温室効果ガスのメタンによる地球温暖化への影響-発生源から削減方法を徹底解説

#メタン#持続可能#気候変動#環境#脱炭素(カーボンニュートラル) 2022.06.23

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メタンも温室効果ガスであり、温室効果ガスはCO2だけではありません。メタンの温室効果はCO2に比べ25倍もあります。

カーボンニュートラルが注目されていますが、CO2削減だけでは、温暖化は止められません。CO2削減と同時に他の温室効果ガスも削減する必要があるのです。

そこで今回はメタンによる地球温暖化について発生源から解決方法まで徹底的に解説します。

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そもそも温室効果ガスとは

温室効果ガスとは、CO2やメタンなどのガスの総称です。これらのガスは太陽からの赤外線を吸収することで、熱を地球に封じ込め、地表を温める働きがあります。
温室効果ガスは大気中にわずかに存在しており、地球の平均気温は約14℃に保たれていますが、仮にこのガスがないと-19℃になってしまいます。つまり、温室効果ガスはある程度は必要です。

しかし、近年の人間活動によって温室効果ガスが急増しています。温室効果ガスの増加は地球温暖化の主な原因とされています。

地球温暖化を止めるためには温室効果ガスを削減する必要があります。
また、地球温暖化とSDGsは深い関りがあります。SDGsの17目標を達成するためにも温室効果ガス削減に取り組むべきです。

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温室効果ガスの種類

人間活動によって増加した主な温室効果ガスには、CO2・メタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)・フロンガスがあります。

最も地球温暖化に及ぼす影響が大きいのはCO2です。温室効果ガス総排出量に占める割合は76%です。しかし、温室効果ガスすべてがCO2ということではありません。
CO2に次いでメタンが排出されています。その割合は16%であり、決して無視できるものではありません。
今回はメタンに焦点を当てて温室効果ガスについて考えていきたいと思います。

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メタンが与える地球温暖化への影響

温室効果とメタンとの関係性とは?|温室効果は二酸化炭素と比べて25倍

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告会の値によると、CO2に比べてメタンは約25倍もの温室効果があると報告されています。
従って、1tのメタンが排出されたとすると25tのCO2が排出されたことになります。

25倍というのは、地球温暖化係数(GWP)を使って算出しています。GWPとは、CO2を基準にして、他の温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるかを表した数字のことです。すなわち、単位質量(例えば1kg)の温室効果ガスが大気中に放出されたときに、一定時間内(例えば100年)に地球に与える放射エネルギーの積算値(すなわち温暖化への影響)をCO2に対する比率として見積もったものです。

産業革命以降のメタンガスの温室効果への寄与は全体の18%を占めており、無視できるものではありません。メタンガスの微量の増加は、温室効果が大きく増加することを意味します。
温室効果ガスの排出量で考えるとメタンは過小評価されてしまいます。温室効果を考えるときはその排出量と温室効果(GWP)の両方を考慮すべきです。

参考:4-4 地球温暖化係数(GWP)について

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世界のメタン放出量は過去20年間に約10%増加

米国海洋大気局(NOAA)は2022年4月、2021年の世界のメタンガス排出増加量は過去最高の見通しとするレポートを発表しました。

レポートによると、2021年における大気中のメタン濃度の増加量は17ppbで、2020年の増加量である15.3ppbを上回り、1983年からの測定開始以来で最大となりました。
また、2021年における大気中に含まれるメタン濃度は平均1,895.7ppbで、これは産業革命前のレベルよりも約162%高く、1984年から2006年までの期間平均よりも15%高いと推定されています。

NOAAは、温暖化防止の観点から「世界の排出量が急速に誤った方向に進んでいる」と警鐘を鳴らすとともに、「メタンガスは対流圏オゾンの形成にも寄与しており、これにより世界中で毎年およそ50万人の早期の死を引き起こしていることを忘れてはいけない」として、メタンガス排出削減の重要性を訴えています。

参照:米海洋大気庁、2021年の世界のメタン排出増加量は過去最高

メタンはどこから発生するのか

メタン発生源の内訳

メタンの発生源には自然起源と人為起源があります。メタンの総放出量に対する人為起源の割合は約60%と半分以上を占めています。

また、放出量が消滅量を上回っており、大気中のメタン濃度が増加しています。
さらには、大気中のメタン濃度の増加が一時的に停滞した期間(2000–2006)と収支評価を行った最後の年(2017)のメタン収支を比較すると、2017年は放出量が9%(メタン重量で年間約5000万トン)増加したことが分かりました。この増加は、人為起源放出の増加によりほぼ全て説明できます。一方、湿原、湖沼、貯水池、シロアリ、地質学的放出、ハイドレートなど様々な自然発生源から放出されるメタンの放出量はほとんど変化していませんでした。

世界の人為的メタン発生源の内訳をみてみると、エネルギーからが1位で50%、農業からが2位30.8%、廃棄物が3位で18.8%となっています。

これらの人為的メタン発生源についてそのメカニズムなどを紹介します。

発生源1位|エネルギー

化石燃料開発によるメタンの発生は大きいです。石炭、石油、天然ガスのいずれも採掘から輸送、貯蔵、精製工程までのすべての過程からメタンが漏出しています。

このような事実があるにも関わらず、アメリカのトランプ政権下ではオバマ政権下に設立した原油や天然ガスの掘削井、パイプライン、貯蔵設備などから漏出するメタンガスの規制緩和しました。

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発生源2位|農業

人為的メタンガスと聞くと主に工業からの排出をイメージする方も多いかもしれません。しかし、実際には農業も主要なメタン発生源の一つです。

下図は世界のメタン発生農業分野の内訳です。

1位と2位は家畜から発生するものであり、全体の約95%を占めています。2位は稲作で全体の3.9%を占めています。

家畜からの発生

牛(ホルスタイン)

家畜からの発生源としては、家畜の消化管内発酵(ゲップとして排出)と家畜排泄物の管理になります。

消化管内発酵とは、主に牛など反芻動物は複数の胃を持っており、第一胃のルーメンと呼ばれる場所でメタン発生古細菌が飼料を分解するために嫌気的発行を行うことです。その際にメタンガスが発生します。

水田からの発生

田植えの様子

基本的にメタンは、複雑な構造の有機物が酸素不足の状態(嫌気状態)で微生物によって分解されるときに発生します。

水田には水が張られているので、土壌は嫌気状態となります。また、嫌気的な土壌中では、稲わらや植物遺体、根からの分泌物などの有機物を分解する過程において微生物の働きによりメタンガスが発生しています。

アジアでは稲作が多いので特に農業からのメタンガスの排出が多くなっています。
下図は日本の分野別メタン発生源の内訳です。

日本は、石油を製造していないのに加え、主食が米であるので農業からのメタン発生量が非常に多くを占めています。

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発生源3位|廃棄物

廃棄物分野でのメタン発生は主に固形廃棄物(食品廃棄物など)の処理時点で発生します。廃棄物が埋め立てられた際に、有機成分が生物分解される際にメタンが発生します。

メタンの削減・有効活用4選

化石燃料依存から脱却する|再生可能エネルギーを利用する

メタン削減の観点に加え、カーボンニュートラルを目指していくには、化石燃料依存からの脱却がいち早く必要となるでしょう。

火力発電に頼るのではなく、太陽光発電、水力発電、風力発電などの再生可能エネルギーに変えていく必要があります。再生可能エネルギーはCO2だけでなく、メタンも排出しません。

しかし、再生可能エネルギーは未だにコストが高く、電力供給が安定しないという問題を抱えています。

デメリットも抱えていますが原子力発電を使用していくのも一つの手段です。原子力発電は低コストかつ、CO2、そしてメタンの排出もありません。

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家畜がメタンを排出しにくい飼料に変える

カゲキノリという赤い海藻を牛の飼料に混ぜることで、牛のゲップによるメタンガスの放出を85%も削減できる効果があると報告されています。

カゲキノリは全体の飼料の0.2%の量だけ振り掛ければよいとされています。さらにこの海藻を用いることで飼料の総量が少なくなることも分かっています。ゲップはエネルギーが消費される原因なので、ゲップを抑えることで飼料効率が良くなるのです。

現在、カゲキノリの養殖が進んでおり、商業化も見込まれています。

世界では、カゲキノリ以外にも牛のゲップ削減に貢献する飼料の研究・開発が進んでいます。

水田からのメタン発生量の削減方法

稲わらのすき込み方法を変える

現在の日本では、収穫後の稲わらはそのまま土壌にすき込まれるのが一般的です。しかし、稲わらのすき込みをやめることでメタン発生量の削減が可能です。

稲わらのすき込みとは稲わらを土壌に加えながら耕すことです。作業の様子を下に掲載します。

また、稲わらのすき込みを田植えの前の春に行うよりも、秋の収穫後に行った方がメタン発生量の削減ができるという結果が報告されています。稲わらのすき込みの時期の改善により、世界の水田からのメタン発生量の16%が削減できると試算されています。

日本の水田では行われている「中干し」を世界に広める

水田から水を抜く管理方法を「落水」と言います。日本ではこれを「中干し」と言います。

中干しを行うことで、メタンを発生する微生物を不活性化できます。(メタンを発生する微生物は酸素のない状態を好むためです。水を抜いてしまうと空気中の酸素が土壌に届くようになります。)

中干しは、田植えから1か月後に行われ、昔から増収効果があると考えられていました。しかし、世界の水田では中干しが行われず、常時水が張っている状態が多く見られます。世界の水田で中干しを行えばメタン発生量の16%が削減できると試算されています。

さらにはこの中干し期間を慣行(通常1~2週間)より1週間伸ばすことで18~72%のメタン発生量を削減できることを日本全国の水田での実証試験によって明らかにされています。

しかし、落水を行うことでもう一つの温室効果ガスである一酸化二窒素の発生を増加させてしまう可能性があります。メタン発生量を抑制すると一酸化二窒素の発生が促進されてしまうのです。つまりメタンと一酸化二窒素はトレードオフの関係にあると言えます。

ここではその仕組みについては詳しくは説明しませんが、両方のガスを削減するには施肥前に落水を行うことが重要です。

廃棄物をメタン発酵し、バイオマスエネルギーを得る

メタン排出を抑制することも重要ですが、発生してしまったメタンガスを有効活用していくことも解決策になります。

近年、食品廃棄物や紙ごみ、家畜糞尿のリサイクル方法の一つとして、メタン発酵によりバイオマスガスを精製(メタン化)し、電気・熱にエネルギー利用する取組が進められています。これは再生可能エネルギーの一つです。

普通食品廃棄物などは、肥料や飼料として再利用されますが、メタン化では肥料化や飼料化にも向かない廃棄物も活用できます。

またメタン発酵事業には、農業・食品会社とバイオマス発電事業者とが連携することによる経済の活性化効果も期待されています。メリットとしてはエネルギーにかかるコストを削減できる、売電収入が得られるなどがあります。

▼SDGs13「気候変動に具体的な対策を」について詳しくはこちら

まとめ

今回は温室効果ガスの1つであるメタンについて、その発生源から削減方法まで徹底解説しました。

世界ではカーボンニュートラルが注目されていますが、メタンなどの他の温室効果ガスの削減にも取り組む必要があります。CO2削減だけに取り組んでいても気候変動は防げず、SDGsも達成できません。

これからはCO2以外の温室効果ガスにも意識を広げて温暖化対策について考えていきましょう。

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