カーボンニュートラル実現のために原発は必要か?-現状から解決法まで徹底解説

#エネルギー#再生可能エネルギー#天然資源#安全#脱炭素(カーボンニュートラル) 2022.06.15

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カーボンニュートラルを目指すための発電方法として原発が挙げられます。

今日では再生可能エネルギーが注目を浴びていますが、原子力発電も温室効果ガスを排出しません。一方で原発には放射性廃棄物が出るなどのデメリットも存在します。カーボンニュートラル実現のために原発は導入すべきなのでしょうか。

そこで今回は、原発がどうカーボンニュートラルに貢献するのか、メリット・デメリットとその現状から徹底解説します。

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そもそもカーボンニュートラルとは

「カーボンニュートラル」とはCO2出量を実質ゼロにすることを指します。

似たような言葉として「脱炭素社会」がありますが、脱炭素社会とはCO2排出量ゼロを実現した社会のことを意味します。
しかし、CO2排出量を完全にゼロにするのはかなり難しいことです。

そこで出てきた考え方がカーボンニュートラルです。
実質ゼロとは、プラスマイナスゼロの状態のことで、人間が排出したCO2量と植物が吸収したCO2量がプラスマイナスゼロになる状態を目指すものです。
CO2排出量を減らすこともカーボンニュートラルの取り組みですが、削減しきれなかったCO2を森林などに吸収してもらうために、森林保全や植林活動を行うのもカーボンニュートラルの大事な取り組みです。

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カーボンニュートラルと原発の関係性

原発はカーボンニュートラルに貢献する|CO2抑制効果が大きい

原子力発電は、ウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用して発電しています。そのためCO2を排出しません。
カーボンニュートラルの観点からは、原子力発電は優れた発電方法の1つと言えます。

CO2の排出については、ライフサイクルアセスメント(LCA)という評価基準があります。
LCAとは発電時のCO2排出量だけでなく、ウラン採掘から、ウランの精製や加工施設と稼働、発電所の建設から運転、廃止、廃棄物の処分と、電力を発電所から送り出します。そしてこれら全ての処分を終えるまでの過程で消費される全てのエネルギーを対象に、CO2排出量を調査し、算出したものです。

原子力発電は、ウラン燃料の製造や発電所の建設などの過程においてCO2を排出しますが、発電中はCO2を排出しません。よって発電電力量当たりのCO2排出量は他の発電方法と比べてかなり小さくなっています。

1970年代から現在に至るまで、日本の電力需要は3倍に増加したにも関わらず、CO2排出量は約2倍に抑えられています。これは、原子力発電の大幅な増加によるCO2抑制効果が大きく貢献しています。

原発のその他のメリット3選

原発はカーボンニュートラルに貢献するだけでなく、他のメリットもあります。

燃料の安定供給が可能

原子力発電の燃料であるウランは、石油に比べて政情の安定している国々に埋蔵されているため、資源の安定確保が可能です。

燃料が少なくて済む

ウランは少量でたくさんの発電を行うことができます。
ウランは1gで、石炭3トン、石油2000リットル分のエネルギーを生み出せます。ウラン燃料と化石燃料とでは、発生する熱エネルギーの量が格段に違うのです。

さらにウランは使い終わった後に再処理することで、再び燃料として使用できるリサイクル可能燃料であり、準国産のエネルギー資源となります。

経済的である

原子力発電は発電や運用にかかるコストが火力発電など他の発電方法に比べて低く抑えられます。
1kWhのコストを比べると原子力発電が10.1円、火力発電が12.3円、太陽光発電が15円前後となっています。

核のゴミの処理など全てのコストを考慮した上でも原子力発電は安いのです。
また燃料費の高騰による電力コストの上昇の可能性も低いのも特徴です。

このような利点から、原子力発電は電気料金の安定にも役立っています。

原発のデメリット5選

立ち入り禁止区域

原発にはメリットだけではなく、デメリットも多数あります。

通常時も放射性物質を放出|労働者の被ばくが前提

ウランが核分裂する際には、熱と共にさまざまな放射性物質が放出されます。通常運転でも放射性物質が少しずつ外に放出されています。
放射性物質はDNAの損傷を引き起こし、これが長期間にわたるとガンや白血病を引き起こします。

ウランを掘り出す鉱山から、発電所、使用済み核燃料を補完する施設まで、全ての場所の労働者が放射線を浴びながら働いています。
原発での労働により、白血病が労災認定された例も存在します。

原発事故の危険性

原子力発電の原理は原子力爆弾と同じです。
核爆弾は核分裂を短時間に大きく引き起こし、原子力発電は核分裂をコントロールすることで発電しています。

福島第一原発事故の例から分かるように、大きな事故があれば、閉じ込められていたはずの放射性物質が大量に漏れ出します。
事故が起きてしまうと、事態を収拾することは非常に困難となります。人間への被害に加えて、自然環境への影響も懸念されます。
さらにその被害は1つの国だけでなく、隣国にも影響が及びます。

人為的なミスに加えて、地震や津波などの自然災害が原発事故のリスクを高めます。

放射性廃棄物の処分場問題

原子力発電のゴミとして高レベル放射性廃棄物が出ます。

高レベル放射性廃棄物が安全なレベルになるには、数万年かかります。
そのため長期間厳重に管理する必要があります。

しかし、廃棄物の貯蔵プールや最終処分場は限られており、多くの放射性廃棄物の行き場について目途がたっていません。

海の生態系に悪影響

海の近くにある原子力発電所

原子炉を冷やすために原発では冷却水が必要とされます。その冷却水としては主に海水が用いられ、それによる海洋生態系への弊害が懸念されます。

冷却水による海洋生態系への悪影響をまとめました。

  • 海水が原発に取り込まれるとき、プランクトンや魚介類の卵が死滅する。
  • 海水温よりも約7℃高くなって海に返されるため、周辺地域に温暖化をもたらす。
  • 原発内を清掃した水など、放射性物質を含む排水が海に戻される。

原発はSDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に貢献するかもしれませんが、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に逆行してはいけません。

▼SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」について詳しくはこちら

▼SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」について詳しくはこちら

核にアクセスしやすくなり「核拡散」の危険性が高まる

ウランは原子爆弾の原料でもあります。
原爆には「高濃縮ウラン」が使用されますが、原発の燃料のウランからも作れます。また使用済み核燃料から得られるプルトニウムも原爆の材料です。

核兵器を作ろうとする国やテロリストが、ウランやプルトニウムを集めようとする可能性があります。

カーボンニュートラルは矛盾している?脱炭素と言えば原発ではなく再エネではないのか?

世界的なカーボンニュートラルの流れを牽引してきたのは、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーです。
SDGsCONNECT内でもカーボンニュートラルと再生可能エネルギーの関係性について書かれた記事が多く存在します。

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しかし、カーボンニュートラルとは、CO2排出量を実質ゼロにすることであり、その手段は再生可能エネルギーだけに限定されません。
つまり、原子力発電によるCO2排出量削減もカーボンニュートラルに貢献するのです。

カーボンニュートラルは今や世界のビックトレンドです。多くの国や地域がカーボンニュートラルに向けて大きすぎる目標を掲げているように思えます。

現状では、再エネは地形や天候の制限を受けたり、導入コストが高かったりなどの問題が存在し、主要な発電方法になるまでに至ってません。
再エネだけに頼っていると、高く設定しすぎたカーボンニュートラルの目標に間に合いません。

そこでこの問題を解決してくれるのが原発です。
さまざまな問題を含んでいますが、原子力発電は低コスト・エネルギーの安定性・CO2排出量が少ないなどのメリットを持ちます。
よって現実的なカーボンニュートラル達成の手段として原発が選択肢として選ばれつつあります。

世界の原発の現状3選

世界の国々ではカーボンニュートラルの手段として原発を活用しています。

EU|原子力発電は温暖化に役立つと正式決定

EU旗

2022年2月、EUの行政を担う欧州委員会は、脱炭素社会の実現にむけて、原子力発電を温暖化対策に役立つエネルギー源に位置づけると正式に決定しました。

原子力発電は電力の安定供給と温室効果ガス排出抑制の両立が可能です。
脱原発を宣言しているドイツなどから反対意見が出ましたが、欧州委員会は再生可能エネルギーへの移行期間としての現実的な選択肢であると意見を通しました。

EUは、具体的な対策として高レベル放射性廃棄物処分場の計画づくりを掲げています。

フランス|再エネと原発の2本立てでカーボンニュートラルを目指す

原子力発電所の夜景

フランスのマクロン大統領は、化石燃料からの脱却に伴い、最大60%の低炭素電力の増産が必要になると指摘し、再生可能エネルギーと原子力の2本立てで電力の供給力を増やす方針を示しました。

エネルギー資源に乏しいフランスは、1973年のオイルショックをきっかけに原子力の利用が進められました。
現在では電力の約76.2%を原子力発電で賄っており、これは世界1位です。

マクロン大統領は詳細な計画は公表していませんが、原発6基以上の建設に着手するほか、革新的な原子炉の開発の促進を目指しています。

アメリカ|バイデン大統領の原発活用方針

アメリカのバイデン大統領は、2050年までのカーボンニュートラル達成に向けて、原発を活用する方針も示しています。

バイデン氏は、原子力発電を再生可能エネルギーと並ぶ「クリーンエネルギー」に位置づけ、既存の原子力発電所の利用の継続や「小型で安全」とする新型炉の開発も後押しています。

またアメリカのエネルギー省は、国内で競争力を失った原子力発電所を支援する60億ドル(約7800億円)規模の補助金制度の運用も始めました。

▼SDGs目標7について詳しくはこちら

日本の原発の現状3選

原発の政策史|原発に対する捉え方の変遷

1966年に日本原子力発電株式会社東海発電所が日本で初の営業運転を開始しました。

その後、1970年代の2度のオイルショックを経験した日本は、石油に変わるエネルギーとして原子力や天然ガスの割合が増えてきました。

福島第一原発事故までは原発による電力発電の割合は大きいものでした。
事故前の民主党政権は2030年までに少くなくとも14基の原発を新増設する計画を掲げていました。

しかし東日本大震災後、この方針は撤廃され、原子力発電は縮小の一路をたどっていく事になります。

2014年安倍政権下で改訂された第4次エネルギー基本計画では、
「震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する。ここが、エネルギー政策を再構築するための出発点であることは言を俟たない。」
と原発について見直す方針が発表されました。

2018年の改定では、
「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」
と国民感情も踏まえつつ、減少するという文言が記載されています。

しかし、カーボンニュートラル宣言を機に原発の捉えられ方が変わっていきます。

2020年末に発表されたグリーン成長戦略では、
原子力については、確立した脱炭素技術である。可能な限り依存度を低減しつつも、安全性向上を図り、引き続き最大限活用していく。安全最優先での再稼働を進めるとともに、安全性に優れた次世代炉の開発を行っていくことが必要である」
との記載に変更されました。
この表現を見ると、日本政府は原発の再稼働を望んでいることがうかがえます。カーボンニュートラルの波が原発再稼働を後押ししたのです。

2022年岸田首相は、国会の答弁で「原発の再稼働を進めるが建て替えは考えていない」、原発関連の「人材や技術をしっかり維持し発展させる必要がある」と強調しています。

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原発に対する国民のイメージ

国民の原子力に対する考え方はややポジティブ側に変動しつつありますが、約半数が原発に対して反対しています。

原発再稼働の新聞記事

下の図は2019年度に行われた日本原子力文化財団の「原子力に関する世論調査」の結果です。

「今後日本は原子力発電をどのように利用すればよいと思うか」との問いに対し、最も多かった回答は「徐々に廃止」で49.4%でした。それに加え「即時廃止」と回答した割合は11.2%であり、全体の約60%が原発に反対意識をもっています。

また、福島第一原発事故以降、原発反対運動が起こり、現在でも多くの地域に脱原発団体が存在します。
これらの団体の原発に対する反対意見の例をまとめました。

  • 放射性廃棄物の処理方法が確立していないため
  • 日本は地震が多く原発立地としては向いていないため
  • 安全性の観点から
  • 節電することで、お火力発電所から電力を十分供給できるため
  • 人体に悪影響なため(特に子どもに対して)
  • 地域の自立や平和を損なうため

原子力再稼働を進める場合、国民の理解を得ることは必須になるでしょう。

原発技術が失われつつある|日本の原発関連技術は最高峰だった

原発の職員

東日本大震災以前において、日本の原発関連技術は世界トップレベルであったと言われています。

しかし、福島第一原発以降、日本のほとんどの原発が10年間動いていません。
当時50歳だった技術者は60歳定年となったり、メンテナンスだけでは技術者は育たなかったりという現状があります。つまり日本の原発技術が失われつつあることを意味します。

世界の原子力技術に詳しいテピア総研の窪田秀雄氏は、「もはや日本の原子力技術は韓国に追い抜かれている」と指摘し、また「原発は新設を経験しないと技術者が育たない。このままだと日本の原子力技術は廃れ、技術は途絶える。」とも指摘しています。

このままだと日本は世界の原発最先端の動きからも取り残されてしまいます。

参照:日本の原発技術が世界を変える – 新書マップ

カーボンニュートラルと原発の未来

原子力発電所の様子

ここまで原発のメリット・デメリット、世界と日本の現状を紹介してきました。
それらを踏まえ、かつ2050年カーボンニュートラルを達成するためには、原子力発電は現実的な手段と言えるでしょう。
安定的な電力供給やコスト面、再生可能エネルギーがまだ不十分なことを考慮すると原子力発電は妥協策とも言えるでしょう。
特に日本の原発再稼働においては、既に設備投資があり、必要なのは再稼働という意思決定だけです。

しかし、原発にはさまざまな問題点があるのも事実です。

資源エネルギー庁は原子力発電を再稼働する理由を次のように説明しています。
『命や暮らしを大切に思えばこそ、「安定的に」「安いコストで」「環境に負荷をかけず」「安全に」電力を供給するという、「3E+S」を追求することが重要になります。』
果たして、原子力発電は絶対に「安全」と言えるのでしょうか。
福島第一原発事故が起きてしまった以上、完全に安全とは言えません。

よって、「3E+S」を満たすのは再生可能エネルギーです。

カーボンニュートラル的観点から見ると、再生可能エネルギーへの完全な移行まで原子力発電を使うのがベストだと考えます。

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まとめ

今回は原発がどうカーボンニュートラルに貢献するのか、メリット・デメリット、世界と日本の現状を踏まえて紹介しました。

カーボンニュートラル宣言後、原発は優れたクリーンエネルギーだという認識が広まっています。
原子力発電には発電中CO2を排出しないという魅力的な面もある一方で、福島第一原発事故からも分かるように、問題点も多く抱えています。

CO2削減が原発促進のこじつけになっているという意見もありますが、カーボンニュートラルを達成しようとした場合、原子力発電は現実的な選択肢の1つではないでしょうか。

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