企業の食品ロス削減への取り組み10選-食品ロスの現状や原因も解説

#外食#物流#経営#食品ロス#飢餓 2022.09.08

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企業による食品ロス削減の取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。

日本では年間約522万tの食品ロスが発生しています。その内およそ53%が事業系食品ロスです。そのため、企業は食品ロス削減に取り組むことが急務となっています。

今回は、食品ロスの概要から現状、発生する原因を概説します。さらに10社の食品ロス削減に向けた取り組み事例を紹介します。

▼SDGsについて詳しくはこちら

食品ロスとは

食品がゴミ箱に捨てられてる様子

食品ロス(フードロス)とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。

食品ロスは生産者の時間と労力や消費者のお金を無駄にしてしまいます。それだけでなく、食品ロスは環境にも悪影響を及ぼします。

食品ロス削減は食料資源の有効利用や地球温暖の抑制につながり、持続可能な社会の実現に貢献につながるのです。

日本の食品ロスの現状|約522万t

令和2年度の日本の食品ロスの量は約522万tでした。(農林水産省推計値)

この数値を日本人ひとり当たりに換算すると年間で約41kgです。
これは日本人ひとり当たりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと近い量になります。

食品ロスは大きく「事業系食品ロス」と「家庭用食品ロス」の2つに分類できます。

522万tのうち、事業系食品ロスが53%(約275万t)、家庭系食品ロスが47%(約247万t)です。

さらに事業系食品ロスは4業種に分類できます。

  • 食品製造業(食品メーカー):約121万t
  • 食品卸売業:約13万t
  • 食品小売業(スーパーやコンビニなど):約60万t
  • 外食産業:約81万t

家庭での食品ロスを減らすことに加え、企業が食品ロスを減らすことが非常に重要です。

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食品ロスは日本でどのくらい出ている?-原因から取り組みまで徹底解説

参考:食品ロスとは:農林水産省

世界の食品ロスの現状|13億t

世界の年間の食品ロスは約13億tです。

FAO(国際連合食料農業機関)は、この量は世界の食料生産量の3分の1に匹敵すると報告しています。

先進国では、災害や凶作による食料不足を防ぐための過剰生産や、食品の見た目に対する厳しい基準などが食品ロスを生んでいるのです。

食品ロスが発生している一方で、世界では9人に1人が十分な食事を摂れず、栄養不足に陥っています。

しかし、食品ロスが生じているのは先進国だけではありません。
途上国でも収穫における技術とインフラ設備の不足などが食品ロスを生み出しています。

食品ロスとSDGsの関係性

A collection of Japanese vegetables cut up for cooking and various recipes.

食品ロスと最も関係が深いSDGsは、目標12「つくる責任つかう責任」です。

特にSDGs12ターゲット3は、
「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンに置ける食料の損失を減少させる」です。

目標12だけでなく、食品ロス削減は他のSDGs目標とも関連します。

例えば、食品ロスの問題が食料不足と関係する点から目標2「飢餓をゼロに」とつながり、
食品ロスの問題が環境問題と関係する点から目標13「気候変動に具体的な対策を」ともつながります。

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《必見》SDGs×食品|食品企業や農林水産省の取り組みまで徹底解説
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食品ロスが発生する4つの原因

なぜ食品ロスが生まれてしまうのでしょうか。

事業系食品ロスの主な原因は

  • 規格外品
  • 売れ残り食品
  • 外食時の食べ残し

です。

家庭系食品ロスの主な原因は

  • 家庭内での食べ残し
  • 賞味・消費期限切れ

です。

これらの原因について詳しく見ていきましょう。

生産・加工段階での規格外品

A pile of organic potatoes . Also known as spuds.

規格外品とは、重量や容量、色、形状が当該商品の標準と異なるものや、包材の不良が発生した商品のことです。

規格外品は味や栄養価、安全性には何ら問題がありません。しかし、規格外という理由だけで廃棄されるのです。

規格外品は農家の生産段階や工場の製造過程で生じます。特に先進国では、商品の見栄えに高い品質基準があります。

規格外品は市場に出回る前に廃棄処分されてしまうことが多いため、その廃棄量は食品ロスの統計に含まれていません。
そのため、「隠れ食品ロス」とも呼ばれています。

スーパーやコンビニでの売れ残り商品

Woman shopping in a supermarket

スーパーやコンビニでは、豊富な品揃えを維持するために多くの在庫を抱えています。

しかし、販売期限内に全てを売り切れず、廃棄されてしまう商品も多く存在します。

家庭内や外食時の大量の食べ残し

Directly above view of a partially eaten plate of pancakes and fruit

家庭内でのごはんの作りすぎや好き嫌いによる「食べ残し」は家庭系食品ロスの大きな原因です。

家庭だけでなく、飲食店での過剰な注文も食べ残しを生む原因です。
飲食店から廃棄される食品ロスの約6割が客の食べ残しであると言われています。

家庭での賞味・消費期限切れによる食品廃棄

Finger pointing at the expiry date on canned food

賞味・消費期限切れによる廃棄も家庭からでる食品ロスの原因です。

賞味・消費期限を切らしてしまう理由としては

  • 食品の買いすぎ、まとめ買い
  • 冷蔵庫にある食材のチェック不足
  • 賞味・消費期限のチェック不足
  • 冷蔵庫の奥にしまったまま忘れてしまう

などが挙げられます。

▼関連記事
食品ロスが問題である3つの理由-原因から食品ロスを減らすための対策を紹介

企業が食品ロス削減に取り組むメリットとは?

企業が食品ロス削減に取り組むメリットは大きく2つあります。

1つ目はコストを抑えられることです。
食品ロス分を生産しなければ、その分の原材料や人件費を省けます。
また、廃棄の際に掛かる費用もカットできるため、結果として企業の利益アップにつながります。

2つめは環境問題への取り組みとしてアピールしやすいことです。
食品ロス削減は、食品を焼却廃棄する際に発生するCO2の削減やさまざまな環境問題解決に直結します。
環境問題への取り組みに貢献すれば、企業としての信頼性やイメージアップにつながります。

企業の食品ロス削減に向けた取り組み事例10選

ここからは企業の食品ロス削減に向けた取り組み事例を紹介します。

食品製造業(食品メーカー)の事例としては

  • キユーピー
  • ブルドックソース

食品卸売業の事例としては

  • 伊藤忠商事
  • 日本アクセス
  • 国分グループ

食品小売業(スーパーやコンビニなど)の事例としては

  • マルエツ
  • セブンイレブン

外食産業の事例としては

  • スターバックス
  • スシロー

さらに食品ロス削減を主な事業とするスタートアップ企業として

  • クラダシ
  • コークッキング

を例に紹介します。

キユーピーは卵の100%有効活用に取り組む

キユーピー株式会社は、限りある食資源を利用する食品メーカーの重要な責任として、食品ロスの削減・有効活用を掲げると発表しました。

同社はさまざまな食品ロス削減活動を行っていますが、今回はその中でも「食品ロス削減のためのメニュー提案」と「卵の100%有効活用」を紹介します。

「食品ロス削減のためのメニュー提案」では、野菜の外葉や芯など捨ててしまいがちな部位を少しの工夫でおいしい食材として活用することをおすすめしています。
同事業を通して、家庭内で実践できる食品ロス削減の取り組みを支援しているのです。

▼キユーピーの「食品ロス削減のためのメニュー」はこちら
使わないのはもったいない!野菜の意外な食べ方

また、キユーピーは「卵の100%有効活用」を掲げています。
「キユーピーマヨネーズ」は卵黄だけを使用しますが、卵白はかまぼこなどの水産練り商品や、ケーキなどの製菓の原料として使われています。
また、年間2万8千トン発生する卵殻は土壌改良剤やカルシウム強化食品の添加材などに有効活用されており、卵殻膜は、化粧品などへの高度利用に取り組まれているのです。

キユーピーは卵を無駄なく使い、食品ロス削減に貢献しています。

ブルドックソースは規格外キャベツを用いてキャンペーンを実施

ブルドックソース株式会社と株式会社Day1は、生産者支援と食品ロス削減の理由から規格外農産物であるキャベツの買い上げをすると発表しました。

規格外キャベツは、中心部分に割れが入っているなどで、青果としての出荷が難しく、廃棄される予定でした。
同社は規格外キャベツを有料で買い取り、自社商品の原材料として利用しているのです。そうすることで生産者の収入となるとともに、廃棄コストの削減ができます。

また、ブルドックソースの商品と一緒にキャベツを青果としてプレゼントするキャンペーンを展開すると発表しました。
同キャンペーンにより、新商品の販売促進と食品ロス削減によるSDGs寄与をアピールしています。

参照:規格外農産物とセットでプレゼント 食品ロス削減でSDGs

伊藤忠商事と日本アクセスはAIを用いて発送を最適化

伊藤忠商事株式会社は株式会社日本アクセスと連携し、日本アクセスから食品メーカーに対する発注に関し、AIを用いた需要予測及び発注最適化のソリューション導入を開始することを発表しました。
2社はこれを皮切りに食品サプライチェーンDXを本格的に展開する予定です。

まず同プログラムでは、一般消費者向けの飲料や酒、菓子などの常温商品から開始し、順次対象を拡大します。

将来的には、食品卸だけでなく、取引先メーカーの工場稼働・物流倉庫の効率化や小売におけるフードロスや機会ロス削減に寄与するサービスの提供を目指します。

参照:食品サプライチェーンDXの本格的な展開について

国分グループは自社商品の賞味期限の延長開発を行う

国分グループ株式会社は自社商品開発で食品ロス削減対策を行うと発表しました。

缶詰・瓶詰の消費期限を年月表示への変更や、レトルト食品・フリーズドライ製品の賞味期限延長、賞味期限の長い惣菜の開発などに取り組んでいます。

賞味期限においては経時変化を確認し、安全を担保できる賞味期限を製造元と協議し延長しています。

参照:サステナビリティ – 国分グループ本社株式会社

マルエツでは「フードドライブ」活動を開始

株式会社マルエツは、2021年4月から2店舗で「フードドライブ」活動を開始すると発表しました。

「フードドライブ」活動とは、顧客の協力のもと、家庭で余っている食品を店舗へ持ち込んでもらい、フードバンク団体などへ寄付する活動のことです。

同社は、食に不安を抱く子育て家庭の増加、地域社会の課題解決や食品ロス削減に貢献するために店内に常設型の寄付ボックスを設置しています。

また、同社は外箱の損傷などの理由から店舗で販売困難な商品のうち、未開封かつ賞味期限以内の食料品も提供しています。

参照:マルエツ/都内2店舗で「フードドライブ」開始 – 流通ニュース

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スーパーの食品ロス削減への対策7選-食品ロスの原因や削減事例も解説

セブン&アイグループは2050年までに食品リサイクル100%を目指す

セブン&アイグループは食品ロス・食品リサイクル対策として以下を発表しました。

  • 食品リサイクル率を2030までに70%、2050に100%すること
  • 食品廃棄物量を2013年と比較して2030年までに50%削減、2050年に70%削減すること

同グループはさまざまな食品ロス削減活動を行っていますが、今回はその中でも「エシカルプロジェクト」と「エコ物流の運用」を紹介します。

セブン-イレブン・ジャパンは2020年5月から膳孤高の店舗で食品ロス削減を目的に「エシカルプロジェクト」を開始すると発表しました。
エシカルプロジェクトとは、おにぎりやパン、惣菜、スイーツなど合計7つの分野において、販売期限が近づいた対象商品に店頭税抜価格の5%分をnanacoボーナスポイントを付与しています。
これにより食品廃棄物の発生を抑制する取り組みです。

また同社では、廃棄物の定期性処理・リサイクルを推進する仕組みとして「エコ物流」を1994年から推奨しています。
エコ物流とは、地域ごとに加盟店へ推奨した廃棄物処理業者がセブン-イレブン各店舗から排出する廃棄物を一括して収集し、適切な処理とリサイクルを推進することです。
この仕組みの中で、販売期限切れ商品の飼料・堆肥などへの食品リサイクルに取り組んでいます。
その結果、販売期限切れ商品と廃食油を合わせた食品リサイクル率は、2020年度46.6%となりました。

スターバックスは「フードロス削減」を目指す

スターバックスコーヒージャパン株式会社は、2021年8月から、「フードロス削減」を目指すプログラムをスタートしました。

同プログラムではドーナツやケーキ、サンドイッチなどの店舗ごとの当日の在庫状況に応じて、閉店三時間前をめどに20%OFFで販売します。
これにより販売を促進して食品ロスの削減を目指します。

また、同プログラムによる売上の一部を認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえに寄付し、地域のこどもたちの食を通じたより良い未来づくりにつなげているのです。

消費者からは「スターバックスで買うことでいいことに貢献できる」、「少しでも廃棄を減らすことができるのなら」などの意見が上がっています。
こうした寄付活動が消費者の食品ロス削減意識をさらに向上させていると捉えられます。

参照:スターバックスのフードロス削減のためのプログラム

スシローはDXで食品ロス削減に挑戦

株式会社あきんどスシローは、DXを用いて食品ロス削減に挑むと発表しました。

スシローは、ITを活用した「回転すし総合管理システム」を導入し、販売動向の管理や需要予測によって廃棄食材を減らしています。

ひとつひとつの皿にICタグを取り付け、どのネタがいつレーンから取られたのかをリアルタイムに把握し、そのデータを基に高い精度で需要を予測します。
解析するデータの数=商品が載った皿数は、1年間で10億件です。

予測するのは着席から1分後と15分後にお客さまが求める皿の数で、その数字を参考にして商品をレーンに流します。

参照:食品ロス削減にDXで挑む | 株式会社FOOD & LIFE COMPANIES

クラダシはショッピングサイトでフードロス削減と社会貢献活動を同時に行う

株式会社クラダシは、フードロス削減と社会貢献活動を同時に行う社会貢献ショッピングサイト「KURADASHI」を運営しています。

クラダシのビジョンは「日本で最もフードロスを削減する会社」です。

食品の賞味期限の切迫や季節商品、パッケージの汚れやキズ、自然災害による被害などの要因で、消費可能でありながら通常の流通ルートでの販売が困難な商品を買い取り、「KURADASHI」で販売することでフードロスの削減に取り組んでいます。

2022年3月までのKURADASHIのフードロス削減量は、9889トンにおよび、それによってCO2削減と経済効果にも貢献しています。

▼KURADASHIのショッピングサイトはこちら
Kuradashi|楽しいお買い物で、みんなトクする

コークッキングは「TABETEレスキューデリ」アプリで食品ロス削減に挑む

株式会社コークッキングは日本初の商業施設・駅ナカフードロス削減サービスとして「TABETEレスキューデリ」アプリを運営しています。

レスキューデリは、閉店後に余ってしまった施設内各テナント様の商品を同社が買い取り、施設の従業員の方へ向けて販売をするフードロス削減サービスです。

レスキューデリは食品ロス削減だけでなく、経済的なメリットにも貢献します。

同事業の1ヶ月の実証実験での実績では、食品ロスを約1トン削減できました。

▼TABETEのダウンロードはこちら
TABETE – 食品ロスを削減するフードシェアリングサービス

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まとめ

今回は食品ロスの概要・現状・原因とともに、企業の取り組みを10例紹介しました。

日本の食品ロスの半分以上が企業から排出されています。

食品のサプライチェーンに関わる企業が食品ロス削減に取り組むことは、食品ロスの絶対量を減らすのに必須です。

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