《徹底解説》サーキュラーエコノミーとは|SDGsとサーキュラーエコノミーの関係性

#SDGs目標12#SDGs目標13#SDGs目標14#SDGs目標15#再利用#持続可能#環境 2021.05.13

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【更新日:2021年10月17日 by おざけん

SDGsに注目が高まり、社会のあり方が問われています。と同時に、経済の仕組みをより持続的なものにするために、新たな経済の仕組みに関してさまざまな議論が行われています。

SDGsの達成に向けた新たな経済システムの中でも特に注目を集めているのはサーキュラーエコノミーです。従来のように、モノやコトが消費されて終わるのではなく、循環型の仕組みを取り入れていく考え方で、注目が高まっています。

今回はサーキュラーエコノミーについて言葉の意味から、SDGsとの関係性、取り組んでいる企業などを紹介し、なぜ、今後必要とされていくのかを考えていきます。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーの意味

サーキュラーエコノミーとは、「循環型経済システム」を指します。

従来の経済システムでは、提供された商品が消費され、それが廃棄される一方的な仕組みでリニアエコノミーとしてサーキュラーエコノミーと対比されます。3Rと呼ばれるようにリサイクルやリデュース、リユースが推奨されていましたが、一部の製品にとどまっており、環境を犠牲にせず、経済性を保つ仕組みづくりが求められています。

そんな中、注目を集めているのがサーキュラーエコノミーです。サーキュラーエコノミーでは、物が利用されている瞬間が一番価値のある状態と捉えて、物が利用されている状態をいかに長くするかを重要視する経済システムです。

リサイクルはサーキュラーエコノミーの一部でしかなく、物の利用状態をいかに継続させ、修理や再販を活用し、できるだけすぐに市場に戻せるようなビジネスモデルが求められています。

サーキュラーエコノミーは環境に優しいだけでなく、持続可能な経済成長や新たな雇用の創出も見据えたものになっています。

上図を見ても分かる通り、さまざまなフェーズで回収と修繕・再利用を繰り返し行うことでモノの価値を保ち続けていくのがサーキュラーエコノミーです。

なぜサーキュラーエコノミーが求められているのか

サーキュラーエコノミーが必要とされる理由は、従来の一歩通行型の経済モデルでは、資源が需要に追いつかなくなったためです。

18世紀半ばから19世紀にかけて起きた産業革命以降、世界中で浸透した「大量生産・大量廃棄型」のビジネスモデルは、資源の枯渇や環境汚染の深刻化といった問題をもたらしました。

現在人類が使用している天然資源は地球1.7個分とも言われており、このままの大量生産・大量消費を続けていれば、いずれ人間が経済活動を行えなくなるとも考えられています。

そこで、経済成長と限りある資源を有効に使うことの両立を目指す、サーキュラーエコノミーが必要とされるようになったのです。

そんな中、環境への負担を最小限に抑えると同時に、経済効果を生み出す方法として発案されたのが「サーキュラーエコノミー」です。

サーキュラーエコノミーは近年、SDGsへのアプローチ方法としても有名になってきました。

「サーキュラーエコノミー」が普及し始めるきっかけとなったのは、2015年に欧州委員会が採択した「サーキュラーエコノミー・パッケージ(サーキュラーエコノミーの実現に向けた政策)」です。

この政策はサーキュラーエコノミーを実現するための行動計画であり、気候変動や環境問題への対処に加えて、雇用や新たなビジネスの創出が掲げられています。具体的に欧州委員会はサーキュラーエコノミー政策をもとに、2030年まで200万人を新たに雇用し、6,000億ユーロ(約79兆円)の経済効果を生み出すと予想しています。

サーキュラーエコノミーの3原則とは

エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として以下を挙げています。

1.DESIGN OUT WASTE AND POLLUTION 廃棄物や汚染を生み出さない設計(デザイン)を行う

2.KEEP PRODUCTS AND MATERIALS IN USE 製品や原材料を使い続ける

3.REGENERATE NATURAL SYSTEMS 自然のシステムを再生する

参考:What Is the circular economy? (ellenmacarthurfoundation.org)

サーキュラーエコノミー5つのビジネスモデル

コンサルティング大手のアクセンチュアはサーキュラーエコノミーをビジネスに取り入れる上で軸となるビジネスモデルを5つ挙げています。

1.再生型サプライ

繰り返し再生し続ける、100%再生可能な原材料や生分解性のある原材料を導入する

2.回収とリサイクル

企業は寿命を迎えた製品を回収し、価値のある素材や部品、エネルギーを取り出して再利用する、あるいは製造工程から生じる廃棄物や副産物を再利用する

3.製品寿命の延長

廃棄された製品の多くはまだ使用することが可能です。製品寿命の延長ではこれらの製品を回収し、修理やアップグレード、再製造、再販することによって製品を保守・改善することで新たな価値を付与する

4.シェアリング・プラットフォーム

使用していない製品の貸し借り、共有、交換によって、消費者・企業・起業家に対して新たな事業機会を提供する

5.サービスとしての製品

消費者はモノを必要な時にだけ借りて使い、利用した分だけのサービス料金を支払うビジネスを提供する

SDGs CONNECTでは、サーキュラーエコノミーをテーマにアクセンチュアを取材し、記事を公開しています。

SDGsとサーキュラーエコノミーの関係性

サーキュラーエコノミーは、SDGsの「持続可能な成長を目指す」という点で重なる部分が多くあります。

サーキュラーエコノミーが貢献するSDGsの目標には4つのものが挙げられます。

12 つくる責任 つかう責任

→はじめから再利用可能であったり、長期利用可能なデザインや設計をすること

13 気候変動に具体的な対策を

→限りある資源を有効に使うことで、 生態系を守ることにつながります

14 海の豊かさを守ろう

→廃棄物を出さない設計なので、海に廃棄物が捨てられることを防ぎます

15 陸の豊かさも守ろう

→資源を有効に使うことが前提のため、資源の過剰利用を防ぎ、生態系を守ります

参考:サーキュラーエコノミーとは?新しい経済モデルで持続可能な社会に (myethicalchoice.com)

サーキュラーエコノミーのメリット

ビジネス形態がサーキュラーエコノミーに移行することで、人口の増加や大量生産・大量消費型の経済システムによって見込まれる経済損失を防げるため、莫大な経済価値が見込まれます。

2018年にOECD(経済協力開発機構)が発表した報告によると、世界の資源利用量は90ギガトンから、2060年までに167ギガトンに増加するといわれています。

対策がない状態で資源が採掘され続ければ、やがて資源が枯渇し、経済活動の停滞や環境破壊などの問題を招きます。そこでサーキュラーエコノミーのシステムを生かして、既に消費された製品の原料をリサイクルすれば、資源の無駄遣いを食い止められるのです。

アクセンチュアは、サーキュラーエコノミーの市場規模は2030年までに4.5兆ドルに上ると試算しています。

サーキュラーエコノミーが拡大すれば、ビジネスに対するマインドも環境の保全と一体となって動く流れが浸透していくことが予想されます。

そのため、環境と経済双方の世界的な危機を食い止める点においても、サーキュラーエコノミーに期待が寄せられています。

日本と世界のサーキュラーエコノミーの現状

世界のサーキュラーエコノミーの現状

欧州では、2015年の循環型経済行動計画やプラスチック戦略、エコデザイン指令などサーキュラーエコノミーにおいて、経済成長やグローバル社会におけるプレゼンスの向上にリーダーシップを取っています。

中国では、これまで「世界の工場」としてグローバルのモノづくりを支えてきましたが、周辺諸国からの廃棄物の輸入などにより環境懸念が増大し、2017年に「外国ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」を発表しました。廃棄物の輸入を規制するようになり、自国における環境負荷の低減に向けて注力しています。

またアメリカでは2012年にバイオエコノミーに関する戦略・目標を掲げた「National Bioeconomy Blueprint」を制定しており、自国資源やイノベーションエコシステムの活用を推進したいという思いからバイオテクノロジーへの投資を強めています。

日本のサーキュラーエコノミーの現状

日本では、3R(リユース・リデュース・リサイクル)を主軸とする環境活動を推進してきましたが、経済活動としての限界を迎えつつあります。

2020年5月には経済産業省が「循環経済ビジョン2020」を策定したり、経済や環境の分野で取り組みが紹介されたりと、日本でもサーキュラーエコノミーの知名度は上がっています。

しかし、他のリサイクルと比べると、サーキュラーエコノミーの取り組みはそれほど浸透しているとはいえません。

サーキュラーエコノミーの浸透において、諸外国に比べ遅れをとっている現状は拭い去れず、サーキュラーエコノミーへの転換が急務な状況となっています。

サーキュラーエコノミーのビジネスモデル

海外の取り組み事例① NIKE

アパレル大手のNIKEは、2018年の2月に使用済商品リサイクルを進展させるための公募プログラム「Nike Circular Innovation Challenge」を発表しました。

NIKEが回収したシューズの新たな再利用先に関する「Design Nike Grind」と、使用済シューズを原材料を還元させるための新技術に関する「Meterial Recovery」の2つについて広くアイデアを募りました。

このプログラムは、NIKEのサーキュラーエコノミーへの取り組みの一環としてはじめられたものです。

NIKEは、1990年に使用済シューズの自主回収プログラム「Reuse-a-Shoe」を開始しており、自社だけでなく他社のシューズも含め、これまでに3,000万足を回収しました。

回収されたシューズは「Nike Grind」と呼ばれるリサイクル素材となり、これまでに運動場や公園の表面材として使用されています。

海外の取り組み事例② アディダス

ドイツに本拠を置くスポーツ用品メーカーのアディダスは、2021年中にすべてのアディダス製品の60%以上を、持続可能な素材で作られたものにすると発表しました。

再生ポリエステルで作ったサッカー用のジャージや、アディダスの代表的製品であるスニーカーであるスタンスミスのヴィーガンバージョンなどが含まれます。

アディダスでは、2024年までにすべての製品に100%リサイクルポリエステルを採用することを公約にしており、海洋に廃棄されたプラスチックでつくるユニフォームなども提案しています。

製品は、リサイクルポリエステルや持続可能な製造工程を経て生産された綿で構成され、この取り組みによりプラスチック廃棄物をなくすという目標達成に近付くことができます。

海外の企取り組み事例③ ユニリーバ

ユニリーバではプラスチックのパッケージが環境に及ぼす影響を強く意識しています。そこで、プラスチック使用量の減少、より環境に良いプラスチックの使用、さらにはプラスチック使用の完全廃止を目指した戦略を促進するための新しい技術やビジネスモデルのパイオニアとなっています。

実際にプラスチックを使用する際は、サーキュラー・エコノミーへの移行を約束し、使用しています。

2017年1月にユニリーバは2025年までにすべてのプラスチック包装を再利用可能、リサイクル可能、または堆肥化可能にすることを発表しました。

これに加えて、少なくとも25%に私たちの包装中のリサイクルプラスチック含有量の使用を増やすことを公約にしました。

インドネシアにおいては、多層プラスチックに関して革新的な技術を試験的に実施しています。これは、使用済みのプラスチックを商業ベースで新しい製品に変えることを目的としています。これを成功させることで、ユニリーバはもちろん、業界全体においてリサイクルをより循環型のプロセスにする方法を生み出すことができます。

日本の取り組み事例① メルカリ

メルカリでは2020年7月株式会社メルカリは、新しいモノの循環に取り組む実験的な枠組みとして「MercariExperiments」を開始しました。

メルカリのミッションである「新たな価値を生み出す、世界的なマーケットプレイスを創る」を主軸におき、それによって、必要なモノが、必要な人に、必要な量だけ届くような循環型社会を目指します。

「Mercari Experiments」は、モノの循環に関わる様々な実験を行い、限りある資源の中でサステナブルで豊かな生活を実現していくための仕組みについて考えるきっかけをつくっていくものです。

「Mercari Experiments」では第一弾として、『繰り返し利用可能な梱包材「メルカリエコパック」プロジェクト』『廃材×デザインによるアップサイクルプロジェクト』『循環型社会について子どもたちに考えるきっかけを与えるプロジェクト』の3つを発表しました。

 

日本の取り組み事例② ファーストリテイリング

 

アパレル大手のファーストリテイリングのブランドであるユニクロは2020年9月に、回収したユニクロの服から再び服を作る循環型プロジェクト「RE.UNIQLO」をスタートし、ダウン商品を再生・再利用した新商品第1弾となる「リサイクル ダウンジャケット」を同年11月から発売しました。

このダウンジャケットには、昨年ユニクロが日本国内で回収した62万着のダウン商品のダウンとフェザーが100%使用されています。

また2020年9月下旬からは、ダウン商品の回収活動をグローバルに拡大し、日本を含む世界21ヶ国・地域で順次、回収キャンペーンを開始しました。

ユニクロは以前から、環境配慮素材の採用や、生産工程での水などの資源使用量削減を通じて、サステナブルな商品作りを進めています。

このRE.UNIQLOは、2006年から進めてきた「全商品リサイクル活動」の取り組みを進化させたものです。

日本の取り組み事例③ ユニ・チャーム

ベビー用品や生活用品の大手のユニ・チャームでは、紙おむつ製品のリサイクルシステム実現を進めています。

使用済みの紙おむつを回収し、洗浄や独自のオゾン処理などを経て、バージンパルプと同様の衛生的なパルプとして再資源化するというものです。

再資源化したパルプを新たな製品の素材にする仕組みです。洗浄などに使う処理水も再利用して、排水の削減も目指します。同社では同システムがもたらす効果として、「使用済み紙おむつを焼却してバージンパルプから新たな製品をつくる場合に比べ、温室効果ガス排出量を87%削減できる」としています。

さらにユニ・チャームでは、スリム化による製造や流通工程での二酸化炭素削減などを通し、持続可能な社会への適合を推進する商品を「エコチャーミング商品」と定義し、商品開発の時点から、環境配慮への視点導入を推奨しています。

参考:サーキュラーエコノミーとは?海外・日本企業の事例を紹介 | 知識・ノウハウ|ノベルティ・オリジナルグッズの紹介やトレンド情報を発信中|株式会社トランス(東京・大阪) (trans.co.jp)

まとめ

今回はサーキュラーエコノミーについて学んできました。

日本でも2021年3月に小泉環境相が「スプーンの有料化」という提案をし、話題になりました。

そのくらいプラスチックゴミの削減は大きな課題として考えられており、その解決策の1つとしてサーキュラーエコノミーの存在があります。

さまざまな場面で未来を救うサーキュラーエコノミーについて学び、今一度、資源の再利用について考えてみるのにこの記事が役立てたら嬉しいです。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

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