トヨタのカーボンニュートラルへの取り組み-今後の目標や歴史も解説

#SDGs目標12#SDGs目標13#SDGs目標14#SDGs目標6#SDGs目標7#SDGs目標9#エネルギー#ゼロエミッション#再利用#持続可能#水素#脱炭素(カーボンニュートラル)#軽減 2023.04.04

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トヨタ自動車株式会社は、カーボンニュートラル実現に向けてさまざまな取り組みを行なっています。

電気自動車や今話題の水素エンジンなど、どの程度効果がありCO2削減に貢献しているのでしょうか。

今回は、トヨタがカーボンニュートラル実現に向け掲げている目標や取り組みを徹底解説します。

【この記事で分かること】

カーボンニュートラルに向けたトヨタの取り組み4選

そもそも、カーボンニュートラルとは何でしょうか。

カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」と説明されています。

私たちは、社会生活を営む上ではどうしても温室効果ガスを排出してしまいます。カーボンニュートラルとは、その排出量を削減したうえで、同量の温室効果ガスを吸収しようということです。自動車は我々の生活に欠かせない一方、製造時や走行時に排出される温室効果ガスは、地球温暖化の原因となっていて、その削減は重要な社会課題となっています。

では、世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、カーボンニュートラルに向けてどのような取り組みを行っているのか、詳しくみていきましょう。

▶関連記事|《SDGs事例》トヨタ”技術”と”変革”で社会課題解決へ | SDGs CONNECT (sdgs-connect.com>>

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製造から廃棄・リサイクルまでのCO2削減

自動車は走行時だけではなく、製造時などにも多くの温室効果ガスを排出します。そこでトヨタは、車両の製造時や廃棄時まで含めた排出量を分析する、ライフサイクルアセスメントを行っています。

ライフサイクルアセスメント

…製品やサービスの温室効果ガス排出などの環境負荷を、生産から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で評価すること。

電気自動車の開発

トヨタは、超小型車から大型車まで、様々な電気自動車を開発しています。

電気自動車は従来のガソリン車と比べてライフサイクル全体での温室効果ガス排出量が少ないと分析されています。多様な需要に合わせた電気自動車を開発することで、社会全体での電気自動車の使用割合が上昇し、結果としてカーボンニュートラルの達成に一歩近づくといえます。

地域の状況に合わせて環境負荷の小さい車を提供

環境にやさしい電気自動車ですが、充電する国や地域の電力(火力、再生可能エネルギーなど)の環境負荷によって、電気自動車の環境負荷も左右されます。また、そもそも充電設備などの電気自動車向けインフラが整っていない地域もあります。

そこでトヨタは、販売を行う世界170以上の国や地域の電力や自動車使用状況に合わせて、電気自動車だけでなくハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車など、環境にやさしいあらゆる動力源の自動車を開発しています。

水素エンジンの開発

さらにトヨタは、環境にやさしい水素エンジンの研究開発にも取り組んでいます。水素で動く自動車というと、燃料電池車を思い浮かべる方も多いと思います。

しかし、水素で発電した電気でモーターを動かし駆動する燃料電池車とは違い、水素エンジン車は水素を燃焼させ、ガソリンエンジンと同じように動力を得ます。そのため、水素エンジン車はガソリンエンジン車と燃料電池車の長所を併せ持っています。

その反面、水素エンジン技術はいまだ開発途中にありますが、トヨタは水素エンジン技術の開発をリードするだけでなく、国内外の自動車レースへの参加・デモ走行を行うなど、認知度の向上にも努めています。

参考:トヨタ、モータースポーツを通じた「水素エンジン」技術開発に挑戦 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)

トヨタ環境チャレンジ2050|SDGsに関する6つのチャレンジ

「トヨタ環境チャレンジ2050」とは、トヨタが2015年に発表した6つの目標のことです。自車の自動車産業温室効果ガスをゼロにする3つの「ゼロへのチャレンジ」と、その他の分野において社会へのプラスを生み出す3つの「プラスへのチャレンジ」から構成されます。各チャレンジでは、2050年までの最終達成目標と、2030年までの途中目標(2030マイルストーン)からなります。

①ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ

ライフサイクルCO2ゼロチャレンジでは、自動車のライフサイクル全体の排出量において、2030年における25%の排出削減(2013年比)と、最終的な2050年におけるCO2排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指します。

この取り組みは、SDGsの17の目標のうち、特に「12 つくる責任つかう責任」「13 気候変動に具体的な対策を」に貢献するものであると言えます。

②新車CO2ゼロチャレンジ

このチャレンジでは、多くの国・地域において、2030年に販売する新車の走行時平均CO2排出量の35%削減(2010年比)の中間目標と、2050年での90%削減の最終目標を目指します。先ほどの「ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ」では自動車のライフサイクル全体の温室効果ガス排出ゼロを目指していたのに対し、こちらは走行時のみに注目した目標です。

この取り組みは、SDGsの17の目標のうち、特に「7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「13 気候変動に具体的な対策を」に貢献するものであると言えます。

③工場CO2ゼロチャレンジ

このチャレンジでは、世界の自社工場のCO2排出の、2030年での35%削減(2013年比)と2050年での100%削減を目指します。こちらは製造時に絞った目標です。

この取り組みは、SDGsの17の目標のうち、特に「7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「9 産業と技術革新の基盤をつくろう」「13 気候変動に具体的な対策を」に貢献するものであると言えます。

④水環境インパクト最小化チャレンジ

このチャレンジでは、世界の自社工場において、各国・地域の事情に応じた水使用の最小化と、排水の浄化・管理を2050年までに目指します。2030年マイルストーンとしては、特に水環境への影響が大きいと考えられる北米・アジア・南アフリカの工場での優先的な対策を目指します。

この取り組みは、SDGsの17の目標のうち、特に「6 きれいな水とトイレを世界中に」に貢献するものであると言えます。

⑤循環型社会・システム構築チャレンジ

このチャレンジでは、日本で培った廃棄物の適正処理やリサイクルの技術・システムのグローバル展開を2050年までに目指すものです。その途中目標として、2030年までの電池回収・再資源化のシステム構築と、廃車の適正処理のモデル施設の設置を目標としています。

トヨタが力を入れている電動車の販売数が増えるほど、電池の回収・再資源化の重要性は増します。また、廃車のリサイクルはカーボンニュートラル実現へ貢献するものであるため、今後のトヨタに必要不可欠なチャレンジであると言えます。

この取り組みは、SDGsの17の目標のうち、特に「9 産業と技術革新の基盤をつくろう」「12 つくる責任つかう責任」に貢献するものであると言えます。

⑥人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ

このチャレンジでは、2050年までの自然保護活動の普及を最終目標とし、2030年へ向けては工場周辺での森づくりやNGOと協力した自然保護活動、環境教育などに取り組んでいます。日本最大の企業であるトヨタが環境再生活動に実際に取り組んでいることは社会的に大きな意味を持ちます。

この取り組みは、SDGsの17の目標のうち、特に「12 つくる責任つかう責任」「15 陸の豊かさも守ろう」に貢献するものであると言えます。

参考:6つのチャレンジ | ESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく取り組み | サステナビリティ | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)

環境にやさしいクルマづくり | カーボンニュートラルと環境への取り組み | クルマこどもサイト | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)

トヨタの脱炭素に対する考えとは|トヨタイムズを参考に

ここまでカーボンニュートラルに向けたトヨタの様々な取り組みをご紹介しましたが、これらの取り組みが多大な費用と大きな決断が必要とされるものであったことは、想像に難くありません。ではトヨタはどのような考えのもと、取り組みを行ってきたのでしょうか。

トヨタの自社メディア「トヨタイムズ」の以下の記事では、豊田章雄社長(当時)へのインタビューが掲載されています。

このインタビューで章雄氏は、「電気自動車の販売台数目標が少ないのではないか」という批判に対しては、十分な電力供給が無い国・地域の人々に対しても移動の自由を提供するために電気自動車一辺倒の方針は取らないと述べており、また、カーボンニュートラルは自動車会社だけでは達成できないというとも述べています。

この姿勢は、ハイブリッド車や水素エンジン車などの、電気自動車以外の低環境負荷自動車の研究・開発や、ライフサイクル全体での脱炭素実現、自動車産業だけにとどまらない環境への取り組みなどによくあらわれています。

トヨタのカーボンニュートラルへの歴史|技術革新の歩み

今までは近年のトヨタのカーボンニュートラルへの取り組みを紹介してきましたが、それ以前の取り組みの歴史はどのようなものだったのでしょうか。

トヨタは30年以上にわたりCO2排出削減への投資を行ってきましたが、イメージ戦略では苦労してきました。例えば1996年には初の電気自動車を開発・販売しましたが、これは技術制約や充電インフラの不足などにより失敗しました。

これにめげず、翌年には世界初のハイブリッド車であるプリウスを発売し、大ヒットとなりますが、ハイブリッド車を「電動自動車」としては強調しなかったため、トヨタは自動車の電動化に遅れているという印象を一般的に持たれることになりました。その後度々イメージ挽回を試みますが、それも上手くいかなかったそうです。

そんなトヨタですが、現在は自社が得意なハイブリッド車の技術を転用した複数種類のエコカーの研究開発やライフサイクルマネジメントなどにより、カーボンニュートラル実現に向けた更なる取り組みを加速させています。

環境保護団体によるトヨタの取り組みに関する評価|低評価を受けた理由とは

トヨタは、2022年に国際的な環境団体「グリーンピース」が発表した自動車企業の気候対策ランキング(『自動車環境ガイド2022』)において、世界の主要自動車メーカー10社の中で、2年連続の最低評価を受けました。

このランキングの主要な評価項目には3つありますが、トヨタはこのうち「化石燃料車の廃止」と「サプライチェーンの脱炭素化」における評価が特に低いです。「化石燃料車の廃止」の低評価の理由としては、内燃機関の廃止時期が未定であることと、2021年の世界販売における「ゼロエミッション車」の割合が低かった(0.18%)ことが理由とされ、「サプライチェーンの脱炭素化」においては、トヨタが掲げた2050年までのカーボンニュートラル達成の実現性が薄いことが理由とされています。

「資源の節約と効率化」の項目については、ほぼ全ての企業で評価が低かったため、トヨタと他社には大きな差が付きませんでしたが、他の減点項目として、トヨタが日本政府の気候政策へネガティブなロビー活動(政策が自社に有利になるよう政府へ働きかけること)を行ったことが指摘されています。

先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を進めていくことで、トヨタは将来この評価を挽回することを期待したいです。

まとめ

現在大きな岐路に立たされている自動車産業において、その最大手であるトヨタは走行時の温室効果ガス排出量削減だけでなく、製造から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体の改革などを通じて、カーボンニュートラル実現に取り組んでいることがわかりました。

しかしその動きは決してここ数年で始まったものではなく、トヨタの長い歴史の中での取り組みの延長線上にあります。

環境負荷の大きい産業の最大手としての責任と、より多くの人に移動の自由を提供する自動車会社としての責任、この両方に向き合いながら、トヨタはカーボンニュートラル達成という大きな目標へと取り組んでいます。

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