もし、インターネット、電気、ガスなどのインフラ設備が、明日から使えなくなったら、私たちの生活はどのように変わってしまうでしょうか。きっと多くの人々が生活を送ることが難しくなってしまうでしょう。
しかし、世界には技術革新が遅れていることから、インターネットなどのインフラ設備を十分に使用することができない環境で生活している人々が数多く存在します。
比較的、経済面や環境面で安定した生活をおくることができている日本でも、取り組むべき課題に向き合うことで、より生活面の向上や国の豊さに直結します。
では、具体的に日本でどのような取り組みが行われているか、どのような課題があるのかをみなさんは知っていますか?
そこで、今回の記事では、SDGs 目標9「産業と技術革新をつくろう」の日本の現状と課題を紹介した上での取り組み事例も紹介していきます。
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SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは
日本では、ほとんどの世帯にガスや電気、水道やインターネットなどの生活に必要なインフラが整備されています。しかし、世界の多くの国では、これらのインフラが未整備であり、生活に支障がきたされています。
例えば、世界では、約37億人の人々がインターネットにアクセスできていないと言われており、先進国と比べ技術や生活に大きな格差が生まれてしまっています。
生活インフラを整備し、人々の生活の質を向上することは、「誰ひとり取り残さない」というSDGsの共通理念を実現する上でも重要です。
SDGs目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、新産業を推進することで世界の人々の生活を向上させるだけでなく、技術革新によって持続可能な産業が生まれ、環境に良い影響を与えるために掲げられています。
以下の記事では、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の日本の現状と課題
ここからはSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」について、日本に焦点をあてて解説していきます。
日本の産業と技術革新は世界の中でも課題感が少ない現状であると言えます。
ガス、電気、水道、インターネット等インフラ設備においては全てしっかりとした基盤があるように感じる日本ですが、水道の老朽化、東日本大震災の影響の原子力発電所の停止による計画停電など、「課題がない」とは言い切れません。
また、気候変動などの自然災害にも耐えうる強靭な基盤が備わっているかというとそうでもありません。日本では近年、自然災害による甚大な被害があとを絶ちません。
例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、以下のような被害が生じました。
東日本大震災(平成23年) | |
電気 | 466万戸が停電 (東北電力管内) 3日後に約80% 約3か月で復旧完了 |
水道 | 257万戸が断水 1週間で約57% 約6か月半で復旧完了 |
ガス | 200万戸が供給停止 (都市ガス・LPガス) 約2か月で復旧完了 |
引用:水道の停止に備える – 防災手帳 | Yahoo!天気・災害
東日本大震災を例にみてみると、災害が起きてからインフラ設備を復旧するまでの時間に課題がみられます。電気については、約3日間で80%が復旧していますが、水道については1週間で57 %復旧するまでかかっており、さらに復旧完了まで約6ヶ月半とインフラ設備を回復させるのに多くの日数を要していることがわかります。
これ以外にも、台風などによる大雨による被害なども継続して発生しています。地震などの自然災害が多い日本においては、災害が起きてもすぐにインフラを回復することのできる強靭な基盤を整備する必要があります。
加えて、日本が発展していくためには、持続可能な産業発展につながる技術革新も必要です。
現状、日本における新技術の活用状況については、IoT技術の導入に先進国と比べ大きな遅れをとっている課題が存在しています。国際比較をすると、アメリカでは40%の導入状況に対して、日本では20%となっているほか、今後の導入意向についてもアメリカ、ドイツともに70〜80%ですが、日本は40%に止まっています。
しかし、ロボット技術においては国際的にも比較的優位性を確保しており、新たなビジネスチャンスが生まれることが期待されています。
日本は持続可能な開発を促進するためにもまずはこれらのインフラを整備し、産業化をはかることを目標9では掲げられているのです。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の日本の取り組み3選
文部科学省 研究開発局 環境エネルギー課
文部科学省研究開発局環境エネルギー課は、「化ガリウム(GaN)」と呼ばれる半導体の研究を通してSDGs9への課題解決に取り組んでいます。
この「化ガリウム(GaN)」は、従来の一般的な半導体材料と比べエネルギー変換交換率が非常に高いことから省エネ効果につながる新しい半導体です。
例えば、車のモーターや通信機器の半導体として「化ガリウム(GaN)」を用いることで、灯り以外の部分でも省エネ化を進めることが可能になります。
このプロジェクトでは、理論やシミュレーションも活用した材料創製からデバイス化・システム応用までを見据えて、文部科学省だけでなく、大学や企業といった組織などと一体化した取り組みが行われています。
参照:LEDを超える省エネ社会へ|取り組み事例|持続可能な開発目標(SDGs)への科学技術イノベーションの貢献
株式会社NTTドコモ
ドコモグループは、「どんな場所でもつながることをあたりまえにする」ことを目的にさまざまな取り組みをしています。
取り組みの1つとして、基地局にバッテリーを備え、停電がおきても電波を送れるようにしています。
2011年に発生した東日本大震災では,大規模な停電が起こり,東北地方にあるドコモの基地局の4割が使えなくなったそうです。その反省から,現在では,災害がおきても通信ルートを複数準備することで、強靭なインフラ整備体制が敷かれています。
参照:SDGs取組事例 | つながる通信技術で未来をつくる | 9.産業と技術革新の基盤をつくろう | EduTownSDGs
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) スマートコミュニティ部
NEDOは、「スマートコミュニティ」を実現するための国際デモンストレーションプロジェクトを通じて、地球規模のエネルギー環境問題の解決に貢献しています。
このプロジェクトは、日本の強みであるエネルギー技術やシステムに関する実証事業を相手国政府と公共機関で協力することで日本企業の国際競争力の強化を促すものです。
例えば、輸送システムや商業ビルなどの需要側のICTによる効率的なエネルギーを活用することで、持続可能な社会制度の確立と地球温暖化防止に寄与しています。
参照:「スマートコミュニティ」を実現するための国際デモンストレーションプロジェクト
まとめ
日本では当たり前に設備があり、なかなかSDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に対する意識が少ないかもしれません。
しかし、その当たり前の設備がまだまだ整っていない国や地域が多くあります。
まずは身の回りのインフラ整備に関心をもち、私たちでもできることから始めましょう。
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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