温室効果ガスには種類がある?-割合から発生源、削減方法も徹底解説

#パリ協定#気候変動#温室効果ガス#温暖化#脱酸素(カーボンニュートラル) 2022.07.22

この記事をSNSでシェア!

 

温室効果ガスにはCO2だけではなく、メタンや一酸化炭素のようにさまざまな種類が存在します。

メタンの温室効果はCO2の約25倍、一酸化二窒素は約300倍とも言われています。世界ではCO2削減について焦点が当たっていますが、CO2だけ削減しても気候変動の根本的な解決にはなりません。他の温室効果ガスについても考える必要があります。

今回は、温室効果ガスの種類や割合、温室効果発生源、削減方法など網羅的に徹底解説します。

▼SDGsについて詳しくはこちら

温室効果ガスの種類とは

工場からガスが排出されている様子

温室効果ガスとは、CO2やメタンなどのガスの総称です。これらのガスは太陽からの赤外線を吸収することで、熱を地球に封じ込め、地表を温める働きがあります。
温室効果ガスは大気中にわずかに存在しており、地球の平均気温は約14℃に保たれています。仮にこのガスがないと-19℃になってしまいます。つまり、温室効果ガスはある程度は必要です。

しかし、近年の人間活動によって温室効果ガスが急増しています。温室効果ガスの増加は地球温暖化の主な原因とされています。

地球温暖化を止めるためには温室効果ガスを削減する必要があります。
また、地球温暖化とSDGsは深い関りがあります。SDGsの17目標を達成するためにも温室効果ガス削減に取り組むべきです。

▼カーボンニュートラルについて詳しくはこちら

《徹底解説》SDGsと地球温暖化 現状から取り組みまでを網羅

温室効果ガスの種類と排出量の割合ランキング

温室効果ガスには、CO2、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロンガス類などの種類があります。さらにフロンガス類はハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)に分類できます。

下のグラフは、世界の人為起源の温室効果ガス排出量に占めるガスの種類別の割合を表したグラフです。

一番大きな割合を占めるのはCO2であり、約76%を占めています。
二番目はメタンであり約15.8%、三番目は一酸化二窒素であり6.2%、四番目はフロン類であり2.0%となっています。

なお、CO2以外のガスについてはCO2換算量で表されています。
CO2換算とは、「地球温暖化係数(GWP、Global Warming Potential)」と呼ばれる、ある一定期間にそれぞれの温室効果ガスがおよぼす地球温暖化の影響について、CO2の影響を1としたときの係数を用いて計算した数値です。
例えば、メタンのGWPは25です。つまり、1tのメタンが排出されたとすると25tのCO2が排出されたことになります。

▼関連記事
温室効果ガスのメタンによる地球温暖化への影響-発生源から削減方法を徹底解説

それぞれの温室効果ガスの温室効果・主な発生源

代表的な温室効果ガス7種について、それぞれの名称、化学式、GWP、主な発生源を以下のグラフにまとめました。

名称 化学式 GWP 主な発生源
二酸化炭素 CO2 1 化石燃料の燃焼
化石燃料の燃焼工業プロセス(セメント製造)等
メタン CH4 25 農業(家畜の消化管内発酵、稲作)
廃棄物の埋め立て等
化石燃料 バイオマス燃料
一酸化二窒素 N2O 298 農業(農業用地の土壌(肥料)、家畜排泄物)
工業プロセス
化石燃料の燃焼等
人排泄物
六フッ化硫黄 SF6 22,800 電気絶縁ガス使用機器等
パーフルオロカーボン類 PFCs 7,390~17,340 半導体製造、金属洗浄等の溶剤等
ハイドロフルオロカーボン類 HFCs 12~14,800 冷蔵庫やエアコン等の冷媒糖
スプレー
化学物質の製造プロセス
建物の断熱材
三フッ化窒素 NF3 17,200 フッ化製造からの排出等
半導体の製造プロセスなど

参考:1-2 温室効果ガスの特徴│全国地球温暖化防止活動推進センター

温室効果ガスによってその性質や、温室効果、発生源が異なります。温室効果ガス削減を目指す際にはそれぞれのガスに対して適切なアプローチ方法を考えていく必要があります。

コロナ禍による温室効果ガス排出量の減少、気候変動への影響は限定的|JAMSTECなどが参画する国際研究チームが発表

温室効果ガス同士の相互作用

メタンと一酸化二窒素はトレードオフの関係│水田における落水技術

棚田

田んぼ(水田)は、温室効果ガスであるメタンと一酸化二窒素の発生源です。

水田には水が張られているので、土壌は嫌気状態となります。嫌気状態とは、酸素がないという状態です。嫌気的な土壌中では、稲わらや植物遺体、根からの分泌物などの有機物を分解する過程において微生物の働きによりメタンガスが発生しています。

メタンガスの発生を防ぐ方法として落水が行われます。落水とは、栽培中の水田から水を抜く水管理技術です。落水によって大気中の酸素が土壌に拡散し、土壌は酸化的になります。酸化的状態の土壌では、メタン生成が抑制されます。一方で、酸化的になったことでもう一つの温室効果ガスである一酸化二窒素が発生してしまうのです。

よって落水はメタン放出を抑制する一方で、一酸化二窒素の放出を増加させます。このことからメタンと一酸化二窒素はトレードオフ(二律背反)の関係と言われています。トレードオフとは一方を立てると他方が立たないことです。

本当に大豆ミートは環境に優しいのか│大豆収穫期に一酸化二窒素が発生

大豆を大量収穫の様子

動物性の肉は環境負荷が大きい(牛のゲップによって発生するメタンガス)という理由から近年では植物性の肉が注目されています。植物性の肉として代表的なのが大豆ミートです。

しかし、大豆の収穫期において温室効果ガスである一酸化二窒素が放出されるという事実があります。

畜産から排出される温室効果ガスを減らすために流行している大豆ミートは、他の温室効果ガスの発生の増加を促進しています。一概に植物性の肉が環境に優しいとも言えないのです。

▼関連記事
大豆ミートでみていく日本の食品業界|「大豆ミートも肉の日デビュー」イベント

温室効果ガス排出削減の取り組みの歩み

気候変動に向き合うべく世界各国は温室効果ガス削減に向けてさまざまな方針を発表しています。しかし、気候変動のような地球規模の課題は1つの国だけで解決できるものではありません。世界の国々が足並みをあわせ、温室効果ガス削減に取り組む必要があります。

今回は時系列順に温室効果ガス削減の世界の取組について見ていきます。

京都議定書|温暖化に対する世界初の国際条約

京都の町並み

京都議定書とは、初めての温暖化に対する国際的な取り組みのための国際条約です。1997年に京都で開催されたCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議 Conference of Kyoto)
で採択されたため、「京都」の名が冠されています。

京都議定書は、参加している先進国全体に対して次のことを要求しています。
「温室効果ガスを2008年から2012年の間に、1990年比で約5%削減すること」

加えて、国ごとにも温室効果ガス排出量の削減目標を定めています。この取り決めにより、EUは8%、アメリカ合衆国は7%、日本は6%の削減を約束しました。

アメリカは後に京都議定書体制を脱退したためこの約束を破棄しましたが、この削減目標は国際社会が協力して温暖化に取り組む大切な一歩となりました。

一方、京都議定書は途上国には削減義務を求めていません。
これは、気候変動枠組条約の「歴史的に排出してきた責任のある先進国が、最初に削減対策を行うべきである」という合意に基づき、京都議定書の下での最初の約束については、まずはこれまで温暖化を引き起こしてきた先進国が率先して対策をするべきだ、という考え方が反映されたためです。

パリ協定|脱炭素社会を目指す

パリの街並み

パリ協定とは、2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で、世界約200か国が合意して成立したものです。パリ協定は「京都議定書」の後を継ぐものです。
パリ協定では、地球温暖化防止に向けた対策の大枠のみが定められており、脱炭素社会の実現のために、各国が具体的な政策を立案し、実行していくことが求められています。主なパリ協定の要点を以下にまとめました。

  • 平均気温が上がるのを2℃未満にする。(努力目標は1.5℃未満にする)
  • 各国が温室効果ガス削減目標を立て、5年ごとに見直す。
  • 温暖化で起きる被害を軽減する対策を立てる。

また、1.5度に気温上昇を抑えることができたとしても、異常気象や海面上昇などの温暖化の悪影響は避けられません。こういった悪影響に対応するための適応策の強化や、途上国の持続可能な開発を支援する資金や技術供与の仕組みも、パリ協定の大きな要素として組み込まれています。

グラスゴー気候協定│120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」を目指す

COP26の会場

画像引用:COP26 公式Twitter

2021年にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議 Conference of Praties)では、約120カ国の代表団、科学者、環境保護活動家など2万5000人以上が参加し、気候変動に向き合うため、協議が行われました。

COP26では、世界的なCO2の削減目標や、その手段、2015年に策定されたパリ協定の具体的な実施ルールについて議論されました。

COP26では、成果文書「グラスゴー気候協定」が採択されました。石炭火力発電の利用を段階的に廃止することが明記されたほか、「気温上昇を1.5度に抑える努力を追求すると決意する」とパリ協定の努力目標の1.5度を追求する姿勢が鮮明になっています。

この実現に向けて、世界が取組を進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げているところです。

COP26では各国が気候変動問題対策について発言しています。一例としてアメリカと中国の共同宣言を紹介します。

アメリカと中国は温室効果ガスの1つであるメタンの排出量削減に向け、共同宣言を発表しました。共同宣言では、二酸化炭素の20倍以上の温室効果があるとされるメタンの排出削減を目指し、排出量の測定で協力したり、2022年前半に会合を開き、具体策を協議する予定になってます。二酸化炭素排出量トップ2の中国とアメリカが共同宣言を出すことで協調姿勢を国際社会にアピールする狙いがあると見られています。

▼関連記事
カーボンニュートラルの実現に向けた日本の現状と取り組み9選を徹底解説
「2030年度までに温室効果ガス削減46%」経済界が賛同|経団連、日商が意見を表明
カーボンニュートラル8つの問題点-矛盾している理由から取り組みを紹介

まとめ

地球にやさしく

温室効果ガスはCO2だけではありません。メタンや一酸化二窒素、フロンガスなどさまざまな種類があります。

気候変動を止めるには、脱炭素だけでは不十分です。他の温室効果ガスについてもCO2と同様に削減に取り組むべきです。

また、一方の温室効果ガスを削減すると他方の温室効果ガスが発生することもあります。それぞれの温室効果ガスの性質について理解し、温室効果ガスごとに適切な削減方法を考えて行く必要があります。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    SDGs達成のために会社でできること|各目標から見つける取り組み例や簡単な取り組み例まで紹介

    《徹底解説》CSR検定とは?|取得までの流れやおすすめのテキストを級別に紹介