SDGsへの注目が高まるのと同時に、教育の場にSDGsを取り込むことを検討する学校が増えています。
日本でも、SDGsが新教育指導要領に加えられて小中学校で必須科目となっています。
各生徒の学びがどのようにSDGsに貢献しているのかに着目しながら、学びを修正・進行していく方向性には持続可能な開発のための教育に必要性の高まりが現れています。
また実際に取り組まれている事例は、教育機関だけでなく企業によるものなどさまざまが形で行なわれており、トピックも多様になっています。
今回はさまざまな授業で触れられる「SDGs」について徹底解説します!
見出し
SDGsを取り入れる4つの授業
日本でも必修科目にSDGsが入れられるようになりましたが、他の科目にはどのような形でSDGsが組み込まれているのでしょうか。
ここではSDGsを組み込む4つの授業を紹介します。
「現代社会」の授業
学校の既存科目の中で最もSDGsについて学ぶ機会が多いのが「現代社会」の授業です。
例えば、2021年4月から全国の高校で必修科目となった「公共」の教科書ではSDGsをはじめとした社会的に注目されている問題に対して自ら考えて授業で話し合うといった内容が目立ちます。
こういった動きから、生徒たちにさまざまな視点を持ってほしいという教育者の想いが現れています。
(参考):https://www.tokyo-np.co.jp/article/94800
「家庭科」の授業
生活の衣食住に関することを学ぶ家庭科の授業は、特にSDGs目標2「飢餓をゼロに」・目標3「すべての人に健康と福祉を」・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」・目標12「つくる責任 つかう責任」に深く関係していると考えられます。
さらに、2022年度から高校で始まる家庭科の新しい学習指導要領ではSDGsを意識していると捉えられる以下の文章が明記されています。
「家族や家庭,衣食住,消費や環境などに係る生活事象を,協力・協働,健康・快適・安
全,生活文化の継承・創造,持続可能な社会の構築等の視点で捉え,よりよい生活を営む
ために工夫すること。」
このように、家庭科でSDGsについて触れることは公的機関からも求められています。
(引用・参考)https://www.kyoiku-tosho.co.jp/news_list/165/
「音楽」の授業
SDGsと「芸術」という印象が強い音楽は関係性を見つけるのが難しいかもしれません。しかし、音楽を通してしかできないSDGs教育があります。
2019年3月に、奈良教育大学が発表した「ESDとしての音楽授業実践ガイドブック」のなかに「音楽の授業で身に付けた資質・能力は、その後の長い人生において生きて働き、人生を豊かにしてくれるものです。」「またそれらは、自分自身の人生を豊かにするだけでなく、豊かで幸せな社会を創造していくためにも必要となるものです。」という文があります。
これらは音楽が、SDGsのキーワードである「持続可能性」に大きく関わっていることを示しています。音楽は1人1人の人生を豊かにするだけでなく、社会全体を豊かにするものとして教育の現場で欠かせないテーマなのです。
(引用):https://www.nara-edu.ac.jp/ADMIN/SOUMU/miyashit/miyashit-3.pdf
「気候変動」の授業
一見すると授業ではないように感じられる「気候変動」ですが、世界中の教育の場で、気候変動の授業を義務化するというムーブメントがあることご存知ですか?
例えば、イタリア政府は2020年度に気候変動とSDGsを全公立学校で必修科目に指定しました。授業にSDGsのアジェンダをなるべく多く取り入れ、週に1時間、人間がどのように自然環境に変化をもたらしているかや、地球温暖化の原因と影響に絞った授業2時間を費やしています。
(参考):https://www.alterna.co.jp/28705/2/
SDGsの授業内での教材 3選
SDGs教育の需要が高まる中で、より内容の濃い授業の設計を助ける教材が次々と作成されています。
① SDGsワークシート
社会問題に取り組む、規模も形も異なるさまざまな機関が次々とリリースしているのがSDGsワークシートです。
SDGsワークシートは、授業の中で生徒・児童の学びを深める副教材の立ち位置となります。
中学3年生の社会科で使われることを想定されているユニセフによるワークシートを例に挙げると、SDGsを説明している副教材・教員用資料・ワークシートで構成されています。
これら3つを生徒用、教員用で分けることで生徒・児童がSDGsについて基礎から理解しするだけでなくワークシートを通した学習によってアウトプットまでが叶います。
(参考):https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/kyozai/teacher.html
② SDGsさいころ
SDGsさいころは、各面にSDGs17の目標が表記されているさいころになっています。
出た目の目標について、家族や友だちと話し合うというシンプルなツールです。
自分の住む県や町の取り組みを調べたり、自分たちが達成のために何ができるかをディスカッションします。
形としては、ゴール1~6、7~12、13~17の目が出る六面体のものと、ゴール1~17が出る二十面体のものの2つがあるため、用途や参加人数によって使い分けることができます。
実際のダウンロードはこちらから(六面体)▼
https://www.jica.go.jp/hiroba/teacher/material/jhqv8b00000593nl-att/dice.pdf
実際のダウンロードはこちらから(二十面体)▼
https://www.jica.go.jp/hiroba/teacher/material/jhqv8b00000593nl-att/dice_02.pdf
(参考):https://kidscity.jp/20191117_sdgs/
③ SDGsカード
SDGsカードは、SDGs各目標をカードとして印刷できるようにしたものです。
カードの下の欄は、自由に書けるメモ欄となっており使い方は無限大になっています。
JICAのサイトに載っている学校の授業での使用例では、社会科の授業から教員の研修まで幅広く使われています。
例えば公民の授業で行なわれた「より良い社会を目指して」をテーマに生徒たちが学校内でSDGsに関する問題を発見するフォトコンテストのレポート作成にも活用されています。
(参考):https://www.jica.go.jp/hiroba/teacher/material/sdgs/card.html
こういったシンプルな教材たちは、SDGsへの導入を簡単にすることで子ども達がSDGsを身近に感じることを促すことができます。
SDGsの授業を実施する学校 3選
このパートでは、これからSDGsの授業を行う方・団体または興味がある方々に向けて、
SDGsの授業のロールモデルとなる3つの学校の授業を取り上げていきます。
① 郁文館夢学園
1つ目は、東京都文京区にある、中高一貫校の郁文館夢学園です。
校門を入ったところに、SDGsの一覧が掲示されているほどSDGs教育に力を入れているこの学校では、SDGs教育の一環として「夢教育」を行なっています。夢教育では25歳で輝く人材を育てるというゴールを掲げて、自分のやりたいことに基づいて就職や大学進学ができるように毎学期生徒と教員が夢カウンセリングを行っています。
この夢教育の中では、留学制度や課外活動を通した教育が特徴です。
例えば、高校での修学旅行型課外活動は「PBLツアー(Project Based Learning・課題解決型授業)」と呼ばれています。1年生の頃から、SDGs17の目標と紐づけたツアーに参加することができます。このツアー以外にも、以下の通り38プロジェクトを通して多方面からSDGsに関する教育を推進しています。
② 栃木県宇都宮市立宮の原中学校
栃木県宇都宮市立宮の原中学校では、全3年生がアクティブラーニング型のSDGsの授業を受けます。例えば、日常生活の中でSDGsに関して気づいたことをフォトレポートでまとめる授業があります。
プラスチックゴミに関するニュースやビニール袋の有料化など身近な社会で起きている事象について、SDGsと繋げて考えることで主体的な理解を促しています。
他にも、SDGsカードを使った授業や「学校に行けないってどんなことなんだろう?」というテーマで世界で起こっている社会問題をジブンゴトして捉える授業を実施するなど、
SDGsを授業に取り入れることで、生徒たちが社会問題に興味をもつことを狙いとしています。
③ 広島大学
広島大学では、SDGsに取り組むために、独自に「FE・SDGsネットワーク拠点」を持っています。
特に授業という点では、大学院で多くのSDGs関連授業が開講されています。これらの授業は、「大学院科目の早期履修制度」を使うことによって大学学部生も履修が可能です。
例えば、授業の中には原子爆弾を経験した広島ならではの「Hiroshimaから世界平和を考える」という授業があります。この授業では、SDGsでメインテーマとなっている飢餓・貧困・平和について広島ならではの視点で学ぶことができます。
(参考):https://nerps.hiroshima-u.ac.jp/efforts-list/efforts-list-845/
SDGsとは
SDGsは「<strong>Sustainable Development Goals」の略称</strong>です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、<strong>2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成</strong>されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
▼各目標の詳細は以下の画像をクリック
▼SDGsについて詳しくはこちら
最後に
この記事を読んで、教育の場では当たり前のキーワードになりつつある「SDGs」を皆さんが身近に感じ何らかのアプローチを考える際の役に立てば幸いです!
大人だけでなく、子ども達が自分たちが暮らす未来の地球について責任を持って考え・行動する世の中になることを祈っています。