SDGsの理念を持ちつつ地方創生に取り組む地方自治体を選定する「SDGs未来都市」をご存知ですか?
このSDGs未来都市は、地域の活性化や、環境や住民に優しい暮らしを推進できるのではないかと注目を集めている取り組みの1つです。
今回は、そんな「SDGs未来都市」の詳しい意味や選定されるメリット、実際に2021年に選定されたSDGs未来都市の一覧をご紹介します。あなたのお住まいの地域が選ばれているかどうか探してみるとともに、選出されている自治体の取り組みから今後の自分の住む町の在り方を考えてみてください。
見出し
SDGs未来都市の概要
SDGs未来都市とは
SDGs未来都市とは、SDGsの理念に沿った基本的・総合的な取り組みを推進しようとする都市・地域の中から特に、経済・社会・環境の3側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高いとして選定された都市と地域です。
SDGs未来都市の選定は内閣府地方創生推進事務局が主催しており、毎年30都市程度を選定しています。
さらに選定された都市の中から、より優れた取り組みや先進的な取り組みを行っている自治体は「自治体SDGsモデル事業」として認定されます。
モデル事業に選定されると、1都市あたり最大2.7千万円の補助を受けられるなど、さらなる地方創生やSDGsへの取り組みができる仕組みとなっています。
SDGs未来都市選定の目的は、選定された地域の取り組みや成功事例を国内外へ発信し、日本、そして世界に向けてSDGsの啓蒙活動をすると同時に、持続可能なまちづくりをしていくことです。
選定された都市・地域・事業は自治体SDGs推進関係省庁タスクフォースからの省庁横断的な支援とともに、持続可能なまちづくりを目指します。
SDGsの目標達成のためには、国や企業だけでなく地方自治体による取り組みも必要不可欠となっています。「SDGs未来都市」では官民連携・産官学連携、住民全体のまちづくりが求められ、全体で最適化していくことが求められています。さらに地域内外で多様なステークホルダーと連携していくことも求められます。
これらをまとめると、
経済・社会・環境が両立する取り組み
多様なステークホルダーとの連携
が特徴です。
それぞれが互いに影響して好循環を生み出す取り組みと、最終的に補助金がなくても成り立つことが課題とされています。
SDGs未来都市選定の方法
自治体SDGsモデル事業は、「SDGsの理念に沿った統合的取り組みにより、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を通して、持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い先導的取り組みであって、多様なステイクホルダーとの連携を通し、地域における自律的好循環が見込める事業」と定義されています。
選定は、17の世界的目標と169の達成基準からなるSDGsの理念に沿っているかどうか、そして地方創生に有効な取り組みかどうか、などが基準となっています。
具体的には、開発計画などの提案内容に対し将来性の有無や行政体内部の執行体制などが点数化され、評価されます。さらに委員による参考意見も加味され、最終的な選定が行われます。
2021年度は53の地方自治体が提案をし、そのうち31の自治体がSDGs未来都市、10の事業が自治体SDGsモデル事業に指定されました。
その年により重視する点が異なることもあり、2021年は「脱炭素の取り組みに重点を置くことにした」と担当者も語るなどさまざまな視点が必要となります。
2021年は、東京ではじめてSDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業のW選定となった自治体があったほか、新しい観光の形を提案する自治体が選定されるなど、2020年度から引き続いてのコロナ禍の中でも奮闘する自治体が選ばれる傾向にありました。
SDGs未来都市は、2024年度末までに累計210都市を選定すると名言されています。
2018年からはじまったこちらの取り組みは2022年1月現在までで4回行われ、124都市(125自治体)が認定を受けています。
SDGs未来都市になるメリット
SDGs未来都市になることで、大きく分けて
地方創生
経済的支援
という2つのメリットが得られます。
メリット① 地方創生
SDGs未来都市に選出されることで得られる大きなメリットの1つ目は「地方創生」です。その自治体に住む住民にとってSDGsを意識する良い機会となることや、地方の活性化を促進できるという効果も期待できます。SDGsを促進できる「SDGs未来都市」に選定されるということは、よりよい地方自治体に向かっていっているというひとつの指針になると考えられています。
メリット② 経済支援
また、SDGs未来都市に選出されることで「経済支援」を受けられることも大きなメリットの1つです。補助金などの制度はもちろん、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」にて民間企業とのマッチングを支援してもらえるほか、「地方創生SDGs金融」を推進してもらえます。
SDGs未来都市について詳しくはこちら▼
SDGs未来都市2021 一覧
2021年に選定されたSDGs未来都市の一覧をご紹介します。
令和3年度SDGs未来都市選定都市一覧
- 北海道上士幌町
「だれもが生涯活躍・環境と調和したビジネス展開」プロジェクト - 岩手県一関市
未来を見つめ、世界が憧れるまち いちのせき
~新たな価値の創造による持続可能な地域づくり~ - 山形県米沢市
~果敢な挑戦と創造の連鎖~市民総参加で実現するSDGs未来都市米沢 - 福島県福島市
東日本大震災と原発事故から10年、世界にエールを送るまち ふくしま - 茨城県境町
河岸の街さかいSDGs未来都市計画~誰もが明るい未来を描きながら暮らすことができる街 さかい - 群馬県
ニューノーマルを先導する持続可能で「快疎」な群馬の実現 - 埼玉県
「日本一暮らしやすい埼玉県」へ~埼玉版SDGsの推進~ - 千葉県市原市
SDGsのシンボルとなるまちへの挑戦 - 東京都墨田区
「働きがい」を「生きがい」と「暮らし」につなげるデザイン
~プロトタイプが実装できるまち~ - 東京都江戸川区
海抜ゼロメートルのまち江戸川区が目指す「SDGs=共生社会」先進都市 - 神奈川県松田町
みんなが“ツナガル”まちづくり「誰一人取り残さない!笑顔あふれる幸せのまち 松田」~日本の1万分の1スケールの町からの提案~ - 新潟県妙高市
生命地域妙高プロジェクト
~ Beyond 2030 SDGsゼロカーボンへの挑戦 ~ - 福井県
次世代に選ばれる「しあわせ先進モデルふくい」の実現 - 長野県長野市
誰もが自分らしく活躍できる活気に満ちた長野圏域の創造
~環境共生都市「ながの」の実現~ - 長野県伊那市
SDGs未来都市~創造と循環のまち 伊那市の実現~ - 岐阜県岐阜市
ぎふシビックプライドとWell-beingに満ちたSDGs未来都市 - 岐阜県高山市
世界を魅了し続ける「国際観光都市 飛騨高山」の実現 - 岐阜県美濃加茂市
新たな価値を生み出す里山 リ・デザイン「ローカルSDGs みのかも」 - 静岡県富士宮市
富士山を守り 未来につなぐ 富士山SDGs - 愛知県小牧市
SDGs未来都市こまき
~こどもたちの夢への挑戦を応援し、未来につながるまち~ - 愛知県知立市
多文化共生の未来都市知立を目指して
~日本人・外国人誰一人取り残さない持続可能なまちづくり~ - 京都府京都市
千年の都・京都発!SDGsとレジリエンスの融合
しなやかに強く,持続可能な魅力あふれる都市を目指して - 京都府京丹後市
京丹後市SDGs推進計画~豊かな自然環境と多彩な産業、先端技術が調和した幸福なまちの実現〜 - 大阪府能勢町
地域資源が循環する里山未来都市の実現 - 兵庫県姫路市
世界をつなぐSDGs推進都市ひめじの夢 - 兵庫県西脇市
人輝き 未来広がる SDGs田園協奏未来都市 にしわき
-自然と人が織りなす持続可能な地方都市の挑戦- - 鳥取県鳥取市
サステナビリティ×イノベーションで「農村から真の持続可能なまち」を実現する - 愛媛県西条市
豊かな自然と共生し「ヒト」と「活動」が好循環するまち西条創生事業 - 熊本県菊池市
合言葉は3つの“つ” !「つどう・つながる・つづける」 ~自然を生かし、人をつなぎ、自立発展し続けるまち菊池~ - 熊本県山都町
有機農業で持続可能なまちづくり - 沖縄県
誰一人取り残さない持続可能な「沖縄らしさ」の実現~SDGs推進による沖縄の継承と変革への挑戦~
令和3年度自治体SDGsデル事業 選定事業一覧
- 北海道上士幌町
「スマートタウンで“弱点”転変!かみしほろ幸せ循環」プロジェクト - 千葉県市原市
化学×里山×ひと~SDGsでつなぎ、みんなで未来へ~ - 東京都墨田区
産業振興を軸としたプロトタイプ実装都市~ものづくりによる「暮らし」のアップデート~ - 新潟県妙高市
みんなでつくる生命地域 Redesignプロジェクト - 岐阜県岐阜市
山水と都市が育むWell-beingなライフスタイル創造事業~「つかさのまち・シビックプライドプレイス」が繋ぐ人と人、人とまち~ - 岐阜県美濃加茂市
「ローカルSDGsみのかも」=地域循環共生圏の実現に向けたソーシャルビジネス創出モデル事業 - 京都府京都市
京都の文化が息づく3側面,“みんなごと”で取り組む レジリエンスモデル~SDGsのその先へ~ - 愛媛県西条市
LOVESAIJOポイントを介して「ヒト」と「活動」が好循環する持続可能なまち西条創生事業(「西条市SDGs×西条市DX」の推進による地方創生の実現) - 熊本県山都町
有機農業を核とした有機的な繋がりが広がる町の実現 - 沖縄県
誰一人取り残さない持続可能な美ら島「沖縄モデル」推進プロジェクト
SDGs未来都市の取り組み事例 10選
SDGs未来都市の取り組み事例として令和3年度自治体SDGsモデル事業に選定された10都市の事業を紹介します。
①北海道上士幌町
「スマートタウンで“弱点”転変!かみしほろ幸せ循環」プロジェクト
北海道上士幌町では、次世代高度技術を活用し、スマートタウンの構築を進め、住民生活の利便性を向上することで、だれもが生涯活躍のまちづくりを後押しすることを目標としています。具体的には、再生可能エネルギーの地産地消、EV自動車による空港直行便の導入で関係人口を創出し、地域経済を活性化するという取り組みを行なっています。
②千葉県市原市
化学×里山×ひと~SDGsでつなぎ、みんなで未来へ~
千葉県市原市では、国内有数の石油化学コンビナートを擁する都市として、2050年カーボンニュートラルと持続的発展の両立に向けて、市原発サーキュラーエコノミーを実現することを目標としています。具体的には、里山環境を生かしたまちづくり、子供・若者が希望を実現できる社会の構築など、多様なステークホルダーとの「対話と連携」を通じて誇れる未来をみんなで作る取り組みを行なっています。
③東京都墨田区
産業振興を軸としたプロトタイプ実装都市~ものづくりによる「暮らし」のアップデート~
東京都墨田区では、医療・防災・高齢化など地域課題に応じ、スタートアップと区内企業との連携によりハードウェアを開発し、社会実験として地域に実装することを目標としています。具体的には、地域と企業とのコミュニケーションを通し、暮らしや仕組みの中に「モノ」を埋め込み、社会課題解決と地域内経済循環を促す取り組みを行なっています。
④ 新潟県妙高市
みんなでつくる生命地域 Redesignプロジェクト
新潟県妙高市では、国立公園妙高の自然環境を軸として、市民や観光客などにとって利便性と満足度の高いサービスを再設計し提供することにより、経済・社会・環境の好循環を生み出すとともに、真の豊かさを実感でき、安心して住み続けられる「生命地域 妙高」をつくることを目標としています。l
⑤岐阜県岐阜市
山水と都市が育むWell-beingなライフスタイル創造事業
~「つかさのまち・シビックプライドプレイス」が繋ぐ人と人、人とまち~
岐阜県岐阜市では、人と人、人とまちを繋ぐ拠点「つかさのまち・シビックプライドレスプレイス」から岐阜市の山水の自然と都市の資源を融合した「ヘルスツーリズム」をはじめとする社会・経済・環境の3側面の取り組みを進めることにより、住む人、来る人、働く人それぞれのWell-beingに満ちたライフスタイルの実現と都市の持続的な発展を目指しています。
⑥岐阜県美濃加茂市
「ローカルSDGsみのかも」=地域循環共生圏の実現に向けたソーシャルビジネス創出モデル事業
岐阜県美濃加茂市では、市内のステークホルダーが地域特性を生かして新たな付加価値を創出し、事業化しながら、社会・環境課題解決に取り組むソーシャルビジネスを実現することを目指しています。また、新たに生み出されるキャッシュフローで得られた利益を、市の持続可能性を高めるべく、経済、社会、環境に再投資する自立的好循環を目指しています。
⑦京都府京都市
京都の文化が息づく3側面,“みんなごと”で取り組む レジリエンスモデル~SDGsのその先へ~
京都府京都市では、くらし・支え合い、はぐくみ、伝統と革新、精神性など京都に息づき人々の行動様式の基となる「文化の力」が中心となり、①地域経済の活性化及び新産業の創出・②環境負荷の低減及び自然環境の保全・③市民力の育成の3つの目標のために“みんなごと”で取り組むことを目指しています。
⑧愛媛県西条市
LOVESAIJOポイントを介して「ヒト」と「活動」が好循環する持続可能なまち西条創生事業(「西条市SDGs×西条市DX」の推進による地方創生の実現)
愛媛県西条市では、「 LOVESAIJOポイント」「SDGsingメーター」を介して多くの活動人口が年齢や居住地を超えて繋がり合うとともに、市民総参加型による自発的な環境行動の促進、少子高齢化の影響を受ける地域社会の持続可能性を高める活動が活性化することで、「ヒト」と「活動」が好循環する仕組みを確立することを目指しています。
⑨熊本県山都町
有機農業を核とした有機的な繋がりが広がる町の実現
熊本県山都市では、化学合成農薬・化学肥料に依存しないカーボンニュートラルな有機農業を推進し、付加価値の高い有機農業やジビエの利用推進などの展開をはかり、「山の都ブランド」の確立を目指しています。また、美しい農村景観を次世代へ継承し、将来にわたって豊かな自然を守る持続可能な山都町を実現することも目指しています。
⑩沖縄県
誰一人取り残さない持続可能な美ら島「沖縄モデル」推進プロジェクト
沖縄県では、SDGsを推進するプラットフォームを立ち上げ、さまざまなステークホルダー間の連携強化とマッチング機会創出を図ることを目指しています。具体的には、産学官連携の推進体制に基づき、離島ならではの課題を解決する沖縄らしい持続可能な社会の実現に向けて、エネルギーや食糧などの地域資源が域内循環する循環型システムの確立に先駆的に取り組んでいます。
まとめ
今回は未来都市についての基礎知識と未来都市一覧、そして未来都市の行なっている取り組みについてまとめました。
あなたの住んでいる地域は未来都市に入っているでしょうか。もしまだ未来都市に選定されていなければ、どのようなSDGsの取り組みができるかを考えてみることが次の未来都市に選出される第一歩になるかもしれません。
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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SDGs CONNECT ライター。ジェンダーと教育を中心に幅広く勉強中です。趣味はサイクリングと映画鑑賞。記事を読んだみなさんが、社会にポジティブな影響を与えられますように。