バイオマスを活用するメリット5選-再生可能エネルギーとしての課題も解説

#エネルギー#再利用#持続可能植林#森林#環境 2022.09.28

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再生可能エネルギーの1つであるバイオマスには、多くの活用方法があり、カーボンニュートラルを目指す上で、欠かせない持続可能な資源です。

脱炭素に向けて期待が高まるバイオマスですが、活用するメリットとは何でしょうか。また、日本や世界でバイオマスはどのように活用されているのでしょうか。

今回はバイオマスの特徴から、活用するメリット、利用方法まで詳しく解説します。さらに、バイオマスをめぐる世界と日本の現状や課題、活用事例についても紹介します。

バイオマスエネルギーとは

「バイオマスエネルギー」とは、生物を意味する「bio」と量を意味する「mass」から成る言葉で、動植物などから生まれた生物資源由来のエネルギーのことです。

技術開発に伴い、さまざまな種類の生物資源が有効活用されており、バイオマス発電は資源を直接燃焼したり、ガス化したりして電気を作っています。

バイオマスの資源は、稲わらやトウモロコシの残渣(ざんさ)など農業残渣や食品加工廃棄物、建築廃材などの動植物です。そのほかにも、糖やでんぷん、菜種もバイオマスエネルーの資源となります。

関連記事:SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」日本の現状は?

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バイオマス発電に利用される資源

バイオマスエネルギーには、バイオマス発電や熱利用、燃料製造など、多様な利用方法があります。

主に用いられる生物資源は、木質バイオマス・家畜系バイオマス・食品系バイオマス・植物系バイオマスの4種類です。それぞれの特徴は以下の通りです。

木質バイオマス 森林でそのままにされた間伐材、製造工場や建設現場で発生する使用されていない木材、廃材。薪やペレット(粒状の形をした合成樹脂)に加工して熱源の燃料としたり、ガスを発生させたりすることでエネルギーを生み出す。
家畜系バイオマス 牛や豚、鶏などの家畜排せつ物。熱によって発酵させ、発生したガスを発電機の燃料として活用する。
食品系バイオマス 生ごみや食品廃棄物。熱によって発酵させてガスを生み出し、発電機の燃料とする。
植物系バイオマス 稲わらやサトウキビ、なたねなどの植物や藻類。エタノールを精製し、発電や自動車などの燃料に使用する。とくに藻類は比較的簡単に栽培できるため、飛行機や自動車のバイオディーゼル燃料(生物由来油から作られるエンジン用燃料)として活用する研究が進んでいる。

バイオマスを活用するメリット5選

「バイオマスエネルギー」は動植物などから生まれた生物資源を活用して、エネルギーを生み出しています。

ではバイオマスを活用するメリットは何でしょうか。続いてメリットについて解説していきます。

地球温暖化対策

「バイオマスエネルギー」は化石燃料ではなく、動植物から生まれた生物資源を利用するため、温室効果ガスの排出量が削減され地球温暖化対策につながります。

また、バイオマスエネルギーは太陽光や風力エネルギーとは異なり、資源があれば気候に左右されず安定的に発電できるため、再生可能エネルギーとして安定した発電ができるというメリットもあります。

なおバイオマス発電は、光合成により二酸化炭素を吸収して成長するバイオマス資源を燃料とするため、京都議定書(※)においても二酸化炭素を排出しない方法とみなされています。

※京都議定書…二酸化炭素やメタンなど6種類の温室効果ガスについて、アメリカやイギリスなどの先進国での排出量削減を目指して目標数値を定めた文書。1997年12月の京都におけるCOP3で採択され、2005年2月に発効された。

関連記事:カーボンニュートラルとは?脱炭素との違いや取り組み内容をわかりやすく解説

廃棄物の発生を抑制

バイオマスエネルギーは木くずや生ごみなど、本来廃棄されるものを資源として利用しています。

エネルギー源として活用することで、有効活用できるだけでなく、ごみの廃棄にかかる費用を減らすことができます。

また、ごみを活用することは、ごみの排出量の削減など地球環境の改善もつながっています。

森林の適切な整備への寄与

森林には動物の生息・生育の場や環境にやさしい資材である木材の生産、きのこ類の栽培という役割だけでなく、国土の安全確保や水源のかん養(※)などの役割も担っています。

たとえば、森林の樹木が根を張り巡らせることで土砂の崩壊を防いだり、森林の土壌が降水を貯蔵し河川へ流れ込む水量を均等にし、川の流量を安定させる機能があります。

これらの機能を十分に発揮するためには、間伐や伐期を迎えた樹木を伐採するなどの適切な森林整備が必要です。林野庁は、間伐の過程で発生している木材を燃料として活用することを計画しています。

※かん養…自然に水が染み込むように徐々に養い育てること

循環型社会の構築

「循環型社会」とは、有限である天然資源の採取をできる限り減らし、効率よく利用することで、廃棄されるものを最小限に抑え、資源を持続可能な形で循環させながら利用する社会のことです。

木質バイオマス(木材からなるバイオマス)では、森林整備の際に発生する間伐材や、製造工場などから発生する樹皮やのこくず、住宅の解体材、街路樹の剪定枝(樹形の管理を目的に切りそろえられた枝の切りくず)などが資源です。

これらの資源を建築・製材時に使用したり、燃料として再利用したりすることで、樹木の伐採量が減り、持続可能な循環型社会が形成されます。

農山漁村の活性化

バイオマスエネルギーは、木質バイオマス以外にも家畜排せつ物や稲ワラ、林地残材など国内の農産漁村に存在する生物資源を活用するため、地域の経済的貢献や活性化につながります。

たとえば静岡県では、木質ペレットボイラーを活用して加温栽培したメロンを生産・販売しています。

また宮城県では、鶏糞(にわとりのふん)を燃料とするバイオマスボイラーを導入し、温風暖房を配置することでガスによる暖房費を削減しています。

このようにバイオマスを活用することにより、農林漁業者の収入増加や、生産・製造にかかるコストの削減、地域活性化につながるのです。

バイオマスの利用方法

ここまで、バイオマスエネルギー利用におけるメリットについて説明していきました。

続いて、バイオマスエネルギーの活用方法について説明していきます。

バイオマス発電

「バイオマス発電」とは、木くずや燃えるゴミなどを焼却する際に発生する熱を利用して電気を生み出す発電方法です。発電後の余った熱は、周辺地域の暖房や温水として有効活用できます。

メリットは、地球温暖化対策や循環型社会の形成、地球環境の改善につながることです。

一方デメリットとして、ごみや家畜排泄物は日本各地に分散しているため、収集・運搬・管理をする際に費用がかかるという問題があります。

バイオマス熱利用

「バイオマス熱利用」とはバイオマス資源を直接焼却し、廃熱ボイラー(排ガスの熱を利用し、蒸気を発生させる機械)から発生する蒸気の熱を利用し、バイオマス資源を発酵させて発生したメタンガスを都市ガスの代わりに焼却して利用することです。

バイオマス熱利用も、地球温暖化対策や循環型社会の形成につながるメリットがあります。

しかしバイオマス熱利用においても資源となるごみや家畜排泄物が分散しているため、収集・運搬・管理における費用が発生するというデメリットがあります。

バイオマス燃料製造

「バイオマス燃料製造」とは、生物資源であるバイオマスを原材料として、石油のような液体燃料・木炭や石炭のような固体燃料・水素やメタンのような気体燃料を作り出すことです。

この技術には「物理的変換」、「熱科学的変換」、「生物化学的変換」の3種類があります。

「物理的変換」では運搬・燃焼効率の向上を目指し、固体バイオマス燃料の製造を行っています。また、「熱科学的変換」「生物科学的変換」では液体燃料・固体燃料・気体燃料の製造を行っています。

この方法は薪や木炭、木くずから廃材まで多くの資源を活用することが出来るため、循環型社会の形成につながります。

世界と日本のバイオマス活用の現状

ここまで、バイオマスエネルギーの利用方法について説明していきました。

続いて、世界と日本におけるバイオマスエネルギー活用の現状について説明します。

世界のバイオマス活用の現状

世界各国が脱炭素に取り組む中、一部EU加盟国では、バイオマスエネルギーを再生可能エネルギーから除外するという考えが主張されています。理由として、生み出したエネルギーと同じ量の二酸化炭素排出量を植林によって回復させることの困難さや、不正確さなどが挙げられます。

しかし地域差はあるものの、EU全体のバイオマス発電はEU全体の再生可能エネルギーのうち、3分の2を占めています。とくにフィンランドでは、原子力・水力と並ぶほど多くのエネルギーが発電されています。

またアメリカでは、1980年以降バイオマスエネルギーの使用量が年々増加しています。2021年では、約175億ガロンのバイオマス燃料が生産され、約168億ガロンが消費されています。約8億ガロンの燃料は、海外へと輸出されています。

さらに中国では再生可能エネルギーの普及が拡大しており、バイオマス発電の割合も増加しています。専修大学社会科学研究所によると、2018年における中国のバイオマス発電電力量は91TWhと2017年と比べて、14%増加しています。また「退耕還林」という農地を林地へ転換する政策が進められており、バイオマスエネルギー普及の拡大が見込まれています。

日本のバイオマス活用の現状

日本においても再生可能エネルギーの発電力量は年々増加しており、2021年における日本国内の自然エネルギーの割合は22.4%と、2020年と比べて約2%増加しました。

バイオマス発電においても2021年の発電電力量は全体の4.1%であり、2020年と比べて0.9%増加しています。

しかしヨーロッパ諸国やアメリカでは、バイオマス由来のエネルギーが原子力や水力と同じくらい導入されていたり、約168億ガロンものエネルギーが消費されたりしています。この数字から、10%未満という日本のバイオマスエネルギーの電力量は少ないと言えます。

バイオマス利用の課題

日本は世界と比較するとバイオマスエネルギーに限らず、再生可能エネルギーの導入量が少ないことが現状です。ではなぜ日本では普及が進んでいないのでしょうか。

その一つの理由として、森林・林業基本計画による間伐材ができる木材量の制限が挙げられます。この制限により、日本はバイオマス資源の7割以上を海外から輸入しています。

またほかの再生可能エネルギーと比べて、バイオマス発電には多くの費用がかかります。発電所を建設する際にも費用が発生するため、バイオマスエネルギーの活用が遅れています。

バイオマス活用事例3選

ここまで世界と日本におけるバイオマスエネルギー利用状況や、バイオマスエネルギーを使用するうえでの課題について説明していきました。

最後に日本国内のバイオマスエネルギー活用事例を3つ紹介します。

ごみ排出量の削減に向けた「ごみ発電」|クリーンパーク茂原

栃木県宇都宮市は、ごみの排出量の増加と焼却施設の老朽化に対応するため、宇都宮市を含めた4つの町と共同してごみ焼却施設やリサイクルプラザからなる、「クリーンパーク茂原」を運営しています。

この施設では、ごみ焼却時に発生する熱エネルギーを蒸気の形で回収し、蒸気を利用して発電を行なっています。さらに、発電して余った電力は電力会社に売電するという工夫もしています。

また、ゴミの焼却時に発生するガスに含まれるダイオキシン類を抑制し、焼却灰も建設資材としてリサイクルするなど、環境に配慮している施設です。

未利用バイオマスの活用|豊橋市バイオマス資源利活用センター

愛知県豊橋市で運営されているバイオマス資源活用施設では、未利用バイオマス資源のエネルギー利用を行うため、PFI手法を採用しています。

PFI手法とは、民間の資金と経営能力・技術力を活用し公共施設などの設計・建設・改修・更新や、維持管理・運営を行う事業のことです。

下水汚泥、し尿・浄化槽汚泥(家庭から出る排水)および生ごみを集め、メタン発酵によってバイオガスを取り出します。

取り出したバイオガスは、ガス発電のエネルギーとして活用し、発酵後の汚泥は炭化燃料に加工してエネルギーとしています。

国内最大規模の資源循環型バイオガスプラント|鹿追町環境保全センターバイオガスプラント

北海道鹿追町では、再生可能エネルギーの一つである「バイオガスプラント」を活用しています。

「バイオガスプラント」とは、家畜ふん尿や生ごみなどの酸素を必要としない微生物が、分解することで発生するバイオガスを製造・収集するものです。

バイオガスにはメタンが60%、二酸化炭素が40%、わずかな水分と硫化水素が含まれており、燃料として電気や温水などの熱エネルギーを利用する際に活用しています。

さらに鹿追町では、2つある国内最大規模の資源循環型バイオガスプラント施設で電気を作る取り組みも行なっています。

まとめ

「バイオマスエネルギー」とは、動植物から生まれた生物資源由来のエネルギーです。間伐材や廃材などの木質バイオマスから家畜排泄物などの家畜系バイオマスまで、さまざまな資源が存在します。

バイオマスの活用には、地球温暖化対策や循環型社会の形成、廃棄物量の削減など多様なメリットがありますが、日本でのバイオマスエネルギーの導入量はいまだ低い状況です。

バイオマスエネルギーの活用を増やすためには、設備の建設・管理費の削減やバイオマス資源の輸入からあらたな方法で資源を獲得するなど、工夫をこらす必要があります。

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