フェアトレードとSDGsの関係とは?-企業や個人の取り組みも解説

#フェアトレード#不平等#包摂的#安全#強靭性(レジリエント)#持続可能#気候変動#物流#環境#食品 2022.08.24

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フェアトレードはSDGsを達成するための大事な手段です。フェアトレードとは、「公正・公平な取引」によって貧困や不平等、生産者と労働者の権利や生活を保証するものです。

持続可能な社会を実現する上でフェアトレードは欠かせないもので、SDGsの全ての目標と関係があります。

フェアトレードとSDGsはどのような関係があるのでしょうか。また、フェアトレードに取り組むことで、どのような問題が解決できるのでしょうか。

今回は、フェアトレードの概要や仕組みから、フェアトレードとSDGs17個の目標との関係、企業によるフェアトレードの取り組み、私たちにできることまで詳しく解説します。

見出し

フェアトレードとは

「フェアトレード」とは、発展途上国の原材料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じて、立場の弱い発展途上国に住む生産者・労働者の生活改善と自立を目指す運動のことを言います。

とくにアフリカ大陸や中央アジア、南アメリカ大陸の国々がフェアトレードの活動に参加しており、取り引きの結果、得たお金は水道施設や教育環境の改善のための資金として使用されています。

アメリカやイギリス、ドイツなどのフェアトレード先進国は、発展途上国の支援を積極的に取り組んでおり、市場も少しずつ拡大しています。

国際フェアトレード基準

「国際フェアトレード基準」は、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)によって設定されるフェアトレード全般に関する基準です。これらの基準は、基準委員会とすべてのステークホルダー(フェアトレードに参加する生産者や貿易業者など)によって、年に5回開かれる会議で見直しが行われており、発展途上国の小規模生産者・労働者の持続可能な開発を促進を目指します。

国際フェアトレード基準は経済・社会・環境の3つの原則をもとに、「生産者の対象地域」、「生産者基準」、「トレーダー(輸入・卸・製造組織)基準」、「産品基準」の4つの基準から構成されています。

国際フェアトレード基準の最大の特徴は、経済的・社会的・環境的に持続可能な生産と生活を支える「フェアトレード最低価格」と、生産地域の社会発展のための資金である「フェアトレード・プレミアム」(奨励金)を保証している点です。

経済的基準 社会的基準 環境的基準
・フェアトレード最低価格の保証
・フェアトレードプレミアムの支払い
・長期的な取引の促進
・必要に応じた前払いの保証
・安全な労働環境
・民主的な運営
・差別の禁止
・児童労働や強制労働の禁止
・農薬や薬品の使用削減と適正使用
・有機栽培の奨励
・土壌、水源、生物多様性の保全
・遺伝子組換え品の禁止

参照:フェアトレードジャパン公式サイト

フェアトレードとSDGsの関係

持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に書かれる、2030年までに達成すべく取り組まれている国際的な目標のことを言います。

人間・繁栄・地球・平和・協働という5つの分野と17のゴール、169個のターゲットから成り立っており、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」がキーワードです。

SDGsとフェアトレードは関連性が強く、SDGsが掲げるすべての目標を達成するために必要な要素と考えられています。

関連記事:SDGsと不平等の関係-さまざまな不平等をなくすための取り組みを紹介!

フェアトレードとSDGs17目標の関係・目指す成果

ここまで、フェアトレードの概要と基準について説明してきました。

続いて、フェアトレードとSDGs17のゴールとの関係とその目標について1つずつ取り上げていきます。

SDGs目標1|生産者と労働者の権利・生活を保証

SDGs目標1「貧困をなくそう」では、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせるという目的で、7個のターゲットが設定されました。

フェアトレードの取り組みは、小規模生産者の持続可能な生産・生活を支えるためにフェアトレード最低価格の設定やフェアトレード・プレミアムの保証などです。さらに、長期的な取り引きの継続や必要に応じた生産者への前払い保証などの取り組みも行われています。

そのため、フェアトレードに取り組むことは、発展途上国に住む生産者・労働者の貧困を減らすことへつながります。

SDGs目標2|栄養改善と持続可能な農業の促進

SDGs目標2「飢餓をゼロに」では、飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進するという目的で、8個のターゲットが設定されました。

小規模生産者の生産・生活を支えるために設定した、フェアトレード最低価格やフェアトレード・プレミアムのなどは、SDGs2達成に貢献する取り組みです。

他にもフェアトレード環境基準に含まれている「農薬の使用制限、水源・土壌・施物多様性の保全」という基準によって持続可能な農業を促しています。

SDGs目標3|途上国の人々の健康的な生活と福祉を促進

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」では、あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するという目的で、13個のターゲットが設定されました。

フェアトレードは、発展途上国に住む生産者・労働者の生活改善や自立を目指す取り組みです。発展途上国に住む人々の健康的な生活が確保され、福祉が豊富になれば人々の生活が改善されていき、徐々に発展していきます。

SDGs目標4|生産者の自立を支援し、教育を促進

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」では、すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進するという目的で、10個のターゲットが設定されました。

発展途上国に住む子どもたちの多くは生活が苦しいため、家計を支えるために働いたり、家事を手伝っていたりすることで、学校に通い学習をする時間とお金がありません。

フェアトレードに取り組むことで、正当な価格で商品が買い取られ、生産者・労働者に利益が届くようになります。そして生産者・労働者の生活を支援することになり、子どもの学校における教育時間を設けることができるのです。

SDGs目標5|労働や意思決定など女性の権利を保証

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行うという目的で、9個のターゲットが設定されました。

フェアトレードの役割は、指導的ポジションに就きづらい女性に機会を与え、同じ仕事の中で男性だけでなく、女性にも男性と同等の対価を支払い、女性も社会的立場を確立させることです。

フェアトレードジャパンは、ジェンダー平等とエンパワーメント(自律性を促進し、能力を開花すること)を目指し、フェアトレード・プレミアムを女性の負荷軽減のために活用することで、女性の社会的立場の向上を促進しています。

この活動により、インドの米生産者組合では地域の女性に向けたコンピューターセンターを開設しました。

SDGs目標6|生産者が生活するコミュニティ開発にも

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」では、すべての人々の水と衛生の利用可能と持続可能な管理を確保するという目的で、8個のターゲットが設定されました。

国際フェアトレード基準が保証しているフェアトレード・プレミアムは女性の社会的地位の確保のみならず、安全に飲むための水を確保するためにも使用されています。

たとえば、コートジボワールのカボキバ カカオ協同組合で活用されているフェアトレード・プレミアムは、安全な水の確保と健康管理を徹底するための、モーターポンプがついた井戸の建設です。

SDGs目標7|生産者の生活コミュニティでのエネルギーアクセスを確保

SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」では、すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保するという目的で、5つのターゲットが設定されました。

フェアトレードジャパンによると、国際フェアトレード基準が保証しているフェアトレード・プレミアムにより、発展途上国に住む生産者・労働者の生活の質が向上し、電気の普及により夜でも明るい状態を保つことができるようになりました。

フェアトレードジャパン公式サイト▼
https://www.fairtrade-jp.org/

SDGs目標8|労働者の労働環境を改善、権利も保証

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」では、包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディセント・ワーク)を促進するという目的で、12個のターゲットが設定されました。

フェアトレードを行うことで、発展途上国に住む生産者・労働者が過酷な労働環境ではなく、持続可能で働きがいのある雇用を促しています。

フェアトレードジャパンでは、国際労働機関憲章(ILO)に基づいたフェアトレード基準を設定しています。この基準は発展途上国に住む生産者・労働者の権利を尊重し、よりよい労働条件・労働環境を保証したり、生活賃金を保証したりするものです。

SDGs目標9|途上国への技術移転を促進

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図るという目的で、8個のターゲットが設定されました。

フェアトレードを行うことで、発展途上国の産業・技術向上につながります。

たとえば、中央アメリカに位置するグアテマラのチョフスニル村に住む人々はコーヒーの有機栽培に取り組んでいます。チョフスニル村は昼夜の気温差が大きく、コーヒーの栽培に最適な環境ですが、フェアトレードへの参加前は十分な生産技術がなく僻地であることから、なかなか収入を得られませんでした。

しかし、フェアトレードに参加してから、技術を学び高品質の有機栽培コーヒー豆を生産することができました。今では、日本やアメリカ、ドイツなどの国々に輸出しています。

SDGs目標10|国内外の不平等をなくす

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」では、各国内及び各国間の不平等を是正するという目的で、10個のターゲットが設定されました。

フェアトレードは、発展途上国に住む生産者・労働者の生活改善と自立を促進するために国際貿易に公平性を求める運動です。フェアトレードを促進することで、人々の間にある不平等のみならず、国の間にある不平等も改善されていきます。

SDGs目標11|途上国の持続可能なまちづくりに貢献

「住み続けられるまちづくりを」では、包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現するという目的で、10個のターゲットが設定されました。

生産者・労働者の生活改善や自立を促すことで、発展途上国に住む人々にも住みやすい街づくりにつながります。

SDGs目標12|生産者の持続可能な生産のためにフェアな価格を保証

SDGs目標12「つくる責任使う責任」では、持続可能な生産消費形態を確保するという目的で、11個のターゲットが設定されました。

フェアトレードは消費者が持続可能な選択をすることで、生産者が持続可能な生産を実現できるように、適正な価格で商品の支払いを保証するものです。

発展途上国に住む生産者・労働者がつくってくれた食品や製品を無駄にするのではなく、フェアな価格で使用することが重要です。

SDGs目標13|小規模生産者に働きかけ、持続可能な農業生産を促進

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」では、気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じるという目的で、5つのターゲットが設定されました。

国際フェアトレード基準で設定されている環境的基準において、土壌・水源・生物多様性を保全したり、エネルギー使用量を削減したりと、気候変動の対策が行われています。

また一部の国ではフェアトレード・プレミアムが気候変動対策に活用されています。

SDGs目標14|海の環境汚染に歯止めをかける

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」では、持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用するという目的で、10個のターゲットが設定されました。

フェアトレードでは生産過程で発生する排出物の流出など、環境汚染を引き起こす問題となるものに対し厳しく管理しています。また、海洋のプラスチック汚染問題のように環境への配慮を行うのもフェアトレードの取り組みの一つです。

SDGs目標15|貧困による環境破壊を防ぐ

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」では、陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止するという目的で、12個のターゲットが設定されました。

一例を挙げると、エチオピアのオロミアコーヒー生産者組合連合ではフェアトレード・プレミアム保証を活用して、森の中で有機農法を行っています。この農法により、Bird Friendlyな環境(渡り鳥の生息地になる、自然林に近い環境を守りながらコーヒーを育てる農法)でのコーヒー豆栽培を実現しました。

SDGs目標16|格差や不平等をなくす

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」では、持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築するという目的で、12個のターゲットが設定されました。

フェアトレードには小規模生産者・労働者が50%の意思決定権を持っており、彼らの意志がフェアトレードの基準・方針・策定に反映されています。

また、小規模生産者・労働者が自ら政策を考案し、提言する体制を整えており、SDGs16と同様に、格差や不平等をなくすことを目指しています。

SDGs目標17|グローバルパートナーシップによる課題解決

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」では、持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化するという目的で、19個のターゲットが設定されました。

フェアトレードは、国だけでなく政府や自治体、市民から生産者、企業など多くの人が取り組む運動です。世界各国の人々が貿易を通して、発展途上国に住む生産者・労働者の生活改善と自立に貢献できます。

企業によるフェアトレードの取り組み3

ここまでフェアトレードとSDGs17の目標との関連性についてまとめていきました。

続いて、3つの日本企業が取り組むフェアトレードについて紹介していきます。

味の素AGF|持続可能なコーヒー豆調達

味の素AGF株式会社では「ASV」という、SDGsが目指す社会価値(ココロとカラダの健康、人と人とのつながり、地球環境と共生)を共創し、3R(Rest, Relaxation, Refreshment)の提供により、社会課題の解決に貢献するための活動を掲げています。

コーヒー豆の調達の際には、地球環境への配慮、生産者のより安全で安心な労働環境実現、農業生産性向上への取り組みや、持続可能な原材料調達を実現するため、2013年から公正なコーヒーサプライチェーンを確立した4c認証コーヒー豆(コーヒーの持続可能な栽培と加工のための最大認証システム)を調達しています。

日本生活協同組合連合会|エシカル商品で開発途上国の生産者をサポート

日本生活協同組合連合会では、未来へ続く世界の実現のために「誰かの笑顔につながるお買い物」という表現を用いて、人・社会・環境を意識して生産された商品である「エシカル商品」を取り扱っています。

消費者が環境に配慮した商品を選びやすいよう、シリーズ商品や各種マークを付けた商品を販売したり、環境問題・人権問題を考慮した商品調達の仕組みを取り入れたりすることも、フェアトレードにつながる行動の1つです。

キャメル珈琲グループ|コーヒー豆で女性の自立支援・社会的地位の向上を支援

キャメル珈琲グループでは、「地球にいいことしてる?」をテーマに、自然・環境や人への想いを大切に、生産者の顔が見えるコーヒー豆や世界の美味しいもの、食文化を提案しています。

キャメル珈琲グループが取り組む「ウーマンズハンドプロジェクト」は女性の自立支援、社会的地位の向上、経済的環境改善のために設立されたプログラムです。グアテマラのアソバグリ農協が女性生産者のサポートを目的としてはじめたこのプログラムに賛同し、2012年から取り組みをスタートしました。

私たちにできること3選

ここまで、日本の企業が行うフェアトレードについて3つ紹介してきました。

最後に、私たちができる3つの身近な取り組みを説明します。

フェアトレード認証ラベルがついた商品を選ぶ

私たちが生活していく中で一番簡単にできることは、フェアトレード認証ラベルがついた商品を購入することです。

フェアトレードとして認証された商品はフェアトレードジャパン公式サイトにて、一覧となっています。

みなさんも一度目を通してみてはいかがでしょうか。

フェアトレードジャパン公式サイト▼
https://www.fairtrade-jp.org/

各企業が販売するフェアトレード商品を買う

味の素AGF株式会社や、日本生活協同組合連合会のようにフェアトレードに取り組む企業は数多く存在します。そして各企業の取り組みは公式ホームページにて掲載されているため、私たちはどの商品がフェアトレード商品であるか調べることができます。

同じ商品を買う場合でもフェアトレード商品を購入することで、発展途上国に住む生産者・労働者の生活改善に貢献できます。

買い物に行く前に、各企業の公式サイトを確認してみることもおすすめです。

普段のコーヒーをフェアトレード商品に変えてみる

みなさんが毎日飲んでいるコーヒーはフェアトレード商品のものでしょうか。全日本コーヒー協会の調査によると、2020年におけるコーヒーの消費量は43万トン以上で、一人1週間あたりのコーヒーを飲んだ杯数は11.5杯でした。

この膨大な量がすべてフェアトレード商品であれば、発展途上国に住む生産者・労働者の生活改善に大きく貢献できます。

毎日フェアトレード商品のコーヒーを飲むのは難しいかもしれませんが、少しずつ取り入れていくことでフェアトレードの目標達成の手助けをしてみませんか。

まとめ

フェアトレードは発展途上国に住む生産者・労働者の生活改善や自立を支援するという点において、SDGs1〜17すべての目標に関連していることがわかりました。

味の素AGF株式会社や日本生活協同組合連合会などの企業では、環境や人を考慮した取り組みを行うことで、フェアトレード目標達成に向けて貢献しています。

私たちの生活内においても、フェアトレード商品を購入するなどフェアトレードに貢献できることがあります。まずはできることからはじめてみませんか。

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