SDGsの歴史を8つの要点で理解する-SDGsを学ぶ方法も解説

#SDGs目標17#持続可能#経済成長 2021.07.26

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【更新日:2022年5月17日 by ナオ

SDGsには意外にも長い歴史があります。

SDGsはなぜ始まったのか、どのようなゴールを目指していて現状はどうなっているのかなど、SDGsが採択されるまでの歴史を知ることでわかることがあります。

今回の記事では、SDGsの歴史を8つの要点で紹介し、SDGsをさらに学ぶための方法も紹介します。

▼SDGsの基本を知りたい方はこちらから

SDGsの歴史1|1972年 「成長の限界」への気づき

1972年、世界中の有識者を集めて設立されたローマクラブは「成長の限界」という研究報告書を発表しました。
この論文は「このまま人口増加や環境汚染などの傾向が続けば、資源の枯渇や環境の悪化により、100年以内に地球上の成長が限界に達する。」と世界に向けて警鐘を鳴らすと同時に、将来の世界状況について起こり得る複数のシナリオをまとめている内容です。

「成長の限界」が公害問題や資源の有限性を明らかにしたことで、世界中で意識されるきっかけとなりました。

出典:環境省_平成25年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第2章第2節 経済社会の変革への動き

しかし「成長の限界」が発表された1970年代は、世界各国が金銭的・物理的な豊かさを求め、自国の繁栄や成長を第一に考えていた第2次世界大戦後の世界でした。

そのため当時は賛否両面からの大きな反響がありました。

SDGsの歴史2|1980年代 「持続可能性」の概念が登場

1980年に国際自然保護連合(IUCN)が国連環境計画(UNEP)の委託により、世界自然基金(WWF)などの協力を得て作成した「世界自然資源保全戦略」の中で、初めて公式的に「持続可能性」という概念が登場しました。
また、1984年国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」において定められた「ブルントラント・レポート:我ら共有の未来」の中でも、SDGsのルーツといえる「持続可能な開発」の概念が打ち出されました。

経済成長によって新しい技術が生まれることで、省エネルギーの商品や環境保全向けの投資を増やせるという考えを軸に、当時の「持続可能性」の概念は、環境保全と経済成長は対立するものではなく、両立し互いに助け合うものとされていました。

しかし1980年代の「持続可能性」の概念には、SDGsのように徹底的に網羅されたターゲットがありませんでした。

そのため、世界全体をターゲットとした場合の課題は環境問題であり、先進国をターゲットとした場合の課題は豊かな現状の維持であるなど、ターゲットごとに重要視すべき課題が異なってしまいました。

1980年代は、ターゲットを網羅的に定める大切さが浮き彫りになった時代と言えます。

SDGsの歴史3|1989年 経済のグローバル化が地球環境問題への危機感に

1989年の冷戦の終結をきっかけに、世界全体で平和へと大きく歩みだしました。これにより、世界各国の指導者層の中で環境問題が注目されるようになりました。
冷戦によりソ連が解体され、社会主義圏は敗退し、世界は民主化や市場経済に向かい、資本主義経済が急激に発展していきました。

しかし資本主義経済のもとでは、経済の発展を最優先とし、環境問題を後回しにしてしまう事態も多く発生しました。

今日に至るまで経済の発展を支えてきた資本主義ですが、この頃からの資本主義経済の急激な発展は、現在にも続く多くの社会問題の火種となっているのです。

SDGsの歴史4|1992年 「地球サミット」で歴史的転機に

1992年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「地球サミット」において、「持続可能な成長」という概念は転機を迎えます。
「地球サミット」は、人類共通の課題である「地球環境の保全」と「持続可能な開発の実現のための具体的な方策」を得ることを目的とした、世界規模の環境問題と開発に関する会議です。国際連合に加入している約180の国が参加し、歴史に名を残すものとなりました。

出典:http://contest.japias.jp/tqj2001/40419/no/sekai/samitto.htm

この会議においては、持続可能な開発に関する国際的な取り組み計画である「アジェンダ21」が採択されました。
アジェンダ21は、第1部「社会的/経済的側面」、第2部「開発資源の保全と管理」、第3部「NGO、地方政府など主たるグループの役割の強化」、第4部「財源/技術などの実施手段」という、環境問題から人権問題まで幅広い分野をカバーする計4部で構成されました。

これにより、持続可能な成長実現への道のりが可視化され、多くの国が「持続可能な成長」の概念を理解し、実行することにつながりました。

SDGsの歴史5|1997年 「京都議定書」地球温暖化への世界的協調

1997年には地球温暖化をメインテーマとした国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が京都で開催され、参加国に対して温室効果ガスの排出量削減が義務付けられました。
この提言は、開催された京都にちなんで「京都議定書」と呼ばれています。

出典:京都議定書の概要

京都議定書では具体的に「温室効果ガスを2008年から2012年の間に、1990年比で約5%削減すること」が各国に要求され、これに加えて国ごとにも削減目標が定められました。

その結果、2008年から2012年の間に日本は6%、アメリカ合衆国は7%の温室効果ガス排出量削減に成功し、一定量の温室効果ガス削減に成功しました。

しかし、日本は第2約束期間にあたる2013年から2020年は不参加でした。

これは京都議定書に発展途上国に対する温室効果ガス削減義務が示されていないことが起因しています。

気候変動枠組条約は「歴史的に排出してきた責任のある先進国が、最初に削減対策を行うべきである」という合意に基づいています。
そのため、主に温暖化を深刻化させた先進国が率先して解決に協力するべきであるというスタンスがあります。

日本は途上国に対して削減を義務付けない京都議定書を不服とし、次の約束である第2約束期間には不参加となったのです。

国によって削減目標が異なることが正しいのか、物議をかもすきっかけとなりました。

SDGsの歴史6|2000年 「MDGs」開発途上国の課題解決を目指す

まず、MDGsとは「Millennium Development Goals」の略で、2000年にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された「国連ミレニアム宣言」をもとにまとめられたSDGsの前身目標です。
MDGsは、合計8つのゴールと21のターゲットから構成されている2015年までの達成目標です。文言は異なりますが、SDGsの目標にはこれら全てが含まれています。

出典:(ODA) ミレニアム開発目標(MDGs) | 外務省

MDGsでは、人間開発と貧困撲滅をテーマとして、平和と安全、開発と貧困、環境、人権、弱者の保護などの課題に対しての国連がとるべき姿勢について明記されています。

MDGsの誕生によって、それまでバラバラだった社会課題や方策が1つの目標としてまとまったと同時に世界中が団結する基盤ができました。

しかしMDGsは開発途上国に対する「先進国の目線での」目標であったため、世界的なムーブメントまでには至らず、ほとんどの目標が達成されないまま、2015年を迎える結果になりました。

▶関連記事|《徹底解説》MDGsとは?ー8つの目標・SDGsとの違いを解説>>

SDGsの歴史7|2010年 経営と持続可能性の重要さを広めた「コトラー」

アメリカの経営学者フィリップ・コトラーは、2010年に発表した「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」で世界中の経営陣に大きな影響を与えました。

出典:コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則 単行本 – 2010/9/7

この著書には「これまでのマーケティングは『製品中心のマーケティング』から『消費者志向のマーケティング』という変遷を辿ってきたが、これからは『価値主導のマーケティング』という新しい時代に入る」との内容が書かれてています。

「価値主導のマーケティング」というのは、企業がステークホルダーに共感を得ることこそが大きな価値であるということを指しています。

提供できる「価値」の1つとして、コトラーは先ほど紹介した「MDGs(国連ミレニアム宣言)」を著書の中で紹介し、持続可能性をマーケティングに活用せよとの趣旨の発言をしています。

コトラーの発言は多くの経営陣に響き、経営と持続可能性の関連性に注目したきっかけとなりました。

SDGsの歴史8|2015年「誰ひとり取り残さない」世界の実現を目指して

2015年の国連サミットで「2030アジェンダ」とともに決議されたのが「SDGs(持続可能な開発目標)」です。このサミットで、SDGsは国際連合加盟国の全会一致のもと決議されました。

出典:https://www.unic.or.jp/files/sdg_poster_ja_2021.pdf

実はSDGsが現在の形になるまでに、約2年の月日がかかっていることをご存じでしょうか?

SDGsは国連サミットのみで議論されたものではなく、世界中の企業やNGOといった数多くの人々が約2年にわたる議論を重ね、ようやく17の目標に収まったのです。

「誰ひとり取り残さない」というSDGsのコンセプトは英語では「leave no one behind」となり、発展途上国のみならず、先進国自体も取り組むべきユニバーサルなものであるということが強く表されています。

このコンセプトを軸に話し合いが進んだため、2年という長い年月が必要であったと言われています。

SDGsの現状と課題

約50年前から人間は地球に対しての課題を見つけ、多くの警鐘を鳴らし続けてきたことが分かったかと思います。
このような歴史を経て成立されたSDGsは今日どれほど達成されているのでしょうか。

SDGsはどのくらい達成されているのか

SUSTAINABLE DEVLOPMENT REPORTによると、SDGsの世界の進捗状況は、2015年にSDGsが採択されて以来初めて、2020年に向けた世界のSDGs指数の平均スコアが前年より低下したと記載されています。
世界の多くの地域では、目標1「貧困をなくそう」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に関しては大きく前進しています。

一方、目標2 「飢餓をゼロに」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」への進捗の停滞や、達成率の低下が見られています。特に目標2「飢餓をゼロに」に関しては、栄養不足による体重過多や肥満の人々の割合が増加したため、大きな進展が見られていません。

出典:SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT2021

国別の達成率については以下の通りです。

順位 国名 スコア
1 フィンランド 85.90
2 スウェーデン 85.61
3 デンマーク 84.86
4 ドイツ 82.48
5 ベルギー 82.19
6 オーストリア 82.08
7 ノルウェー 81.98
8 フランス 81.67
9 スロベニア 81.60
10 エストニア 81.58
18 日本 79.85

▶関連記事|《徹底解説》日本と世界のSDGsの達成状況|世界から見た日本の達成度とSDGs先進国の取り組み>>

取り組みが遅れている理由と課題

2015年にSDGsが採択されて以来、SDGs指数の平均スコアは年々上昇していました。
しかし2020年に初めて世界のSDGs指数の平均スコアが、前年よりも低下しました。
低下した大きな原因の一つが新型コロナウイルス感染症拡大の影響です。

SDGs指数の平均スコアが低下した理由としては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、貧困率や失業率が上昇したことが大きく関わっています。

SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT2021においても、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている間は持続可能な開発や経済復興は難しいとの見解を示しています。

SDGsの達成率を上げるためにも、新型コロナウイルス感染症の抑制が今日の世界では求められていることなのです。

▶関連記事|SDGsの日本の現状2021|コロナが与えたSDGsへの影響とは>>

SDGsを学ぶためにできること

ここまでSDGsの「過去」と「現状」を見てきました。
私たちは「未来」のために、SDGsをさらに学んでいく必要があります。
ここでは、SDGsを学ぶ4つの方法について紹介します。

歴史文化から学ぶ

SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲットの一つに「世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。」があります。

世界文化遺産を保護することもまた、SDGsの取り組みの一つなのです。

国内には20の世界文化遺産があります。
「顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観」と定義された文化遺産を知ることもまたSDGsを歴史文化を通じて学ぶ機会となります。

書籍から学ぶ

今日ではSDGsに関連した多くの書籍が販売されています。

子ども向けからビジネスパーソン向けまで、多くの書籍が販売されているため、用途に合わせてさまざまな切り口でSDGsを学べるようになっています。

SDGsがどのようなものなのかを体系的に知りたい方におすすめです。

▼詳しいSDGsの書籍例に関してはこちら
▶関連記事|《知らなきゃ損》SDGsのおすすめ書籍12選|大人向け・学生向け・児童向けを年代別に紹介>>

企業の取り組み事例から学ぶ

企業のSDGsへの取り組みを調べてみることも、SDGsを学ぶことにつながります。
今日では多くの企業がSDGsへの取り組みを公表しています。

企業の強みを活かして、自社とSDGsをうまく融合した取り組みを見ることで、実際にどのようにSDGsに取り組むのか、具体的にSDGsの取り組みとはどのような事を指すのかなど、SDGsについてより具体的に知ることが出来ます。

▼詳しい 企業の取り組み事例に関してはこちら
▶関連記事|SDGsの取り組み事例51選|企業と個人の事例を17のゴール別に徹底網羅>>

SDGsの記事を読む

近年、さまざまな場面で「SDGs」という言葉を聞く機会が増えたかと思います。
これに伴い、世の中にはSDGsに関するさまざまな情報が錯綜しています。

SDGsに関する情報をまとめた記事や、SDGsの事例紹介の記事などを読むことで、SDGsを網羅的に把握できるため、学びたい方には最適です。

また、SDGs CONNECTでは、SDGsに関する最新のニュースから、SDGsの取り組みをしている企業へのインタビュー記事、SDGsに関するコラム記事など、SDGsに関するさまざまなジャンルの情報をお届けしています。

興味のある方はこちらからご覧ください。
▶SDGs CONNECT | SDGs専門メディア>>

おわりに

1972年から始まったSDGsの歴史について追ってきました。
約50年前から、世界中の人々が環境問題や社会問題に大きく注目を集めていたことに驚きを感じた人も多くいたかと思います。

今日私たちがすべきことは、SDGsを世界中の人々が共通認識するべき目標とし、私たち一人ひとりが「自分ごと」として捉え、尽力することです。

この記事で得た知識を誰かに教えたり、SDGsを身近に感じることもまた、持続可能な社会への近道ではないでしょうか。

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