【更新日:2021年9月11日 by 森あゆみ】
今、政府はSDGs未来都市を推進しています。
「未来都市」という言葉を聞いてどんな都市を想像しますか?
SFに出てくるような車が空を飛ぶ都市を想像する方も多いかもしれません。
しかしSDGs未来都市が目指す世界は、SFに出てくる未来都市とは全く異なります。
現在、多くの自治体がSDGs未来都としてSDGs普及の活動しています。
今回は注目を集めている「SDGs未来都市」について、どんな自治体が選ばれているのか、実際にどんな取り組みをしているのか詳しく見ていきましょう。
「SDGs未来都市」とは
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
▼各目標の詳細は以下の画像をクリック
▼SDGsについて詳しくはこちら
SDGs未来都市とは
SDGs未来都市とは、SDGsの理念に沿った基本的・総合的取り組みを推進しようとする都市・地域の中から特に、経済・社会・環境の3側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高いとして選定された都市・地域です。
SDGs未来都市を選定する理由は、中長期を見通した持続可能なまちづくりを実現するためです。令和2年度において、SDGs未来都市は33都市(34自治体)選定されており、その中でも特に優れた取り組みをする10の事業は自治体SDGsモデル事業として選定されました。
選定された都市・地域・事業は自治体SDGs推進関係省庁タスクフォースからの省庁横断的な支援とともに、持続可能なまちづくりを目指します。
(参照:令和2年7月16日 永田クラブ、経済研究会へ公表 内閣府地方創生推進室 令和2年度「S)
未来都市の3つの姿
政府が推進する未来都市には3つの姿があります。
それは「環境モデル都市」「環境未来都市」「SDGs未来都市」です。
環境モデル都市とは、地域資源を最大限活用し、低炭素社会と持続可能な社会実現に向けて、高い目標を掲げて取り組む地域・都市が選定されるものです。
環境未来都市とは、環境モデル都市に加え「環境」「社会」「経済」の3つの価値創造と実現を目指し、取り組む地域・都市が選定されます。
SDGs未来都市とは、環境未来都市に加え、地方創生につながる「自治体SDGs」として、地域のステークホルダーと連携し、SDGs達成に向けて戦略的に取り組んでいる地域・都市が選定されます。
日本では2008年から持続可能な経済社会実現に向けて「環境モデル都市」と「環境未来都市」を選定していました。
それに加えて、地方創生を一層促進することを目的として、SDGs達成に向けた取り組みを提案する都市がSDGs未来都市として選定されています。2018年度から毎年選定されており、各年度最大30都市が選ばれます。
(参考:「SDGs未来都市」とは?1分でわかるSDGs未来都市 )
自治体SDGsモデル事業とは
SDGsの達成に向けた優れた取り組みをする都市を「SDGs未来都市」に選定していますが、その中でも特に先導的な10の取り組みは「自治体SDGsモデル事業」に選ばれます。
自治体SDGsモデル事業は、「SDGsの理念に沿った統合的取り組みにより、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を通して、持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い先導的取り組みであって、多様なステイクホルダーとの連携を通し、地域における自律的好循環が見込める事業」と定義されています。
今後、これらの自治体の取り組みを支援するとともに、事業の成功例を広め、地方創生につなげていくことが目指されています。
(参考:result01.pdf (kantei.go.jp))
(参考:自治体SDGsモデル事業とは?選ばれている都市や事業の内容 )
SDGs未来都市の選定方法/基準・一覧
SDGs未来都市の公募から選定までの一連の流れは、毎年2月から6月頃に行われます。
スケジュールは毎年、以下のように進んでいきます。
4月中旬に行われる対象自治体へのヒアリングは、1都市25分程度(プレゼン10分、質疑15分)を目安に行われます。
選定基準は大きく以下の3つに分類されます。
- 全体計画(自治体全体でのSDGsの取組)
- 自治体SDGsモデル事業(とくに注力する先導的取組)
- 委員による参考意見
の3つの項目も細分化されており、詳しい項目別に点数が付けられます。
合計得点が高かった都市からヒアリング対象に選定され、そのヒアリングの結果も踏まえて、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業が決定されます。
(参考:持続可能なまちづくりを目指す「SDGs未来都市」とは 選定される2つのメリットと評価方法 | ELEMINIST(エレミニスト))
SDGs未来都市に選ばれている自治体一覧
2020年のSDGs未来都市に選定された自治体は以下の33都市です。
自治体名 | 事業名 |
岩手県岩手町 | トリプルボトムラインによる町の持続可能性向上モデルの構築・実証 ~SDGs姉妹都市×リビングラボ~ |
宮城県仙台市 | 「防災環境都市・仙台」の推進 |
宮城県石巻市 | 最大の被災地から未来都市石巻を目指して~グリーンスローモビリティと「おたがいさま」で支え合う持続可能なまちづくり~ |
山形県鶴岡市 | 森・食・農の文化と先端生命科学が共生する‟いのち輝く、創造と伝統のまち 鶴岡“ |
埼玉県春日部市 | 春日部2世、3世その先へと住みつなぐまち~未来へ発信する世代循環プロジェクト~ |
東京都豊島区 | 消滅可能性都市からの脱却~持続して発展できる「国際アート・カルチャー都市」への挑戦~ |
神奈川県相模原市 | 都市と自然 人と人 共にささえあい生きるさがみはらSDGs構想 |
石川県金沢市 | 世界の交流拠点都市金沢の実現 ~市民と来街者が「しあわせ」を共創するまち~ |
石川県加賀市 | 官民協働のスマートシティによる持続可能なまち |
石川県能美市 | 能美市SDGs未来都市 暮らしやすさ日本一実感できるまちへ |
長野県大町市 | SDGs共創パートナーシップにより育む「水が生まれる信濃おおまち」サステナブル・タウン構想 |
岐阜県 | SDGsを原動力とした持続可能な「清流の国ぎふ」の実現 |
静岡県富士市 | 富士山とともに 輝く未来を拓くまち ふじ |
静岡県掛川市 | 市民協働によるサステナブルなまちづくり |
愛知県岡崎市 | “みなも”きらめく 公民連携サスティナブル城下町 OKAZAKI~乙川リバーフロントエリア~ |
三重県 | 若者と創るみえの未来~持続可能な社会の構築~ |
三重県いなべ市 | グリーンクリエイティブいなべ ~グリーンインフラ商業施設「にぎわいの森」から、カジュアルなSDGs推進を世界へ~ |
滋賀県湖南市 | さりげない支えあいのまちづくり こなんSDGs未来都市の実現【シュタットベルケ構想 |
京都府亀岡市 | 「かめおか霧の芸術祭」 x X(かけるエックス)~持続可能性を生み出すイノベーションハブ~ |
大阪府大阪市 | 2025年大阪・関西万博をインパクトとした「SDGs先進都市」の実現に向けて |
大阪府豊中市 | とよなかSDGs未来都市~明日がもっと楽しみなまち~ |
大阪府富田林市 | SDGsを共通言語としたマルチパートナーシップによる“富田林版”いのち輝く未来社会のデザイン |
兵庫県明石市 | SDGs未来安心都市・明石 ~いつまでも すべての人に やさしいまちを みんなで~ |
岡山県倉敷市 | 多様な人材が活躍し、自然と共存する“持続可能な流域暮らし”の創造~高梁川流域圏の発展は倉敷市の発展~ |
広島県東広島市 | SDGs未来都市東広島 未来に挑戦する自然豊かな国際学術研究都市 |
香川県三豊市 | せとうちの海と山とまち~ひろく豊かな田園都市・多極分散ネットワーク型みとよ形成事業 |
愛媛県松山市 | みんなを笑顔に “観光未来都市まつやま” ~瀬戸内の 島・里・山を つなぐまち~ |
高知県土佐町 | 持続可能な水源のまち土佐町~人々の豊かな営みが「世界」を潤す水を育む~ |
福岡県宗像市 | 「世界遺産の海」とともに生きるSDGs未来都市 むなかた |
長崎県対馬市 | 自立と循環の宝の島~サーキュラーエコノミーアイランド対馬~ |
熊本県水俣市 | みんなが幸せを感じ、笑顔あふれる元気なまちづくり |
鹿児島県鹿児島市 | “活火山・桜島”と共生し発展する持続可能なSDGs未来都市・鹿児島市 |
沖縄県石垣市 | 自然と文化で創る未来~守り・繋ぎ・活きる島 石垣~ |
※都道府県・市区町村コード順
※太字は自治体SDGsモデル事業の自治体(次項目でも紹介)
(参考:sdgs_r2futurecity.pdf (kantei.go.jp))
自治体SDGsモデル事業の自治体一覧
2020年の自治体SDGsモデル事業に選定された自治体は以下の10都市です。
自治体名 | 事業名 |
宮城県石巻市 | コミュニティを核とした持続可能な地域社会の構築 |
東京都豊島区 | 国際アート・カルチャー都市 実現戦略実施事業 |
石川県金沢市 | 市民生活と調和した持続可能な観光の振興
~「責任ある観光」により市民と観光客、双方の「しあわせ」を実現するまち金沢~ |
三重県いなべ市 | グリーンクリエイティブいなべ
~グリーンインフラ商業施設「にぎわいの森」から、カジュアルなSDGs推進を世界へ~ |
京都府亀岡市 | 「かめおか霧の芸術祭」 x X(かけるエックス)
~持続可能性を生み出すイノベーションハブ~ |
大阪府大阪市 | 大阪発「大阪ブルー・ オーシャン・ ビジョン」推進プロジェクト |
大阪府富田林市 | 富田林発!「商助」によるいのち輝く未来社会の実現プロジェクト |
岡山県倉敷市 | 多様な人材が活躍し,自然と共存する“持続可能な流域暮らし”の創造事業
~高梁川流域圏の発展は倉敷市の発展~ |
愛媛県松山市 | “観光未来都市まつやま”推進事業 |
沖縄県石垣市 | 石垣SDGsプラットフォームを活用した
「離島におけるSDGs課題解決モデル(=石垣SDGsモデル)」構築事業 |
※都道府県・市区町村コード順
(参考:result01.pdf (kantei.go.jp))
SDGs未来都市の3つのメリット
メリット① 社会全体のメリット
SDGs未来都市が生み出す社会全体へのメリットは、地方自治体から確かな一歩を踏み出せる点にあります。
地域全体を活性化できれば、そこに暮らす人々の暮らしはより豊かで、より良いものになっていきます。
現在の問題を解決するだけでなく、少子高齢化や経済縮小といった問題が解決に向かえば、次世代を生きる子どもたちの負担も、軽くなっていきます。
(参考:持続可能なまちづくりを目指す「SDGs未来都市」とは 選定される2つのメリットと評価方法 | ELEMINIST(エレミニスト))
メリット② 自治体のメリット 広報活動の一環として
SDGs未来都市に選定された都市は、自治体SDGs推進関係省庁タスクフォースによる強力な広報のための支援を受けられます。
各省庁の支援施策活用に関する助言があったり、成功事例の国内外への発信支援としてSDGsに対して先進的な取り組みを行う自治体として公式に対外向けに認知されるようになります。
世界的に注目されることもあり、さまざまなチャンスにつながっていきます。
(参考:持続可能なまちづくりを目指す「SDGs未来都市」とは 選定される2つのメリットと評価方法 | ELEMINIST(エレミニスト))
メリット③ 自治体のメリット 国からの経済的支援
自治体SDGsモデル事業に選定されれば、国から補助金が支給されることも自治体にとって大きなメリットです。
使用できる項目は「全体マネジメント・普及啓発等経費」「事業実施経費」の2つに限定されますが、
2020年度選定のモデル事業の場合は、2つを合わせて3,000万円までの補助金が設定されており、多様なステークホルダーとの連携のもと、より強力に事業を推進できます。
(参考:13_toriatukai.pdf (kantei.go.jp))
SDGs未来都市の事例
取り組み① 埼玉県春日部市 ~春日部2世、3世その先へと住みつなぐまち~未来へ発信する世代循環プロジェクト~
2020年7月、春日部市はSDGsの達成に向け優れた取り組みを進める「SDGs未来都市」に選定されました。
春日部市は、誰もが「住んでみたい、住み続けたい」と思う町の実現に向けて取り組んでいます。
春日部市の具体的な活動は
「人が行き交うにぎわいの創出、全ての人にとっての快適な暮らし、環境に配慮し自然と共生する暮らしの実現」
「武里団地と周辺において、「人」をつなぐ「交流促進」、「まち」をつなぐ「環境整備」、「人」と「まち」をつなぐ「魅力創造」によって、世代が循環し続ける持続可能かつ幸福感のあるエリア形成」
という2つのテーマを元としてSDGsの達成を目指す計画を提案しました。
(参考:SDGs未来都市に選定されました/春日部市公式ホームページ (kasukabe.lg.jp))
取り組み② 東京都豊島区 消滅可能性都市からの脱却~持続して発展できる「国際アート・カルチャー都市」への挑戦~
2020年7月に東京都豊島区は「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。
「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」のどちらも選定されるのは、東京都初です。
2014年に消滅可能性都市になった豊島区はそこからの脱却し、持続発展する都市として「誰もが主役になれる」まちを目指す「国際アート・カルチャー都市」への歩みをはじめました。
区が強みとする「公と民の連携“オールとしま”」や「国際交流・まちづくり事業など東アジア文化都市のレガシー」をフル活用し、「“まち全体が舞台の誰もが主役になれる”国際アート・カルチャー都市」を実現しています。
具体的には「池袋駅周辺4公園を核にしたまちづくり」や「暮らしの中にある小さな公園の活用」を掲げ、地域や公園の特性を生かしながら、身近な公園での過ごし方を提案しています。
(参考:豊島区が「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定されました!|豊島区公式ホームページ)
取り組み③ 神奈川県相模原市 都市と自然 人と人 共にささえあい生きるさがみはらSDGs構想
2020年7月、相模原市が「SDGs未来都市」に選定されました。
SDGsの推進に向けた取組と、発展を続ける都市部と雄大な自然の調和や共生社会の推進など、高いポテンシャルが評価されて選定に至りました。
相模原市ではSDGsの普及に力を入れており、市でSDGs専門メディアを運営したり、SNSを使用してSDGsの普及に取り組んでいます。
パートナーとして活動している企業の取り組みを紹介したり、SDGsの基礎知識などを分かりやすく市の内外に伝えています。
▼相模原のSDGsメディアはこちらから▼
▼運営のSNSはこちらから▼
Twitter:@SDGs_sagamihara
(参考:SDGs one by one – SDGs(エスディジーズ)を楽しく学ぶメディアサイト by 相模原市 )
まとめ
「未来都市」は日本の未来を作っていく活動をしている自治体のことを指します。
みなさんは自分の住む町がSDGsにどのように関わっているか考えたことはありますか?
今回は実際にSDGs未来都市に選ばれている都市を紹介しましたが、それ以外にも多くの都市がSDGsの取り組みを行っています。
自分の住む町がどんな町を目指しているのか、SDGsに関してどんな意識を持っているのか、に興味を持って調べてみるとより自分の町に愛着が持てるのではないでしょうか。