カーボンニュートラルに向けて木材や木質バイオマスを活用するメリット

#SDGs#エネルギー#脱炭素(カーボンニュートラル) 2023.04.19

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カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの「排出量」と、森林などによる温室効果ガスの「吸収量」が同じになることです。

森林には二酸化炭素を吸収する機能をはじめ、多くの利点があることから、近年、カーボンニュートラルに向けて国産の木材を活用することが注目されています。日本は先進国の中でも有数の森林国で、豊富な森林資源があります。

とくに戦後は木材不足のため、全国で多くのスギが植林され、多くの人工林ができました。しかし、面倒を見切れない「放置される人工林」も増加しており、これ以上増やさないことも課題です。

この記事では、カーボンニュートラルに向けた日本の木材の使い方や、木材や木質バイオマスを活用するメリットについて紹介します。

【この記事で分かること】

カーボンニュートラルに向けて木材を活用することが効果的な理由  

木材
木材は生長過程で二酸化炭素を吸収し、炭素として蓄えられます。そのため、木材を使用することは、二酸化炭素の排出量を削減するうえで非常に効果的です。

また、木材は再生可能な資源であり、森林を適切に管理することで継続的に利用できます。このため、木材を使うことで化石燃料に依存することなく、持続可能な社会の実現に近づきます。

さらに、木材は燃焼時に二酸化炭素を放出するため、エネルギー源としても利用できます。この場合も、化石燃料に比べて二酸化炭素の排出量が少ないため、環境負荷を削減できます。

以上のように、木材を活用することは、カーボンニュートラルに向けた取り組みに非常に効果的です。加えて、エネルギー供給の安定化にもつながります。日本はエネルギー資源に乏しく、エネルギーのほとんどを輸入に頼っています。しかし、純国産の木材を使用することで、国内のエネルギー自給率を上げることができます

木材を活用するメリット8選

木材
ここまでカーボンニュートラルに向けて木材を活用することが効果的な理由について解説していきました。

続いて、木材を活用するメリットを8つ紹介していきます。

①半永久的に再生産できる

木材は再生産が可能であるため、持続可能な資源として知られています。森の木々を切り出しても、再生産により新しい木々が生えてくるため、木材を使い続けることができます。このように、木材は再生可能エネルギー源の1つであり、他の多くのエネルギー源よりも環境に優しい資源です。

②国土保全・土砂災害防止等の機能がある

森林には地盤を保持する機能があります。森林には多くの木々が根を張っており、これらの木々が地盤をしっかりと保持し、地滑りや崩落などの土砂災害を防止する役割を果たしています。また、森林には多くの樹木があり、これらの樹木が地表面から雨水を吸収し、土砂流出を防止する役割も果たしています。

③成長過程から木材に至るまで多くの炭素を固定する

木材は成長過程から木材として使われるまで、大量の二酸化炭素を吸収して固定するため、炭素を固定する役割もあります。樹木は光合成によって二酸化炭素を吸収し、水と太陽光を利用して炭水化物を合成するのです。

吸収された二酸化炭素が木材に蓄えられ、炭素が固定されるため、木材を使うことで再生可能な資源を利用し、化石燃料から得られるエネルギーの使用量を減らすことができます。また、森林を育てることで炭素固定の効果を持続できます。

さらに、建物などに使用される木材は、建物の寿命が終わった後も繰り返し利用されることで、炭素を固定し続けます。廃棄物として処理される場合にも、炭素の再利用が可能です。

④製造や加工に要するエネルギーが少ない

木材を製造や加工するためには、比較的少ないエネルギーが必要です。木材は天然素材のため、自然から提供されるエネルギーを利用して生産されます。また、比較的軽く、運搬や加工にかかるエネルギーコストが低いため、他の素材に比べてエネルギー効率が良いとされています。

さらに、木材は加工しやすいため、加工に必要なエネルギーが少なくてすむという利点もあります。加工過程での廃棄物も、再利用やバイオマスとしてエネルギー利用することができ、廃棄物の処理にかかるエネルギーコストを削減することも期待されています。

⑤湿度の調整機能がある

木材には、湿気の多い環境では水分を吸収し、乾燥した環境では水分を放出するという性質があります。このため、木材は湿度調整機能を持ち、室内の湿度を調整するのに役立ちます。

例えば、夏場には木製品が湿気を吸収してくれ、部屋の湿度を下げてくれます。また、冬場には暖房によって室内の湿度が下がることがありますが、木製品が水分を放出するため、部屋の湿度が下がります。

そのため、木材を使った建築物は通気性が高く、湿度調整効果も期待できます。特に、木材の柱や梁などが露出している建築物では、木材が湿気を吸収し、放出することで湿度が調整されます。これにより、湿気やカビの発生を防止し、快適な居住環境が保てるのです。

⑥高い断熱性能がある

木材は断熱性能が非常に高い素材として知られています。木材自体が断熱材として機能するため、木材を使った建築物や家具は高い断熱性能を発揮します。木材が微小な気孔を持ち、その空気層によって熱を遮断するためです。高い断熱性能を発揮するため、冬場の暖房費や夏場の冷房費を抑えることができます。

また、木材は比熱が小さく、熱を蓄えにくいため、室内の温度変化にも敏感に反応し、快適な室内環境を保ちやすいとされています。

さらに、木材を使った建築物や家具には、空気の流れを促す通気層を設けることができるため、湿気や汚れを排出し、室内を清潔に保てます。

⑦地産地消・地域の活性化にも貢献する

木材は、その生産から運搬までの過程で多くの人々が関わります。また、木材を加工する際には、様々な技術や知識が必要とされるため、木材を活用することで、地域の産業の発展や技術の継承につながります。

さらに、木材を活用した建築物や家具に地元の木材を使うことで、地元産業や地域の文化を維持・活性化させるととともに、環境負荷の軽減にも貢献できるのです。

⑧精神的・身体的健康にもつながる

木材を取り囲む緑や自然の中にいることは、人々の精神的・身体的健康につながると考えられています。同様に、木材を使った家具や建築物の素材が持つ自然な温かみや風合いは、人々の心を癒してくれるといいます。

さらに、木材を使った森林浴やウッドランドアート、木工教室なども、自然との触れ合いを通じて人々の心身の健康を維持してくれるのです。木材を活用することで、人々が自然とのつながりを感じ、ストレスや疲れを解消することができます。

また、木材の成分に抗菌・消臭効果があるため、木材を使用した製品や建築物には、清潔な空気環境を保つ効果も期待されています。

カーボンニュートラルにつながる木質バイオマスの活用

丸太
木質バイオマスは、再生可能なエネルギー源の一つであり、発電や熱供給に利用されるバイオマス発電や、バイオ燃料の原料としても重要な役割を果たしています。

バイオマス発電は、木質バイオマスを燃焼させて蒸気を発生させ、発電機を回して電力を生み出し、同時に蒸気を利用して熱供給を行うものです。また、バイオ燃料のバイオエタノールやバイオディーゼルは、石油由来の燃料に比べて二酸化炭素排出量が低く、エネルギー自給率を高めることが期待されます。

木質バイオマスの活用は、環境負荷が低く、再生可能なエネルギー源であることから、森林の維持や再生を促進することにも繋がります。また、地域の活性化にも大きく寄与し、木質バイオマスの生産や加工、利用によって地元の企業や雇用を生み出すことができます。

関連記事:日本と世界のカーボンニュートラル政策-2050年カーボンニュートラルも解説

木質バイオマスを活用するメリット5選

木材
木質バイオマスを活用することには、下記のように多くのメリットがあります。

①二酸化炭素の排出を抑制、地球温暖化を防止

森林は地球上の二酸化炭素の大部分を吸収し、光合成によって植物体内で固定します。そして、木材を燃やすことで発生する二酸化炭素は、再び森林の成長によって吸収され、新しい木材が作られることで、炭素の循環が繰り返されます。

このように、木材の利用はカーボンニュートラルな特性を持ち、化石燃料の利用に比べて、二酸化炭素排出を大幅に削減でき、地球温暖化防止に貢献できます。ただし、森林を無節制に伐採することは、逆に炭素の排出を増やすため、森林を適切に管理することが重要です。

②廃棄物の発生を抑制

木質バイオマスは、製材工場の残材や住宅解体材など、廃棄物として扱われることが多い素材です。これらの木質バイオマスを有効に活用することで、廃棄物の削減に貢献し、循環型社会の形成に役立てることができます。

③エネルギー資源としての積極的な利用

日本はエネルギー需要の多くを輸入された化石燃料に頼っています。しかし、化石燃料の輸入には外部要因によるリスクがあります。これに対して、バイオマスエネルギーは国内で生産されるため、国産エネルギー源の確保につながります。

④森林の適切な整備への寄与

森林は国土の保全や水源のかん養などの様々な機能を持っています。しかし、適切な森林の整備がなされていない場合、森林はその機能を十分に発揮できません。間伐や伐期を迎えた樹木を伐採することで、森林の生態系の健全性を保ちつつ、木質バイオマスを取り出すことができます。

⑤山村地域の活性化

森林や山村地域における木質バイオマスの利用は、新たな産業や雇用の創出に繋がり、地域経済の活性化に貢献することが期待されます。

このように、木質バイオマスには、環境、社会、経済面において多くのメリットがあるため、近年、注目が集まっているのです。

カーボンニュートラルに向けた森林整備のあり方|放置林問題への対応も課題

森林
日本の森林の放置状態は不良林化やリスクの増加を招いてしまうため、適切な森林管理と地域資源の活用が必要になります。また、純国産の木材を活用することで輸入に頼らない森林経営が可能であり、カーボンニュートラル¹を目指す社会に貢献することができます。これらの取り組みにより、森林の健全性を保ち、カーボンニュートラルを目指す社会を実現することが期待されています。

¹カーボンニュートラル:二酸化炭素(CO2)の排出量と同等以上に二酸化炭素を吸収・削減することで、気候変動による温暖化を防止する状態。

関連記事:カーボンニュートラルとSDGsの関係-企業の7つの取り組みも解説

カーボンニュートラルに向けた木材の活用事例3選

丸太
ここまで、カーボンニュートラルに向けた森林整備のあり方について紹介していきました。

次に、カーボンニュートラルに向けた木材の活用事例を3つ紹介していきます。

愛知県|循環型林業による森林整備と民間建物の木造・木質化

愛知県

引用:愛知県

愛知県は、循環型林業²による森林整備と民間建物の木造・木質化に取り組んでいます。森林は炭素貯蔵効果を持ち、木材の利用によっても炭素貯蔵効果が期待されます。また、木材の製造や加工に要するエネルギーが少なく、二酸化炭素の排出量を抑えられます。さらに、木材を燃料として利用することで化石燃料の使用を抑えることができます。

²循環型林業:森林資源を「伐る・使う→植える→育てる」の様に、持続的に利用することで、生態系の保全や地球環境の改善を図る林業。

引用:カーボンニュートラルに貢献する森林と木材利用

東京都|「東京の木 多摩産材」を活用し木造・木質化

東京都

引用:東京都

東京都が所有する森林から得られる木材「東京の木 多摩産材」を活用することで、森林保全と木材利用の両面から効果を発揮することを目指しています。

また、中・大規模建築物における木造木質化を実現するために、設計段階での支援を行う新たな取り組みを開始することも発表しています。この取り組みによって、木材利用を拡大し、全国各地の木材利用促進や森林整備につながる好循環が生まれると期待されています。

引用:国産木材を活用した建築物の設計を支援します

神奈川県|県産木材を使った製品開発や利用促進

神奈川県が進める「かながわ木づかい運動」は、県産木材の普及PR活動や県産木材を使った製品開発、利用促進などを通じて、県民に木材利用に関する正しい理解をしてもらうための取り組みです。これにより、県産木材の需要拡大に繋がり、森林を健全に保ちながら、地域経済の活性化にも繋げています。

また、森林を守るためには間伐が必要不可欠であることから、かながわの森林を活用することで、間伐材の利用促進も進めています。これにより、かながわの森林を循環させ、緑豊かな自然を守りながら、持続的な森林利用に取り組んでいます。

引用:木を使ってかながわの森を守り・育てよう

関連記事:カーボンニュートラルへの取り組み事例8選-企業と自治体の対策を解説

関連記事:日本と世界のカーボンニュートラル政策-2050年カーボンニュートラルも解説

カーボンニュートラルに向けた欧州の木材活用の現状

森林
欧州委員会が掲げる森林戦略に関するこの戦略は、健全に成長する多様かつ強靱な森を作ることで、気候と生物多様性に関する目標の達成や、地方の発展、持続可能な森林バイオエコノミーを実現することを目的としています。

この戦略では、分権的な計画や管理の戦略的アプローチが採用され、森林が多様な役割を果たせるように計画されています。また、この戦略は、欧州グリーンディールの目的を中心に据え、森林、林業者、森林に基づくバリューチェーン全体が関わることが想定されています。

引用:【海外情報】「EU 森林戦略 2030」について

まとめ

丸太
今回は、カーボンニュートラルに向けた日本の木材活用の現状や、木材や木質バイオマスを活用するメリット、カーボンニュートラルに向けた木材の活用事例について解説しました。

木材の活用には、多くのメリットがあります。さらに、日本は3分の2が森林地帯であり、国産の木材を活用することで国内経済の活性化にもつながり、カーボンニュートラルを目指す上で大きな一歩となるといえます。今後の木材の活用方法にも注目してみましょう。

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