世界の温室効果ガス排出量の推移と内訳-排出量が多い国の課題も解説

#エネルギー#温室効果ガス#環境 2022.10.28

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【更新日:2022年11月9日 by 田所莉沙

世界の温室効果ガスの排出量は、年々増加傾向にあります。温室効果ガスは地球温暖化の大きな原因となっており、排出量を減らすことが重要です。

では「世界の温室効果ガス排出の現状や排出量が多い国の課題」とは何でしょうか。温室効果ガスを減らすために、各国や日本企業はどのような取り組みを行なっているのでしょうか。

この記事では、世界の温室効果ガス排出量の推移や内訳、国別の1人あたりのCO2排出量、排出量上位国の課題や取り組みを解説します。

【この記事でわかること】

※クリックすると見出しにジャンプします。

世界の温室効果ガス排出の現状

工場と自然風景

 

温室効果ガスとは、待機中に含まれる二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素などの総称です。これら温室効果ガスの赤外線を吸収・放出する性質により、地表が温められています。

2019年時点における世界の温室効果ガス排出量は約335億トンでした。世界の排出量は年ごとに増加傾向にあり、経済発展に伴う化石燃料やエネルギーの使用量増加、人口増加が背景にあります。

温室効果ガスによる影響は地球環境にも及び、IPCCの第5次報告書によると世界の平均地上気温は1880年〜2012年の間に0.85℃上昇しました。気温上昇に続く海面上昇や砂漠化といった課題に歯止めをかけるために、世界各国で対策が進んでいます。

関連記事:SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」の現状や取り組みを徹底解説

世界の温室効果ガス排出量の推移

自然環境維持のためCO2削減・省エネなどさまざまな対策が進む昨今、温室効果ガス排出量の推移はどのようになっているのでしょう。

世界の温室効果ガス排出量は1970年〜2010年にかけて増え続け、とくに2000年〜2010年の期間では約100億トン増加しました。10年単位でみると最後の10年間の排出増加量が多くなっています。また1970年〜2010年の期間において、排出増加量の約78%は二酸化炭素(CO2)が占めました。

GDPと人口増加に伴う化石燃料燃焼が、CO2の排出量を増加させます。そのため世界的な経済成長と人口の増加は温室効果ガス排出量を加速させる要因となります。

GDP(国内総生産)とは、一定期間内に国内で生み出された財やサービスなどの総額。

 

世界の温室効果ガスの排出量の内訳

温室効果ガスには二酸化炭素以外にもメタン、一酸化二窒素、フロンガスなどがあります。

温室効果ガスの内訳として、化石燃料由来の二酸化炭素が全体の65.2%を占めます。また森林減少や土地利用変化によって排出される二酸化炭素は10.8%でした。

中でも二酸化炭素が占める割合は極めて高く、このことから地球温暖化を加速させる温室効果ガスとして二酸化炭素が与える影響は極めて大きいです。

関連記事:温室効果ガスには種類がある?-割合から発生源、削減方法も徹底解説

二酸化炭素(CO2)が大量に排出される原因3選

  • 温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素とは、どのようにして発生するのでしょうか。続いてCO2発生の要因を紹介します。

    電化製品の使用

    私たちの普段の生活スタイルは、多くの二酸化炭素を出す要因の一つです。

    たとえば、私たちが移動手段として用いることの多い自動車にはガソリンが使われ、寒い季節には灯油を利用したヒーターが登場してきます。これらガソリンや灯油には石油が使われており、使用頻度が多くなるにつれて化石燃料の需要と消費が加速します。

    日常的に何気なく使っている水や電気にも、二酸化炭素が発生します。蛇口から水が出るまでの過程やテレビを使用する際にかかるエネルギーは、発電によって賄われています。しかし、発電方法によっては化石燃料が消費されるため、エネルギーの使用は二酸化炭素の排出に繋がります。

    森林面積の減少

    森林が行う光合成は二酸化炭素を減らすため、森林は地球温暖化の防止に役立ちます。

    しかし、農地・放牧地といった土地の確保、木材の確保などを目的とした伐採や自然災害により森林の面積は減少しています。

    日本のおよそ1.25倍の大きさを誇るスマトラ島では、パーム油の生産のため大規模伐採がされており、30年前と比較すると森は半分以下に減少しています。またブラジル国立宇宙研究所によると、アマゾン森林累計消失面積は2018年までに日本の国土面積の1.1倍に相当する42万平方キロメートルに達しました。消失率は8.4%です。

    森林の減少は二酸化炭素の増加を招くとともに、野生動物に影響を与えたり砂漠化などの環境問題も引き起こしたりしています。

    経済成長と自動車保有数の増加

    産業革命を皮切りに、二酸化炭素の排出量は増えました。

    移動手段として使われていた馬は自動車に代わり、現在の自動車保有台数は世界で14億9204万台(2019年)に上ります。

    大量生産と普及が続いた結果、日本の二酸化炭素排出量のうち運輸部門の排出量が1億8,500万トンと、全体の17.7%を占めました(2020年度)。

    1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量|世界ランキング

    2019年度における、上位10カ国の「1人あたりの二酸化炭素排出量(エネルギー起源)」は次のようになっています。

    順位 国名 1人当たりのCO2排出量(トン)
    1 カタール 30.68 
    2 アラブ首長国連邦 18.22
    3 カナダ 15.19
    4 オーストラリア 15.01 
    5 サウジアラビア 14.45 
    6 アメリカ 14.44
    7 ロシア 11.36
    8 韓国 11.33
    9 日本 8.37
    10 ドイツ 7.75

    (引用:世界のエネルギー起源CO 排出量(2019年) – 環境省

    1位はカタールで、1人当たり30.68トンとなりました。続く2位はアラブ首長国連邦の18.22トンですが、その間に約10トンもの差が生じています。3位はカナダで15.19トンでした。

    産油国または自然資源の多い国、先進国などが排出量上位に多い傾向にあります。

    温室効果ガス排出量が多い国の課題と取り組み

    排気ガスに覆われた空

    1人当たりの二酸化炭素排出量が多い国について見てきましたが、国単位での排出量ではどのような現状なのでしょうか。

    続いて、温室効果ガス排出量が多い国の上位3ヵ国と日本の課題について解説していきます。

    中国

    2019年度時点で二酸化炭素排出量が最も多い国は中国でした。

    13億を超える人口がもたらす経済成長により、中国のGDPは世界第2位にまで上昇しました。この急速な成長に呼応するように国内でのエネルギー需要は増加し、世界のCO2排出量約335億トンに対し中国はその29.5%に相当する排出量となっています(2019年度)。

    世界最大の二酸化炭素排出国である中国では、2060年までのカーボンニュートラル実現を表明しました。

    2019年から2020年までの1年間に、原発の約120基分に匹敵する再エネ設備容量を新設するほか、クリーンな発電に向けた技術開発を進めています。また2021 年には、CO2排出量のピークアウトおよびカーボンニュートラルの実現を後押しする「全国の炭素排出権取引市場」を開設しました。

    アメリカ

    世界の二酸化炭素排出量ランキング2位はアメリカでした。

    工業化が進む国では化石燃料が多く消費されるため、アメリカなどの先進国が排出量の割合の多くを占めています。

    排出量2位のアメリカでは、2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で50〜52%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げています。さらに目標達成に向け、車の電動化やインフラ整備への投資等が進められています。

    インド

    世界の二酸化炭素排出量ランキング3位はインドでした。

    世界のCO2排出量約335億トンに対し、インドは全体の6.9%に相当します(2019年度)。インドは中国に次ぐ石炭生産国であることから、石炭への依存と人口の多さが要因となり二酸化炭素排出量を増加させました。

    電源構成のうち約7割を石炭が占めるインドでは、2021年に2070年までのカーボンニュートラル達成を宣言しました。また目標達成に向け、2030年までに非化石燃料による発電容量を500GWに引き上げる方針を示しました。

    日本

    1人当たりの二酸化炭素排出量でみると日本は9位でした。しかし日本は石油や石油など化石燃料への依存度が高いことから、低炭素化があまり進んでいません。

    2011年の東日本大震災以降、原子力発電による影響やその他安全性が課題となり、日本では化石燃料を用いた発電に頼っています。さらに、安定した自然資源が少ない日本において再生可能エネルギーを用いた発電はコストがかかる上、発電量が安定しないという課題があります。

    2020年に日本では、2050年までに温室効果ガス排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すことを発表しました。併せてカーボンニュートラルに向けた具体的な道筋を示す「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表するなど、成長が期待できる企業を応援する環境づくりを進めています。

    関連記事:カーボンニュートラル実現への企業の取り組み5選-メリットと事例も解説
    関連記事:SDGs13「気候変動に具体的な対策」で私たちにできること8選

    温室効果ガスを減らすための世界の取り組み3選

    世界地図と植物の種

    ここまで温室効果ガスが排出されている背景について、国別に紹介をしてきました。

    次に、脱炭素社会を目指す各国の動きを踏まえ、1人当たりの二酸化炭素排出量ランキング上位の国を中心に、各国の取り組みについて紹介します。

    カーボンニュートラルを目指す国際大会|カタール

    天然ガス産出国であるカタールでは、輸入などにおけるエネルギーや都市を支える冷房システムに大量の化石燃料を利用しています。

    そのため二酸化炭素の排出量を1人当たりに換算すると、その値は他国と比較しても突出しています。世界規模での気候変動および温暖化が猛威を振るう中、エネルギー使用と二酸化炭素の削減を同時に行う必要があります。

    2022年ワールドカップの開催国となったカタールではカーボンニュートラルな大会を目指しました。スタジアム間の距離が最長で75キロとコンパクトにすることで、移動を車や公共交通機関に切り替えるといった対策が取られました。またカタール航空では、法人顧客を対象にカーボンオフセット取引を開始するなど、CO2削減に向けた取り組みが進められています。

    産油国による石油依存脱却|アラブ首長国連邦

    産油国であるアラブ首長国連邦では石油やガスによる収入が多いため、裕福層によるエネルギー消費量が多い傾向にあります。そのため化石燃料の需要を抑制する取り組みは、経済活動の妨げにもなります。

    しかし、アラブ首長国連邦では再生可能エネルギーの活用や温室効果ガスの削減、脱石油依存に向けた取り組みを進めています。

    豊富な日射量を活かした太陽光発電所の建設グリーン水素の製造に加え、2030年までの温室効果ガス排出削減目標を31%へ引き上げるなど、脱炭素化社会に向けた活動が始まっています。

    GHG排出実質ゼロを法定目標|カナダ

    水を始めとした自然資源に加え、石油や天然ガスなどエネルギー資源に恵まれているカナダでは電力料金が安く、電力の消費量が多いです。このことが一人当たりの二酸化炭素の排出量を高めています。

    そこで「カナダ実質ゼロ排出説明責任法」を制定し、温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロおよび2030年までの温暖化ガス排出量を2005年度比で40〜45%に引き上げる目標を発表しました。

    関連記事:温室効果ガスを減らすには?-企業・家庭・個人の取り組みも解説

    温室効果ガスを減らすための日本企業の取り組み3選

    最後に、日本企業の温室効果ガス削減への取り組みを紹介します。

    店舗への太陽光発電導入|イオン

    イオンでは、未来につながる「より良いくらし」に向け、サステナブルな社会の実現を目指しています。

    2030年までに日本国内の店舗で使用する電力のうち、50%を再生可能エネルギーに切り替えるという目標を定めました。店舗屋上などを利用した太陽光発電、PPAモデルの導入拡大、他にも卒FIT電力の買い取り強化など、さまざまな取り組みを推進しています。

    環境対応車の導入|佐川急便

    佐川急便では宅配便事業を中心に、持続可能な社会の実現を目指しています。

    環境に配慮した輸配送のもと、温室効果ガスの排出量が少ない「環境対応車」の導入を1990年代から始め、2020年度末の保有数は14,489台に上りました。

    環境対応車の導入以外にも、モーダルシフトの推進やエコ安全ドライブによるCO2削減など、脱炭素社会の実現に貢献する取り組みを行っています。

    CO2排出量の見える化|森永製菓

    数値データを可視化している画像

     

    森永製菓では、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目標に、省エネルギーおよびエネルギー使用の見える化などのカーボンマネジメントを推進しています。

    とくに工場に注目した取り組みにはCO2排出量の見える化、高効率な生産体制の確立と省エネルギー型設備の導入、効率的な空調の実施などによる省エネ試作の実施などがあります。他にも森永製菓は「環境の健康」の実現に向けて、さまざまな活動を行なっています。

    まとめ

    本記事では、世界の温室効果ガス排出量のランキングや推移、1人あたりのCO2排出量について解説しました。

    急速な経済発展や豊富な資源、生活様式など、温室効果ガスおよび二酸化炭素の発生要因は国によって異なります。しかし削減にかかる時間やコストは一貫して多く、早い段階での対策が必要とされています。

    他にも温室効果ガスが環境に与える影響やその他取り組みなど、記事を通して気になる内容やワードがあれば、是非関連記事を覗いてみてください。

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