ESG格付け(レーティング)とは?評価機関の一覧や金融庁の対策も紹介

2023.06.19

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近年ESG投資が活発化する中で、ESG格付け(レーティング)は必須のツールとなっています。ESG格付け(レーティング)を上手く活用することで、ESG投資の効率化やESG投資の呼び込みなど、様々な効果が期待できます。

この記事では、ESG格付け(レーティング)の概要と、投資家・企業にとってのメリット・デメリットを紹介していきます。

【この記事で分かること】

ESG格付け(レーティング)とは?

ESGレーティング

ESG格付け(レーティング)とは、企業などのESGへの取り組みやESG関連のリスクなどを集計し、各企業ごとに数値化してランキングにしたものです。各企業のESGへの取り組みやESG関連のリスクなどの情報を、ESG情報と呼びます。

ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の頭文字を組み合わせた言葉です。現在世界で注目されており、地球温暖化や気候変動などの社会問題の解決に貢献する活動であると言われています。近年は、機関投資家などが企業のESG情報によって投資先を決定するESG投資が活発化しており、それに伴いESG格付け(レーティング)にも注目が集まっています。

ESG格付けの役割

ESG格付け(レーティング)は、ESG投資を行う投資家にとって有用な情報源です。近年、自社のESG情報をアピールするESGレポートや統合報告書を公表する企業が増えていますが、投資家にとって、投資先候補企業の多岐に渡るESG情報を自身でまとめ、1つの尺度で評価することはとても難しいことです。その点、シンクタンクや評価会社が提供するESG格付け(レーティング)情報を利用しESG投資の判断材料とするほうが、はるかに負担が少ないです。

また、ESG格付け(レーティング)は企業にとってもメリットがあります。コンサルティング会社のPwCが実施したアンケートによると、企業は「最新のサステナビリティのテーマやトレンドを把握するため」や「サステナビリティマネジメントを推進するにあたって目標値の設定や他社比較を行うため」にESG格付け(レーティング)を活用しています。ESG格付け(レーティング)で考慮される項目やその評価方法を知ることで、より効率的に自社のESG評価を高めることができます。

ESG格付け評価機関の一覧

ESG格付け(レーティング)の評価機関は複数存在します。ここでは、そのうち代表的なものを紹介します。

評価機関 機関の紹介
DNVビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社 DNVビジネス・アシュアランス・ジャパンは、ノルウェーに本部を置く自主独立財団であり、生命・財産・環境の保護を企業理念に掲げ、グローバルに活動しています。環境、気候変動分野ではCO2排出量検証や環境認証などの活動を行っており、2011年からはESGファイナンスの第三者評価業務も開始し、企業の持続的社会構築を支援しています。
株式会社日本格付研究所(JCR) JCRはUNPRIが主導する「信用格付におけるESG要素のイニシアチブ」に署名し、信用格付におけるESG要素の分析と開示を強化しています。また、急速に発展するサステナブルファイナンス市場で第三者の意見提供が必要とされているため、グリーンファイナンスの評価業務を開始し、国内外のESG投融資に評価を提供しています。
付投資情報センター(R&I) 日本の最大かつ最も歴史のある信用格付会社で、1975年に日本経済新聞社が創設した「公社債研究会」を起源としています。ESGファイナンス評価では、2016年に初めて日本の企業によるグリーンボンドに外部評価を提供し、国際資本市場でESGファイナンス評価の先駆者として貢献しています。
Sustainalytics サステイナリティクスは、モーニングスターグループの一員で、25年以上にわたりESG調査・レーティング・データやサステナブルファイナンスのソリューションを提供しています。200人以上のアナリストが40以上の産業分野で専門知識を持ち、世界16ヶ所の拠点で数百の資産運用会社や年金基金と提携しています。

企業にとってのESG格付けを活用するメリット3選

アナリティコ

①社会的信頼性を向上させられる

ESGスコアが高い企業は、環境や人権問題などの社会課題や企業情報の開示に取り組んでいると見なされるため、ESG格付け(レーティング)で高い評価を獲得することによって社会的信頼性を獲得することができます。

②長期的な投資家から投資資金を誘致できる

ESG格付け(レーティング)で上位を獲得することによって、長期投資家から投資資金を獲得することができます。ESG投資の前提は、「ESGの面において優れた企業は、会社の長期的な存続性と収益性が期待できる」ということです。積極的にESG活動を行うことで、ESG投資家の投資先に選ばれる可能性があります。

③自社の持続可能性を高められる

自社のESG面での改善活動を行うことで、会社の持続可能性を高めることができます。ESGを重視していない企業は、気候変動によるサプライチェーンの変化に対応できなかったり、悪い労働環境や不正が内部摘発・報道されたりすることで、企業活動を続けられなくなるリスクが高まります。

特に近年は、国内外でESG要素への要求が高まっており、今後の制度面での規制やキャンセルカルチャーにより、ESG活動と自社の存続性が直結する機会は増えていくでしょう。逆に、先んじて自社のESG面を改善することで、他社との差別化やESG投資の呼び込みが期待できるため、ESGスコアの向上のための取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

運用会社にとってのESG格付けを活用するメリット

続いて、運用会社や投資家にとってのESG格付けを利用するメリットを紹介します。

従来の投資は売上や資産額などの財務情報を最も重視していた一方、ESG投資は企業のESG分野での評価も大きく考慮しています。しかし、ESG情報は、環境・社会・企業統治(ガバナンス)と広い分野にまたがる上、特に環境の面においては例えば技術的な情報やCO2の削減量の信頼性などの点も把握しなければならず、投資先候補の全ての企業の調査を行うことは極めて難しいです。

その点、信頼のおけるESG評価会社やシンクタンクが作成したESG格付け(レーティング)を利用することで、投資者はより簡単にESG投資を行うことができます。統一されたESGスコア評価基準を用いて作成されたESG格付け(レーティング)を利用すれば、複数企業間のESGの比較も可能になります。

ESG格付けの課題2選

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ESG投資の活発化とともに注目され始めたESG格付け(レーティング)。様々な格付けが乱立する中で、問題点も生まれています。

1.ESGレーティングが企業のサステナビリティレベルを把握しきれない

各企業のESGへの取り組みを簡単かつ総合的に把握出来るESG格付け(レーティング)。しかし、ESGの各指標を統一的に評価するESG格付け(レーティング)では、その実情を正確に把握できない危険性があります。

現在用いられているESG格付け(レーティング)では基本的に環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の各項目における取り組みをそれぞれ点数化し、それに重みを付けて平均化(=加重平均。この“重み”の付け方により、どの要素を重視するのかが変わります)して1つの数値を算出し、それをESGスコアとします。

各項目の平均を取るという算出方法の都合上、例えばEのスコアだけ飛びぬけて高いが、S・Gでは評価が悪い企業のESGスコアが、E・S・Gの各要素に満遍なく取り組む企業のESGスコアを上回ることがあります。そのため、ESGの各項目にバランスよく取り組み、本当はより持続性の高い企業よりも、1つの要素に特化し、持続性に疑問が残る企業の方がESG格付け(レーティング)においてより高く評価されるという可能性があります。

2.ESG格付け・スコアは、ESG評価・データ提供機関等によるばらつきがあり、機関投資家が要因を理解することが難しい

上の項目でも述べた通り、各企業のESGスコアは、ESGの各項目のスコアに重みを付けて平均化して計算されます。この重みの付け方により、ESGのどの項目をどれくらい重視するのかというのが異なってくるのですが、その重みの付け方はESG格付け(レーティング)により様々です。

現在のESG投資では、ESG格付け(レーティング)が乱立しており、その違いや信頼性を投資家がそれぞれ把握し、効果的に用いることが難しい等の問題点が指摘されています。

ESG格付けの課題に対する金融庁の対策

ESGの評価機関は、ESGレポートなどだけではなく各企業への個別アンケートの結果を用いてESG評価を行っています。また、大量のデータを集計・販売するデータ提供機関は、企業が公開するESG情報の収集を行うとともに、独自にESGデータの推計を行っています。そうした国際的な状況の中で、ESG評価機関やデータ提供機関には、評価の透明性と公平性、ガバナンスと中立性、適した人材の登用等などが求められています。

それを受け、日本の金融庁は2022年12月に「ESG 評価・データ提供機関に係る行動規範」を公表しました。証券監督当局の国際機関であるIOSCO(証券監督者国際機構)が発表した提言は規制当局やESG評価機関、データ提供機関を対象にしたものでしたが、ESG 評価・データが適切に利用されるためには、インベストメントチェーン全体を通じた環境整備を図っていことが重要との観点から、金融庁の行動規範はESG評価・データ提供機関等だけでなく、投資家や企業への提言も巻末に付記されています。

金融庁が発表した行動規範における原則は、以下の通りです。

原則1:品質の確保

原則2:人材の育成

原則3:独立性の確保・ 利益相反の管理

原則4:透明性の確保

原則5:守秘義務

原則6:企業とのコミュ ニケーション

ESG格付けが高い企業の特徴4選

ESG投資

ESG格付け(レーティング)における評価が高い企業には、共通する特徴があります。

1.ESG関連の情報を定期的に開示している

ESGスコアは、企業が開示するESG情報などをもとに算出されるため、自社のESG情報を積極的に公開している企業は高い評価を得られる可能性が高いです。逆に、ESGに貢献する活動を行っている企業でも、それを社外へ全く開示しない企業には高いESGスコアが付けられることはないでしょう。

ESG情報などの非財務情報は、ESGレポートやSDGsレポート、統合報告書などの名前のレポートで公開することが一般的です。今まで開示を行ってこなかった企業も、レポートを作成し積極的に自社のESGへの取り組みをアピールすることで、自社の信頼性の向上やESG投資の呼び込みに繋げましょう。

2.ESGに関するリスクに対して管理体制を整えている

ESGに貢献する活動を行うには、社内でそのような体制が用意されていることが欠かせません。特に、サプライチェーン全体の脱炭素化や社内でのハラスメント防止、会社情報の透明化などのESG活動は、少なくない時間と労働力が必要とされる取り組みであるため、専門的な管理体制が必要とされます。

3.ESGに関して論争を招くような事柄やリスクと関わりがない

そもそもESGに関して論争を招くような事柄やリスクと関わりがないような企業は、高いESGスコアを得やすいです。逆に、例えば火力発電や森林開発、児童労働問題など、近年注目されるリスクがサプライや投資のチェーンに組み込まれている可能性がある企業は高いESG評価を得ることは難しいでしょう。

4.重要なESGに関するリスクや機会を把握し、経営に対する監視機能がある

上記の「ESGに関して論争を招くような事柄やリスクと関わりがない」状態を実現するためには、自社の企業活動全体におけるリスクの把握や経営への監視を行う体制を構築することが望ましいです。

まとめ

本記事では、近年活発化するESG投資の効率化をもたらすESG格付け(レーティング)について説明してきました。

ESG格付け(レーティング)には、投資家と企業の双方にとって大きなメリットがありますが、同時に問題も複数存在しています。

ESG格付け(レーティング)の特性を理解し、上手く利用することで、より活発なESG活動の後押しや効率的なESG投資に繋がります。

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