【更新日:2023年4月6日 by 大竹礼二】
近年、注目されているSDGsですが、沖縄県のSDGsが注目されています。
沖縄県は、海や観光地として有名ですが「国内唯一の地上戦」が行われた土地でもあります。
その影響から、さまざまなSDGsに取り組んでいる県です。
今回は、沖縄の企業が取り組んでいるSDGsや、県が取り組んでいる事例をSDGsの目標別に紹介していきます。
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【この記事でわかること】 |
見出し
沖縄県とSDGsの関係性
沖縄県がどのようにSDGsに取り組んでいるのか、過去に行ったイベントも含めて説明していきます。
SDGs未来都市に選定
沖縄県は2021年にSDGs未来都市に選定されました。
SDGs未来都市とは、SDGsの理念に沿った取り組みを推進している都市の中で、持続可能な社会を実現するポテンシャルが高いとして選定された都市です。
沖縄県では、2030年の沖縄のあるべき姿として、「平和を求めて時代を切り拓き、世界と交流し、ともに支えあい誰一人取り残さない、持続可能な『美ら島』おきなわの実現 」を目標にSDGsに取り組んでいます。
主に、経済・社会・環境を中心に沖縄の文化継承や生態系保護に取り組んでいます。
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沖縄県SDGs実施指針
沖縄県では、2019年11月に知事を本部長として、全部局長で構成する「沖縄県SDGs推進本部」を設置しました。
さらにSDGsの推進にあたって、基本的な考え方や方向性などを盛り込んだ「沖縄県 SDGs 推進方針」を策定しました。
また同年の5月には「SDGsに関する万国津梁会議」を設置し、同会議において、沖縄におけるSDGs推進について、「沖縄らしい SDGs」の観点から検討が行われました。
自治体SDGsモデルに選定
また沖縄県は自治体SDGsモデルにも選定されています。
沖縄県が行っている自治体SDGsモデル事業は『誰一人取り残さない持続可能な美ら島「沖縄モデル」推進プロジェクト』という名前がついています。
プロジェクトの目的は、
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となっています。
以上の目的を達成するため、経済を自立させるため沖縄の観光事業に力を入れ、バスツアー促進事業が始まっています。
SDGsOKINAWAグランプリの開催
2021年に沖縄県では「SDGsOKINAWAグランプリ 2021」が開催されました。
SDGsOKINAWAグランプリとは、全国の高校生以上の学生を対象としたアイデアコンテストです。
2030年に実現したい沖縄の姿から社会課題を解決するアイデアを競います。
さらに、企業が提示した社会課題を解決するアイデアの募集もあり、沖縄の環境や持続可能な社会にしていくため、学生がチームを組んで協力しています。
沖縄のSDGsへの取り組み事例5選-目標別に紹介
SDGs1「貧困をなくそう」
SDGs1「貧困をなくそう」は、2030年までに世界中のあらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、貧しい暮らしをしている人をなくすことをテーマに目標として定められています。
貧困には2種類あり、「絶対的貧困」「相対的貧困」があります。
「絶対的貧困」は、世界銀行が定めた生活最低ラインの1日$1.9以下(日本円で200円)で生活している人を指します。特に女性の就業率は低く、貧困状態になりやすいです。
「相対的貧困」は、その国の生活水準を下回る状態に陥っていることを指します。所得の格差や失業率の増加が相対的貧困にあたります。
この目標では、2030年までに貧困層の人や男性女性関係なく平等な権利を持つために定められています。
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課題と現状-子どもの貧困
沖縄では、親に安定した収入がない、または収入が低いという理由で、子どもも貧困状態に陥っています。
そのため、満足に学校に通えず食事も食べられない状況にあります。
沖縄の貧困率は29.9%となっています。全国平均は、13.5%のため平均を下回る結果となっています。
さらに、1人当たりの所得も低く、相対的に子どもの貧困率も低くなっています。
沖縄県が行ったアンケートでは、沖縄全体で食料を買えなかった経験が20.2%と全国平均を上回り、ひとり親世帯では42%とさらに割合が増えています。
取り組み事例-沖縄子どもの貧困対策計画
内閣府によると2022年3月までの「子どもの貧困対策」を掲げています。
沖縄県では3つの施策を掲げています。
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この施策では、幼児期、小・中学生、高校生とステージに分け、支援を必要とする子どもやその家庭に支援機関へつなげる仕組みを構築しています。
さらに、生活困窮家庭やひとり親世帯へ生活の相談や安定した収入をえるために就業訓練や就学の学び直しの支援も行っています。
困窮問題は1人だけで解決はできません。周囲との協力や自治体の支援が求められている現状です。
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児の能力強化を行うことをテーマにしています。
特に、中央アジアや南アメリカ大陸、アフリカ大陸の国で暮らす女性には学校や職場がありません。
政治面や経済面で男女の差があり、平等が実現されていません。
この目標では男女間の差別をなくし、全ての人が平等に過ごせるように定められています。
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課題と現状
現在日本では、男女の役割など性別で分けてしまいジェンダー平等ができていない状態です。
世界のジェンダーギャップ指数では、日本は146か国中116位です。これは、ジェンダー平等であるほど順位が高くなります。日本は116位という低い順位に位置しています。
「男性だから」「女性だから」という前置きによって、服装や髪型、意識や考え方にまで影響が及んでいます。
現在、ジェンダー不平等での問題点は以下の5つです。
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この問題を解決するため、女性を多く雇用する企業や、幹部を女性社員に起用する動きがみられています。
取り組み事例1-那覇市パートナーシップ
玉城デニー沖縄県知事は2020年9月25日に沖縄県議会9月定例会代表質問で都道府県として全国初のLGBT支援宣言である「性の多様性宣言」の検討を表明しました。
また同性パートナーシップ証明制度についても「導入も含めて検討していく」としました。
那覇市では独自にLGBTの支援制度を大阪市淀川区に続き、全国で2番目に発足しており、那覇市は「レインボーなは宣言」を皮切りにさまざまな支援を行なっています。
さらに「性の多様性を尊重する都市・なは」宣言の理念に基づいて、誰もが差別がなく、安心して暮らせるよう「那覇市パートナーシップ登録の取扱いに関する要綱」が制定しました。
市では申請に基づき、「戸籍上の性別が同じである2人」が互いを人生のパートナーとするパートナーシップ登録を行い、証明書を交付しています。
取り組み事例2-株式会社オー・イー・エス
株式会社オー・イー・エスでは、子どもの貧困問題と女性のキャリアアップに取り組んでいます。
沖縄県では、ひとり親世帯が多く、生活が困窮し子供の就学が十分ではない家庭が多く存在します。そのため、大学まで進学する人が少なく、キャリアアップの機会が少なく、生活が困窮してしまう悪循環が生まれてしまいます。
株式会社オー・イー・エスでは、子どもの学力向上のため塾を運営しています。さらに、働いている女性職員のキャリアアップや育児中の就業改善を行っています。
株式会社オー・イー・エスの運営している塾では子どもと接する機会が多く、子育てを経験した人が活躍できる場所になっています。男性、女性関係なく活躍できるよう取り組んでいます。
SDGs14「海の豊かさを守ろう」
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」をテーマにしています。
実は地球上の酸素の3分の2は、海面に近いプランクトンによってつくられています。海は私たちの生活に欠かせない存在です。
現在、海で問題視されているのがプラスチックごみです。魚介類への影響はもちろん、海から資源を得ている人間の生活にも影響を及ぼしています。
この目標では、海の資源を有効活用し、持続的な生態系を維持していくために定められています。
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課題と現状
沖縄の海で問題視されているのは、サンゴ礁の破壊や白化現象です。
実は、サンゴは動物です。周囲の藻と共生し、生態系が保たれています。
しかし、沖縄のサンゴ礁は減少し続けています。減少の原因の一つとしてサンゴの白化が挙げられています。白化が続いてしまうと、サンゴ礁は死んでしまうのです。
サンゴの白化原因として、4つの理由があげられています。
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環境の変化がサンゴのストレスとなり、減少を続けています。
取り組み事例-サンゴの人工産卵に成功
2022年2月、環境ベンチャー企業である「株式会社イノカ」は、サンゴ礁の人工産卵に成功しました。
サンゴは敏感な生き物のため、少しの環境変化で死んでしまいます。さらに、サンゴの産卵は1年に1回、6月の満月の夜という限られたときに起こると言われています。
人工産卵の実験が成功したことによって、サンゴ礁の産卵時期をコントロールできる可能性が出てきました。
この研究が進めば、1年に1度しかできなかったサンゴの卵の研究が進みます。今後、サンゴ礁を増やすことができれば、海の生き物を守ることにもつながってきます。
SDGs15「陸の豊かさも守ろう」
SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」は、「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」をテーマにしています。
陸の生態系は、人間の経済活動により破壊されつつあります。森林を切り開くことで、住んでいる野生動物も減少しています。
この目標では、天然資源を有効活用し、豊かな自然や持続的な生態系を維持していくために定められています。
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課題と現状
日本は島国であることで固有種が多く、外来種により生態系がおびやかされています。
特に、ニホンウナギなどが絶滅危惧種に指定されています。
沖縄県での外来種の侵入は、大きく3種類ほどあります。
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外来種が増えていくことで、沖縄の元の生態系が崩れ周囲の環境にも影響を及ぼしています。
取り組み事例-マングースの捕獲計画
沖縄では、ハブ対策をするためにマングースを使い、ハブが増えすぎない対策をしていました。しかし、マングースは在来種であるヤンバルクイナを捕食してしまいます。
さらに、外来種は繁殖力が強く、在来の動物だけでなく植物まで枯らしてしまいます。農作物の被害もあり、生態系が大きく崩れてしまうことが心配されています。
外来種を増やさず、生態系改善のため沖縄では2001年からマングースの捕獲を行っています。
生け捕りの罠や、マングース探知犬の導入で2022年までに沖縄本島北部のマングース根絶を目標にしています。
SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」
SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、世界各国の政府や自治体だけが政策をするのではなく、市民ひとりひとりが協力することをテーマに目標として定められています。
技術の進歩により、私たちの生活は便利になりましたが、環境や気候に悪影響を与えました。
次の世代に自然や環境を繋いでいくためにも、これらの社会問題を解決していくことが必要不可欠です。
この目標では、ひとりひとりがSDGsに対して協力していくために定められています。
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取り組み事例-おきなわSDGsパートナー登録制度
おきなわSDGsパートナーとは、沖縄県で行われているSDGsの取り組みを行い、県民に向けた普及活動を行う企業・団体を指します。
おきなわSDGsパートナーに登録されるには、以下の条件を満たす必要があります。
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沖縄県のSDGs推進のために、パートナーとなった企業・団体と連携しSDGsを促進していきます。
私たちが沖縄のSDGsに参加するには?-イベント等を紹介
しかし、沖縄県中心で取り組みが行われているものがほとんどです。
沖縄県で私たちにできるSDGsはあるのでしょうか。紹介していきます。
修学旅行
修学旅行先として有名な沖縄県ですが、SDGsが新しい学習指導要領に盛り込まれたこともあり、修学旅行でもSDGsに対する学びが求められるようになりました。
修学旅行のプランとして沖縄旅行×SDGsの学びを売り出す旅行会社もあり、今、SDGs×修学旅行が注目されています。
まとめ
今回は沖縄県のSDGsの取り組みについて紹介しました。
沖縄県は観光地としての明るいイメージが強いですが、戦争の歴史や海洋汚染などさまざまな背景を持つ県です。
県独自の政策や県の企業の取り組みなど、課題も多いですが今後どのように変化していくのか楽しみです。