【更新日:2023年4月18日 by 田所莉沙】
温室効果ガスとは、二酸化炭素やメタン、一酸化炭素、フロンなど地球温暖化を促進するものです。気候変動に伴う異常気象や海面上昇、陸地の減少、動植物の絶滅など、世界各地で様々な問題を引き起こしています。
「日本の気候変動対策は周回遅れ」といわれていますが、これ以上地球温暖化を進めないためにも、より具体的な対策を行うことが不可欠です。
今回は、温室効果ガスを減らすための目標や、取り組みの現状、温室効果ガスを減らすためにできる取り組みについて分かりやすく紹介します。
【この記事で分かること】 |
見出し
日本の温室効果ガス削減に向けた目標
まずは日本が取り組んでいる、温室効果ガスの排出量削減のために定めた目標について、説明していきます。
現在、世界各地で、台風や豪雨などの自然災害や気温の上昇など、環境問題が多く存在します。これらの社会問題を深刻化させないために、パリ協定をもとに各国で温室効果ガスの削減目標を定めています。
日本では、2021年の10月に地球温暖化対策計画が定められました。2030年に向けた目標としては、温室効果ガスの排出量を2013年度比で、46%削減することを目指しています。また2050年までには、日本国内で完全なカーボンニュートラルの実現を目標としています。
パリ協定 …2015年に世界規模で行われた会議にて採択された、気候変動に関する国際的な枠組みのこと。地球の平均気温の上昇を、産業革命前と比較して、+2℃までに抑えることを目指すことが合意された。 |
カーボンニュートラル …温室効果ガスの排出量と、吸収量・除去量を同じ量にすることで、 |
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関連記事:2030 年カーボンニュートラルとは-2030年に向けた目標から取り組み事例まで解説
日本の温室効果ガス削減への取り組みの現状|対策が遅れる原因とは
ここまで日本が定めた温室効果ガスに関する目標について、まとめていきました。続いて、日本で温室効果ガス排出量の削減に向けた対策が、遅れている原因についてです。
日本は世界の中でも、温室効果ガスに対する対策が充分ではありません。ではなぜ日本の対策は、円滑に進んでいないのでしょうか。
日本の対策が遅れている最も大きい原因は、石炭や石油などの化石燃料に依存していることです。2019年において、日本全体の発電力量のうち化石燃料の割合が84.8%でした。
また日本では石炭や石油などの資源が少ないため、海外から資源を輸入し、エネルギーを生み出しています。日本で温室効果ガス排出量を削減するためには、化石燃料由来のエネルギーではなく、太陽光などの自然由来のエネルギーを普及していくことが重要です。
温室効果ガスが発生する4つの原因
ここまで日本が温室効果ガス対策に関して、遅れている原因をまとめていきました。
続いて二酸化炭素のような、温室効果ガスが排出される原因を、説明していきます。
森林の減少
まず二酸化炭素などの温室効果ガスが排出される原因として、世界各国で森林の減少が挙げられます。1990年から2020年の30年間で、減少した世界の森林面積は、年間約592万haでした。この数は、一年間で東京ドームの120万個以上もの森林がなくなっていることになります。
とくに南アメリカ大陸やアジア大陸、アフリカ大陸などの熱帯林で著しく森林がなくなっています。森林の面積が減少する理由として、森林を農地へ転用したり、必要以上に木を伐採したりなどが挙げられます。
森林がなくなることで、排出された二酸化炭素が吸収できなくなるだけではなく、森林で暮らす動植物が絶滅してしまう可能性もあります。また森林が伐採されることで、大雨が降った際に、地すべりや土砂崩れのような自然災害を引き起こす場合もあります。
化石燃料の大量消費
世界では、太陽光のような再生可能エネルギーを積極的に使用している国は多くはなく、石炭や天然ガスなどの化石燃料を使用して、エネルギーを発電しています。しかし化石燃料は有限な資源であるため、年々埋蔵量が減っています。
2020年末の段階で、世界で最も化石燃料が埋蔵している国はベネズエラで、世界全体の17.5%でした。また化石燃料が多く埋蔵されているサウジアラビアでは、世界全体のうち17.2%を占めています。そのほかにもイラクやクウェートなどの国々で多く化石燃料が埋蔵されており、ほとんどが中東諸国が保有しています。
化石燃料が枯渇してしまうとエネルギーを生み出せず、経済活動や生活ができなくなります。また限りある資源を巡って、紛争や戦争などの争いが起こる可能性もあります。安定した電力を継続しつつ、地球にやさしいエネルギーを使用するためには、化石燃料に依存している現状から脱しなければなりません。
自動車の使用台数の増加
近年、多くの国で自動車が使用されており、年々自動車の生産台数は増加傾向にあります。2021年における世界全体で生産された自動車の台数は8,014万6,000台でした。この数値は2020年よりも3.1%増加しています。
自動車が大量に生産され、使用頻度が増えることで、二酸化炭素の排出量は増加していきます。2022年、日本における自動車の二酸化炭素排出量は、1億8,500万トンでした。電気自動車の普及に伴って、年々二酸化炭素の量は減少しているものの、いまだに多くの二酸化炭素が出される現状です。
地球温暖化の悪化を抑制し、温室効果ガスの排出量を削減していくためには、自動車から排出される温室効果ガスの量を減らせるような工夫を凝らしたりなどの取り組みが必要です。
窒素肥料の使用
「窒素肥料」とは、植物が成長に必要となる窒素が含まれた肥料のことです。植物にとって必要となる栄養素を含んでいるため、窒素肥料を使用することで植物の成長を促します。しかし窒素肥料は環境への悪影響も与えます。
たとえば窒素肥料が土壌に含まれることで、土が汚染されていきます。また汚染された土壌から発生する亜酸化窒素により、オゾン層を破壊してしまいます。
地球温暖化を抑制し、オゾン層の破壊を防ぐためには、窒素肥料の使用量も考慮する必要があります。
温室効果ガスを減らすための日本政府の取り組み
ここまで温室効果ガスが発生する原因について、まとめていきました。
つぎに日本政府が、温室効果ガスの排出量を削減するために取り組んでいる政策について、解説していきます。
日本政府は日本が定めた目標を達成するために、5つの部門に分けて対策が行われています。その5つの部門が「産業部門」・「業務その他部門」・「家庭部門」・「運輸部門」・「エネルギー転換部門」です。
そのほかにも地球温暖化対策の一環として、「地方公共団体実行計画」が行われています。「地方共同団体実行計画」では、地球温暖化の対策を促進するために情報を発信していくことで、地方の地球温暖化対策を支援していきます。
たとえば佐賀県に会社を置く株式会社唐津パワーホールディングスでは、脱炭素化に向けて事業を展開したり、再生エネルギーの地産地消を促したりと、政府の支援を通じて温暖化対策を行っています。
>>環境省 地方公共団体実行計画 策定・実施支援サイトはこちら
関連記事:日本と世界のカーボンニュートラル政策-2050年カーボンニュートラルも解説
温室効果ガスを減らすために企業ができる取り組み4選
日本政府の取り組みとして、地方の地域への支援活動や、情報発信をしていることがわかりました。
続いて企業ができる、温室効果ガス対策について、紹介していきます。
関連記事:温室効果ガス削減のためにできること7選-個人と企業の対策を解説
節電や省エネ対策をする
まず企業ができることとして挙げられるのが、節電を心がけたり、省エネルギー対策を行うことです。使用していない部屋の照明を消すことや、扉を開いたままにしないよう工夫することで、無駄なエネルギーの消費を抑えられます。
また企業が事業を通じて使用する機器に、省エネ機能を設置することで、効率よくかつ無駄なくエネルギーを活用できます。
排出される温室効果ガスの量を可視化する
企業が事業を行う際に排出する温室効果ガスの量を把握することも、温室効果ガスを減らすために必要です。
排出される量を測定すると、エネルギーを消費している過程が明確になります。さらに、測定した数値に対して効果的な対応を行うことで、エネルギーコストの削減となります。
株式会社ゼロボードでは、企業の温室効果ガスの量を「見える化」するサービスを提供しています。簡単に数値化ができるため、気になった方はぜひ公式サイトを見てみてください。
再生可能エネルギーの導入する
「再生可能エネルギー」とは、石炭や天然ガスではなく、太陽光や風力など、自然のエネルギーを活用したものです。再生可能エネルギーは枯渇しない、持続可能なエネルギー源であるため、地球にやさしいエネルギーとなっています。
企業のオフィスに最も取り入れやすいのが、太陽光発電です。オフィスの屋上や屋根に設備を設置することで、エネルギーを発電できます。設置するために初期費用はかかりますが、継続的に発電を行うことで、電気代の節約にも貢献します。
オフィスで設備を導入するのが難しい場合、契約している電力を再生可能エネルギー由来のものに変更するという方法もあります。
廃棄物の量を削減する
廃棄物の量を減らすことも、エネルギーの節約に貢献します。廃棄物を処理するときには、衛生面のことも考慮し、燃やす必要があります。しかしごみを燃やすためには、エネルギーが必要不可欠です。
そのため大量のごみが発生すればするほど、燃やすために必要なエネルギーは増加していきます。また生ゴミは水分を多く含んでいるため、紙などのごみよりも多くの温室効果ガスを排出してしまいます。
ごみの焼却の際に発生する温室効果ガスを削減するためには、無駄となるものを減らすことが大切です。
温室効果ガスを減らすために個人でできる取り組み4選
ここまで企業ができる、温室効果ガス対策について、まとめていきました。
続いて、温室効果ガスの排出量を削減するために私たちが、身近にできることを紹介していきます。
家庭内での節電
まず私たちが生活の中でできることが、電気を無駄遣いせず、節電することです。部屋の照明やテレビを使用しないときには、電源を消すことで節電につながります。テレビ以外にも電子機器のプラグをコンセントから抜くことで、待機電力を減らすことができます。
そのほかにもエアコンの設定温度を適切な温度にすることや、エアコンを使いすぎないことも、節電の方法です。夏のように気温が高い日は、熱中症にならない程度に、温度の設定を心がけてみてください。
また家庭用の太陽光発電を設置することで、家で消費されるエネルギーの量をへらすことができます。太陽光発電を導入すると、家庭でかかる電気代の削減にもつながるため、さまざまなメリットとなります。
節水
電力の節電以外にも水の節約をすることも、エネルギーの節約につながります。わたしたちが毎日使用している水ですが、水道から水を汲み上げるためにエネルギーを消費しています。水を出したままにせず、溜めて利用することで、一か月あたり約1.3kWhの節電となります。この電力量は、テレビを1.5時間使用する電力量と同じです。
水の節約の方法として、お風呂で溜めた水を洗濯に使用したり、シャワーの水を使わないときはこまめに止めたりなどの方法があります。料理の際や、洗面台でも水を出しすぎないように注意してみてください。
買い物時にマイバッグを持参
温室効果ガスの排出量を減らすためには、ごみとして処理されているプラスチックごみを減らすことも、取り組みの一つです。2019年において、世界で発生しているプラスチックごみは、3億5,300万トンとなりました。
プラスチックごみが大量に排出されているにもかかわらず、ごみのリサイクル率は低く、ごみの量のうち全体の9%しかありません。また一部のごみは河川や海に流されており、環境へ被害を与えています。
プラスチックごみを減らすためには、買い物で使用する際にマイバッグを持つことが重要です。マイバッグを活用するだけではなく、ポリ袋を使いすぎないこともごみの削減に貢献します。
植物の栽培
二酸化炭素の排出量を減らすためには、植物を栽培することも大切です。実際にスギの木が二酸化炭素を吸収する量のうち、23本分が人の呼吸に相当します。自動車から排出される二酸化炭素を吸収するためには、スギの木160本が必要となります。つまり私たちが日頃の生活で排出される二酸化炭素は、簡単に吸収しきれない量であるとわかります。
私たちが簡単に育てられる植物として、ゴーヤや朝顔などの植物があります。とくにツルを生やす植物は緑のカーテンとして、部屋の暑さをやわらげることができるため、おすすめです。
そのほかにもサボテンは、自宅やオフィスで育てることができ、なおかつ昼夜問わず二酸化炭素を吸収してくれる植物です。簡単に育てられるサボテンの種類もあるため、興味のある方は調べてみてください。
温室効果ガスを減らすための企業の取り組み事例3選
ここまで各家庭でできる、温室効果ガス削減対策について、まとめていきました。
つぎに日本の企業が行っている、温室効果ガスの排出量削減に向けた政策について、説明していきます。
三菱電機株式会社|生産時に排出される二酸化炭素の量を「見える化」
三菱電機株式会社は、家電や宇宙機器、情報通信システムなど、さまざまな半導体・デバイスを提供する会社です。「成長性」・「収益性、効率性」・「健全性」の3つの視点に着目し、世界各国の社会問題の解決に貢献することを目指しています。
三菱電機が、温室効果ガスの排出量削減のために行っていることが、製品の生産時に排出される二酸化炭素の量を「見える化」することです。どのくらい放出しているか定期的に見直すことで、どの生産過程で二酸化炭素が発生しているかが明確になります。
温室効果ガス対策以外にも、三菱電機グループがSDGsの目標達成を目指して実施している取り組みが、公式サイトで紹介されています。
コカ・コーラ株式会社|廃棄物ゼロの世界
コカ・コーラ株式会社は、アメリカのアトランタに本社を置く、清涼飲料水メーカーです。コカ・コーラだけではなく、さまざまな清涼飲料水を、世界各国で販売しています。
コカ・コーラ株式会社が温室効果ガスの排出量を減らすために取り組んでいるのが、廃棄物の排出をなくすことです。たとえば商品として販売しているペットボトルを100%リサイクル素材のものにすることで、廃棄物を削減する取り組みを行っています。
同時に排出される二酸化炭素の量も減らせます。コカ・コーラ株式会社の推定では、年間で約35,000トンも削減できます。
ヤマトホールディングス|低炭素技術の導入
ヤマトホールディングスは、日本国内で宅急便などの物流を事業としている会社です。ヤマトホールディングスは「人」が一番の財産と考えており、一人ひとりが努力し、社会の発展に貢献していきます。
事業を行う際に温室効果ガスを排出しないため、ヤマトホールディングスでは低炭素技術を導入しています。たとえば冷蔵・冷凍食品などを配達する際に使用するドライアイスから、小型モバイル冷凍機に変更するなどです。
そのほかにも物の輸送で用いる大型トラックを、燃料電池大型トラックに変更するためにさまざまな検証しています。温室効果ガスの削減が困難とされている長距離輸送において、二酸化炭素の排出量削減を目指しています。
世界各国の温室効果ガスを減らすための取り組み事例3選
ここまで日本企業が実施している、温室効果ガス対策について、まとめていきました。
最後に世界各国で取り組まれている、温室効果ガスの削減に向けた政策について、紹介していきます。
NIST温室効果ガス(GHG)測定プログラム|アメリカ
「NIST温室効果ガス(GHG)測定プログラム」とは、温室効果ガスの排出量を的確に測定するためのものです。アメリカ国内の企業や政府が、二酸化炭素の排出量を可視化できるよう、情報を提供しています。
アメリカでは、国全体で地球の環境問題に対する意識を高めるために、移動距離に応じて排出された温室効果ガスの量を推定しています。
このプログラム以外にも温室効果ガスの排出量を毎日観測できる、「アーバン テスト ヘッド」というシステムも導入し、温室効果ガスに関する情報を公開しています。
脱炭素エネルギーの開発・提供|イギリス
イギリスの物理学研究所では、化石燃料に依存したエネルギーから、持続可能なエネルギーを活用するために、新たなエネルギーの発明や提供を行っています。
炭素の代わりにエネルギーとして活用しているのが、水素です。水素による燃料電池を製造したり、水素の貯蔵を行ったりと、地球温暖化を悪化させないような取り組みを行っています。
また大気中に含まれている二酸化炭素の回収や利用、貯留にも取り組んでいます。
車両の電気充電スポットの設置|フランス
フランスでは、国全体で排出される二酸化炭素のうち、約95%が高速道路での輸送部門で占められています。そのためフランスでの温室効果ガスの排出量を削減するためには、環境にやさしい車両の普及と使用が重要と考えられています。
フランスの企業であるVINCIは、建設事業やインフラ運営事業などを行う会社です。2030年までに、フランス国内で使用する車両の85%を、電気自動車に転換することを目指しています。
VINCIでは、電気自動車をさらに普及させていくに伴って、車両の電気充電スポットの設置を実施しています。とくに高速道路に設置をすることで、長時間走行によって排出される二酸化炭素の量を、減らしています。
まとめ
温室効果ガスは、地球温暖化を促進してしまうため、世界各国が排出量の削減に向けた対策を行っています。日本では、2030年までに温室効果ガスの排出量を46%削減し、2050年までに完全なカーボンニュートラルの実現を目標としています。
問題の解決に向けて、世界各国で温室効果ガス削減に向けた取り組みが行われています。たとえば太陽光などの再生可能エネルギー設備の導入や、二酸化炭素排出量の「見える化」などです。
温室効果ガスの排出量を減らすために、私たちにもできることがあります。使用しない時は電気を消したり、こまめに水道の水をとめたり、できることから始めてみましょう。
SDGsCONNECT SEOライター。大学では文学を通じて、ジェンダーについて学んでいます。SDGsについて詳しくない人にとってもわかりやすく、かつ情報が正確な記事を書けるよう、心がけています。