SDGs15「陸の豊かさを守ろう」の現状とは?|SDGs15への取り組み事例3選を紹介

#SDGs#SDGs目標15#森林#生態系 2022.04.03

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【更新日:2022年8月23日 by 大川 智也

皆さんは、SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の目標が、今世界でどれ程達成できているのかという現状をご存じですか?

目標15「陸の豊かさも守ろう」は自然環境に関するものであり、私たちは日常生活においてさまざまな恩恵を受けています。

今回は、SDGs15「陸の豊かさを守ろう」の現状について解説し、SDGs15への取り組み事例3選を紹介します。

SDGs15「陸の豊かさを守ろう」とは

SDGsの15番目の目標は、「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」というテーマのもと、12個のターゲットから構成されています。

上記のテーマの中で触れられている「陸域生態系」は、大きく分類すると下記の通りに分けることができます。

1. 自然生態系 …森林や草原といった自然界に存在する生態系
2. 人工生態系 …耕作地や都市の園緑地などの自然界には存在していない人工的な生態系のこと

1の自然生態系が減少してしまうことで、動物の住処が減少してしまうのです。

よって、まずは森林を保護していくことが、SDGs15「陸の豊かさを守ろう」の達成につながると言われています。

▼SDGs15について詳しくはこちら

SDGs15「陸の豊かさを守ろう」の現状

では、次にSDGs15「陸の豊かさを守ろう」の現状について見ていきます。

約10年間で年平均521万ヘクタールの森林が消滅

 

世界の森林面積

(出典:https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/15-land/)

世界の森林面積は約39.9億ヘクタールと言われており、これは全陸地面積の30.6%に相当します。現在、世界の森林は減少を続けており、毎年330万ヘクタールが減少しています。植林による増加分を差し引いても、2000年から2010年の間に、年平均で521万ヘクタールという、日本の面積の約1.5倍にあたる森林が消えました。

森林の減少理由は「畑にするため、紙の原料にするため、パームオイルの原料となるヤシを育てるため」などと様々です。

世界の中でも、特に南アメリカやアフリカなどの熱帯の森林を中心に減少面積が大きくなっています。

反対に、アジア、ヨーロッパを中心として森林面積が増加している国も見られており、森林面積の増加と減少には、地域的な偏りや差が見られます。

日本は国土の約70パーセントが森林におおわれており、フィンランドに次ぐ世界第2位の森林保有割合であると言われています。

そのうちの約40パーセントが戦後に植林されたスギやヒノキです。植林された森は間引きを行うなど、人の手をかけなければなりません。しかし、価格が安い海外の木材を輸入して使っている場所も多く、放置されている森が大半を占めています。

近年少しずつ国産材の利用は増えていますが、それでも70%は海外から輸入している状況です。日本の森林資源を活かすことは、海外で減少し続けている森林を守ることにもつながります。

森林の役割は、大きく分けて3つあると言われています。

①洪水や土砂くずれを防ぐ

生き物が生息する森の中の土は、スポンジのように水を吸収し、蓄えやすくなっており、更に木の根が土をしっかりつかんでいるため、洪水や土砂くずれを防ぎます。

②地球温暖化を緩和する

木々の葉が二酸化炭素を吸収し、私たちや生物に必要な酸素を供給する役割を果たします。二酸化炭素を減らすことで、地球温暖化を緩和します。

③動物や植物の成育を守る

森は、動物や昆虫、植物にとって住処になります。強い雨風や、日光をやわらげる役割を果たしているからです。森は、動物や植物が安心して生物を育てられる場を提供しています。

地球上で年間約4万種もの生物が絶滅している

では、次に生物の多様性の現状について見ていきます。

1975年の年間絶滅数は1,000種と言われていましたが、その後は経済成長に伴う大気汚染や森林伐採による生物の住処の消失、さらには温暖化などによる生態系の破壊といった理由により、絶滅スピードは40倍に増加したと言われています。つまり、現在では地球上で年間約4万種もの生物が絶滅しているということになります。

<絶滅危惧種が多い国ランキング>

世界でも、絶滅危惧種が多い国はどこになるのでしょうか。
外務省によると、絶滅危惧種が多い国ランキングは以下の通りになっています。
左の数字は順位で、右の数字は絶滅危惧種の数を表しています。

1 エクアドル 2,297
2 アメリカ合衆国(米国) 1,279
3 マレーシア 1,226
4 インドネシア 1,207
5 メキシコ 1,073
6 インド 972
7 中華人民共和国(中国) 960
8 ブラジル 925
9 オーストラリア 895
10 マダガスカル 869(日本 352)

参考:【2021年最新】絶滅危惧種に指定されている22種類の有名な動物を一覧で紹介

1位はエクアドルの2,297種になっており、2位のアメリカに比べて約2倍です。かなりの数の絶滅危惧種がエクアドルに存在していることが分かります。

また、日本は上位10か国には入っていません。しかし、種類が300を超えており少なくない数の野生生物が絶滅の危機に瀕しています。

絶滅危惧種は、レッドリストという絶滅の危機に瀕する野生動物をまとめたリストに載っている動物のことを指します。ランクによって絶滅の危険度が異なります。絶滅危惧種は、個体数の減少状況などから危険度別に分類され、保全の優先順位がつけやすいように工夫されています。日本でも、国が独自に調査したレッドリストが存在します。

絶滅危惧種は、人間にあまり知られていない生き物だけでなく、私たちが馴染み深い有名な動物も、絶滅危惧種に指定されています。

今回は、数多く存在する絶滅危惧種の中から、意外にも絶滅危惧種に指定されている有名な動物13種を紹介します。

【絶滅危惧Ⅱ類(VU):危険度が中程度】絶滅の危険が増大している種

レッサーパンダ
クロマグロ
ホッキョクグマ

【絶滅危惧ⅠB類(EN):危険度が高い】下のⅠA類ほどではないが近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

ワオキツネザル
アジアゾウ
チンパンジー
モウコノウマ
マレーバク
ジャイアントパンダ

【絶滅危惧ⅠA類(CR):危険度が極めて高い】ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの

シロサイ
ソデグロヅル
エジプトリクガメ
ラスティーパッチド・バンブルビー

上記では世界各地から注目の絶滅危惧種をご紹介しましたが、日本国内の代表的な絶滅危惧種9種についても触れていきたいと思います。

(危険度が中程度)
エゾナキウサギ
トド

(危険度が高い)
ハヤブサ

(危険度が極めて高い)
イリオモテヤマネコ
ラッコ
ジュゴン
コウノトリ
ヤンバルクイナ
トキ

危険度が極めて高い動物を見てみると、ラッコやトキといった有名な動物が絶滅の危機に瀕していることが分かります。

この表以外にも日本には350種以上の動物が絶滅の危機に瀕しており、早急な対応が求められています。

SDGs15「陸の豊かさを守ろう」日本の現状

まだ課題が残っている状況

林業の担い手の高齢化により、現在の日本は昔と比較して森林が減少傾向にあります。
森林の高齢化とともに、林業でも高齢化が進み、定期的に管理できる人が減っているのです。
また、安価な輸入木材に押されて国産木材の需要が減り、国産林業が稼げなくなっていることも林業の担い手が減少している要因のひとつです。

日本のSDGsの現状について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

《完全網羅》SDGsの7つの問題点|現状の課題と解決策

SDGs15「陸の豊さを守ろう」の達成度と進捗度

感染症による生態系の危機

動物が持っていた感染症が人間に移ることもあり、経済成長への影響が危惧されています。
最も身近な例として、新型コロナウイルスが挙げられます。

コウモリが人間にコロナを感染させる媒体となったとされており、きっかけは違法取引や密猟などの野生生物犯罪であると言われています。

犯罪行為が、生態系や生物多様性を脅かすだけでなく、人間の健康・安全・経済的発展も妨げる可能性があるのです。

土壌劣化による影響は生態系や気候変動を悪化させる

地上の約5分の1にあたるインドとロシアの国土面積の合計に近い土地が、すでに劣化していると言われています。実際に、2000年から2015年までに地球上の自然・半自然地域が減少しています。
原因として、森林伐採・都市化・持続不可能な農業活動など人間の活動が挙げられており、早急の解決が必要であるとされています。

SDGs15への取り組み事例2選

世界の取り組み|絶滅危惧動物を保護するワシントン条約

ワシントン条約は、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約です。

この条約は、輸出国と輸入国が協力して国際取引の規制を実施することで、過度な国際取引による野生動植物種の絶滅を防止し、種の保全を図ることを目的としています。

関連記事:《徹底解説》SGDsの世界の取り組み|17の目標別に世界の事例を網羅

日本の取り組み|絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦力

環境省では、日本に生息する絶滅危惧種の保全を全国的に推進することを目的とし、基本的な考え方と早急に取り組むべき施策の展開を示した「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」を策定しました。
また、「絶滅危惧種保全カルテ」の作成等を図り、保全の基礎となる情報の充足を行っています。

これにより、日本の団体や企業が協同しやすくなるというメリットがあります。

SDGs15達成するために個人できる3つのこと

FSC認証の商品を購入する

FSC認証とは、森林保護を目的としたマークです。
FSC認証は定められた基準を満たす商品にのみ付けられます。

つまり、FSC認証のある商品を選ぶことは、持続可能な社会の実現を応援することにつながります。

ゴミを減らす

メルカリ等のフリマアプリは利用したことがありますか?
新品を買わずに中古品を買う事も、ゴミを減らす一助になります。

また、ティッシュで汚れを拭くのではなく、ふきんを使う事もゴミを減らすことに繋がります。

私たちの日常生活の小さな行動が、ゴミの削減に繋がるのです。

植林活動に参加する

民間企業や一部の団体が、一般の方と協力して緑の地球づくりを行うために植林活動を行っているのはご存じでしょうか。
具体的な会社ですと、ソニーコーポレートサービス株式会社や三井住友海上火災保険株式会社などが挙げられます。

両社は環境保全活動の一環として、保険締結のペーパレス化を推進し、ペーパレス化1件の成約につき1本の植林を行うこととしました。

関連記事:《徹底網羅》個人でできるSDGsの取り組み|「シーン別に解説」

関連記事:《意外と知らない》日常生活でできるSDGs|具体的な取り組み〜日常生活編〜

おわりに

今回は、SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の世界と日本における現状について紹介させていただきました。

私たちは普段から大量に木材を消費しています。しかし、木は大切な資源であると同時に人間以外の生物の住処でもあります。

私たちにとっても、動物にとっても持続可能な社会を目指し、紙や木材の使い方について今一度考える機会になれば幸いです。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と言います。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

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