SDGs目標9の現状とは?|現状から課題解決のための取り組み事例まで徹底解説

#SDGs目標9#技術#持続可能#環境 2022.01.12

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水や電気といった日本では当たり前にインフラ設備が設置されています。
最近では、スマートフォンの普及により、誰でもどこからでもインターネットにアクセスする環境まで整えられており、使えない地域があることが珍しいです。

しかし、世界に目を向けるとこのような環境が整えられていない地域が数多くあるのをご存知でしょうか。
今回はSDGs目標9の現状がどのようになっているのか、世界と日本で比較しながら紹介します。また、現状から見える課題をどのようにして解決しているのかまで徹底解説していきます。

SDGs9とは

概要

このSDGs9は「強靭なインフラを構築し、包括的かつ持続可能な産業化の推進及びイノベーションの推進を図る」のテーマのもと、8個のターゲットで構成されています。

目標9を構成する8個のターゲット

9.1
全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.2
包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
9.3
特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
9.4
2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
9.5
2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
9.a
アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
9.b
産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。
9.c
後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供できるよう図る。

出典:JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

SDGs CONNECTではSDGs目標9について詳しく解説した記事を公開しています。

SDGs9の世界の現状

現状①約37億人の人々がインターネットにアクセスできない

普段、何気なく使っているインターネットですが、その裏側にはインターネットにアクセスすることすら困難な人々が大勢いる現状があることをご存知でしょうか。
ITU-Dによると世界では約37億人の人々がインターネットにアクセスできておらず、開発が遅れているような地域では、17%の人が携帯電波が届かないところに暮らしている現状があります。
インターネットのようなテクノロジーは、技術革新が生まれやすい先進国が注目されがちです。しかし、発展途上国はそもそもの生活基盤ができていないことから、インターネットによる格差は拡大傾向にある現状といえます。

現状②約21億人が安全な飲み水を入手できない

2017年にユニセフとWHOが発表した「衛生施設と飲料水の前進:2017年最新データと持続可能な開発目標(SDGs)基準」によると、世界では約21億人(世界人口の10人に3人)が安全が確保された水を自宅から直接入手することができない現状があるといわれています。
また、水を使用するトイレに関しては約45億人(世界人口の10人に6人)が安全に管理されてたトイレを使うことができない、現状で生活をしている現状があります。

具体的に、安全に管理された水を使用することができない21億人の内訳は以下の通りです。

・基本的な飲み水を入手できない→8億4400万人
・身の回りで飲み水を確保することができない→2億6300万人
・河川や湖などの地表水からしか利用できない→1億5900万人

飲み水やトイレといった、先進国では当たり前のインフラが発展途上国では、確保されていません。結果的に毎年36万1000人の5歳未満児が、下痢によって命を落としてしまっている事実があることに目を向けなければなりません。

現状③研究開発費の偏り

国連開発センター(IDCJ)の資料によると、世界の研究開発費がGDPに占める割合は2000年1.5%→2014年1.7%と0.2%増加していますが、地域による格差が生じてしまっているのが現状です。

2014年研究開発費GDP内訳・100万人あたりの研究者数
・先進国→2.4%・3739人
・途上国→1.2%
・後発開発途上国→0.3%・63人

数字からも先進国と途上国間で格差が生まれてしまっているといわざるをえない現状です。
途上国は先進国と比べ、研究開発費や研究者が少ないことからイノベーションが生まれづらく生産性が向上がしにくくなっているといえます。

現状④産業の付加価値からみえる格差

開発途上国にとって産業は、経済を成長させる上でとても重要な原動力となりますが、ここでも先進国と途上国とで格差が現状あります。

製造業における1人当たりの付加価値
・ヨーロッパ、北米→4621米ドル
・後発開発途上国→100米ドル

世界全体のGDPにおける製造業付加価値(MVA)のシェアは2005年の15.3%→2016年には16.2%と増加しています。しかし、製造業における1人当たりの付加価値からみると、先進国に比べ40分の1に過ぎない値と先進国との差は開く一方です。

SDGs9の日本の現状

現状①インターネット普及率91.9%

日本のインターネット普及率は、91.1%と高い数値であることが総務省のデータによるとわかります。一方で、山間部などの開発が遅れているような地域ではインターネットを活用できないエリアがあることにも目を向けなければなりません。

また、2018年度所属世帯年収別のインターネット利用率を見ると、世帯年収が400万円未満の家庭は70.6%であるのに対し世帯年収が200万円未満の家庭は54.4%と世帯年収によって利用状況の差異が大きく見られます。特に世帯年収が200万円未満の人々は約半数がインターネットを利用できていない現状が明らかです。年収によってインターネット利用率に格差が生まれてしまうことことは、きちんと誰もがインターネットを利用できるインフラを整える必要があります。

現状②水道普及率は98%

日本は1980年度を目処に90%以上の水道普及率と世界トップレベルのインフラ設備が整っていると言えるでしょう。
しかし、日本水道水教会が発行する水道統計によれば、水道管の老朽による破裂など全国で毎年2万件以上の事故が発生しています。
​​
さらに、高度成長期に整備された水道管の老朽化は深刻化しており、水道管路総延長のうち、法定耐用年数を超えた管路が占める割合は年々増加傾向にあります。
インフラの整備が追いつかない背景には、少子高齢化からくる人手不足に悩まされている現状が日本にはあります。そのため、AIやIoTといった労働生産性を向上させ労働人口を増やすことが大切になってきます。

現状③IT/IoT導入などの技術革新に遅れ

総務省が発表している「情報通信白書令和3年版」によると、日本は2000年のIT基本法制定行こう、さまざまな国家戦略等を掲げたデジタル化に取り組み、実際光ファイバ等ブロードバンドの整備は大きく進展しています。

モノのインターネット化と呼ばれるIoTは、日本の製造業界にも進出してきていますが、製造現場がある工場のIoT化などの取り組みについては、モノづくり大国のドイツやIT先進国のアメリカと比べると大きく出遅れている現状です。

SDGs9の世界と日本の現状の違い

インフラ整備が求められる

ここまでSDGs9の現状について日本と世界とで比較してきました。
日本では当たり前に使うことができているインフラが世界の特にアジアやアフリカではまだ整えられていないことが大きな違いとしてあると言えるでしょう。
インフラ整備が整備されれば、途上国の人々の生活の質も底上げされ、産業化に着手することができるようになりますが、途上国の多くが一次産業頼っている現状があります。

一次産業とは、農業や漁業など直接自然に働きかける産業のことで、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると特にサハラ以南のアフリカ地域では9割が一次産業に頼りっきりの経済体系です。

そんな中インフラが整備されれば、電気や水を使い収穫した農作物や魚類を加工することや保存する環境が整えられるため、加工品の販売という新たな市場の開拓にもつなげることが可能になります。こうした2次産業の展開で生活の質が安定されるためにも、インフラ整備を整えることはとても重要なのです。

SDGs9達成のための世界の取り組み3選

取り組み①Winch Energy

Winch Energy社は太陽光パネル、蓄電池、配電線、スマートメーターを組み合わせた独立型小規模発電・配電システム(Mini-Gridシステム)を独自に開発し、アフリカ無電化地域への対策を推進しています。

現在、世界では約12億人が無電化地域に同居するとされており、Winch Energy社のMini-Gridシステムを導入することにより1基につきおよそ100世帯への電力供給が可能となります。
このように、電気などのインフラがまだ整備されていない地域においては、電力供給と同時にWi-Fiなどの新しいサービスを提供することができるため、地域住民の生活水準向上に繋がります。

取り組み②watly

出典:Watly

「watly」とは、ソーラーマシンから1日に約5,000リットルのきれいな水を提供するだけでなく、電気、インターネットまでも生み出すことを可能にしたマシンです。Watlyはドーム状の形をしており、太陽光の多いアフリカの各地に設置されています。

また、watlyで充電できるw-lightというデバイスがあれば、30時間もの間ポータブルのライトやインターネットまでも利用でき、その地域の教育環境や生活に大きな変革をもたらしました。

取り組み③Grab

Grab は、2012年にマレーシアで設立され、主に東南アジアで使われている配車アプリです。Grabはマイクロソフトとの戦略的クラウド提携を強化し、東南アジアでのデジタルサービスのイノベーションと普及を推進に取り組んでいます。

ビックデータやAIなどの技術革新を活用することで、乗客およびドライバーの安全とセキュリティーの向上を支援することを可能にしました。背景には、Grabとマイクロソフトが協力し、IDチェックの代わりとして選択したドライバーおよび乗客を対象にしてドライバーおよび乗客の身元確認と予約の照合に役立つ内蔵AIによるモバイル顔認識など新しい認証メカニズムを開発しています。

SDGs9達成のための日本の取り組み3選

取り組み①株式会社伊藤園

株式会社伊藤園は、災害対応自動販売機の開発に取り組んでいます。この自動販売機は「ライフライン自動販売機」と呼ばれ、自然災害や緊急事態が発生し停電になった場合に、キー操作や専用ハンドルを回すことによって自動販売機に必要な電力を供給し、飲料製品を被災者などに無償提供する事ができる自動販売機です。

今後、東日本大震災と同じ規模の大きな災害が起きた時に、この災害対応自動販売機があれば、インフラが整備されるまでの期間活躍することが期待されます。

取り組み②イーテック

イーテックの太陽光発電所では、廃コンテナを再活用して、グリーンエネルギーと地下水を使い、菌床椎茸(ちきゅうにやさしいたけ)と舞茸(こうのとり舞茸)を栽培し地消地産で、食べるエネルギーを生産しています。

また、イーテックはエネルギー自給率を上げるために、グリーンエネルギーを供給する太陽光事業を促進して気候変動対策も行なっています。異常気象の災害時に備えて蓄電池の普及を促進にも取り組んでいるようです。

このように自社発電所を持つことで、グリーンエネルギーを活用することで異常気象の災害時にでもすぐに普及できる体制を作りあげています。

取り組み③トヨタ

現在、自動車業界は「CASE※」と呼ばれる技術革新を背景に、100年に一度の大変革の時代を迎えています。モノづくりで培った強みを活かし、CASEへの対応によるさらなる技術革新でクルマの可能性を拡げ、すべての人の移動を自由にするサービスを提供しています。

また、トヨタはSDGsの目指す持続可能な社会の実現には、人権やダイバーシティなどのESG課題への取り組みにも関心を向けており、技術革新だけではない領域にも取り組みの幅を広げています。

※Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)といった技術革新が進む新しい領域

参照:https://global.toyota/jp/sustainability/sdgs/

まとめ

今回SDGs目標9の現状について解説してきましたが、世界には現状さまざまな理由から日本では当たり前のサービスを使えない環境下にいる人々が大勢います。

そうした現状を知ったからこそ、SDGs目標9を達成する意義が初めて実感できるのではないでしょうか。これを機に目標9を達成する取り組みを初めてみましょう。

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