【更新日:2021年5月31日 by 佐野 太一】
持続可能な社会に向けて、多くの企業がSDGsにまつわる活動を行っています。その活動をまとめたSDGsレポートからは、数字だけでなく、企業理念や目指すべきビジョンが伺えます。
この記事では、そんなSDGsレポートの読み方や作り方を、事例とともにわかりやすく解説していきます。
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そもそもSDGsとは
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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SDGsレポートとは
SDGsレポートとは、企業のSDGs活動をまとめた情報とそれに伴う企業の財務状況などを合わせた報告書の一種です。今まではCSRレポートやサステナビリティレポートが主流でしたが、ESG投資のトレンドやSDGsが社会に浸透してきていることを背景に、このレポートを導入している企業が増えています。
SDGsレポートには、ステークホルダーに対して、企業価値を企業理念や中長期のビジョンとともに伝えられるメリットがあります。
近年では、子会社での不当な雇用やジェンダー格差など、事業以外の多くの面からも企業に対する責任が求められています。ステークホルダーからの期待に答える上で、事業内容の透明性を高めることは非常に重要です。
このとき、株主など限定されたステークホルダーしか閲覧しない決算報告書等だけではなく、ビジョンを持って貢献している姿を示すことができるSDGsレポートは有効な手段となります。
SDGsレポートの内容
SDGsレポートは一般的に次のような構成になっています。
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これらの内容には、普段消費者がサービスを受けているときには感じ取りにくい企業の信念などが記されているため、投資家やビジネスマンだけでなく、多くの人々が読んで損のないものだと思います。
SDGsレポートの読む3つのポイント
SDGsレポートを読む上で重要な3つのポイントをお伝えします。
①ビジョンや経営理念を確認する
SDGsレポートを通して企業のSDGsの取り組みを知る上で最も重要なのは、企業がどのようなビジョンや経営理念を掲げているのかを確認することです。
企業のビジョンや経営理念を確認することで、SDGsへの取り組みを通してどのような世界を目指しているのかがわかります。
逆に言えば、企業の経営理念やビジョンとかけ離れたテーマのSDGsの取り組みを行っている企業は、企業のイメージアップのためにSDGsに取り組んでいる可能性もあります。
②企業が着目する課題を確認する
SDGsでは、17の目標(ゴール)が掲げられています。この17のテーマはある程度の網羅性がありますが、一企業が取り組むには壮大すぎて、活動が曖昧になってしまいます。
そこで、各企業のマテリアリティ(企業が掲げる重要課題)を確認することで、その企業がどんな社会課題を解決するためにSDGsに取り組んでいるのかがわかります。
課題の具体性を確認することで、その企業のSDGsの取り組みの理解度が上がるため、まずはマテリアリティを確認するようにしましょう。
③SDGsの取り組みを確認する
SDGsレポートのメインとなるのは各企業のSDGsの取り組みです。
ビジョンや経営理念、マテリアリティを確認した上で、SDGs達成のためにどのような活動に取り組んでいるのかを確認することで、その取り組みの重要性を理解できるでしょう。
SDGsの取り組みでは、SDGsに取り組んでいるように見えて、実態が伴っていない状態を表す「SDGsウォッシュ」も散見されます。
手広くSDGsに取り組むよりも、各企業がテーマを掲げてSDGsに取り組んでいるのかをチェックすることがおすすめです。
上記のポイントが最低限抑えられたSDGsレポートは、社会に対する責任感や貢献する意欲がある証拠であり、消費者としては信頼性の判断の根拠として使えると考えられます。
SDGsレポートの書き方
企業や活動団体の方で「SDGsレポートを作成したいけど、どう作れば良いかわからない」という方も多いと思います。そこで今回はSDGs CONNECT編集部によるSDGsレポートの書き方を紹介したいと思います。
step1:自社の経営理念、ビジョンをまとめる
まずはじめに行うのが、自社の経営理念とビジョンをまとめることです。SDGs活動を行うに至った理念をまとめることで、一貫したレポートを作成することができます。またこれらを掲示することで、レポートを読むステークホルダーや投資家に向けて企業の広報的活動も兼ねることができます。
step2:自社のマテリアリティをまとめる
マテリアリティとは、自社にとっての「重要課題」のことです。具体的には、企業活動による社会課題への影響度合いを評価し、優先順位をつけ「企業としてそれぞれの課題をどの程度重要と認識しているか」を分かりやすく示すものです。
このマテリアリティを示すことで、自社が考える解決すべき課題とは何か、そのためにどのような価値を提供できるかが明白になります。
step3:事業を通じて貢献している目標とマテリアリティをまとめる
自社の本業がどのような課題を解決するものとなっているのか、どれだけ効果的および成果を挙げているのか、またその貢献方法はどのようなものなのかなど、自社の取り組みをできるだけ透明性を高く紹介できるようにまとめましょう。また、ここでは自社の活動を一方的に宣伝するのではなく、SDGsの目標そのものへの理解度も高めておかなければ、より質の高いレポートにはなりません。
step4:事業領域以外でSDGsに貢献している項目とマテリアリティをまとめる
step3で紹介した活動以外にもSDGsに貢献しているものがあれば、ここで紹介しましょう。例えば、「目標5『ジェンダー平等を実現しよう』に貢献すべく、女性社員の積極登用をしている」などが挙げられます。このとき、関連目標の説明も添えた方が良いでしょう。
step4:レポートにまとめる
最後に今までまとめてきた内容を、レポートとして作成しましょう。このとき実際の活動中の写真等を挿入した方が良いでしょう。SDGsはあらゆる人々が協力して達成すべき目標であるため、投資家やビジネスマンだけでなく、子どもや年配の方でもわかりやすいように作ることを心がけましょう。
SDGsレポートの例
HITACHI
2018年に策定された日立のSDGsレポートは非常に読みやすく、かつ企業の思いが伝わってくるものです。SDGsのゴールだけでなく、自社でも具体的な数値を用いて、CO2排出量の削減や水・資源利用効率の目標を建てています。
また日本だけでなく、あらゆるステークホルダーへの貢献を意識して、英語版のSDGsレポートも作成していることからも、国際社会をスタンダードとしている姿勢が見受けられます。
参考:日立SDGsレポート
大和証券
大和証券は2002年から持続可能性に言及した報告書を作成しています。それが持続可能性報告書とCSR報告書、そしてSDGsレポートです。
特徴的なのは、各ステークホルダーごとに分類して、それぞれに対する企業の姿勢を示している点です。ステークホルダーとして一括りにするのではなく、それぞれの状況に合わせて明確な情報を提示することで、企業の透明性が高くなっています。
三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループでは、サステナビリティレポートとして2006年から報告書の作成を行っています。三井住友フィナンシャルグループはその企業形態から様々な分野でSDGs活動を広げています。
それがわかるのが評価・認証実績です。このサステナボリティレポートはより報告書としての色が強く、外部機関からの評価・認証実績も掲載されています。ここでは様々な機関からの評価が掲げられており、三井住友フィナンシャルグループが取り組みを行っているより詳細なシーンを垣間見ることができます。
参考:三井住友フィナンシャルグループ サステナビリティレポート
まとめ
SDGs活動は社会だけでなく企業にもメリットがあります。企業も消費者も、SDGsレポートを通してこれからの社会に向けた理解を深めていただければ幸いです。
SDGs CONNECTではSDGsにまつわる情報を日々発信しているので、本記事を読んでさらなる興味が湧いた方は関連記事から他の記事もぜひご一読下さい。
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