【更新日:2021年9月11日 by 森あゆみ】
SDGsに取り組む企業が増加しています。従来のCSRのように、社会に一方的に貢献するボランティア活動ではなく、事業を通して持続的な社会をつくるために、企業も社会の一員となって社会課題を解決しようという動きが強まっているからです。
一方で、SDGsと聞くと資金が潤沢な大企業が行うものというイメージもあり、社会全体でSDGsに取り組むためには、さらなるSDGsの取り組み強化が重要です。
今回は、日本国内と世界全体でSDGsに注力している企業ランキングを発表していきたいと思います。ランキング上位の企業を参考に、自社のSDGsの取り組みについて振り返ってみましょう。
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SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
▼各目標の詳細は以下の画像をクリック
▼SDGsについて詳しくはこちら
日本でSDGsに注力している企業
「企業版SDGs調査2020」
「企業版SDGs調査2020」とは
2020年3月調査とコンサルティングを専門に行うブランド総合研究所がインターネット調査でSDGsへの取り組みに注力している企業を調査し、「企業版SDGs調査2020」をランキング形式で発表しました。
調査対象は、業界ごとに売上規模の大きい企業やSDGsへの取り組みが盛んな企業を中心にブランド総合研究所が独自に210社を選定しました。その中から20歳以上の人を対象に年代、性別に偏りがないようにアンケートを回収しました。
各企業から500名、約10,000人の方の意見を元につくられたランキングです。
参考:企業版SDGs調査2020 結果発表。1位はトヨタ|地域ブランドNEWS (tiiki.jp)
評価ポイント
調査項目された項目は「認知度」「好感度」「利用経験」「投資意欲」「就職意欲」の5つで、商品、株式、環境、スポーツなど12項目からこの項目の評価を行いました。
その中でもランキング上位の企業が注力していたのが「ESG」の項目です。
最も影響が大きいのは「環境に配慮している」との評価で、他の項目より大幅に高く、SDGsの取組評価に環境への活動が大きく影響していることが分かります。
SDGsに取り組む企業100選
以下は「企業版SDGs調査2020」で上位100企業に選ばれた企業です。
上位3社の取り組み① トヨタ自動車
大手自動車メーカーであるトヨタは、自動車の排気ガスが地球温暖化に影響することを受け、先進的に電気自動車を開発し特許実施権を取得しました。環境問題は日本のみならず世界規模で取り組む必要性があるため、電気自動車をより多くの地域で普及するため、トヨタは、車両電動化技術の特許を無償で共有しています。
また、自動車の安全性を追求するために使われるバーチャル人体モデルTHUMSのデータも無償で共有し、全世界の誰でもアクセスができるようにしました。
トヨタは、自動車を作るだけでなく、根本的な人の移動を助けるためにヒューマノイドロボットの開発を手がけています。高齢化社会での介護に携わる人の代わりや、災害時の救急隊の代わりなどの場面でロボットが役立つでしょう。そして人は、ロボットの技術向上や、人材育成に集中することができます。
産業の問題点や取り組みに関しては、基礎知識の「目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう」でも紹介しているので興味のある方はあわせてご覧ください。
上位3社の取り組み② アサヒビール
酒類を主とした飲料を扱うアサヒビールでは目標3の「すべての人に健康と福祉を」に基づき「不適切な飲酒の撲滅」を掲げています。
具体的な取り組みとして、新社会人に向けた「正しいお酒の飲み方講座」の開催したり、
小学生に向けて31352部、20歳未満飲酒防止啓発ツール「どうする?どうなる?お酒のこと」の配布するなど未成年飲酒、一気飲みの撲滅などを目的としてSDGsに関連したさまざまな取り組みを行っています。
上位3社の取り組み③ 旭化成グループ
化学、繊維、住宅、建材、エレクトロニクス、医薬品、医療等の事業を行う日本の大手総合化学メーカーである旭化成はグループ全体でそれぞれ専門の事業内容に特化したSDGsの達成を目指しています。特に、太陽光発電設備設置による再生可能エネルギーの促進や災害時に備えた蓄電池の設置など、エネルギー関連の目標に貢献しています。
旭化成の住宅事業を請け負う旭化成ホームズは、戸建住宅「ヘーベルハウス」及び賃貸住宅「ヘーベルメゾン」への太陽光発電設備設置を積極的に推進しています。都市部の限られた屋根面積に高容量のパネルを設置する独自技術の開発や、災害時における電力のレジリエンス強化を目指した蓄電池の併用設置などを促進しています。2038年までに事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指しています。
エネルギー問題とそれに対する取り組みに関しては、基礎知識の「目標7エネルギーをみんなにそしてクリーンに」でも紹介しているので興味のある方はあわせてご覧ください。
世界でSDGsに注力している企業
「2020 Global 100」
「2020 Global 100」とは
毎年恒例で世界経済フォーラム(WEF)がスイスのダボスで行っている年次総会(ダボス会議)で発表されるのが「2020 Global 100」です。
この「2020 Global 100」は、サステナビリティの観点で世界各国の企業を評価するもので正式名称を「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」と言います。
ここで発表された結果は、カナダの出版社Corporate Knights社によって「世界で最も持続可能性のある企業100社」(ランキング)として発表されることもあって、毎年注目が集まるセッションになっています。
評価されるポイント
評価は大きく分けて「スクリーニング」と「スコアリング」の2点に分かれ、はじめに行われるスクリーニングに通過した企業のみがスコアリングに移ることができます。
スクリーニングの評価ポイントは主に以下の項目です。
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いずれも厳しい条件が設定されており、まずこのスクリーニングが大きな関門になります。
スコアリングの評価ポイントはさまざまな評価軸から見られ、「その業界として正しい姿か」ということが重点に置かれます。
最終ランキングも全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られた後に、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てられ、最後に、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられるという仕組みになっています。
選ばれた日本企業
日本の企業としては、「積水化学工業」「武田薬品工業」「コニカミノルタ」「花王」「パナソニック」「トヨタ自動車」の6社がランクインしました。
日本企業のランクイン数は、2015年に1社、2016年と2017年、2018年は4社で、2019年は8社まで増えましたが、2020年は残念ながら6社に減ってしまいました。
武田薬品工業は5年連続、積水化学工業も3年連続、トヨタ自動車も2年連続でランクインしています。
今回の日本の企業の中で最上位は、積水化学工業の12位で、それ以外は60位以内には入れないという結果でした。
SDGsに取り組む企業 トップ10
順位 | 企業名 | 国 | 業界 |
1 | クリスチャン・ハンセン | デンマーク | バイオ |
2 | ケリング | フランス | アパレル |
3 | ネステ(Neste) | フィンランド | エネルギー |
4 | オーステッド | デンマーク | エネルギー |
5 | グラクソ・スミスクライン | イギリス | 医薬品 |
6 | プロロジス | アメリカ | 不動産 |
7 | ユミコア | ベルギー | 金属 |
8 | ブラジル銀行 | ブラジル | 金融 |
9 | 新韓金融フィナンシャルグループ | 大韓民国 | 金融 |
10 | TSMC | 台湾 | 製造業 |
上位3社の取り組み① ケリング(フランス)
GUCCIやBalenciagaを傘下に置くフランス大手のファッション・宝飾品企業であるケリングでは2003年からサステイナブルな取り組みが行われています。。
2003年にサステナビリティ専門チームが設置され、環境報告のためのデジタルプラットフォームを開設しました。2019年にはグループ全体としての排出削減、気候リスク緩和、低炭素経済構築などの取り組みが評価され、ケリングは3年連続で、国際的な環境非営利団体CDPより「気候変動Aリスト」企業として選出された唯一のラグジュアリー・グループに選出されています。
また、環境問題だけでなく、多くの偏見や差別を根絶すべく、さまざまな社会問題の解決に向けての取り組みもなされています。2008年には、女性に対する暴力の根絶を目指すケリング・ファウンデーションを設立し、フランソワ=アンリ・ピノーが会長を務めるこの財団は、国内外のNGOの活動支援、社会起業家のサポート、啓発活動の実施という3つの活動を中心に取り組んでいます。
上位3社の取り組み② クリスチャン・ハンセン(デンマーク)
乳酸菌やビフィズス菌など、食品添加物に使用される培養・プロバイオティクスの分野で有名なクリスチャン・ハンセンではSDGsの目標だけでなくターゲットまで分析していることが大きく評価されています。
▼SDGsのターゲットについてはこちらの記事をご覧ください▼
会社の事業が最もインパクトを及ぼす領域として、SDGsのうち、目標2(飢餓をゼロに)、目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標12(つくる責任つかう責任)を特定しており、各目標のターゲットまで詳細に分析しています。
例えば、目標12については、ターゲットを12.3(食品廃棄物の半減)と12.4(ライフサイクルを通じた化学物質や廃棄物の管理)に絞った上で、「2020年までにヨーグルトの廃棄量を70万トン削減する」という具体的な目標を掲げて活動を行っています。
またクリスチャン・ハンセンのSDGsへの取り組み方法やプロセスについては、企業の監査やアシュアランスを行うPwCが国際ガイドライン「ISAE3000」に基づいて保証を実施しています。
このように徹底的な分析とその活動を主観ではなく、客観として捉えている姿勢が評価されている企業です。
上位3社の取り組み③ ネステ(フィンランド)
世界有数のエネルギー企業として有名なネステは他業界との協力が取り組みの1つとして挙げられています。
イギリスのユニリーバとリサイクリング・テクノロジーズと合同で、イギリスで発生する廃プラスチック容器・包装のケミカルリサイクル技術の開発で3年間のパートナーシップを締結したと2020年10月に発表しました。
今回の3社プロジェクトでは、リサイクリング・テクノロジーズが、プラスチック容器・包装をケミカルリサイクルで油脂「Plaxx」に還元した後に、ネステの工場で石油に混入しプラスチック製品を生成します。
これは、従来リサイクルが難しいと言われていたプラスチック製品をリサイクルし、新たな包装・容器を生産することにチャレンジするプロジェクトです。
まとめ
今回は日本と海外でSDGsに力を入れている企業のランキングを見てみました。
海外、特にSDGs先進国と呼ばれるスウェーデン・フィンランド・デンマークなどの企業にはまだまだ日本は追いつけていないという現状があります。
それでも国の垣根を越えてこれだけ多くの企業が日々、世界を良くするために活動していると思うと本当にSDGsの目標が達成される日も近付いている気がします。