SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」について世界だけでなく日本でもエネルギー問題は深刻な問題になっています。
例えば、日本の自然エネルギーの割合は2019年の18.5%から2.3%増加し、20.8%と増加傾向にあるように、未だ再生可能エネルギーの導入が進んでいない現状です。
今回はそんなSDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の日本の現状について解説し、現状から考える世界と日本の取り組み事例、そして私たちにできることを紹介します。
見出し
SDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の概要
SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」は地球上のエネルギー問題を解決するための内容です。
2021年現在でも未だに世界には7億5,900万人が電力を利用できていない状況にあり、そのうちの4分の3はサハラ砂漠以南に住む人々です。
電気を利用できない人々は石炭や石油などの化石燃料を燃やして、エネルギーを得ています。
化石燃料の燃焼は温室効果ガスを排出するだけでなく、室内で燃やすことで健康に害を及ぼします。
電力の不十分な供給は途上国が貧困から抜け出せない大きな理由の一つです。
より多くの人にエネルギーを供給するには「省エネ」が必要であり、よりクリーンにするには「再生可能エネルギー」の利用促進が重要となってきます。
SDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」のターゲット
SDGs7では、「すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーを確保する」というテーマのもと以下の5つのターゲットが設定されています。
7.1 | 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 |
7.2 | 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 |
7.3 | 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 |
7.a | 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率、および先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリー ンエネルギーの研究および技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーン エネルギー技術への投資を促進する。 |
7.b | 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、内陸開発 途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。 |
画像参照:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
SDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の日本の達成度スコア
日本のSDGs7の達成度について、SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」は以下のように報告しています。
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また前年からの変化はありませんでした。
日本は2030年に向けて、より速いスピードでエネルギー問題を解決していく必要があります。
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SDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の日本の現状
日本の電気普及率は100%です。
日本国内に関しては「エネルギーをみんなに」という目標は達成に近づいています。
日本がSDGs7達成に必要なことは、専ら再生可能エネルギーの利用を拡大させることとエネルギー効率を上げていくことです。
ここではSDGs7の日本の現状を紹介します。
自然エネルギーの割合は2019年の18.5%から2.3%増加傾向
自然エネルギーの割合は2019年の18.5%から2.3%増加傾向にはあるものの、日本は依然としてクリーンエネルギーの利用率が低いです。
特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所は、2020年の日本国内の全発電電気量(自家消費を含む)の電源別割合を推計したところ、自然エネルギーの全発電力量に占める割合は2019年の18.5%からおよそ2ポイント増加し、20.8%になったと報告しています。
内訳は、割合の高いものから順に①太陽光発電8.5%、②水力、7.9%、③バイオマス発電3.2%、風力発電0.86%、⑤地熱0.25%となっています。
(自然エネルギーとは再生可能エネルギーの一部であり、自然現象から得られるエネルギーのことです。)
一方で化石燃料火力75.7%、原子力が6.2%をしめ、日本は未だに化石燃料に頼った発電をしているのが現状です。
化石燃料を燃焼させると、大量の温室効果ガスが発生するため、地球温暖化を加速させる要因のひとつと言われています。
SDGs7だけでなく他のSDGsのゴールを達成させるためにも、化石燃料依存から脱却し、再生可能エネルギーの利用を拡大していく必要があります。
資源エネルギー庁や経済産業省が再生可能エネルギーの導入を検討
現在日本では、資源エネルギー庁や経済産業省が再生可能エネルギーの導入を検討している企業や自治体に事業支援を行っています。
資源エネルギー庁は「再エネガイドブック」というサイトを立ち上げ、サイト内で以下の内容を調査したりサービスを受けることが可能です。
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また、2020年4月から「FIP制度」の導入が始まりました。
再生可能エネルギーは、2012年に「固定価格買取制度(FIT)制度」が導入されてから、加速度的に導入が進んでいました。「2050年カーボンニュートラル」に向けて再生可能エネルギーの導入拡大のための、新制度として「FIP制度」を始動しています。
FIT制度は再エネ電気をあらかじめ決められた価格で買い取るよう、電力会社に義務付けた制度であり、この支援のもとで再生可能エネルギーの導入は急速に拡大しました。しかし、FIT制度は需要と供給のバランスなど電力市場の状況を踏まえたものではありませんでした。
そこで電力市場の価格と連動した発電をうながす「FIP制度」が導入されたのです。FIPとは「フィードインプレミアム」の略称で、再エネの導入が進む欧州では既に取り入れられている制度です。この制度は、再エネ発電事業者が卸売市場で充電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促します。
資源エネルギー庁はFIP制度で新たなビジネスの創出や再エネ導入が進むことを期待しています。
▼再エネガイドブックはこちら
再エネガイドブックweb版 資源エネルギー庁
参照:【SDGs】再生可能エネルギーの現状は?目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」について考えよう
▼FIT制度・FIP制度について詳しくはこちら
再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月
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SDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の取り組み事例9選
世界の取り組み
EUの再生可能エネルギー指令の改正案を発表
EUは2021年7月に再生可能エネルギー指令の改正案を発表しました。
改正案で最終消費エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率の2030年目標を、「少なくとも32%」から、「すくなくとも40%」に引き上げました。
2019年時点でこの再生可能エネルギーの比率は19.7%であり、2030年までにほぼ倍増させる必要があります。
しかし発電量で見ると、EUの域内で2020年、再生可能エネルギーの発電量は初めて化石燃料を上回りました。
EUでの再生可能エネルギー利用が拡大しているのは明らかです。
さらなる再生可能エネルギーの導入のために、EU各加盟国は、運輸、製造業、建物、冷暖房など分野別に設定された目標値の達成を各業界に義務付ける事が求められています。
デンマークの再生可能エネルギー利用率増加に向けた取り組み
環境先進国である北欧のデンマークは、再生可能エネルギーの利用率が非常に高い国です。
2019年時点では、消費電力に占める再生可能エネルギーの比率は50%に達しており、なかでも風力発電の使用割合は2019年では47%と過去10年で倍増しています。
またデンマークは2030年までに二酸化炭素排出量を1990年比70%削減、2050年位はカーボン・ニュートラルを達成することを目指しています。
目標を達成する第一歩として、2021年2月、デンマーク政府は世界初の人口の「エネルギー島」建設に合意しました。
これまでは洋上に点在する風力タービンからエネルギーを集約する仕組みがありませんでしたが、これからは洋上風力タービンをエネルギー島につなぎ、再生可能エネルギーを生成することが可能です。
さらに再生可能エネルギーの貯蔵も可能になります。
エネルギー島が期待されているのはそれだけではありません。
エネルギー島はデンマーク以外の諸外国にも接続され、国を超えた再生可能エネルギーの拠点となるのです。
中国で急速に進む再生可能エネルギーの導入
中国でも再生可能エネルギーによる発電が大きく増加しています。
国家能源局が2021年12月24日に発表したデータによれば、2021年1月から11月までの再生可能エネルギーによる発電量は前年同期比で33%増加しました。これは同じ期間の国内総消費電力の13.8%に当たります。
また2020年のデータでは新設された風力発電の設備容量は前年の2.7倍、太陽光発電も8割増となっています。発電設備の規模で考えると、原発約120基分もの再生可能エネルギーがわずか1年で整備された計算になります。
中国は世界最大の温室効果ガス排出国ですが、カーボンニュートラル達成を目指して努力しています。
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日本の取り組み
福島県 再生エネルギーのみで賄う工業団地を整備中
福島県は福島新エネ社会構想会議で「再エネ100%の工業団地」を整備すると発表しました。
福島県エネルギー課は「財源措置なども決まっておらず、どこに整備するかは検討段階」としていますが、震災からの復興の大きな柱として、福島県を「再生可能エネルギー先駆けの地」とすべく、再生可能エネルギーの拡大に関するさまざまな取り組みが行われています。
具体的に、2012年3月に改訂された「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン(改訂版)」では、2040年頃を目途に福島県内の1次エネルギー需要量の100%以上に相当するエネルギーを再生可能エネルギーから生み出すという目的を設定しています。
上記のビジョン実現のために「再生可能エネルギーの導入拡大」、「水素社会実現に向けたモデル構築」、「スマートコミュニティの構築」を3つの柱として取り組みを進めています。
取り組みを以下にまとめて紹介します。
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都庁第一本庁舎を「再エネ100%」に
東京都は2019年6月に都庁第一本庁舎で受電する電力について、8月から「再生可能エネルギー100%」に切り替えると発表しました。
都では、再生可能エネルギーを利用して、都庁舎で使用する電力のCO2排出量をゼロにする「都庁舎版RE100」を推進しています。
RE100とは、使用する電力の100%を再生可能エネルギーにより発電された電力にすることに取り組んでいる企業が加盟している国際的な企業連合のことです。
都庁第一本庁舎に再生可能エネルギーを供給するのは日立造船です。日立造船は再エネ電力を中心とした電気小売事業を展開しています。
省エネ法改正によりさらなるエネルギー消費効率化を目指す
2018年に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」が改正されました。
省エネ法は、石油危機を契機として昭和54年に制定された法律であり、エネルギーの有効利用を促すための法律です。
従来の省エネ法では企業ごとのエネルギー消費効率を評価していましたが、改正法では「連携省エネルギー計画」という認定制度を新たに設けました。認定により複数の企業が連携して省エネに取り組んだり、グループ企業が効率的に取り組めるようになりました。
今回の改正で企業単体の活動とは比べ物にならないほどの省エネを期待できます。
企業の取り組み
マイクロソフトはAIを使ってエネルギーを節約
マイクロソフトは「よりクリーンなエネルギーへのグローバルな移行を加速する」と方針を設定しています。
マイクロソフトは2019年の発電量の72%を再生可能エネルギー由来で賄っています。
2035年以降は、総発電量の50%を風力、太陽光、水力で賄う目標を掲げています。
また再生可能エネルギーの拡大だけではなく、エネルギー消費の効率化も図っています。
マイクロソフトはエネルギー消費の削減と天然資源の保護のために
「AIを活用してエネルギーを節約し、天然資源を保護して社会と経済への好影響を実現します。実業者と一般消費者の需要に対応し、コネクテッドカー、スマートシティ、建物、住宅での、スマートエネルギー管理を実現します。」
と発表しています。
東急株式会社グループ全体の100%再生可能エネルギーシフトを目標
東急は2050年までに鉄道事業、不動産その他事業も含め、グループ全体の100%再生可能エネルギーシフトを目標に掲げています。
また、2019年3月から東急世田谷線は、日本初の再生可能エネルギー100%による通勤電車の運行を開始しました。
世田谷線は、東北電力グループが供給する地熱と水力のみで発電された再生可能エネルギーを使用しています。
これにより年間東京ドーム約0.5個分の二酸化炭素の排出を削減しています。
株式会社未来電力のバイオマス発電
未来電力は、大分県宇佐市で、クリーンな再生可能エネルギーによるバイオマスガス発電事業に取り組んでいます。
未来電力ではメタン発酵式(乾式)のバイオマス発電やパーム油や廃食油を利用した液体バイオマス発電に取り組んでいます。
バイオマス発電は生物資源を直接燃焼したり、ガス化したりして発電します。
光合成によりCO2を吸収して成長するバイオマス資源を燃料とした発電は京都議定書における取扱上、CO2を排出しないものとされています。
天候に左右されるため不安定電力である太陽光発電や風力発電とは違い、バイオマス発電は燃料さえあれば安定的に発電できます。
この産業は、SDGs7に貢献するだけでなく、新たな産業を創り出し、地域に雇用と大きな経済効果をもたらします。
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SDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」実現のためにわたしたちにできること
SDGs7実現のためにわたしたちひとりひとりにできることは二つあります。「省エネに貢献する」ことと「再生可能エネルギー事業を応援する」ことです。
わたしたちにできることは小さいかもしれませんが、ひとりひとりの小さな積み重ねがより多くの人に電力を供給するカギとなります。
今回は2つの例を紹介します。
自宅や会社で電気をこまめに消す
自宅や会社で電気をこまめに消すことは省エネにつながります。
例えば蛍光ランプの点灯時間を1日1時間短縮した場合、年間で4.38kWh節電、1.8kg-CO2削減となり、また約100円の節約にもなります。
他にも以下のようなことに注意することで省エネを達成できます。
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また毎回プラグを抜くのは手間がかかりますが、スイッチつきコンセントやスイッチつきタップを利用すれば簡単に節電できるので、試してみてください。
自宅や会社の電気を再生可能エネルギーに変える
自家発電設備を導入すれば、個人で再生可能エネルギーを作り、消費し、地球温暖化対策にもなります。
自家発電設備には太陽光発電システムやエネファームなどがあります。
エネファームとは自宅で電気をつくり、お湯も同時に作り出す家庭用燃料電池のことです。
「エネルギー」と「ファーム=農場」を組み合わせて名づけられています。
自家発電は地球にやさしいというだけでなく
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などのメリットがあります。
一方で
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などのデメリットもあります。
日本では法人や自治体向けの補助金が出されています。補助金を利用し、クリーンなエネルギーを使ってはいかがでしょうか。
参照:自家発電の種類と費用は?
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まとめ
今回はSDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の日本の現状を、SDGs7の概要や世界、企業の取り組みとともに紹介しました。
日本政府や日本企業は再生可能エネルギーや省エネに力を入れつつありますが、目標7を達成するにはまだまだ不十分な点があります。
世界のエネルギー問題の現状・取り組みと日本の現状・取り組みを比較することで日本の課題や改善点を見つけ、一緒にエネルギー問題について考えていきましょう。
SDGs CONNECT ディレクター。ポイ捨ては許さない。ポイ捨てを持ち帰る少年だった。
現在はCO2の約300倍もの温室効果をもつと言われている一酸化二窒素(N2O)を削減できる微生物について研究。将来は環境×ITの第一人者になりたい
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