを受け、翌年の1974年にはエネルギーの長期的な安定供給の確保を目指す計画、サンシャイン(SS)計画という国家プロジェクトが誕生しました。

当時の通商産業省(現・経済産業省)主導のもと進められたサンシャイン計画では、クリーンエネルギーの活用技術を開発するという目標のもと、主に太陽光、地熱、水素、石炭を対象に技術開発を行っていました。こうしたエネルギー活用研究に加え、1980年には「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の設立や「代エネ法」の施行が進み、再エネ研究の基盤がつくられていくこととなります。

1993年頃には地球温暖化問題への関心が強まり、続く1994年では再生可能エネルギーを含む新エネルギーにどのように取り組むかという指針「新エネルギー導入大綱」が策定され、新しいエネルギーの導入を積極的に行っていくという国の方針が示されました。

青空と太陽光パネル

(引用:https://www.photo-ac.com/)

1973年のオイルショックを受け再生可能エネルギーの導入に向けて動き出した日本ですが、前章で挙げたいくつかのデメリット(発電コストや安定供給の課題)から、再生可能エネルギーの主力電源化は完全とは言えない状況です。

日本は化石資源を海外からの輸入に頼っています。しかし、その価格は時のパンデミックや国際情勢によって高騰するため、安定した確保が難しい点が課題です。加えて今後は世界の人口増加や新興国の経済成長によるエネルギー需要の増加が予想されます。
輸入資源の枯渇に備えるためにも、再生可能エネルギーに関する技術の進歩と制度の充実が急がれます。


(参考:再生可能エネルギーの歴史と未来|再生可能エネルギー・新エネルギー|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁)

再生化可能エネルギーはなぜ普及しない?3つの理由

高い発電コスト

デメリットの1つでもある高い発電コストが普及の足かせとなっています。
補助金やFIT制度によるコスト削減が取り組まれていますが、日本の水準は海外と比較すると未だに高く、導入への大きな負担となっています。
再生可能エネルギーの普及を進めていくためには、他の発電施設と同じ水準まで発電コストを抑えなくてはなりません。

適地の不足

自然条件の影響を受けやすい再生可能エネルギーの導入において、発電に適切な土地の確保は重要です。
しかし適地では農業や漁業といった他の利用も予想されるため、発電設備の建設には地元の住民の理解と自然の保護が必要です。
例えば地熱発電の条件を考えたとき、その適地は温泉地帯と重なっていることが多いため建設後は地域の景観を損ねてしまう恐れがあります。

景観や環境、地域との調和という条件のもと、発電施設の導入場所を獲得していくことが再生可能エネルギー導入拡大における課題となっています。

送電容量の確保

折角発電した電力であっても必要とする場所に届けることが出来なければ意味がありません。再生可能エネルギーの普及を進める上で解決しなくてはならない問題の1つが送電容量の確保です。
自然に恵まれている北海道など、再生可能エネルギー導入のポテンシャルが高い地域と都市部などエネルギー需要の大きい地域は離れています。送電網はまさに需要と供給のバランスを調整する役割を担っています。万が一、人口の集中する地域の需要に対し送電容量が不足した場合、再生可能エネルギーの利用が困難となってしまうため、送電網の整備が急務となっています。


(参考:資料1 今後の再生可能エネルギー政策について(pdf)|経済産業省)
(参考:国内外における再エネの普及状況。日本は進んでいない!? | EnergyShift)

再生可能エネルギーのデメリットを解決するための取り組み3選

ガラスでできた地球の模型

(引用:https://www.photo-ac.com/)

天候によって発電量が不安定|蓄電池の利用

発電量の不安定性というデメリットを克服するため、発電量の調整装置として「蓄電池」に期待が寄せられています。

蓄電池とは、電気を蓄積することで繰り返し使える電池のこと。

とくに、電力系統(発電所から送配電まで、電力に関するシステム全体)につないで利用される「電力系統用蓄電池」は、電力のバランスを整える装置として系統電力の安定化を図ることができます。
蓄電池の活用により不安定な発電量を補うことが可能となれば、再生可能エネルギーの普及が更に拡大すると思われます。


(参考:再エネの安定化に役立つ「電力系統用蓄電池」|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁)

発電コスト|FIT・TIP制度

発電コスト削減の一環として2012年に固定価格買取(FIT)制度が導入されました。この制度は再生可能エネルギーの導入を拡大することを目的に、発電された電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取るといったものでした。

また2020年6月には市場の競争力を高めることを目的とした制度、FIP(Feed-in Premium)制度の導入が決まりました。


(参考:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁)

太陽光発電のエネルギー変換効率向上|東芝

2021年9月、東芝は新たな成膜法を開発することにより、世界最高のエネルギー変換効率15.1%を実現したフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発しました。
現在主流となっている結晶シリコン太陽電池は、重量および形態の面から設置場所に制限がありました。しかし、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は軽量薄型で曲げることができるため、従来は設置ができなかった場所に設置することが可能となっています。
今後は更なる大面積化を進めるとともに、エネルギー変換効率20%以上の実現を目指しています。


(参考:世界最高のエネルギー変換効率15.1%を実現したフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発| 研究開発センター | 東芝)

国だけではなく中小企業も再生可能エネルギーを導入しよう

新聞を眺めるサラリーマンたち

(引用:https://www.photo-ac.com/)

地球環境への関心が高まる中、再生可能エネルギーの導入は企業価値に繋がります。

例えばESG投資など、企業の環境に対する取り組みや配慮は投資家の判断となっており、同じくSDGsレポートなどはステークホルダーに企業の取り組みを報告する役割として機能しています。

再生可能エネルギーの導入は企業イメージの向上だけでなく、企業の将来性を示す手段の1ともなるのです。


ESGに関する内容はこちらから▼

SDGsレポートに関する内容はこちらから▼

まとめ

本記事では再生可能エネルギーのデメリットを中心に紹介しました。

持続可能な社会を目指していく上で、再生可能エネルギーの導入は大きな一歩となるでしょう。
今後ますますの普及が期待されていますが、その中でも再生可能エネルギーのデメリットについて理解しておくことは、導入または普及の助けになると思います。

関連記事、またサイト内よりSDGsに関する情報を発信しておりますので、是非覗いてみてください。

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