温室効果ガスと地球温暖化の関係と影響-温室効果ガスの増加原因も解説

#エネルギー#持続可能#気候変動#生態系#生物多様性#砂漠化#絶滅#脱炭素(カーボンニュートラル) 2022.09.14

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【更新日:2022年11月11日 by 田所莉沙

温室効果ガスは地球温暖化の大きな原因であり、異常気象や絶滅種の増加など深刻な影響をもたらしています。

地球温暖化と温室効果ガスはどのような関係があるのでしょうか。また、なぜ温室効果ガスは増えているのでしょうか。

この記事では、温室効果ガスと地球温暖化の関係から、世界と日本の温室効果ガス排出量、温室効果ガスが増えている原因、地球温暖化による影響、温室効果ガスを減らすための取り組みまで解説します。

温室効果ガスと地球温暖化の関係

「地球温暖化」とは、人間の生活が活発になるにつれて「温室効果ガス」が大気中に大量に放出され、地球全体の気温が上昇する現象のことです。

地球の大気には温室効果ガスがわずかに含まれており、大気中で赤外線を吸収し再び放出しています。これにより本来地球の表面から外側に向かう赤外線が熱となり、地球の表面に戻ってきます。

このように赤外線が地球表面付近の大気を暖めることを「温室効果」といいます。「温室効果」は大気中の温室効果ガスが増えれば増えるほど高まり、地球の表面気温も高くなっていきます。

温室効果ガスの種類

「温室効果ガス」は主に4つの種類があります。二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、そしてフロンです。世界各国で技術が進歩し、産業の発展に伴って温室効果ガスの排出量は増加傾向にあります。

二酸化炭素は地球温暖化に及ぼす影響が最も大きい温室効果ガスです。石油・石炭などを消費したり、自動車や電化製品を使用したりする際に、多くの二酸化炭素が出ています。

メタンは、二酸化炭素の次に地球温暖化に及ぼす影響が大きい温室効果ガスです。湿地や池、水田で枯れた植物が分解する際に発生します。その他にも家畜のげっぷや、化石燃料・天然ガスの採掘時にも発生します。

亜酸化窒素は一酸化二窒素とも言われる、二酸化炭素の約300倍の温室効果がある温室効果ガスで、大量に発生するとオゾン層の破壊にもつながります。

フロンも温室効果ガスの一種で、自然界には存在せず人体にも無害であることから、家電用品などに長年用いられていました。しかしフロンによるオゾン層の破壊が確認されて以降、厳しい管理が行われています。

関連記事:温室効果ガスには種類がある?-割合から発生源、削減方法も徹底解説

関連記事:温室効果ガスのメタンによる地球温暖化への影響-発生源から削減方法を徹底解説

世界と日本の温室効果ガス排出量の現状

ここまで温室効果ガスと地球温暖化の関係や、温室効果ガスの種類について解説してきました。

続いて、日本と世界における温室効果ガス排出量の変化について説明していきます。

日本の温室効果ガス排出量

環境省と国立環境研究所によると、2020年における日本の温室効果ガス排出量は11億5000万トンで、2019年に比べて温室効果ガス排出量が5.1%減少しました。日本の温室効果ガス排出量は2014年以降、7年連続で減少しています。

また温室効果ガス削減目標において、日本では2030年度までに2013年度比で、温室効果ガス46%削減を目指すことを表明しています。しかし、現段階では18.4%と目標の数値には達していません。

世界の温室効果ガス排出量

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)によると、2019年における世界の温室効果ガス排出量は約335億トンでした。国別の温室効果ガス排出量では、中国・アメリカ・インド・ロシア・日本と続きます。

総務省統計局が発表した統計によると、中国の2019年の二酸化炭素排出量は98億900万トンで、2018年と比べて排出量が1.03%上昇しています。中国は最も二酸化炭素を排出している国です。

中国は温室効果ガス削減目標として、2060年までの炭素排出量の実質ゼロにする「カーボンニュートラル」達成と排出量を2005年度比で65%以上削減を定めていますが、現段階で排出量は増加し続けています。

また、2019年におけるアメリカの温室効果ガス排出量は47億6600万トンで、2018年と比べて排出量が1.7%減少しています。しかし、アメリカが定めている温室効果ガス削減目標において、2030年までに温室効果ガス排出量を2005年度比で50〜52%削減を目標と定めています。しかし現在は削減量が0.9%と大きな成果が見られていません。

関連記事:カーボンニュートラルへ向けた世界動向-世界が注目している理由から取り組み事例を紹介

温室効果ガスが増えている5つの原因

ここまで日本と世界における温室効果ガス排出量の推移について説明していきました。

続いて、温室効果ガスが増えている原因を5つ説明していきます。

世界各国の経済成長

電力供給のための電線整備や、建物の建設など、生活に必要なインフラ整備において、多くの温室効果ガスが排出されています。とくに現代では、東南アジアやアフリカ大陸においても、徐々に経済成長が進んでいることが原因で、温室効果ガスの排出量が増加しています。

たとえば、発展途上国は先進国に比べてエネルギーを生み出す際にかかる費用が比較的安くなっています。大量のエネルギーを使用する製造業は、エネルギー価格が高い国より安い国で製造を行うため、エネルギー価格が安い国々での温室効果ガス排出量は増加します。

先進国において温室効果ガス排出量が削減されていても、エネルギー使用量の高い企業が移転し温室効果ガスを大量に排出している場合、温室効果ガス排出量削減には至りません。

世界的な電力消費量の増加

世界各国の経済成長に伴う消費電力の増加も、温室効果ガスが増えている大きな要因です。

電気事業連合会によると、2021年における世界全体の一次エネルギー(自然界に存在するエネルギーで、人為的な変換プロセスを経ていないもの)は約595EJでした。

この電力量は石油約2.3億トンに相当しており、膨大な電力が消費されていることがわかります。

自動車保有台数の増加

経済成長に伴ってインフラ整備も整うことで、自動車の生産や保有数も増加しています。そのため、自動車から排出される温室効果ガスの量も増加傾向にあります。2019年における世界の自動車保有台数は14億9204万台であり、約5人につき一台を持っていることになります。

国土交通省によると、2020年における日本の二酸化炭素排出量のうち、17.7%が運輸部門からの排出です。とくに自動車全体から排出される温室効果ガス排出量が87.6%と、高い割合を占めています。

脱炭素化に向け、世界各国で温室効果ガス排出量削減の取り組みを行っていますが、いまだに自動車からの温室効果ガス排出量が非常に多い現状です。

化石燃料の大量消費

温室効果ガス削減のため、世界各国では再生可能エネルギーの導入を進めていますが、石油や石炭などの化石燃料の使用量は依然高いままです。

依然として多くの先進国で化石燃料が使用されています。2020年における1日あたり石油消費量が多い国は以下の通りです。

日本の1日あたりの石油消費量は、大型原油タンクカーVLCC(Very Large Crude Oil Carrier)1.5台分に相当します。

1日あたりの石油消費量

順位 国名 消費量(1,000バレル/日量)(2020年)
1 アメリカ 17,178
2 中国 14,225
3 インド 4,669
4 サウジアラビア 3,544
5 日本 3,268

参考:外務省公式サイト

森林の減少

世界各地で森林が減少していることも、温室効果ガスが増える大きな要因です。発展途上国における人口増加によって、住まいの確保や農地・牧草地拡大のために森林が伐採されています。

農林水産省によると、2020年における世界の森林面積は約41億ヘクタールであり、世界の陸地面積のうち31%を占めています。しかし、1990年〜2020年(30年)に世界で減少した森林面積は、年平均で約592万ヘクタールと、膨大な面積の森林が減少しています。

そのほかにも木材の需要増加や、火の不始末や落雷による森林火災も森林減少につながります。

地球温暖化による環境への影響7選

ここまで、経済成長や化石燃料の消費などの温室効果ガスが増加している5つの原因について説明していきました。

次に、地球温暖化による7つの影響を説明していきます。

関連記事:《徹底解説》SDGsと地球温暖化現状から取り組みまでを網羅

砂漠化

「砂漠化」とはそれまで砂漠ではなかった土地において乾燥が進み、気候変動や人間活動などの要因で土地が劣化することを言います。

砂漠化が起こる原因は、気候的要因と人為的要因の2つに分類されます。地球温暖化の影響を受けて砂漠化する場合は気候的要因にあてはまります。

地球温暖化により温度が上昇し、気候変動による影響で異常少雨や干ばつが発生し、大地の水分が失われ、砂漠化が進んでいます。

台風・ハリケーンの巨大化

台風やハリケーンの巨大化も地球温暖化による影響を大きく受けています。

台風は大気中に含まれる水蒸気の量によって勢力が変化していきます。台風は、海面水温が26.5℃以上の暖かい海で発生し、海面水温が高いほど威力が強い台風となります。

台風が上陸することで洪水や暴風、高波や高潮から川の氾濫や土砂崩れ、地すべりなどが発生し、人々の生活にも影響を与えるような被害が生じます。

絶滅する種の増加

地球温暖化によって気温が上昇し、気候変動が生じることで絶滅してしまう動植物や、絶滅危惧に陥る動植物が増加しています。

国際自然保護連合(IUCN)が発表している世界における、絶滅危惧の恐れがある野生動物のリスト「レッドリスト」によると、3万8000種類以上もの野生動物が「絶滅の危機の高い種(絶滅危惧種)」として掲載されています。

絶滅危惧種の数は、森林伐採や化石燃料の使用など、人間活動の活発化が原因で2000年以降急激に増加しました。2020年では絶滅危惧種が4000種を超えています。

海面の上昇

地球温暖化の影響は、海面上昇にも影響を及ぼします。海面上昇は、海水の温度上昇による膨張と氷床の融解が主な原因です。

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA公式サイト)によると、1901年〜2018年の間に世界の平均海面水位は約0.2m上昇しており、2100年までに平均水位上昇量が最大1.01m上昇すると想定されています。

日本においても、海面が1m上昇することで大阪の北西部から堺市にかけた海岸線や、江東区・墨田区・江戸川区・葛飾区のほぼ全域が被害を受けてしまいます。

沿岸の水没

地球温暖化により海面が上昇するだけでなく、沿岸部の水没も発生します。

現段階において、フィジー諸島共和国・ツバル・マーシャル諸島共和国などの海抜が低い島国で、高潮による被害が発生し、海水が住宅や道路に入り込んでいます。

そのほかにも、海水が田畑や井戸に入り込み作物が育たなかったり、飲み水が塩水になったりするなどの被害も出ています。

病気(伝染病)の増加

地球温暖化が進むことで、伝染病のリスクも高まります。「感染症」とは、微生物が体内に侵入し感染することによって起こる病気の総称であり、ウイルスや細菌、寄生虫からカビなどの病原体があります。

現在、気候や環境の変化が原因で感染媒体となる動物が繁殖し、蚊を媒介として感染拡大するマラリア、デング熱、ウエストナイル熱、日本脳炎などの感染症が増加すると想定されています。

穀物生産量の減少

地球温暖化によって穀物の生産量にも変化が現れています。日本やロシア、オーストラリア
南部のように世界の中緯度から高緯度の地域では、地域の平均気温が1℃〜3℃上昇した場合、いくつかの作物では生産性がわずかに増加すると予測されてます。

しかし、乾季のある東南アジアや中部アフリカなどの低緯度地域では、地域の気温が1℃〜2℃というわずかな上昇でも作物の生産性が減少すると予測されています。

現在は世界各国で人口が増加しているため、主食などの穀物生産量の減少は飢餓や食料不足に陥るなどの危険性が高まっています。

温室効果ガスを減らすために私たちができること3選

ここまで、地球温暖化が引き起こす問題を7つ説明していきました。

最後に温室効果ガス排出量を減らすために出来ることを3つ紹介します。

関連記事:カーボンユートラルへ向けてできること6選-私たちが取り組むべき理由を解説

公共交通機関を利用する

自動車から排出される温室効果ガスの排出量はとても膨大です。通勤や買い物などの際に毎日使用することで、多くの温室効果ガスが排出されています。

しかし、自動車の代わりにバスや電車などの公共交通機関を利用することで温室効果ガス排出量削減に貢献できます。

どうしても自動車を使用しなければならない場合は、急発進や急加速、急ブレーキに注意したり、アイドリングストップ(車を一時停止した際に、自動的にエンジンがストップする機能)に取り組んだりするなど、自動車の使い方を見直してみることも大切です。

地元で取れた食物を買う

食べ物が私たちの食卓に届くまで、生産から加工・流通などの際に多くの温室効果ガスが排出されています。生産された地域が遠ければ遠いほど、温室効果ガス排出量は増加していきます。

スーパーなどで食品を購入する際は、地元の商品を積極的に購入するようにしましょう。

農家の人々が直接運営している直売所に買いに行くことも温室効果ガス排出量削減につながります。

家庭での電力消費量を減らす

家庭での電力消費量を減らすことも温室効果ガス排出量削減につながります。

テレビのつけっぱなしや必要のない照明の消灯、LED照明の活用から使わない家電の主電源の切断などさまざまな工夫ができます。

エアコンを使用する際は、冷房では28℃以上、暖房では20℃以下に設定することで温室効果ガス排出削減となります。ただし、熱中症には十分気をつけて温度を調節してください。

まとめ

「地球温暖化」とは、二酸化炭素メタンなどの「温室効果ガス」が大気中に放出されることで地球全体の気温が上昇することを言い、温室効果ガス排出量が増加すればするほど地球の気温は上昇していきます。

日本や世界各国で温室効果ガス排出量は年々減少しているものの、各国が定めた温室効果ガス削減目標の達成にはまだほど遠い結果となっています。

経済成長や自動車保有数の増加、電力消費比量の増加などさまざまな原因により温室効果ガス排出量は増加しており、結果として砂漠化や動植物の絶滅危惧種の増加や、海面上昇などの影響が現れています。

温室効果ガス排出量を少しでも減らすため、電車やバスなどの公共交通機関を積極的に活用し、家庭では電力使用量にも注意してみましょう。

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