企業のLGBT取り組み事例3選-双方のメリットやLGBTフレンドリー企業も紹介

#LGBTQ#ジェンダー 2023.01.30

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会社がLGBTへ取り組むにはどうすればよいのでしょうか。

LGBT当事者は職場においてさまざまな困難に直面しています。会社側の取り組みによって当事者だけでなく、会社全体の成長につながる時代に突入しています。

今回は企業向けのLGBTへの取り組みを3つ紹介すると共に、LGBTについてやメリット、LGBTフレンドリー企業の事例まで網羅的に解説します。

▼SDGsについて詳しくはこちら

 

【この記事でわかること】

LGBTとは

最初に、LGBTについて説明します。

セクシャルマイノリティを決める要素

LGBTを理解する上で大切なのがセクシュアルマイノリティを決める要素です。この要素は自分自身がセクシュアルマイノリティを自認する場合に必要です。

セクシュアルマイノリティを決める要素を説明します。

身体の性

身体の性とは、生まれた時に身体の特徴から、「女性」「男性」に割り当てられる性別のことを言います。

性自認

性自認とは、自分の性別をどのように認識しているのかという要素です。

自分を男性と認識している、女性と認識している、どちらでもない人、考え中の人、どちらかの性に決めたくない人などさまざまです。

性的指向

性的指向とは、恋愛感情や性愛感情がどこに向いているかという要素です。

異性を好きになる人、同性を好きになる人、どちらの性も好きになる人、相手の性別にこだわらない人など様々です。

LGBTの意味と定義-それぞれの頭文字について

LGBTとは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字をとったもので、セクシュアルマイノリティ(性的少数派)を表す総称の一つです。

Lesbian(レズビアン)

レズビアンとは、性自認が女性で性的指向も女性であるセクシュアルマイノリティです。

日本でよく使われる「レズ」という呼び方は、ネガティブな意味も込められていることがあるため、「レズビアン」「ビアン」と呼ぶことが主流です。

Gay(ゲイ)

ゲイとは、性自認が男性で性的指向も男性であるセクシュアルマイノリティです。

欧米では同性愛者をまとめて「ゲイ」と呼ぶので、「レズビアン」の方も「ゲイ」と名乗る方もいます。

Bisexual(バイセクシュアル)

バイセクシュアルとは、恋愛感情や性的指向が男女どちらにも向くセクシュアルマイノリティです。日本語では「両性愛者」と表現されます。

バイセクシュアルは、生まれた時の身体の性や性的指向もさまざまです。自分が異性を好きになるのか、同性を好きになるのか、どちらの性も好きになるのか、性別によって好きになる人を決めたくないなどがあります。

バイセクシュアルは、レズビアンやゲイの方とは異なり、性的指向が男性、女性に向いているのが特徴です。そのため、自分の身体の性や、自分が性別をどう認識しているのかは関係がありません。

Transgender(トランスジェンダー)

トランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別と、自分で認識している性が一致していない、自分の性に違和感を持っている方を指します。

トランスジェンダーは身体の性と性自認が一致していない方のことを指すため、「性同一性障害」と混同されることが多いですが、トランスジェンダーは性別に違和感を持っている人を表します。

なぜLGBTに分類する必要があるのか-「性」のあり方はグラデーション

LGBTは、それぞれのセクシュアルが異なる性のあり方を表現しています。セクシュアルを分類することに意味があるのかと思いますが、実はメリットがあります。

それはセクシュアルを分類することで、当事者同士の繋がりが生まれやすく理解を深めやすいということです。

セクシュアルの分類により自分が「どのカテゴリーの存在なんだ」と気づけます。そうすることで精神的な孤独から開放されやすくなるのです。一方、セクシュアルを全て分類することは不可能で、また指標になるだけで分類することに意義はありません。

分類されているセクシュアルは、特徴の一つととらえましょう。自分のセクシュアルをどう感じているのか、そして人のセクシュアルを否定せずに尊重することが大切です。

LGBT以外のマイノリティも存在する-LGBTQやLGBT+とは

LGBT以外にもセクシュアルマイノリティは存在します。

LGBTQ

LGBTQとは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)にQ(クィア、クエスチョニング)をつけたしたものを指します。

「クエスチョニング」とは、自分の性自認や性的指向が定まっていない、または意図的に定めていないセクシュアルのことを言います。

性自認や性的指向を決めない理由としては、

  • 性自認や性的指向を決めていない方が生きやすい
  • まだ決めかねている最中
  • どのセクシュアリティもピンとこない
  • 「わからない状態」が自然

という理由で、クエスチョニングと自認している場合があります。

LGBTのように名前の付いた性を自分に当てはめることで生きやすくなる人もいればそうでない人もいます。そのために「クエスチョニング」があるのです。

「クィア」とは、既存の性のカテゴリに当てはまらない人の総称です。もとは英語で「不思議な」「風変わりな」という意味を持ち、同性愛者への軽蔑した意味を持っていました。しかし、現在ではセクシュアルマイノリティの当事者からポジティブな意味を込めて使われるようになりました。

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LGBT+

「LGBT+」は、「LGBT」以外の分類できない性別を含んでいることを表します。

世界にひろがっているセクシュアルマイノリティは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだけでしょうか。

世界中には様々な人がいて、人の数だけセクシュアルがあります。現在表現されているLGBT以外にも表現出来ていないセクシュアルも存在します。

「LGBT+」という表現は、それらすべてを表現し全てのセクシュアルマイノリティに配慮を示す表現です。

SDGsとLGBTの関係性

LGBTを理解することで、SDGs目標を達成することに繋がります。

LGBTとSDGsの関係を詳しく簡単に説明します。

目標5 ジェンダー平等を実現しよう

「ジェンダー平等を実現しよう」は、SDGsの5つ目のゴールとして挙げられています。近年、同性愛者やジェンダーの多様性が認められている傾向があります。

ジェンダー問題は、世界中で解決すべき問題としてSDGsの目標に挙げられています。

▼sdgs5について詳しくはこちら

LGBTに関する用語について紹介

つづいて、LGBTに関連する用語を紹介します。

Ally(アライ)とは

Ally(アライ)とは、LGBTを支援する人のことを指します。

セクシュアルマイノリティの方をそうではない人が支援し、差別をなくそうと働きかけることです。セクシュアルマイノリティの方への嫌がらせや、好奇の目で見られることは少なくなりましたが、ゼロにはなっていません。

日本では、2017年に男女雇用機会均等法で、セクシュアルマイノリティの方に対する差別的な言動もセクハラであるとされました。

このような制度だけでなく、アライを増やすことでセクシュアルマイノリティの方に過ごしやすい環境づくりができます。

LGBTフレンドリーとは

LGBTフレンドリーとは、LGBTを差別することなく友好的な関係を築く態度を指します。

LGBTの認知が増えてきて、支援する動きの高まりもあります。支援の動きの高まりに比例して友好的な関係を築く人も増加しています。

SOGI(ソジ)とは

SOGI(ソジ)とは、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字をとった言葉になります。

SOGI(ソジ)は、全ての人が持っている「人の属性を表す略称」です。

SOGIという考え方が押し出されたのは、全ての人の人権が平等・対等であるべきという国際的な風潮が理由です。LGBTのように特定の人のみの課題としてとらえるのではなく、全ての人に関係する課題と捉えられつつあります。

SOGI(ソジ)に関するハラスメントや差別は以前からありましたが、さらに認知度が上がり、ハラスメントを無くす働きが広まっています。

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会社がLGBTに取り組むメリット3選

続いて、会社がLGBTに取り組むメリットについて説明します。

優秀な人材の確保や離職防止につながる

少子高齢化が進む日本では、多くの企業が人手不足で悩んでいます。そこでLGBTに理解のあることを示すことで、より働きやすく「選ばれる企業」になることができます。

また、現在働いている人にとっても安心して働くことのできる要素の一つになります。さらに働きやすいイメージをつくることで、優秀な人材を獲得できます。

企業の価値が上がる

LGBTに取り組むことは、働いている人だけでなく取引先や外部にも良い印象を与えます。
また企業全体のLGBTの知識が増え、理解を深めることでLGBTフレンドリー企業や、LGBTに関係する商品の開発など、新たな利益につなげることができます。

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生産性の向上

LGBTへの取り組みは、性的指向や性自認に関する困りごとを解消し、生産性をあげることに繋がります。

昔より多様性が認められてきた現代でもLGBTに対して、偏見や差別はゼロではありません。さらに偏見や差別により、当事者だけでなく聞いている周りの人も良い気持ちではありません。

そこで、会社内で性的指向や性自認に関する問題を解決することで、安心して気持ちよく働くことができます。周りに理解されていると感じることでモチベーションのあがる方もいます。

様々な人がいることを理解しあい、良い環境で働くことが生産性の向上に繋がるのです。

日本大手企業のLGBTに対する実態

LGBTに対して理解が深まっている中、LGBTの当事者が企業内で生きづらさを感じる場面があります。

LGBTの当事者が生きづらいと感じる場面は、「自分の性自認や性的指向に対して、不平等な扱いやハラスメントを受けている」、「偏見から性別を決められてしまう」ことです。

また、会社でLGBTに関する取り組みを行っている企業は少なく、取り組みを行っていない会社は半分を占めています。

さらに社内でLGBTについてカミングアウトしている割合はとても少ないです。LGBTに該当する人の割合は、日本の3~10%といわれているため大手企業であれば社内に数十人ほどいることになります。

LGBTの協力的な取り組みを行っていない場合、周りの雰囲気などカミングアウトをしたくてもしにくく、生きづらいと感じる状態になっています。

一方で、周りにLGBTの当事者がいなくとも、LGBTに関して知りたいと思う人が多くいます。

LGBTの当事者が生きづらい原因の一つに、周りの偏見や決めつけられてしまう状況があります。LGBTの当事者や非当事者が過ごしやすくするためには、社内の取り組みや周りの環境づくりが大事になっています。

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会社ができるLGBTへの取り組み5選

続いて、会社ができるLGBTの取り組みについて説明します。

社内規定を明確にする

社内規定では基本的に、国籍や年齢、性別などと同じように性的指向や性自認について明記されています。それらを明記することで、差別やハラスメントを禁止します。

差別やハラスメントの禁止を明記されていることで、LGBTに対する姿勢を従業員や外部にも示すことができます。さらに、LGBTに取り組む姿勢を内部や外部にまで浸透させることで、差別や偏見の起こらない状況を作り出します。

社内規定に明記するだけでなく、ホームページの企業理念や社会的責任に記載することで外部に示すことが可能です。

研修を行う

差別や偏見を防ぐためには、LGBTについて理解を深めることが重要です。その方法の一つとして、社内でLGBTの理解を深める研修を行うことが挙げられます。

研修はLGBTに関する理解を深めて差別や偏見を防ぐだけでなく、LGBTへの理解不足を解消する意味もあります。差別意識がなくても、LGBTへの理解不足は相手を傷つけてしまう言動を引き起こすケースが多くあります。

お互いに過ごしやすい環境を作り出すために、理解を深めることも重要です。

相談窓口を設ける

LGBTひとりひとりに寄り添うために、社内に相談窓口を設けている企業もあります。相談窓口は、匿名で相談できるためプライベートも守られ、悩みの解決につなげやすくなります。相談窓口は、LGBTの方にとって心強い場所になります。

同性カップルと婚姻者を同じように扱う

同性カップルも婚姻者と同じように扱う企業が増えています。特に福利厚生でそれが顕著に表れています。

例として「任天堂」を紹介します。同社では、2021年3月にパートナーシップ制度を導入し、婚姻関係に相当する同性カップルを法律上の婚姻と同等に扱うことにしました。

さまざまな個性の人が過ごしやすい環境づくりが進められています。

誰でも使えるトイレや更衣室を設ける

LGBTの中で、トイレや更衣室は大きな問題です。特に、トランスジェンダーの方は、男性用・女性用のどちらを使ってよいのか困ってしまう人もいます。

LGBTフレンドリー企業が設置しているのは「だれでもトイレ」です。「だれでもトイレ」は、性別を問わず誰でも使用することができ、トランスジェンダーの方にとって安心して利用できる環境になります。

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LGBTフレンドリー企業3選

続いて、LGBTフレンドリー企業について説明します。

パーソル-積極的なコミュニティ作り

総合人材サービスを展開する「パーソルグループ」では多様性の理解を深める教育や、Ally(アライ)活動を行うコミュニティ「RainbowPERSOL」をつくっています。セクシュアルマイノリティである、ないに関わらず、誰もが楽しく過ごせる環境づくりを目指しています。

また「私らしいはたらく」をテーマに、LGBTQイベントに参加しています。

さらに、パーソルキャリア株式会社、パーソルチャレンジ株式会社では、「同性パートナーシップ婚制度」を導入しました。これは、同性パートナーも婚姻関係の方と同様の福利厚生を受けることができます。

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富士通-自然にできる「アライ宣言」

株式会社富士通では、多様性を尊重した事業活動「レスポンシブルビジネス」に取り組んでいます。「レスポンシブルビジネス」とは、SDGsの取り組み目標に対して貢献をする企業のことを指します。

富士通では、人権研修や社内へのメッセージ発信など、社内全体へLGBTへの認知や啓発を推進しています。

また、社員に対してAlly(アライ)を広げる取り組みとして、LGBT当事者と話し合いをする「LGBT+Allyミーティング」という場を設けています。

これらの取り組みにより、オフィスカードやPCにLGBTの尊厳を尊重するレインボーカラーのシールを貼っています。シールにすることで視覚的に認識でき、しゃべることなく自然に「アライ宣言」をすることができます。

JAL-互いに話し合い尊重しあう

日本航空株式会社(JAL)では、「多様な人材活躍推進に向けたメッセージ」を公開しています。
「多様な人材活躍推進に向けたメッセージ」は、女性社員がさらに活躍できるようJALのグループ全社員に向けて作られたものです。会社全体としても、社員ひとりひとりが意識を向けられるように取り組まれています。

さらにJALは、国内外問わず様々な人々と交流する場が多く設けられています。いです。そのうえで、LGBTに関する知識の理解のために、互いに尊重しあうコミュニケーションで無意識にできている壁を無くすと宣言しています。

まとめ

LGBTへの企業の取り組みを紹介しました。

LGBTの浸透は昔よりかなり広がって、それに伴って企業での取り組みも増えてきています。今後も、LGBTの知識を増やしたり、多様性を考えていくことが重要です。

LGBTに限らず、全ての方が過ごしやすい社会になるよう、対応が大事です。

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