近年、世の中にはさまざまな形のSDGsの取り組みがあります。
開発途上国を直接支援したり、国内にある社会問題に取り組んだり、環境問題への対策として商品そのものに工夫をしたりとSDGsの取り組みは多種多様となっています。
実はこの取り組みの多くは「デザイン」の観点から見ることができます。
装飾などの見た目にフォーカスした商品以外でデザインとSDGsはどう関わっているのか。
今回はSDGs×デザインについて徹底解説します。
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そもそもデザインとは
日常生活でよく耳にする「デザイン」という言葉。私たちは「モノの色や形による造形表現」という意味でデザインという言葉を使用することが多いですが、実は「デザイン」の定義は大きく分けて2つあります。
【引用】広辞苑第六版 |
このようにデザインには見た目などの意味に加えて、「調査や発想を含む全体の設計・企画」という意味も含まれています。
これまでの日本では「デザイン=見た目」のイメージを持つ人が多かったのですが、近年では「生活デザイン」といわれるように、構成要素の計画や設計、企画を決定する行為も含めて「デザイン」として認知されはじめています。
実際にグッドデザイン賞などを主催している公益財団法人日本デザイン振興会でも、デザインは有形に留まらず「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する」この一連のプロセスをデザインと考えていると公表しています。
今回取り上げるSDGsにおけるデザインも、見た目などの造形だけでなく、そこに至るまでの設計や企画も含めたデザインも織り交ぜながら紹介していきます。
SDGsとデザインを絡める必要性
全世界で共通言語として発信しやすい
国連サミットで採択されたSDGsは世界中で達成されるべき目標です。そのため言語や文化が異なる国家間でも、共通認識を持てるSDGsへの取り組みが必要です。
デザインを有効活用することで、色や形などの造形表現で世界中の誰にでも正しく意思を伝えられ、さらにそのプロセスも世界に向けて発信できます。
ユニクロの「RE.UNIQLO」という取り組みを例にデザインが全世界で共通言語となっているという実例を見てみましょう。
まずは造形表現のデザインの観点で「RE.UNIQLO」のロゴを見てみましょう。
左側に描かれているマークは「ユニバーサルリサイクルシンボル」といい、通称「リサイクルマーク」とも言います。ユニバーサルという言葉からも分かるとおり、このマークは世界共通のマークであるため、国や地域が違っていても、このマークを見ただけで「リサイクルの取り組みをしている」と消費者から認知を得ることが出来るのです。
この取り組みは設計面から見ても、全世界へ発信できるものになっています。
そもそもこの取り組みは着なくなった服を店舗で回収し、リユースし、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界中のNGO・NPOとともに、難民キャンプなど、服を必要としている世界中の人たちに届け、リユースできない服は燃料や防音材としてリサイクルする活動です。
この取り組みは貧困問題への対策に加えて、環境問題への対策も掛け合わせたものです。まさにアパレル小売の大手であり、グローバル展開しているユニクロだからこそできる取り組みだと言えるでしょう。そうした背景も踏まえ、ユニクロを軸にデザインされた取り組みと言えます。
無意識的に社会課題解決を考えさせやすい
デザインには「造形表現」「企画・設計」という2つの意味がありますが、中には企画・設計などの無形のデザインを通して、造形表現などの7有形のデザインに落とし込んでいくタイプもあります。
こちらはセブン&アイホールディングスを例に見ていきましょう。
セブン&アイホールディングスでは環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』と呼ばれるプラスチック削減やCO2削減など環境負荷の低減を推進する目標が策定されています。これはまさしく「社会課題解決に貢献したい」という思いからなる企画・設計を経た結果であると言えます。
この企画・設計を経て、セブン&アイホールディングスでは、ペットボトルが原料の繊維を使用した肌着という「有形のデザイン」が施された商品を販売しています。
消費者が身近に感じる多くのデザインは「有形」のデザインです。しかしそのデザインされた製品を使用することで、設計面から見たデザインを無意識的に認知し、思考させることができます。
関連記事:GREEN CHALLENGE 2050って?セブンイレブンとSDGsのつながりとは?
根本的な課題を考察することに繋がる
これは特に「プロセス面のデザイン」視点での話しになりますが、1つの思いから何かをデザインしようと考えたときに「そもそも」という観点が非常に重要になってきます。
例えば「地球温暖化対策」に対してなにか企画したいと考えたときに、まず始めに「そもそも地球温暖化の原因は何だろう」というところに遡って考えていきます。そこからさらに「そもそもなぜ二酸化炭素は増加しているのか」など「そもそも」を遡って考えていくことで根本的な課題を解決することに繋がっていくのです。
プロセスを重視するデザインだからこそ、意外と抜けがちな根本の問題に向き合うことで、表面的な活動ではなく、一貫した軸を持って取り組みを企画し、実行し、形にしていくことができます。
SDGs×デザインで注意する点
どのゴール・ターゲットに通じるデザインなのかを明確にする
SDGsをデザインと絡めていく上で、最も重要なことは「何をテーマにするか」という点です。
SDGsには17のゴールと169のターゲットがありますが、一体どのゴール・ターゲットに向かって設計・企画を進めるのかを明確に定めなければなりません。
デザインにおいて設計・企画が重要視されている以上、軸がぶれてしまうと信憑性も薄れ、何を目的にSDGsを設計しているのか分からなくなってしまいます。
デザインを通してSDGsと関わる上で「なんとなく環境にいい取り組み」と曖昧にするのではなく、どのゴール・ターゲットに通じるものであるかは非常に重要です。
デザインによる効果をイメージする
実際にデザインを通してSDGsの取り組みを設計したら、その設計したものがどのように世の中に作用されていくのかという視点が重要です。
せっかく軸が明確になっていても、企画した取り組みが狙った方向性に動いていかなければ意味がありません。
設計・企画したデザインがどのように作用するのか、軸とぶれずに実装できるのか。企画を打ち出し、製品やサービスとして動き始めた後の展開まで予測して取り組みを進めていくことが重要です。
SDGs×デザインの取り組み
SDGsデザインインターナショナルアワード
九州大学大学院芸術工学研究院は、SDGsに対して、デザインの領域で貢献していく『SDGsデザインユニット』を2018年4月に設立しました。
SDGsデザインユニットが主催し、2019年から開催しているのが「SDGsデザインインターナショナルアワード」です。
デザインに関心のある国内外の高校生、専門学校生、大学生、大学院生を対象に、色や形を伴うデザインに限らず、サービスや社会の仕組みのデザインも含め、SDGsの目標達成に貢献できる、実現可能性のある提案を募集しています。
今年度は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、「カーボンニュートラル」の実現に向けたデザインアイデアを募集し、金賞にはバングラデシュ工科大学の学生が設計した、湿地帯の都市化とそこにおける天然資源の利用を活性化させる設計デザインが選ばれました。
SDGsとデザインを深く絡めて練られた案を若者が提案することで、今後の持続可能な社会を担っていく世代が中心となって今後の世の中について深く考えていくことができます。
詳しくはこちら:SDGs Design International Award 2021
さいごに
今回はSDGs×デザインについてさまざまな事例を踏まえながら紹介していきました。
そもそもデザインとは何か、という視点で考えてみると意外と知らないデザインの知識について触れられたのではないでしょうか。
一貫性のある取り組みを行うにはデザインの考え方は必須とも言えます。
ぜひデザインの考えを取り入れてSDGsの取り組みを実践してみてください。
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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SDGs CONNECTライター。マーケティングに興味があります。十人十色の社会を目指して、多様な情報・価値観を発信していきます。好きなキャラは綾波レイとヴァイオレット。